【高値更新!】日経平均株価の上昇要因は?いったいどこまで上がる?

株式情報 投資戦略 相場展望 特集 2024.01.15

石塚 由奈 石塚 由奈

2024年に入ってからの日本株市場は大きく上昇し、日経平均株価はバブル後高値を更新。

 

ハイスピードな上昇を見せたので、いったいなぜ?そんなに景気が良いの?と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では、なぜ今このタイミングで日経平均株価が高値を更新したのか、アナリストが分かりやすく解説していきます。

 

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日経平均株価はバブル後最高値更新!なぜ上がっている?

 

まず、改めて日経平均株価の長期チャートを見ておきましょう。

 

(日経平均株価 3ヵ月足チャート 1970年~2024年)

 

日経平均株価は、バブル崩壊後、アベノミクスが始まるまで高値を切り下げる下降トレンドを形成してきました。

 

景気がなかなか良くならずにデフレが続き、日本経済は良くならないという悲観が広がった時代でもあります。

 

リーマンショックによる海外景気の低迷にも、大きく影響を受けました。

 

しかし、第2次安倍内閣が2013年から推進したアベノミクスの効果もあって、日本経済は徐々に活気を取り戻しました。

 

もちろん、企業がより良い商品、サービスをグローバルに展開する努力をし、収益を拡大させたことも、日本株の価値を高めています。

 

ただ、節目の3万円台が定着し、買いが加速したのは2023年の中頃からです。

 

そこでここからは、2023年以降の日本株を取り巻く環境がどう変化し、なぜ株価が上昇したのかを考えていきます。

 

新NISAの開始と東証による企業への呼びかけが株価を下支え

 

株高を支えた日本独自の要因として見逃せないのが、新NISAの開始と、東証による企業への株価や資本コストを意識した経営の要請です。

 

日銀が公表している資金循環統計によれば、2023年9月末時点の個人の金融資産は約2,121兆円で、うち半分を超える約1,113兆円は現預金として保有されています。

 

2024年1月からの新NISAの開始は、昨年から金融機関が盛んにプロモーションを行い、メディアでも報じられていました。

 

実際に年明けから新たに投資を始めた人や、新NISAの開始を待って新しい銘柄を仕込んだ人も一定数いると考えらえます。

 

>>新NISAで仕込みたい銘柄は??

 

さらには、新NISAの開始は海外の投資家にとっても周知の事実ですから、日本人の投資に対する姿勢が変化するとの思惑から、日本株の先行きをポジティブに考える海外投資家も増えたとみられます。

 

 

東証による企業への株価や資本コストを意識した経営の要請は、2023年から本格的に行われました。

 

株価が割安に放置されてしまうのは、企業にも責任があるとして、配当や自社株買いなどの株主への還元を強化したり、成長戦略を投資家にきちんと開示したりする必要性を訴えかけたのです。

 

これを受けて、実際に増配を発表する企業が増加し、上場企業の2024年3月期の配当総額は過去最高となる見通しです。

 

このような貯蓄から投資へのシフト、企業の株価に対する意識の変化は、日本株市場でこれまでには見られなかったものですから、幅広い投資家に好感されたとみられます。

 

中国株からの資金シフトが加速!?円安も株高要因に

 

(日経平均株価と上海総合指数 2023年1月5日~2024年1月12日)

 

次に注目したいのが、隣国である中国の動きです。

 

中国は現在、不動産バブルの崩壊で、主要国のなかで唯一物価が上がらないデフレとなっています。

 

習近平国家主席が異例の3期目を迎えており、政策の方針が見極めにくいこともあって、海外の企業が中国でビジネスを行うメリットが減少しているのです。

 

過去に行われた「一人っ子政策」の反動もあって、人口が減少局面を迎え、中国の景気は長期間停滞が続くとみられています。

 

こうした見通しを受けて、アジアの生産拠点として、中国ではなく日本を選ぶグローバル企業が増加するとの期待が高まっています。

 

株式に投資する場合にも、どうなるか分からない中国よりも日本の方が良いと思う投資家が増えており、中国株から流出した資金が日本株に流れ込んでいるとみられています。

 

為替が円安方向にあるため、海外から見て、日本の資産が安くて魅力的に見えるという事情もあるでしょう。

 

AIの普及で企業の生産性が高まるとの期待も!

 

思えば2019年まで、日本はデジタル化で世界に大きな遅れを取っていると言われていました。

 

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、企業も個人もデジタルに対応せざるを得なくなりました。

 

これによって、デジタルを活用した新たな社会インフラやサービスが普及する下地ができたと考えられます。

 

加えて、2022年11月末には「Open AI」が「Chat GPT」をリリースし、生成AIなどの活用によって生産性が高まるとの期待が広がっています。

 

>>注目の生成AI関連銘柄はどんなもの?

 

落ち込んでいた半導体関連の需要がちょうど底入れの兆しを見せているところに、生成AIの普及による需要の拡大が重なり、世界で活躍する日本の半導体関連企業の業績も良くなると期待されています。

 

半導体の需要は、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年に、リモートワークを行う人が増加するなどして、パソコンやスマホの販売が好調となったため、急拡大しました。

 

その反動で、2022年は落ち込んでいたのですが、ここにきて底入れしつつあります。

 

半導体関連株は日経平均株価に対する影響度も大きいため、指数を押し上げるけん引役となったのです。

 

米FRBが利上げを停止する局面ではバブルが発生しやすい?

