【脱炭素革命】“グリーンスチール”が鉄鋼業界を大きく変える!
株式情報 相場展望 日本株 2024.03.05
現代社会に必須とも言える『鉄鋼』ですが、実は製造する際にCO2を多く発生していることをご存じでしょうか。
現在、世界が脱炭素社会に向けて動いていくなかで鉄鋼業界も大きな転換点にいます。
そこで、今回はカーボンニュートラルに向けての鉄鋼業界の動向について書いていきます。
目次
鉄鋼はCO2排出量が多い?
CO2排出量の全体の約35%を産業部門が占めており、さらに産業部門の排出量の40%が鉄鋼業となっています。
つまり日本のCO2排出量の内、約14%が鉄鋼業と言われています。
現在の技術では1トンの鉄を製造するために約2トンのCO2が発生しています。
鉄鋼の製造において一番多くCO2を排出するのは、鉄鉱石から炭素を使って酸素を取り除く『還元』工程になります。
現在主流の高炉法ではこの工程における排出量が全体の8割を占めています。
電気を用いた電炉というものがありますが、こちらはスクラップをリサイクルすることがメインです。
電炉では現在社会にある鉄鋼の量を維持することは出来ますが、新たな鉄鋼を生み出すことができないため、今後の鉄鋼の業績拡大に対応出来ないということです。
製造時のCO2排出量を抑えるためには
現在考えられているのは水素による鉄鉱石の還元で、炭素を使用しないことで、CO2の排出を抑えます。
しかし、水素による還元反応は炉内を高温に保つことが難しいという難点があります。
コークスとの還元反応は発熱反応のため、炉内を高温に保つことが容易でした。
しかし水素の還元反応は吸熱反応であるため、反応が進むと炉内の温度を下げてしまいます。
還元反応には温度が必要なため、炉内の温度が低下すれば反応が持続しません。
鉄の融点より炉内温度が下がってしまえば鉄は溶融せずに固まってしまいます。
そこで現在進めているのは炭素による還元と水素による還元のハイブリット型。
最終目標としては50%の排出量削減としており、2月6日に日本製鉄が33%の削減効果を確認したとの発表がありました。
もともと「水素還元製鉄」は2040年代半ばを実用化時期としていました。
しかし、23年9月16日に経済産業省の開発支援額を大きく引き上げ、実用化時期も5年程前倒しすることを発表、国も鉄鋼業界の脱炭素化を後押ししています。
このように精算時の二酸化炭素などの排出量を削減した鉄鋼材料は『グリーンスチール』と呼ばれています。
2070年には生産される鉄鋼のほとんどがグリーンスチールになるとの予測も出ており、今後の鉄鋼メーカーの動向に注目です。
グリーンスチール関連銘柄
最後にグリーンスチール関連銘柄をご紹介致します。
【5401】日本製鉄株式会社
粗鋼生産量で国内首位、世界4位の企業です。
高級鋼板に強みを持っています。
2050年のカーボンニュートラル実現のために「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」を掲げています。
大型電炉での高級鋼の量産製造や水素還元製鉄を2050年までに実現を目指しています。
【5406】神戸製鋼所
アルミや銅など金属材料の総合加工メーカーへ多角化を推進している鉄鋼大手企業です。
鉄鋼は自動車関係への比率が高いです。
23年11月に転換社債を発行し、約500億円程調達すると発表。
そのうちの200億円で鉄鋼事業及び電力事業などの脱炭素投資を行う方針です。
既に同社は実機大型高炉にて世界最高水準となる25%のCO2削減効果の実証実験に成功しています。
【5411】JFEホールディングス
粗鋼生産国内2位、世界10位台のJFEスチールが主軸の持株会社です。
「JFEグループ環境経営ビジョン2050」において気候変動への取り組みを経営の最重要課題として位置づけており、2050年のカーボンニュートラルを目指しています。
複数の鋼材の生産におけるCO2排出削減量を特定の鋼材に割り当てることによって、疑似的にCO2排出量を大幅に削減したグリーンスチール「JGreeX」の供給を開始しています。
今後も鉄鋼業界の脱炭素への動きに注目しておきましょう。
株式情報 相場展望 日本株 2024.03.05
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。
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