2024年、インバウンド銘柄の見通しは?本命はインバウンド×DX銘柄!

株式情報 マーケットニュース 国内情勢 日本株 2023.11.19

石塚 由奈 石塚 由奈

新型コロナ感染拡大後のリオープンから時間が経ち、インバウンドやリオープンで好調だった企業の業績や株価に、失速傾向が見られています。

 

そのため、結局ただの特需だったのか、企業自体に成長性があるのか、こうした銘柄の再評価を行う必要があります。

 

そこで、決算発表と市場の反応を手掛かりに、失速感が見られる銘柄と成長を継続している銘柄について、どんな傾向があるのかを分析しました。

 

同じインバウンド銘柄でも市場の評価には大きな差が…!

 

今回は、以下のような条件に当てはまるインバウンドに関連した銘柄を対象に、現在どのような状況にあるのかを分析しました。

 

・経済活動再開が業績に影響しているとみられる

・2023年10月24日から11月14日までに決算を発表

・時価総額100億円以上

・出来高が一定以上

 

経済活動再開が業績に影響している銘柄の抽出には、金融庁の情報開示システムであるEDINETを使用しています。

 

具体的には、経済活動再開、リオープン、インバウンドといった単語を、EDINETで開示している資料に記載している企業を絞り込みました。

 

こうした条件に合致し、決算発表日の終値から翌営業日の終値までの上昇率が大きかった銘柄をまとめたのが以下の表です。

 

※増資など特殊要因があった銘柄は除外しています。

 

逆に、決算発表日の終値から翌営業日の終値までの上昇率が大きかった銘柄は、以下のようになりました。

 

※TOBなど特殊要因があった銘柄は除外しています。

 

同じ旅行関連でも【7048】ベルトラは大きく上昇、【6030】アドベンチャーは大きく下落しています。

 

>>2024年に注目の値上がり期待銘柄はどんな銘柄?

 

業績、株価が失速しているインバウンド関連銘柄の特徴は?

 

いったい、何が違うのか、まずは値下がり銘柄から要因を分析していきます。

 

インバウンドは好調でも、日本国内の消費減速が重荷に…。

 

まず、国内格安航空券予約サイト「スカイチケット」を運営している【6030】アドベンチャーから見ていきます。

 

この会社は、リオープンによる飛行機の予約増加を追い風に、収益を回復させてきました。

 

しかし、国内航空券の取扱高が、夏休みのあった7月をピークに伸び悩み始めています。

 

昨年9月の取扱高が44億7,700万円だったのに対して、今年9月の取扱高は43億6,700万円と前年の同じ月と比べて減少に転じてしまっているのです。

 

これは、日本国内の物価高による個人消費減速が要因だとみられ、このまま収益が伸び悩む可能性も懸念されます。

 

市場でも、警戒感が広がっているようで、アドベンチャーの株価は急調整しています。

 

テクニカル面でも下降トレンドを形成しており、目先は下値でのもみ合いが続きやすいと考えられます。

 

【6030】アドベンチャー 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

個人消費の減速という点では、値下がり率が7位となった【7686】カクヤスグループも影響を受けています。

 

この会社は、「なんでも酒やカクヤス」を展開し、個人や飲食店向けにお酒などの宅配も行っています。

 

リオープンによって酒類の販売が拡大しましたが、直近の月次売上高には失速傾向が見られています。

 

家庭向けの売上高が9月以降前年同月比でほぼ横ばいの水準まで失速し、飲食向けの伸び率も鈍化傾向にあるのです。

 

久しぶりの旅行を済ませ、物価高で買い控えを始めている個人の消費動向が垣間見えます。

 

カクヤスの株価チャートを見ても、上昇トレンドが崩れて、調整局面を迎えています。

 

【7686】カクヤスグループ 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

いったんの頭打ちと考えて、下げ止まりを待ちたい場面です。

 

中国人による日本製品の買い控えは想定よりも厳しい

 

国内消費の減速とは異なる要因で、厳しい業績・評価となったのは【4911】資生堂です。

 

同社は、「中国における原発処理水の海洋放出後の日本製品買い控え」を要因に、23年12月期通期の業績予想を下方修正。

 

米化粧品大手であるエスティローダーも、11月1日に下方修正を行っていることから、中国消費がかなり厳しいとの見方ができます。

 

資生堂の株価は下値模索を続けており、現時点で底入れは見えません。

 

【4911】資生堂 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

ランキングには入っていませんが、他にも【2267】ヤクルト本社などが、中国の景気減速、日本製品の買い控えの影響を受けています。

 

同社は中国事業下振れを要因に、24年3月期の業績予想を下方修正し、市場で嫌気される場面が見られました。

 

中国人による爆買いに期待ができないのは、インバウンド関連銘柄にとっては痛手です。

 

影響がどの程度長引くか、慎重に見守る必要があります。

 

業績、株価が好調なインバウンド関連銘柄の特徴は?

