“幻のSQ”をつけた後の日経平均はどう動く?過去のデータを徹底検証!

株式情報 投資戦略 日本株 2024.01.19

石塚 由奈 石塚 由奈

先物やオプションのSQ(特別清算指数)算出日に、日経平均株価がSQ値にタッチしない現象を、市場では幻のSQと呼ぶことがあります。

 

幻のSQをつけると、SQ値が下値抵抗帯や上値抵抗帯になるとも言われています。

 

メディアなどでは、「幻のSQをつけたから翌週の相場は強い、弱い」などと取り上げられることが多いのですが、このアノマリーは本当に機能しているのでしょうか?

 

本記事では、過去のデータを元に、幻のSQをつけた後の日経平均株価の動きを検証していきます。

 

幻のSQとは?SQ値に日経平均が届かないのは何故?

 

日本市場では、オプションのSQ(特別清算指数)算出が毎月第2金曜日に、先物のSQ算出は3、6、9、12月の第2金曜日に行われます。

 

指数のSQ算出に用いられるのは、各指数に採用されている銘柄が始値をつけたときの価格です。

 

採用銘柄が、特別買い気配や特別売り気配で寄り付かない場合には、寄り付くのを待ってからSQ値が計算されます。

 

一方、日経平均株価は、寄り付かない銘柄がある場合には気配値を使って算出されるため、SQ値と乖離が生まれることがあります。

 

場合によっては、SQ算出日の取引時間中に日経平均株価が一度もSQ値に届かないこともあり、この現象を「幻のSQ」と呼びます。

 

日経平均株価よりもSQ値が高くなり、一度も日経平均株価がSQ値に届かなかった場合を「上に幻のSQとなった」、日経平均株価よりもSQ値が低くなり、一度も日経平均株価がSQ値まで下がらなかった場合を「下に幻のSQとなった」と表現するのが一般的です。

 

その上で、上に幻のSQとなった翌週は相場が弱く、下に幻のSQとなった翌週は相場が強く推移しやすいとされています。

 

幻のSQをつけた翌週の日経平均の動きはどうなる?

 

ここからは幻のSQにまつわるアノマリーが機能しているのかを探るために、実際のデータを検証していきます。

今回は2014年1月から2023年12月まで過去10年間のデータを用いました。

 

この期間中にSQ値が幻となったのは全部で36回あり、そのうち上に幻のSQが23回、下に幻のSQが13回ありました。

 

≪過去10年間につけた”上に幻のSQ”一覧≫

 

≪過去10年間につけた”下に幻のSQ”一覧≫

 

「上に幻のSQをつけた翌週の日経平均は弱い」は本当?

 

SQ値が幻となった場合とそうならなかった場合で、その後の日経平均株価の動きに違いが観察されているかを見ていきます。

 

最初に、SQ値が幻とならなかった場合の値動きを確認しておきましょう。

 

SQ算出日の終値から5営業日後の終値までの騰落率が何%になったかを算出し、どのくらいの騰落率に収まる比率が高いのかをグラフ化しています。

 

 

SQ値が幻とならなかった場合、その5営業日後までの日経平均株価の騰落率は、0%近辺となった比率が最も高くなっています。

 

また、プラス圏に収まる比率は、マイナスになる比率よりも高かったことが分かります。

 

データをとった期間の日経平均株価が右肩上がりで推移していたことを考えると、自然な結果です。

 

次に、SQ値が上に幻となった場合、5営業日後の日経平均株価の騰落率はどの程度になる比率が高かったかを見ていきましょう。

 

 

先ほどのグラフと比較すると明らかに0%近辺となる比率が低く、-1%から-2%程度のまとまった下落を見せた比率が25%を超え、高かったことが分かります。

 

一方で、1~3%程度のまとまった上昇を見せる比率もそれなりに高く、上に幻のSQが出たからといって、必ずしも日経平均株価が弱くなるわけではないと言えます。

 

幻のSQをつけるような局面では、指数のボラティリティが高まっていて、SQ通過後も値動きの荒さが残ると考えられます。

 

続いて、下に幻のSQが出た後の日経平均株価の動きを見てみましょう。

 

「下に幻のSQが出た場合、翌週の相場は強い」と言われますが、必ずしも強いわけではなく、むしろ5営業日後の日経平均株価がマイナスになる比率が、SQ値が幻とならなかった場合よりも高くなっています。

 

下に幻のSQが出る場合には、市場が弱気に傾くような材料があるケースが多く、SQ通過で一時的に売り一巡感が出ても、再度売りに押されてしまうことが多いようです。

 

SQ値が幻になるときは相場環境がやや不安定!

 

ここまで、幻のSQをつけた後の日経平均株価の値動きを検証してきました。

 

結果として、よく言われる幻のSQが出た後の相場は強い、もしくは弱いといったアノマリー通りの値動きは確認できませんでした。

 

ただし、幻のSQが出た後の相場の特徴として、値動きが普段よりも不安定になっていることは確かだと思います。

 

ボラティリティが高まっている相場は、チャンスでもありますが、腰を据えて銘柄を買うにはやや心許ないです。

 

ニュースなどで「幻のSQになった」と目にしたら、普段より少し慎重になって、しっかりと押し目を待っての買いを意識すると、失敗を避けられるかと思います。

株式情報 投資戦略 日本株 2024.01.19

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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