 

アメリカの市場に目を向けると、現在は過度のインフレが収まり、株価にとって心地の良い環境が続くとの期待感が高まっています。

 

パンデミックから世界経済が正常化する過程では、多くの分野で供給よりも需要の方が早いペースで回復し、物価の上昇が加速しました。

 

ウクライナでの紛争による原油価格の上昇も、エネルギーコストの上昇を通じて、物価高を促進しました。

 

これを受けて、アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は、ハイペースで金利を引き上げ、物価を押し下げようとしました。

 

金利の引き上げ(=利上げ)は、投資や消費の意欲を後退させて企業業績に打撃を与えますし、債券と比べたときの株式の割高感を強めてしまいます。

 

過度の物価高と高い金利は、株価にとってネガティブに働くため、悲観的な見方が市場に広がる場面も見られました。

 

しかし、現在はこの成果もあって、エコノミストの想定を上回るペースで、物価の上昇が落ち着き始めています。

 

加えて、投資や消費の意欲は想定ほどには落ち込まず、景気も想定されていたほどは悪くなっていません。

 

そのため、今後はFRBが高くしすぎた分の金利を引き下げて、高すぎない金利と、緩やかな物価上昇、そして景気の拡大が続くとの予想が増えています。

 

景気はここから底入れて良くなるし、もう金利上昇を心配しないで良いということですので、市場に楽観が広がっているのです。

 

過去の同じような局面でも、世界的な株高が発生しており、株式にとっては良好な環境と言えます。

 

日経平均はどこまで、いつまで上がる?

 

このように様々な要因が重なり、上昇基調を強めている日経平均株価ですが、株価が下落する「調整局面」を挟まずに上がり続ける相場というのは存在しません。

 

そこで、日経平均株価はいったいどこまで上昇するのか、まずPER(株価収益率)から考えてみましょう。

 

PERから見ると、3万9,000円近辺が上限!?

 

日経平均株価のEPS(1株あたり利益)は加重平均ベースで、2,257円(2024年1月11日時点)で推移しています。

 

また、国内証券大手3社の予想では、日本企業の24年度の経常利益は、野村証券が8.0%、大和証券が7.3%、SMBC日興証券が8.1%増益となる見通しです。

 

仮にこの数字の中央値である8.0%の増益を日経平均採用企業が達成するとすれば、日経平均株価のEPSは2,437円となる計算です。

 

この2,437円に、昨年2023年の相場で、日経平均株価のPERの上限水準として機能した16倍をかけると、3万9,000円という数字が出てきます。

 

ここまででお伝えしたような良好な市場環境が継続した場合には、年内に日経平均株価が3万9,000円近辺まで上昇しても不思議ではありません。

 

逆に言えば、同価格帯を超えてまでどんどん上昇するとは考えにくいです。

 

現在の指数はハイスピードで動いていますので、すぐにピークをつけて、調整局面に移行してしまう可能性も懸念されます。

 

もちろん、指数全体が上がらなくなっても落ち着いた相場が続けば個別で物色される銘柄はありますので、過度に悲観する必要はありません。

 

しかし、ピークをつけて調整局面を迎える可能性は頭の片隅に置いておき、持ち株が大きく上昇したタイミングではある程度利益を確定しておくことも重要かと思います。

 

「好材料が出尽くす」タイミングに注意!

 

これまで挙げた日本株が上昇している要因は、今後も長期的に株価を支えるとみられます。

 

しかし、新NISAで株を始めたばかりの投資家は、ちょっとした株価下落で悲観に傾き、市場から逃げ出してしまうかもしれません。

 

企業による株主還元の強化や、中国株からの資金シフト、AIへの期待感も、いずれは目新しくない話題となり、今ほどのインパクトはなくなるでしょう。

 

「噂で買って事実で売る」という相場格言があるように、好材料出尽くし感が漂い、利益を確定する売りが強まるタイミングは必ず訪れると考えらえます。

 

また、米国景気が落ち込まないまま、インフレが収まるという、今の世界の株式市場が織り込んでいるシナリオも実現するとは限りません。

 

特に、アメリカの金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)の通過などのタイミングで、好材料出尽くしとみた売りが波及する可能性もあります。

 

過度に怖がる必要はありませんが、必ず来る調整局面でも落ち着いて対処できるように、心構えをしておくことが、長期的に資産運用を成功させる鍵になると思います。

 

「リスク管理」をしておけば、どんな相場も怖くない!

 

投資で失敗する人の多くは、自分がどのくらいの値下がりや含み損だったら耐えられるのかを想定せずに、どんどん株を買ってしまい、相場の下落時にどうしようもなくなって株を売却してしまいます。

 

株は安い時に買ってこそ利益になりやすいのにも関わらず、相場が不安定な時に安値で売って、市場が良くなったら株を買い始める、という逆の行動をする方も多いです。

 

こうしたミスを避けるためには、PERなどを参考にしながら、今の株価は安いのか高いのか考えて、安いなら強気に、高いのであれば過度に楽観しないように、意識して市場に向き合うのが良いでしょう。

 

株に絶対はないことを認識しながら、その上でどう立ち回るかを考えておくと、10年20年といった長期でも株で資産を増やし続けることができるかと思います。

株式情報 投資戦略 相場展望 特集 2024.01.15

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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