【台湾TSMC決算】日本株と半導体の行方はどうなる?

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.01.29

江口 裕臣 江口 裕臣

今回の記事では、熊本に進出を果たし話題沸騰中の世界最大の半導体受託製造企業、台湾のTSMCに焦点を当てます。

また、TSMCの本格的な日本進出がもたらす今後の日本の半導体関連銘柄の動向に迫ります。

 

今年の日本株市場を俯瞰する上で、絶対に見逃せない大きなポイントになりますので、この記事でしっかりと深堀解説したいと思います。

 

①TSMCとは?

 

TSMCは台湾に本社を置く世界最大の半導体受託製造企業で、他社で設計された半導体を実際に製造することを最大の強みとしています。

半導体の受託製造においては、業界全体をリードする企業で、世界で最も進んだ半導体プロセス技術を用いて、幅広い電子機器に採用されています。

 

影響力が大きい企業の為、TSMCの設備投資計画が増額になったり、減額になったりするとアメリカの半導体株指数(SOX指数)が底入れ・天井打ちするシグナルとして活用されるほど、半導体市場を推し量る上でベンチマークとしても注目されます。

そんなTSMCが先日の1月18日に昨年通期の決算を発表しました。

 

結果はなんと!2009年以来、初めて売上が前年度を下回り、減収減益でした。

売上は2022年より4.5%減少し、2兆1,617億台湾元、日本円に換算すると10兆900億円余りとなっており、年間の売上が前年を下回ったのは14年ぶり。

 

また最終利益に至っては17.5%減少し、8,384億台湾元。日本円換算で3兆9,100億円と減益となりました。

主な原因としては、スマホ・パソコン向けの半導体売上が落ち込んだことです。

 

これは新型コロナウィルスをきっかけにオフィス需要が減少し、それにより世界的に半導体市況が悪化したことが要因と見ています。

しかし、今年はAI関連の強い需要などによって健全な成長が期待できることから、売上は回復していくとTSMCのCEOは述べています。

 

さらに、TSMCの決算を受けて、日本半導体製造装置協会が日本製の半導体製造装置の販売見込みを発表し、前年比で27%増に上方修正しました。

これはTSMCの決算を日本の半導体企業は、ポジティブにとらえたということを暗示しています。

 

また、アメリカの半導体工業会が集計している世界の半導体販売額も前年比でプラスに転換しており、アメリカや世界の景況感が良い方向に向かっていると考えることができます。

このように半導体株を中心とした市況好転によって、日本で先端パッケージを協業したい海外企業が増加しているため、TSMCは熊本県で話題の半導体工場を建設中で2月24日に開所式を控えており、今年の年末までに稼働する予定です。

 

②海外投資家の動向

 

株式市場に目を移すと、1月9日に世界銀行が日本の成長率見通しを引き上げており、ヨーロッパを中心とした外国人投資家が日本株を買い越してくる可能性が高まっていることから、3月~4月までは外国人の買いが集まりやすいと見ています。

加えて、中国では日本株のETFが人気化しており、本格的にバブル期の高値38,915円突破も射程圏に入っています。

 

実際にTSMCの決算を受けて、半導体の在庫調整の影響が一巡し、稼働率が改善していることから、当然ながら半導体セクターは業績の回復期に突入します。

そうなれば日本株の上昇をけん引するのは半導体セクターと言っても過言ではないと見ており、TSMCの熊本工場設立は総工費約1兆円の設備投資で、その内の最大4,760億円を日本政府が補助するという国策でもあります。

既に第2工場の計画も進み、2024年中に着工する見込みとも言われており、これによって九州には日本の半導体企業の3分の1が集まることになります。

 

つまり、日本の半導体株は過去に類を見ない相場環境にいると考えることが出来ます。

ハイテク株を中心とした外国人投資家の買いが市場全体を盛り上げていく可能性が高いことから、ここからの日本株の動向には要注目です。

 

③まとめ

 

ここまでを纏めると、TSMCの決算を受けて、

 

① 半導体市況の好転

② 半導体セクターは業績が回復期

③ 外国人投資家の資金回帰

 

日経平均株価がバブル後の最高値を更新する中、高値掴みを嫌気するタイミングでもありますが、未来の上昇余地を加味すれば、今の価格帯はまだまだ割安であると考えることも出来ます。

 

日本はこれからインフレに転じていくことも加味すれば、企業業績は更に上向きやすい状態。

加えて、株価は業績と連動して上昇するのがセオリーであるため、業績の回復期を迎えている半導体株を中心に大きな上昇相場が訪れるかもしれません。

 

バリュー株主導の相場環境から一転して、ハイテク株にはスポットライトが当たっている状態のため、年始から大きく指数が上昇しています。

 

高値警戒感も漂うタイミングではありますが、日経平均株価がバブル期の高値を超えるとしたら、半導体株がキーマンになるとして、今後の展開には期待です。

 

今回の記事はここまで!

この内容がお役に立ちましたら、ぜひ次回もお楽しみに。

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.01.29

江口 裕臣 江口 裕臣

江口 裕臣

この記事を書いた人

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 アナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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