TOBされると株価はどうなる?発表後の値動きを徹底解説!!

株式情報 投資戦略 日本株 2023.12.04

石塚 由奈 石塚 由奈

11月10日にベネッセホールディングスがTOB(株式公開買い付け)によるMBO(マネジメント・バイ・アウト)を発表。

 

11月24日には、大正製薬ホールディングスがTOBを発表し、日本では最大のMBOとして市場の注目を浴びました。

 

両銘柄ともに、TOB発表後の株価が、公開買い付けを行う価格(TOB価格)を上回る場面が見られています。

 

TOB価格以上に株価が上昇しているのは、いったい何故なのでしょうか?

 

本記事ではTOBされた会社の株価はどうなるのか、保有していたらどうすればいいかを解説します。

 

TOB(株式公開買い付け)ってそもそも何のこと?

 

まず、TOBとはいったい何かを整理しておきましょう。

 

TOBとは、「Take Over Bid」の略で、日本語では株式公開買い付けを意味します。

 

ある企業の株を、「いくらで、何株、いつまでに買うから、売ってくれる人はいませんか?」と公式に呼びかけ、取引市場の外で買い付ける行為を指します。

 

TOBは、大量の株式を買い付けたい場合、一般的には多くの株式を保有してその会社の経営に関与したい場合に行われます。

 

ちなみに、金融商品取引法では、買い付け後の当該株式の保有割合が発行済み株式総数の3分の1を超える場合には、TOBによって買い付けなければならないと定められています。

 

一緒によく聞く「MBO(経営陣による買収)」との違いとは

 

 

では、MBOとは何かといいますと、「Management Buy Out」の略で、経営陣による買収のことです。

 

経営陣が、株主に配慮して上場を続けるよりも、コストを限定して経営を立て直したいと考えた場合などに行われます。

 

上場企業の経営陣がMBOを行う際には、市場に出回っている大量の株式を買い付ける必要がありますから、TOBという「手段」が用いられるわけです。

 

MBOは「目的」であって、TOBはそのための「手段」と覚えておくと分かりやすいと思います。

 

「TOB価格」と「発表後の株価」との差に注目!!

 

 

基本的に、TOBが発表された銘柄の株価は、公開買い付けを行う価格(TOB価格)に鞘寄せて推移します。

 

ある価格で買いたいという呼びかけが公式にあったわけですから、当該価格よりも少しでも安い価格で買うことができれば儲かると考えて、買う人が出てくるのです。

 

しかし、実際にTOB発表後の銘柄の動きを確認すると、株価がTOB価格を上回ったり、下回って推移する場面が見られます。

 

いったい何が起きているのか、それぞれのケースを見ていきましょう。

 

TOB価格よりも株価が大きく上がるのはなぜ?

 

 

まずは、TOB価格を上回って株価が上昇するケースです。

 

このケースでは、株主がTOB価格に納得せずに、価格が引き上がる可能性が意識されていると考えられます。

 

TOBが発表された段階では、「いくらで、何株、いつまでに買うから、売ってくれる人はいませんか?」と公式に呼びかけただけですので、それに株主が応じるかどうかは不透明です。

 

そのため、株主が価格に納得せず、TOBを行おうとする側が、より高いTOB価格を提示する可能性があるのです。

 

また、割安な価格でTOBが成立しそうであれば、「より高い価格を出すから自分たちに買収させてくれ」と他の企業やファンドなどが名乗りを上げる可能性もあります。

 

逆に、TOB価格まで株価が届かないのはなぜ?

 

 

逆にTOB価格より市場での株価の方が安くなるのは、TOBが何らかの理由で成立しない可能性があると考えている人が多いからだと思われます。

 

例えば、経営陣が同意していないTOBでは、経営陣は買収されないように策を練ることになります。

 

TOBを狙う側と既存の株主との間で、様々な攻防戦が繰り広げられた後、最終的にはTOBが成立せずに、株価が下落してしまう可能性があるため注意が必要です。

 

他にも、大企業では、独占禁止法の審査に通らずにTOBが中止になるリスクが意識されることがあります。

 

さらに、後述の全株を取得しないケースや、TOBが実際に行われるまでに期間が空いているケースでも、市場での価格がTOB価格を下回って推移しやすいです。

 

TOB後の株価はどう動く?いつ売ればいいの?

