本記事では、2023年末から上昇が加速している【7974】任天堂に関して、「なぜそんなに上がっているのか？」と「まだ上がる余地はあるのか？」をアナリストが分析しています。

 

実は、ゲーム株の値動きには、他の業種の銘柄とは少し異なる特徴があるのです。

どのような特徴なのか、任天堂の過去のチャートを例に説明していますので、是非、参考にしてみてください。

 

他のゲーム株を買い付ける際にも、きっと役に立つはずです。

 

任天堂の株価は上がりすぎ？上昇が加速した理由とは

 

まずは、任天堂の株価上昇が加速している理由を、詳しくみていきます。

 

理由は、3つほど考えられます。

 

①新NISA開始に伴う資金流入期待

【7974】任天堂　日足チャート　(2023年8月17日～2024年1月8日)

 

任天堂の株価は、実質新年相場を迎えて新NISAが使えるようになった12月28日に一時上場来高値を更新し、その後も強い値動きを継続しています。

 

任天堂は個人にも人気であるため、新NISAの開始による資金の流入や、その思惑によって上昇に弾みがついた可能性があります。

 

②次世代Swich発表に向けた期待

 

さらに、公式発表はされていませんが、2024年中にSwichの次世代機が発売されるとの観測も株価を押し上げています。

 

たしかに、これまでは間が空いても6～7年ごとに、新たな据え置き型ゲーム機が発売されています。

 

今年は、2017年3月にNintendo Switchが発売されてから7年目となりますので、次世代機が発売されても不思議ではありません。

 

※任天堂の据え置き型ゲームの発売日

 

任天堂は年に数回、ゲームの最新情報を直接世界中に届けるために「Nintendo Direct」という動画を配信しています。

 

近年この配信は2月・6月・9月に行われており、次回は2月に配信を行い、次世代Switchについて、発表されるのではないかとの期待が高まっています。

 

③IP(知的財産)の成長

 

もう1つ、IP(知的財産)の成長も今の任天堂の強さにつながっています。

 

任天堂は、自社のIP(マリオやゼルダやピクミンといったキャラクターとその世界観)に触れる人口の拡大を基本戦略としています。

 

この戦略が奏功し、昨年には「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が大ヒット。

 

マリオ関連のゲームの販売本数は、前年比で1.3倍となりました。

 

また任天堂は、テーマパークなど、IPに触れる「場所」も積極的に増やしています。

 

昨年は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに続いて、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドに「スーパー・ニンテンドー・ワールド」がオープンしました。

 

こうした取り組みによって、親が子供の頃に遊んで慣れ親しんだ任天堂のキャラクターで、自分の子供と一緒に遊ぶケースが増えているとみられます。

 

世界共通キャラクターとして、ディズニーキャラクターと同じような存在になりつつあるのです。

 

任天堂の歴史を振り返ると、いい時ばかりではなかった？

 

現在好調な任天堂ですが、実は、良いときばかりだったわけではありません。

 

【7974】任天堂　月足チャート　(2002年2月1日～2024年1月19日)

 

2004年に発売したニンテンドーDS、2006年に発売したWiiがヒットして、大きく上昇した株価は、2008年にリーマンショックの影響もあって暴落。

 

2012年から2014年まで業績が赤字となり、アベノミクスの恩恵を受けないまま低迷しました。

 

これは、ニンテンドー3DSとWii Uというヒットしたハードの次世代機が、想定ほど売れなかったからだとみられます。

 

2008年に暴落してから、NIntendo Switchで発売した「あつまれどうぶつの森」が大ヒットして暴落前の水準を取り戻すまでには、なんと12年の歳月を要しました。

 

今の任天堂はIPでも稼げるようになり、業績は以前よりもずっと安定したとみられます。

 

しかし、ゲーム株ならではのハードやソフトがヒットするかどうかによって、株価が振れやすいという特性は残っているとみられますので、この点には注意して投資を行いたいです。

 

Switch発表から発売までの値動きを確認！

 

参考までに、Nintendo Switchの情報が出てから、ヒットするまでの株価の推移を追ってみましょう。

 

【7974】任天堂　週足チャート　(2014年9月22日～2018年2月26日)

 

2015年3月18日に「任天堂が、後にスイッチと名づけられる次世代のゲーム専用機NX(開発コード名)を開発中」と伝わり、株価は急伸。

 

この時期は「これからはスマホゲームの時代」という機運が高まり、任天堂がスマホゲームにどう活路を見出すのかにも市場の注目が集まっていました。

 

同じ年の10月には、期待されていたスマホ向けゲームの第1弾の発表をきっかけに、株価が大きく下落する場面も見られています。

 

これは、第1弾のゲームが、マリオなどの人気キャラクターではなく、自分の分身である「Mii」というキャラクターを使った地味なものであったため、市場の失望につながったからです。

 

任天堂は、自社にとっての主力はスマホゲームではなく、あくまでゲーム専用機と考えていました。

 

