日産自動車の株価が安い理由は?今後低迷から復活するかをアナリストが分析!

株式情報 日本株 2024.09.01

峯岸恭一 峯岸恭一

日産自動車の24年3月期第1四半期(4-6月)の営業利益は、なんと99%もの大幅な減益となりました。

他の自動車メーカーが円安の恩恵を受けているのにも関わらず、かなり厳しい決算内容となっています。

 

決算発表を受けて、日産の株価は大幅に下落し、コロナショック以来初めて400円を割り込んでいます。

そこで今回は、日産の減益要因と今後の株価がどうなりそうかについて解説していきます。

 

円安なのに99%の大幅減益!業績低迷の理由は?

 

 

日産自動車の営業利益が大幅な減益となった理由はズバリ、「販売競争に負けないためにインセンティブを多く支払ったから」です。

日産自動車の25年3月期第1四半期の決算資料に掲載されている「営業利益増減分析」を確認すると、「販売パフォーマンス」が明確に利益を押し下げています。

 

 

さらに販売パフォーマンスの内訳を見てみると、「販売費用/価格改定」の項目が-778億円となっており、一番の減益要因であることが分かります。

自動車販売に係る費用が急増してしまっているのです。

 

費用の増加の主な要因は、北米での販売競争の激化と、モデルチェンジでの出遅れです。

 

日産は主力モデルであるローグの24年モデルの開発・販売が遅れたことで、2023年モデルの在庫を販売し続けていました。

他社は24年モデルを販売し、競い合っているなかで、23年モデルの在庫を捌かなければならない状況に陥っていたのです。

 

当然、販売は好調とは言えず、在庫を捌くために日産は、「インセンティブの上乗せ」という手段を取りました。

インセンティブとはディーラーに支払う販売奨励金や、ディーラーに対して便宜をはかる販売奨励策などのことを指します。

購入者に対する低金利での自動車ローンの斡旋やキャッシュバック、保証期間の延長などに、販売奨励金は使われます。

 

つまり、ディーラーにインセンティブを多く支払い、購入者に対して様々な特典の付与ができるようにすることで、販売台数を伸ばす作戦に出たのです。

当然、特典分の費用が余分かかりますので、利益率は大幅に悪化しました。

費用をかけなければ在庫を捌けない、厳しい状況を織り込んで、日産の株価は低迷していると考えられます。

 

日産自動車の株価見通し。復活する余地は?

 

日産は在庫処理のために、第2、第3四半期もインセンティブの上乗せによる販売を推進する方針を示しています。

つまり、今後も多くの販売費用がかかる見通しです。

 

その後の第3・第4四半期については、決算説明会の質疑応答で「多くのプレミアムモデルが発売されるため、好業績が期待できる」と述べています。

しかし、これは楽観的な見方かもしれません。

 

現状の日産は販売奨励策という実質的な値引きを行って販売しており、「価格」で勝負している状況です。

しかし、高利益率が期待できるプレミアムモデルでは「価格」ではなく「車の魅力」で戦うことになります。

「価格」から「車の魅力の」の土俵に移るとなると「トヨタ」や「ホンダ」を始めとしたメーカーと正面からぶつかる形になります。

 

実は日産は2017年頃にも、北米での競争激化を受けて、インセンティブの上乗せによる薄利多売商法をしていた時がありました。

そして2019年頃にも新車投入を行い、利益率改善を行おうとしましたが、新車が売れずに販売台数が減少した経緯があります。

 

まさに今と同じような状況で、同じような戦略を取っていたのです。

もちろん、今後販売するプレミアムモデルが消費者に魅力的に映り、販売が好調に推移すれば、業績は改善するでしょう。

しかし、北米での厳しい競争のなかで勝つことは簡単ではありません。

 

販売台数が減少すれば、株価が2019年の様に大きく下落したり、低迷が続いたりする可能性は高いでしょう。

 

割安だからと飛びつかず、今後の見通しを確認しよう!

 

 

PBRなどの指標を見ると、現在の日産自動車の株価には、かなりの値ごろ感があります。

しかし、業績の回復が見込まれるまでの間は、手を出すのは控えた方が賢明でしょう。

 

大きな下落があった後は、銘柄を安く仕込むチャンスですが、闇雲に仕込むのではなく、今後の見通しを確認してみましょう。

万年割安な株価での推移が続いてしまう「バリュートラップ」という言葉があるように、業績の低迷が続けば、割安でも株価は上がりません。

割安株をマークして、業績が上向くだけの材料が見えてきてから、銘柄を買い付けた方が効率の良い資産運用ができるかと思います。

株式情報 日本株 2024.09.01

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この記事を書いた人

峯岸恭一

日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)

総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。

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