 

ここからは、好決算を発表し、好感されている銘柄の特徴を見ていきます。

 

「都市圏の安いホテル」が値上げで好調!

 

最初に取り上げるのは、コンフォートホテル、グリーンズなどのホテルを全国展開している【6547】グリーンズです。

 

同社は、客室の稼働率や単価上昇を主な要因に、24年6月期第1四半期の営業利益が前年同期比2.3倍の16億円になったと発表しています。

 

さらに、ホテル関連では、ココホテルズ、ベストウエスタンホテルなどを展開する【3010】ポラリスホールディングスも決算発表を受けて急伸しています。

 

足元の業績が好調なホテル関連の銘柄には、実は共通点が見られています。

 

東京や大阪などの大都市圏を中心に比較的宿泊料金が安いビジネスホテルを運営している会社が特に好調なのです。

 

インバウンドと国内の需要回復が重なって、都市圏を中心にホテルの空室率が下がり、追い風となっています。

 

また、物価高で世界的に節約意識が高まっているため、高級ホテルよりも、安いビジネスホテルの方が、より恩恵を受けているようです。

 

今年に入ってから、モエヘネシー・ルイヴィトンや、エルメス・インターナショナルなどの高級ブランド株が大きく下落するなど、リオープン時に広がった高級品消費の流れが止まっているせいもあるでしょう。

 

株価の面では、【6547】グリーンズが決算を受けて年初来高値を更新する場面も見られており、株高基調を継続する期待ができます。

 

【6547】グリーンズ 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

一方のポラリスは、決算発表を受けても高値を更新できていないため、好材料出尽くし感が強まる可能性に注意が必要です。

 

【3010】ポラリスホールディングス 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

>>業績や将来性に期待できる銘柄情報が知りたいなら!

 

インバウンド×DX!移動をテクノロジーで便利にする銘柄が成長へ

 

コロナ前と比べて、インバウンド客の需要が変化するなか、業績が好調に推移しているのが【7048】ベルトラです。

 

ベルトラは、海外・国内の現地体験型オプショナルツアー専門の予約サイトを運営している企業です。

 

この会社は、23年12月期7-9月の決算が、約4年ぶりに黒字となり、好感されています。

 

ただし、日本から海外への旅行者数の回復は鈍化傾向にあり、国内旅行事業も想定を下振れてしまっています。

 

そうした中でも、日本の主要交通機関、観光施設と、海外の旅行販売業者を結び、日本国内での移動や観光をQRコード1つでできるようにする「リンクティビティ」というサービスが急成長しているんです。

 

ベルトラの株価は、安値圏から急伸する場面も見られており、戻り待ちの売りをこなしながら上昇トレンドに戻していく期待ができそうです。

【7048】ベルトラ 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

同じように、移動を便利にするという発想では、モバイルバッテリーシェアリングサービス「Chatge SPOT」の運営などを手掛ける【9338】INFORICHも好調です。

 

これは、スマホの充電がないときに、駅やコンビニで簡単に充電器を借りることができ、充電が終わったら、他のコンビニなどに返却ができるサービスです。

 

現在は月間レンタル数が右肩上がりに増えており、23年12月期の売上高は、前期比で72.3%増加する見通しです。

 

株価は年初来高値での推移となっていて、割高感も強まっていますが、深押ししたタイミングでは買いを狙っても妙味がありそうです。

 

【9338】INFORITH 日足チャート (2023年4月27日~11月16日)

 

成長を続ける有望インバウンド株に投資を!

 

本記事では、リオープンから時間が経ったことで、業績、株価が停滞してしまいそうな銘柄と、それでも成長が続く期待のできる銘柄をご紹介してきました。

 

振り返りますと、

 

・国内の個人消費は、インフレの影響を受けて伸び悩んでいる

 

・もともとの料金が比較的安いサービスは需要の高まりで広く値上げができて好調

 

・移動に絡んだデジタルサービスを手掛ける企業の需要が拡大している

 

といったことが分かったかと思います。

 

是非、各銘柄をどう売買していくか、どの銘柄を買い付けるかを考える参考にしていただければと思います。

株式情報 マーケットニュース 国内情勢 日本株 2023.11.19

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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