 

 

これまで見てきたように、一口にTOBと言っても、様々なパターンが存在します。

 

とはいえ、現在の日本では、会社の経営陣が賛同していて、そのまま成立するTOBが多数を占めています。

 

この場合、TOBが発表されると、株価はTOB価格に向けて上昇し、それよりも若干安い水準での取引が続くことが多いです。

 

若干安い水準になるのは、TOBが実際に行われるまでに期間が空いていて待たなければいけない分、割安になっているからだと考えられます。

 

その後、定められた公開買い付けの期間中は、TOB価格近辺での株価の推移が続き、期間が終了すると上場廃止となるケースが一般的です。

 

TOBに応募しないとどうなる?上場廃止に!?

 

 

保有株のTOBが成立したら、TOB期間が終わる前に市場で売却してしまうのが無難です。

 

何故なら、TOBに応募するには、当該TOBの公開買い付け代理人となった証券会社の口座に保有株を移す必要があるからです。

 

当該証券会社の口座が無ければ開設を行い、公開買い付けが始まるまで待ってから、応募するとなると、手間がかかりますよね。

 

ちなみに、応募も市場での売却もせずそのままにしていても、全株を取得するTOBが成立していれば、最終的には買収側によって株式が取得されます。

 

しかし、現金になるまでに時間がかかったり、確定申告が必要になったりと、やはり余分な手続きが発生します。

 

時間と手間を考慮すると、市場で値が固まったところで売却してしまうのが楽だと思われます。

 

全株を取得しないTOBでは、売却しないと株価下落のリスクも

 

 

さらに、全株を取得せず、上場廃止とならないケースに注意が必要です。

 

保有株比率を高めて子会社や関係会社とする目的で行うTOBでは、市場に出回っている株を全部買わずに、公開買い付けが終わっても上場が維持されることがあります。

 

この場合には、株を持ち続けることができますが、TOB期間が終わると、TOBの発表でせっかく上昇した株価が元の水準に戻ってしまいやすいです。

 

例えば、2023年8月2日には、【3962】チェンジホールディングスが、【6050】イー・ガーディアンに対して、連結子会社化を目的に、1株3,000円で希釈化後の所有割合を36.86%とするTOBを行うと発表しています。

 

これを受けて、イー・ガーディアンの株価は上昇しましたが、10月2日までの公開買い付け期間が終わると急落しています。

 

【6050】イー・ガーディアン 日足チャート (2023年6月1日~12月4日)

 

売り一巡後の株価も、好材料出尽くし感から低迷が続きやすいため、TOB期間中にいったん売って様子を見た方が良いと考えられます。

 

TOBの価格や期間、市場での値動きを参考に判断しよう!

 

保有株に対するTOBが発表されたときには、TOB価格と買い付けの期間、全株が取得されるかどうか、経営陣がTOBに同意しているかどうかの4点を確認しましょう。

 

こうした情報は、企業の開示資料やニュースなどで簡単に確認が可能です。

 

その上で、当該銘柄の株価を見ていくのが良いと思います。

 

TOB価格との乖離が小さく、経営陣がTOBに同意している場合には、それ以上株価が上昇する可能性は低いため、そのまま市場で売却するのが良いでしょう。

 

株価とTOB価格とに大きく乖離がある場合には、市場が何らかの思惑を織り込んでいると考えられるため、TOBを行う側の主体と対象となる企業を取り巻く環境について、調べる余地があります。

 

とはいえ、TOBが成立するか否かの先行きを読むのは困難な面がありますから、個人投資家としては、固執せずにいったん利益を確定してしまうのも手です。

 

保有株に対するTOBが発表された際には、是非参考にしていただければと思います。

株式情報 投資戦略 日本株 2023.12.04

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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