【問題先送り?】政府機関の閉鎖リスクは燻る
世界情勢 マーケットニュース 2023.10.04
米国では新たな会計年度の政府予算案をめぐる協議が野党・共和党内の対立などで難航していました。
しかしながら、党内の一部保守派が反対していたウクライナ支援の予算を除外した11月半ばまでの「つなぎ予算」の修正案が下院に続いて上院でも賛成多数で可決され、政府機関の一部が閉鎖される事態は寸前で回避されました。
ただし、つなぎ予算による予算の執行は11月17日までとなるため、それまでに新たな会計年度の予算を成立させるか、つなぎ予算を再び成立させるかが必要となります。
今回の「つなぎ予算」可決により、米国は一時的に政府閉鎖の可能性はなくなりましたが、
今後、米国議会では11月17日までに、政府の様々な機能に資金を提供する12の歳出法案を可決する必要があります。
今後の道のりはいまだに不透明であり、仮に正式な予算の成立が遅れた場合、11月中旬頃に再度政府機関の閉鎖リスクが高まるため、危機はいまだに過ぎ去っていないと見られます。
目次
政府機関が閉鎖するとどんな影響があるのか
仮に米国で政府期間が閉鎖となれば、その期間中は約130万人の現役軍人や、200万人の連邦政府職員が給与を受け取れない事態となります。また、金融監督から国立公園のゴミ回収に至るまで、さまざまな公共サービスがストップします。
しかしながら、国家の運営に必要不可欠な業務を担当する職員はそれでも勤務を続けることになります。
経済面では、その間米国のGDPの約20%を占める政府支出がストップすることで短期的にGDP成長率が押し下げられることや、連邦政府職員の一時帰休が、雇用市場に対してネガティブな要因となります。
仮に政府機関が閉鎖した場合、1週間でGDPは0.1%~0.2%程度下押しされるとの見方があります。
政府機関の閉鎖と金融市場の動向
政府機関の閉鎖は政治に対するネガティブなニュースが消費者心理や金融市場に悪影響を及ぼすことを介して、経済への不確実性を高める要因にもなります。
加えて、雇用統計やCPIといった米国の経済指標発表が遅延したり、政府機関閉鎖中にデータ収集が行われないことによって、経済指標のノイズが増える可能性もあるため、政府機関の閉鎖は金融市場にネガティブな影響があります。
政府機関は、1981年以降では14回の閉鎖があり、期間は1日から35日間までと振れ幅があります。
また、直近の事例を確認すると、トランプ政権時の2018年1月20~21日の2日間、2018年12月22日~2019年1月25日の35日間で政府機関の閉鎖が起こりました。
この間の米国ダウ工業株30種平均及び日経平均株価の変化率を見てみると、
2018年1月20~21日:ダウ工業株30種平均+5.8%、日経平均株価+1.5%
2018年12月22日~2019年1月25日:ダウ工業株30種平均-2.1%、日経平均株価-7.1%
となっており、過去の推移から短期間の閉鎖は株式市場にさほど影響はないものの、長期間にわたる閉鎖は株式市場にマイナスの影響をもたらすことがわかります。
つなぎ予算は問題の先送り?
下院共和党内の保守強硬派は、単なるつなぎ予算に反対しており、不法移民対策のため法案を追加するよう要求しています。
しかし、この要求は民主党やバイデン大統領にとって受け入れ難いものであり、上院では可決できない可能性がありました。
結果的に、保守強硬派が反対するウクライナ支援は除外する一方で、彼らが要求する不法移民対策や大幅な歳出削減も見送った形となっています。
ここからも分かる通り、政府閉鎖は寸前で回避されましたが、つなぎ予算で一時的にしのいだだけで、両党間で争点となっている課題や問題は何も解決していないという見方もあります。
つまり、根本的な解決の糸口が見えていないことから、次の予算成立に係るリスクを増幅していると考えられます。
政府閉鎖が金融市場にもたらす影響で重要な点
政府機関の閉鎖は金融市場にネガティブな影響をもたらすと考えられますが、そのリスクを過度に懸念する必要はないと言えます。
過去の政府閉鎖時の指数推移から、短期間の閉鎖は株式市場にさほど影響はないものの、長期間にわたる閉鎖は株式市場にマイナスの影響をもたらすことが確認できます。
過去の例では短期間での影響は少なく、長引くほど株式市場にマイナスな影響があるため、今回再度閉鎖となった場合も、その期間に注目していきましょう。
世界情勢 マーケットニュース 2023.10.04
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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