金利上昇でグロース株が大きく下落するのは何故?プロが根本的な理由を解説!

株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.01.08

峯岸恭一 峯岸恭一

金利上昇(下落)によってグロース株が下落(上昇)したというのを耳にしたことがある人は多いのではないのでしょうか?


金利上昇は債券利回りの上昇により、株式市場全体に影響があるはずなのに何故グロース株が一番影響を受けるのか疑問に思ったことは無いでしょうか?

 

今回はその疑問を解決していこうと思います。

 

勿論、金利上昇による影響は今回ご紹介するもの以外にも様々効果があるため、今回ご紹介する考え方が全てではありませんが、ご参考にしていただければ幸いです。

 

金利上昇によって将来稼ぐ利益の価値が減少する?

 

株価はその企業が将来稼ぐFCF(フリーキャッシュフロー)を現在価値に割り戻した時の総和を利用して算出するという考え方があります。

ここでいうフリーキャッシュフローとは事業で利益を得た後、株主と債権者に自由に配分できるCF(キャッシュフロー)のことです。

 

現在価値に割り戻すというのは、将来のFCFについて現在の価値に計算しなおすということです。

 

例えば、現在1000万円持っているとして、年利1%で預けたとしたら、1年後には1000万円×(1+1%)=1010万円になります。

つまり現在の1000万円が1年後の1010万円と同じであるという考え方ができます。

逆に言えば1年後の1010万円は現在の1000万円ということになります。

 

それでは、この考え方で金利2%の場合はどうなるでしょうか。

1000万円を金利2%で1年間預けたとすると、1000万円×(1+2%)=1020万円になります。

つまり1年後の1020万円は現在の1000万円ということになります。

 

それでは1年後のFCFが1000万円とした時に金利が1%、2%それぞれの場合の現在価値はいくらになるでしょう。



金利1% : 1000万円 / ( 1 + 1% ) ≒ 990万円

金利2% : 1000万円 / ( 1 + 2% ) ≒ 980万円

 

上記から金利が高い程、将来のFCFは小さく評価されるということがあります。

この考え方を用いると同じFCFだとしても1年後のCFより2年後の、2年後のFCFより3年後のCFの方が、小さく評価されることもわかります。

試しに金利が1%の場合の2年後と3年後の1000万円のFCFを現在価値になおしてみます。

 

2年後 : 1000万円 / ( 1 + 1% ) ^2 ≒ 980万円

3年後 : 1000万円 / ( 1 + 1% ) ^3 ≒ 971万円


この将来のFCFの価値は金利が上昇するとさらに目減りしていきます。

n年後の1000万円の現在価値を表にまとめてみました。

 

例として金利を用いて現在価値を計算しましたが、株式の計算をする場合は資金提供者の期待するリターンを用います。

 

株式会社の資金提供者は株主と債権者がおり、各々の期待するリターンの加重平均を用いたWACC(加重平均資本コスト)という値が割引率として使用されることが多いです。

もちろん株式は債権等と比較してリスクが高いため、金利が上昇して債権のリターンが大きくなればWACCも大きくなります。

 

そのため金利が上昇すればWACCが上昇して将来フリーキャッシュフローの現在価値が減少することによって株価が減少します。

 

なぜグロース株の方が金利の影響が大きいのか?

 

金利が株価に影響をあたえるのはわかったけどそれは全ての銘柄一律なんじゃ無いのか?

そう思われたと思います。

それではここから、何故グロース株の方が影響が大きいかということを解説していきます。

 

最初に結論を言ってしまうと「遠い将来のフリーキャッシュフローが大きいから」です。

 

グロース株は「今後、高い成長が見込まれる銘柄」であるため、現在よりも1年後の方が、1年後より2年後の方がFCFが大きいと言えます。

 

ここで具体例を考えてみます。
グロース株は1年後に100のFCFを生み出し、その後1年毎にFCFが倍になるとします。

 

対して成熟企業は毎年612.7のFCFを安定的に生み出すとします。

 

割引率1%の時の5年後までのFCFの総和はグロース株が2974.4、成熟企業2973.7とほとんど同じ値になることがわかります。

 

それでは割引率が2%になった時はどうなるでしょうか?

FCFの総和はグロース株が2855.4、成熟企業が2887.9円となっています。

割引率が1%の時と比較してグロース株は-4%、成熟企業は-3%程変化しています。

つまり、グロース株の減少率が成熟企業と比較して大きいことがわかると思います。

 

割引率が大きくなるほどこの差は顕著になります。

割引率が5%の時は、割引率1%比でグロース株は-11%、成熟企業は-8%となります。

 

 

今回は5年で考えてみましたが、遠い未来になればなるほど影響が大きくなります。

現在価値を求める際の計算式で、割引率に指数として年数がかかるためです。

参考までに各割引率のときのn年後のFCF100の現在価値を以下の表にまとめてみました。

 

 

金利の影響を踏まえてポートフォリオを形成しよう!

 

 

金利が株価にどのように影響をあたえるかご理解いただけましたでしょうか。

もちろん、冒頭にも記載しましたがこれ以外の影響もあるため、あくまで一因としてとらえていただけると幸いです。

 

今回ご説明した通り、グロース株は金利の影響を大きく受ける傾向にあります。

そのため、資産運用をする際にグロース株に偏ってポートフォリオを形成すると金利の上下に成績が左右されてしまいます。

 

金利リスクを許容するのであれば問題ありませんが、低リスク運用を考えている方は注意した方が良いでしょう。

 

みなさまのポートフォリオ形成の一助になれば幸いです。

株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.01.08

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峯岸恭一

この記事を書いた人

峯岸恭一

日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)

総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。

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