日本製鉄はUSスチール買収でどう変わる?3つの懸念点を解説!

株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.01.04

江口 裕臣 江口 裕臣

今回の記事では、大きな話題となった【5401】日本製鉄によるUSスチールの買収について解説します。

さらに、日本製鉄のにも触れ、詳しくご紹介いたしますので、ぜひ最後までお読みください。

 

【5401】日本製鉄ってどんな会社?

 

日本製鉄は東証プライム市場に上場しており、時価総額2兆9,983億円で日経225にも採用されている企業です。

粗鋼生産量では国内首位であり、世界でも生産量4位を誇る大手企業で、高級鋼板が特徴です。

 

日本製鉄が2023年12月18日、アメリカの鉄鋼大手であるUSスチールを約2兆円で買収すると発表しました。

国内需要の減少に対応し、世界での覇権を握るための大胆な一手と言えます。

 

この統合は、100年以上の歴史を誇る両国の主力鉄鋼会社同士の統合であり、株式市場にも大きな影響を与えています。

しかし、発表後の日本製鉄の株価は急落し、株式市場は厳しい反応を示しています。

 

それは、3つの懸念点が存在するからです。

 

懸念点とは?

 

━懸念点① 割高な買収

 

日本製鉄が提案した買収価格は、USスチールの1株を55ドルで買収するもので、これは発表前の株価よりも約40%も高いプレミアムです。

しかし、USスチールが身売りを検討していた8月時点では、提案段階で20~30ドル程度であった可能性が高いのです。

 

つまり、日本製鉄は高値での買収に踏み切ったことが割高な買収ではないかという警戒感につながり、財務面への懸念を引き起こしました。

 

━懸念点② 財務への懸念

 

約2兆円の買収には、日本製鉄の時価総額の3分の2に相当する大きな金額がかかります。

この資金は主要取引銀行からの融資に依存しており、DEレシオ(負債資本倍率)が0.9倍まで上昇する見込みです。

 

DEレシオが1倍を超えると借金が多いと見なされがちですが、業種や状況によっては異なります。

ただし、日本製鉄は今後資金調達手段を検討し、「増資」の可能性があることを示唆しており、これが株価の下落要因の一つとなっています。

 

━懸念点③ USスチールの業績低迷

 

USスチールは企業規模は大きいものの、業績は長らく低迷しています。

2021年以降は黒字を維持していますが、その前の10年間は7年間が最終赤字となっています。

 

また労働組合の経営への関与もあり、労働組合とUSスチール側の対立も懸念材料とされています。

 

買収と日本製鉄の今後

 

なぜ日本製鉄がこれほどの懸念材料を抱えつつ、USスチールの買収に踏み切ったのでしょうか?

その背景には、国内の鉄鋼需要が減少していることが挙げられます。

 

日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を目指し、海外での成長投資に力を入れています。

国内市場での需要減少に対処するためには、海外での事業拡大が必要とされていることが買収の背景にはあったと見ています。

 

そして、日本製鉄は買収を通じて粗鋼生産能力を8,600万トンまで拡充しました。

ただし、これが収益性にどう影響するかは現時点では不透明であり、中長期の視点が求められます。

 

EVシフトや成長市場での生産能力の拡大は戦略的に重要ですが、経営力が問われる年に入っていくでしょう。

 

まとめ

 

アメリカを代表するUSスチールの買収が株価には嫌気された要因は3つ。

割高な買収・財務への懸念・USスチールの業績低迷が懸念材料として株価に悪影響を与えたと言えます。

 

ただ、EVシフトの潮流によって下げ切った価格帯には妙味が出始めており、株式市場は期待や不安を先取りする傾向があり、不安材料を織り込んだタイミングは押し目とも言えます。

 

短期的なリスクがある一方で、中長期の視点で見れば投資の魅力もあると言えるでしょう。

今回の記事はここまでとなります。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.01.04

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この記事を書いた人

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 アナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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