止まらない原油価格の上昇!株式市場や企業業績にどう影響する?
株式情報 相場展望 日本株 2023.09.18
サウジアラビアとロシアが自主的な原油供給制限を年末まで延長すると発表し、原油価格上昇に拍車がかかっています。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の石油市場は2023年後半に日量120万バレルの供給不足に直面する見通し。
冬に向けて、原油価格に関する先行き不透明感が強まっています。
では原油価格の上昇は、株式市場や個別銘柄にどのような影響を与えるのでしょうか?
原油価格の上昇が続いた場合にも、利益を狙えるように市場への影響を解説していきます。
目次
原油価格の上昇で、株は上がる?下がる?
まず、原油価格の上昇が、株式市場全体にとって買い材料となるか、売り材料となるかを考えてみましょう。
原油価格の上昇が続けば、以下の2つのシナリオのどちらかに帰結するとみられます。
シナリオ①:消費が落ち込み、いずれ株安局面に。
まず1つめは、消費が落ち込み、景気が悪化することで、最終的には原油価格が調整するシナリオです。
原油価格の上昇は、ガソリン価格や電気代の上昇につながります。
生活する上で必ず出ていくお金が増えてしまいますから、消費者は、その分他の物を買い控えるようになると考えられます。
すると、物が売れなくなり、徐々に景気悪化の兆候が広がることで、原油価格は調整局面を迎えることとなりそうです。
この景気悪化の程度が深刻であれば、原油価格とともに、株式市場も大きく調整しやすいです。
シナリオ②:消費が底堅さを保ち、高インフレが定着。
2つめは、消費がさほど落ち込まず、やや高い水準の物価上昇率が定着するシナリオです。
ガソリン価格や電気代が上昇しても、そのペースが急すぎず、賃金上昇が追い付いていくのであれば、消費の落ち込みは限定されると考えられます。
こうした状況下では景気が底堅さを保つ一方で、インフレ率は高止まりすると考えられます。
その際に金利をインフレ率以下の水準に設定してしまうと、景気が加熱してしまいますので、ある程度高い水準に金利を据え置く必要が出てきます。
このシナリオが実現した場合、物価上昇の恩恵を受ける銘柄が強く推移しやすい一方、借入が多い企業などは業績面への懸念から厳しい値動きになりやすいと考えられます。
原油高で上がる銘柄、下がる銘柄を紹介!
足元の経済指標が底堅いこともあって、現在の株式市場では、前述の②のシナリオを描いた物色が広がっています。
ここからは、実際にどんな銘柄が動いているのかを見ていきましょう。
原油高メリット銘柄群①:エネルギーの開発や販売を手掛ける企業
原油高の恩恵をもっともダイレクトに受けるのは、原油を採掘している生産過程の企業です。
筆頭である【1605】INPEXは現在、2008年以来の高値をまい進する強い展開となっています。
【1605】INPEX 日足チャート (2023年3月7日~9月15日)
※TradingView(https://jp.tradingview.com/)のチャートを使用しています。
大手商社なども事業の一環としてエネルギー開発を行っているため、原油価格が上昇する局面で強い値動きを見せやすいです。
また、生産過程の企業ほどのインパクトはありませんが、石油の販売をしている企業などは、備蓄として有している石油の評価額がかさ上げされ、利益が増加する期待ができます。
原油高メリット銘柄群②:エネルギー関連の生産設備を手掛ける企業
原油価格が高水準で推移するのであれば、売り手が生産量を増やすインセンティブも増します。
そこで声がかかるのが、エネルギー関連の生産設備に実績のある建設会社です。
その代表として、足元では【1963】日揮ホールディングスが急騰。
【1963】日揮ホールディングス 日足チャート (2023年1月5日~9月15日)
2018年以来の高値をつける強い値動きとなっています。
ただ、原油の生産を手掛ける企業に比べると、業績へのインパクトが小さいこともあって出遅れ感のある推移です。
原油価格の上昇基調が続くのであれば、まだ評価の余地はありそうだとして注目しておきましょう。
原油高デメリット銘柄群①:原油価格の上昇がコスト高に直結する企業
一方、原油価格の上昇がコスト高に直結する企業は、軟調な値動きに転じやすいです。
たとえば、空運株などは、原油価格の上昇で燃料コストがかさみやすいこともあって、上値が重くなっています。
【9202】ANAホールディングス 日足チャート (2023年2月3日~9月15日)
また、紙・パルプや電気・ガスセクターなども、原油価格の影響を受けやすいセクターとされています。
この辺りの銘柄はバリュー株物色の流れもあって足元では強い値動きを見せていますが、原油価格の上昇が続けば、今後の業績が市場の期待に届かなくなってしまう可能性も想定されます。
特に決算発表の持ち越しなどは、注意して判断していく必要があると思います。
原油高デメリット銘柄群②:「値上げ」できる強みを持たない企業
原材料や輸送費が上昇するなかでは、それを価格に転嫁できなければ、企業の利益は目減りしてしまいます。
そのため、コスト高を価格転嫁できるだけのブランド力がある企業や、消費者が値段が上がっても買わざるを得ないサービスや商品を扱っている企業は問題ありませんが、そうでない企業は業績が悪化すると考えられます。
典型的な例として、日本がデフレになるなかで一世を風靡した「100円ショップ」を手掛ける【2782】セリアが挙げられます。
【2782】セリア 日足チャート (2023年1月4日~9月15日)
原材料や輸送費、光熱費が上昇するなかで利益率が悪化し、株価も低迷してしまっているのです。
こうした銘柄の買い付けは、企業努力による打開策が見えてくるか、コスト高が落ち着くまで買いを避けるのが無難かと思います。
原油高を味方につけた投資をしよう!
ここまで、原油価格の上昇が株式市場や個別銘柄にどのような影響を与えるのかを解説しました。
足元で進む原油価格の上昇は、一部の銘柄にとっては業績の重荷となります。
しかし、景気が底堅い限り悪影響は限定され、銘柄によっては強い値動きが続きやすいです。
実際に現在の株式市場は、原油高を意識しながらも、恩恵を受ける銘柄を中心に株高基調が続いていますので、流れを把握した上で積極的に利益を狙っていきたいです。
株式情報 相場展望 日本株 2023.09.18
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
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