【徹底解説】東証の“グロース改革”って何をする?

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.02.01

江口 裕臣 江口 裕臣

今回の記事では、東証が企業のガバナンス改革を行う中、第二の矢として、東証グロース市場の改革について、お話させて頂きます。

新興市場の株や聞いたことのない株は怖い、投資したくないと仰る方もいらっしゃいますが、ここから始まる東証のグロース改革が巻き起これば、資産10倍も夢ではないと思います。

 

それではやっていきましょう!

 

2023年はどんな年だったのか?

 

2023年は米国株はチャットGPTの登場でAI分野やハイテク分野の代表的な企業が上昇しました。

日本では円安を好感視するように鉄鋼、自動車、商社や東証の低PBR是正の恩恵を受けるバリュー株を中心とした上昇がメインでした。

 

そのため、国内の新興市場のグロース企業や上場したばかりの企業にとっては厳しい一年となりましたが、2024年は一味も二味も違う相場展開になると私は睨んでいます。

まず、アメリカの金融政策が利下げに変更される可能性があり、相場環境が好転しやすく、新規上場やM&Aが増えるタイミング。

 

そのため、グロース企業にとっては資金が集まりやすい局面と見ています。

 

実際2023年の日経平均株価は+28.2%。

TOPIXは+25.1%。

そして、グロース250は-3.3%と大きく出遅れています。

 

これはアメリカの金利上昇によるグロース株に対する売りが波及しやすく、急激な円安進行で輸出株主導の相場であったことや生成AIの登場で半導体株が上昇をけん引したことが、指数が大きく出遅れた要因です。

 

ではグロース市場の今後はどうなるのか?

 

東証のグロース改革

 

2024年のグロース株市場は、アメリカの金融政策変更の可能性や相場環境の好転が期待されており、新規上場やM&Aが増えるタイミングが訪れると見ています。

これにより、グロース企業にとっては資金が集まりやすい局面が訪れるとにらみます。

 

そんな中、昨年12月18日に開かれた第13回「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」で、グロース市場の機能発揮についての議題が取り上げられました。

そこでは上場維持の基準について、「段階的な引き上げを検討すべき」という意見が多く寄せられました。

 

具体的には次の3つです。

 

①上場から10年後に適応される時価総額が40億円以上の現行基準について、時価総額を100億円に引き上げる。

 

②10年の適応年数の引き下げ。

 

③時価総額が適応年時に基準を上回らなかった場合は、原則として6カ月後に上場廃止。

 

この3点が変わることでどのような変化が訪れるのかというと、一番大きな所では、機関投資家の投資対象になるような基準を設けることで、

大きな資金がグロース・新興市場に集まりやすくなります。

そして市場に資金が集まることで、企業は資金調達がしやすくなり、更なる成長投資を加速させるといった好循環を生み出すことを目的としています。

また自社株買いへの規制を緩和することで、新規上場の誘致を行うことで新陳代謝が上がり、新興市場の価値向上が進むと見ています。

そしてグロース・新興市場に対する企業ガバナンスの改善を行うことで、2023年の低PBR是正で大きく上昇したバリュー株相場のように、

グロース市場への見直し買いが巻き起こる可能性があるとして、私は2024年はグロース株が大きなキーワードになると睨んでいます。

 

2024年は新興株の年になる?

 

日経平均株価・TOPIXとの大きな乖離とグロース改革が市場のトレンドを変えていく可能性があるというのはご理解頂けたかと思います。

元より成長性に特化した企業が上場しているのが、グロース・新興株市場であることから、上昇ポテンシャル自体は高いのが利点ですが、そこに外的な援護射撃が加われば、日経平均株価やTOPIXとの間に開いた差を一気に詰めるような展開に期待が持てます。

 

日経平均株価がバブル期の高値38,915円を射程に捉えていますが、新NISAや定額減税・給付金による景気刺激策を考慮すれば、2024年の6月辺りまでにこれらの上昇材料を先んじて織り込む可能性があります。

現状、指数の上昇をけん引しているのは半導体株ではありますが、大型株となれば流石に過熱感も漂うタイミングでは売りに押される展開は容易に想定されます。

 

ただ、それは高値追いの展開が続く市場に対してであり、大型株や昨年の上昇余力をまだ持つバリュー株に限定されたリスク。

グロース市場は値動きが軽く、上昇時の破壊力が大きい特性を持ち合わせており、大きく市場全体が出遅れているのなら、人気化する銘柄が出やすい地合いであると考えることが出来ます。

 

また日本では、これまで上場した企業が育たない傾向があり、企業価値が小さいままIPOに至るケースも多く、アメリカの上場時の平均時価総額は2022年ベースで見れば、2,305億円。

日本はわずか101億円と数字で見ても大きな開きがあります。

 

しかし、大手銀行や保険会社を筆頭に未上場の企業やベンチャーキャピタル、新興市場に投資・融資する枠が増えており、スタートアップ上場の受け入れ先として選ばれやすいグロース市場にとっては強い追い風も吹いています。

政府が資産運用立国プランの実現を目指す中、主力株だけでなく、グロース・新興市場の活況が2024年の株式相場の強さを物語ると私は睨んでいます。

 

まとめ

 

━主要株価指数との乖離

━東証のグロース改革

━海外投資家の資金流入の新たな矛先

 

大きく纏めるとこのようになりますが、2024年はグロース・新興株市場が注目を集める年になると見ています。

市場全体が出遅れている中、投資家にとっては大きなチャンスとなる可能性があります。

 

日経平均株価がバブル期の高値を超え、未踏の40,000円台に到達するとしたら、それは主力株だけが恩恵を受けるわけではなく、個人投資家比率の高いグロース・新興株市場にもスポットライトが当たることを暗示しています。

加えて、東証の二の矢であるグロース改革が実行されれば、上昇ポテンシャルの高い新興株が株式市場のトレンドになるかもしれません。

 

詳しい内容はYouTubeにもUPしてありますので、この記事をご覧になって気になった方は一度目を通してみてください。

 

 

それでは次回もお楽しみに!

 

 

 

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.02.01

江口 裕臣 江口 裕臣

江口 裕臣

この記事を書いた人

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 アナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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