【企業のインフレ対策】株式市場で注目される「価格転嫁」とは?
マーケットニュース 国内情勢 2023.11.18
インフレでどんどん物価が上がっていく中、安定的に利益を出すために必要不可欠な「価格転嫁」をご存じでしょうか?実は既に多くの企業がおこなっています。今回はそんな「価格転嫁」について書いていこうと思います。
目次
価格転嫁とは?
インフレや原材料高騰などの外部要因によるコスト上昇を販売・サービス価格に反映させることを価格転嫁と言います。
例えば、牛丼一杯作るのに今までは100円で作れていましたが、原材料費が高騰して一杯110円になってしまった時に販売価格にも10円を上乗せすることを言います。
インフレーション下ではコストの増加は避けられないため、適切に価格転嫁をしていくことが企業の経営には重要です。
しかし、価格転嫁を適切に行えなければ、コストの上昇を吸収できずに利益が減少したり、需要低下が起きる可能性もあります。
また、価格転嫁は顧客依存度が高い企業、つまりひとつの取引先に売上を依存している企業では価格決定権を持っていないことが多く価格転嫁が進まない可能性が高いです。
逆に言うと新規顧客の顧客依存度の低い企業は積極的に価格転嫁を行うことができるため、競争力を維持しやすく、顧客に対して適切な価格で商品やサービスを提供することができます。
価格転嫁は一般的になりつつある?
実はここ1年でかなりの企業が価格転嫁を進めていることはご存じですか?
以下の表を見てください。
上記はEDINET(企業が電子的に財務状況を提供するシステム)で「価格転嫁」を含む文書を各期間に区切って検索したものです。
22年9月2日〜23年9月1日の件数が極端に多いのがわかりますね。
インフレが順調に進んでいる影響もあると思いますが、日本製鉄の影響が大きいと見ています。
実は22年9月にトヨタと新日鉄が車用の鋼材を上期よりも1トン当たり約4万円の引き上げを行いました。
原料炭や鉄鉱石などの原材料価格の上昇に対する価格転嫁なのですが、この上昇幅は10年度以降最大となっており、大きなインパクトを市場に与えました。
日本製鉄という大企業が先陣を切ったことで、その他の部材メーカーなども進んで価格転嫁を行ったと見ています。
価格転嫁は市場に影響に影響を与えるの?
インフレーション下では価格転嫁ができる、できないによって業績がニ極化していくと見ています。
価格転嫁できない企業は、外部要因でコストが上昇した場合、製品やサービスの質を維持することが難しく利益を出すことが難しくなります。
逆に、価格転嫁が出来る企業では外部要因でコスト上昇が起こった場合でも対応しやすく、安定的に利益をあげることが出来ます。
また、価格転嫁ができれば需要の変動などにも柔軟に対応できる可能性があり、競争力の維持・向上に繋がります。
価格転嫁が適切に出来ている企業は安定的な利益と強い競争力を持つ可能性が高いため、投資目線で見ても魅力的な企業と言えるでしょう。
是非投資する際は、企業が適切に価格転嫁を行えているかも、確認してみてください。
マーケットニュース 国内情勢 2023.11.18
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。
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