スマホゲームに参入する上でまず優先したのは、コンテンツのダウンロードや様々な端末でゲームのセーブデータを活用できる「ニンテンドーアカウント」の普及であり、そのために「Mii」のゲームをリリースしたのです。

 

とはいえ、自社のIP(知的財産)の価値を高めるためであればと、スマホゲームへの参入も続け、2015年にはポケモンGOが大ヒットし、株価が急騰する場面も見られています。

 

そんななか、2015年10月20日に発表されたのが、Nintendo Switchでした。

 

発表後は、「今さら家庭用ゲーム機が売れるのか？」と疑問を持つ投資家も多かったようで、株価が弱含む場面が目立ちました。

 

上昇トレンドの形成に至ったのは、Switchが実際に発売されて、売れ行きが確認されてからだったのです。

 

次世代Switch発表後に好材料出尽くしなら買い時に!?

 

このように、①新作を発表するのでは、という期待感で株価が動き始め、②実際に発表されると、売れるかどうかの予想が織り込まれ、③発売からは実際の売れ行きと業績に左右されるのが、ゲーム株の特性です。

 

今は次世代Switchへの期待が先行しているため、発表を機に「そこまでは売れないかも」と考えて利益を確定する売りが出る可能性に注意が必要だと思っています。

 

また、ゲームボーイとゲームボーイアドバンス、wiiとwiiU、ニンテンドーDSとニンテンドー3DSを比べたときに次世代機は販売数量が伸び悩んでいます。

 

※任天堂 各ハード、ソフトの販売数量

 

次世代Switchが期待されているほどには、売れない可能性も考えておく必要があります。

 

とはいえ、任天堂はIPを丁寧に育て、世界中に浸透させ続けています。

 

長期的な成長期待は高いため、売りが強まる場面は、買い時になるのではないかと思います。

 

ゲーム株は任天堂の1人勝ち！他の銘柄はなぜ上がらない？

 

最後に、他のゲーム株が、どんな業績、株価の状況にあるのかを見ておきましょう。

 

サウジアラビアの政府系ファンドが、ネクソンやカプコン、コーエーテクモの株を買うなど、世界的に評価されている日本のゲーム株は任天堂だけではありません。

 

しかし今は、任天堂の1人勝ちになってしまっています。

 

【7974】任天堂、【9697】カプコン、【3659】ネクソン、【9684】スクウェア・エニックス、【3635】コーエーテクモの株価推移(2023年4月～2024年1月)

 

①【3659】ネクソン

【3659】ネクソン　日足チャート　(2023年8月10日～2024年1月19日)

 

ネクソンは、中国向けの売上比率が高いため、昨年末に中国政府がオンラインゲームに対する新たな規制案を発表してから、かなり弱い値動きとなっています。

 

中国向けの収益伸び悩みを織り込んだ後には、アク抜け感から株価も戻すとみられますが、少し時間を要しそうな印象です。

 

②【3635】コーエーテクモホールディングス

【3635】コーエーテクモホールディングス　週足チャート　(2019年10月28日～2024年1月19日)

 

コーエーテクモホールディングスはスマホ向けのゲームで稼ぐも、家庭用ゲーム機向けのゲームが伸び悩み、株価が調整局面を迎えています。

 

新型コロナの感染拡大期には、業績、株価ともに絶好調でしたので、反動もあるでしょう。

 

③【9684】スクウェア・エニックス・ホールディングス

【9684】スクウェア・エニックス・ホールディングス　日足チャート　(2023年1月10日～2024年1月19日)

 

スクウェア・エニックスは、開発費の償却負担が重く、24年3月期第1四半期(4-6月)の営業利益が前年同期比で大幅に減少したと発表しています。

 

決算発表を受けて、8月には急落する場面も見られました。

 

ただ、ファイナル・ファンタジー7のリメイク版が2月に発売予定ということもあって、足元では見直し買いがみられています。

 

④【9697】カプコン

【9697】カプコン　日足チャート　(2023年6月2日～2024年1月19日)

 

カプコンは、昨年前半に発売したストリートファイター6が好調で大きく上昇しましたが、今は反動で弱い値動きとなっています。

 

ただ、昨年12月には、2025年の発売に向けて「モンスターハンター」シリーズの最新作を開発中と発表していますので、長期目線で下げは買い場と考えるのが良い時期かと思います。

 

期待感がどの程度織り込まれているかに注目！！

 

ここまで、任天堂の株価がなぜ上昇しているのか詳しく解説した上で、他の大型ゲーム株の現在の上昇についても簡単に説明してきました。

 

ゲーム株の値動きには特性があるため、好材料出尽くし感が強まった場面で、新作発表への期待感が高まり始めた初動で買いに入るように意識すると利益を狙いやすいと思います。

 

また、現在は任天堂を除く大型ゲーム株には、過熱感がありませんので、長期目線で考えると良い買い時を迎えつつあると考えられます。

 

好きなゲームを作っている会社を応援するつもりで、投資をするというのも新NISAの良い使い方になりそうですね。