【独自解説】本当の四季報の見方

株式情報 投資戦略 2023.09.23

遠藤 悠市 遠藤 悠市

9月15日に会社四季報の最新号が発売されました。会社四季報は、企業の特色や注目材料、業績、財務内容、株価の動きをまとめた季刊雑誌であり、投資の参考として多くの投資家が利用しています。

 

実際に購入したこともあるといった方もいらっしゃるかと思いますが、皆さん「本当の四季報の見方」を知っていますか?

 

会社四季報には、業績や短中期予測、株主、財務状況など投資に役立つ情報が多く記載されていますが、日本の上場企業約3,800社の情報が詰まっており、四季報は毎号2,000ページを超えるボリュームとなっています。

 

証券会社でもアナリストがカバーしているのは大手を中心に500社程度と言われており、全上場企業をカバーできていません。

 

ただ、実は株価が10倍になる、いわゆるテンバガー企業は、まだ成長途中の中堅企業やベンチャー企業から生まれるケースが多いのです。

 

こういった企業を見つけるときに役立つのが四季報です。

 

しかし、読破するのには相当の時間とエネルギーが必要となりますし、そもそもの四季報の読み方を理解していないと、吸収できる情報に差が出てしまうこともあります。

 

一番初めに見るべきは

 

まず初めに見ていただきたいのは、四季報の見開きにある「早わかり3分でわかる!四季報の読み方」というページです。

このガイダンスを読んで、何が記載されているのかやルールを簡単に理解しておきましょう。

 

ところで、みなさんは年4回発売される「会社四季報」には、決算時期と連動してそれぞれ違う特徴があるということをご存じですか?

 

【各「会社四季報」の特徴まとめ】

 

・6月発売の夏号

特長は3月実績を完全収録しており、記者は取材を通して会社側の計画が甘すぎたり堅すぎたりしないかを吟味し、前期実績との比較を中心にコメントしています。

 

・9月発売の秋号

第1四半期決算の実績を踏まえて、前号の期初予想を見直す号となっています。

記者は為替や市況など前提条件に変化はないか、期初に立てた予想数字に狂いがないかなどを中心に確認しており、四季報独自の「サプライズ予想」が徐々に増えてきます。

 

・12月発売の新春号

事業年度の折り返し地点である第2四半期を過ぎ、通期見通しがはっきりしてくることから業績の上振れ予想、下振れ予想が出やすい傾向にあります。

 

 

・3月発売の春号

記者の視点は来期の動向に移り、業績欄のコメントも半分以上が来期に関するものとなります。有望企業を見つけやすく先回り買いも狙えます。

 

 

このように、会社四季報は発売時期によって、それぞれ特徴があります。直近発売されているのは秋号であるため、四季報独自の「サプライズ予想」に注目することで銘柄を絞ることができます。

 

四季報秋号の注目点は

 

会社四季報の編集部は上場企業の約7割を占める3月期決算企業の第1四半期決算の発表を受けて、秋号の制作をしています。

 

保守的な業績予想を出す会社は、通期計画における第1四半期の業績進捗が高くても

「上方修正するのは第2四半期決算を見てから」として、通期の業績予想を据え置くことが多い傾向にあります。

 

そうした中で、四季報記者は各社への取材や各種分析を通して、進捗率の高さの背景や第2四半期以降の見通し、今後の上方修正の確度を見極め、業績上振れの可能性が高いと判断すれば、会社側が発表するよりも先に、独自に強気予想を立てています。

 

つまり、四季報秋号には「上方修正期待の銘柄」が多く掲載されていると考えられます。

 

では、「上方修正期待の銘柄」をどのようにして見つけるのか。

 

その方法として、見出しを確認するということが挙げられます。

 

四季報の記者コメント欄には二つの【見出し】が付いています。

 

前半と後半に分かれており、前半部分は業績欄の業績予想数字のポイント解説で、後半部分はその会社の中期的な展望や、将来の業績に影響を与えそうな新商品の開発や設備投資など、株価変動につながりそうな話題について触れています。

 

四季報秋号の各銘柄の記事に付いた見出しを集計すると、続伸、上振れ、上向く、独自増額、増額の5つが上位となり、ポジティブな要素のある企業として捉えることができます。

 

また、四季報秋号では、業績に一点の曇りもない時にだけ許される最高級の見出しである【絶好調】が付けられている銘柄があります。

 

この、【絶好調】という言葉を使えるのは10~15社程という決まりがあり、どの会社の見出しに使用するか、会議が行われるほど重要な要素となっています。

そのため、見出しに【絶好調】と記載されている銘柄を押さえておくだけでも投資をする際に十分参考になるでしょう。

 

四季報を見るときの注意点

 

会社四季報には、企業について様々な情報が記載されていますが、これらはすべて東洋経済の記者たちの取材や調査が基となっています。

 

そのため、会社四季報に記載の内容と企業が発信した内容に違いが出る場合があります。

 

直近の例だと、(2160)GNIグループは「会社四季報記載の当社記事に関して」というIRを公表し、四季報内の文章をこのように否定しています。

 

『当社記事文中にて、「24年12月期は医薬品好調も一時金剥落響き営業益反落」

との記載がございますが、会社として数値は発表しておらず、また、減益との回答も一切しておりません。投資家の皆様が投資判断をする際にはお気をつけ下さい。』

※GINグループの開示より抜粋

 

また、(5476)日本高周波鋼業には、「会社白紙だが100円配も」との記載があり、

仮に100配当が行われれば利回りが非常に高くなることから、四季報発売から株価は大幅な上昇となっています。

 

しかし、会社白紙ということは100円配の計画は東洋経済記者の予想であり、会社側が公表したものではない可能性があるということになります。

 

このように、四季報の内容が企業の公表とに差異があったり、会社計画を独自に予想したりする場合があるため、「四季報に書いてあるから大丈夫」といった考えは今後の投資に危険をもたらすかもしれません。

 

今回の四季報で押さえておくべき点

 

会社四季報は、投資の参考として多くの投資家が利用していますが、日本の上場企業約3,800社の情報が詰まっており、四季報は毎号2,000ページを超えるボリュームとなっています。

 

読破するのには相当の時間とエネルギーが必要となりますし、そもそもの四季報の読み方を理解していないと、吸収できる情報に差が出てしまうため、今回は「本当の四季報の見方」として、各「会社四季報」の特徴のまとめと四季報秋号の注目点、四季報を見るときの注意点をお伝えしました。

 

見出しを確認し、ポジティブな要素のある企業や見出しに【絶好調】と記載されている銘柄を押さえておくことで、株価が10倍になる、いわゆるテンバガー企業を見つけ出せるかもしれません、ご参考にしてみてください。

株式情報 投資戦略 2023.09.23

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遠藤 悠市

この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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