銀行株の今後の見通しは?2024年夏にも日銀利上げでさらに上昇も?

株式情報 投資戦略 日本株 2024.04.12

石塚 由奈 石塚 由奈

金利が上昇すると、銀行株はつられて上昇しやすいと言われています。

これは金利の上昇によって、銀行が貸し出しや運用で得られる金利収入が拡大するからです。

 

そのため、2024年3月に日銀がマイナス金利を解除し、今後も利上げを行うとみられている現在は、銀行株に追い風が吹いていると考えられます。

そこで本記事では、銀行株にはまだ上がる余地があるのか、今後の見通しをアナリストが詳しく解説します。

 

3月のマイナス金利解除で好材料出尽くしに

 

はじめに、日銀による金融政策の正常化、つまり国内の金利上昇を先回りして織り込む形での銀行株の上昇が、いつから始まったかを確認しておきましょう。

 

「日銀が金融政策の正常化に動くかもしれない」という話が出始めたのは、日本の消費者物価指数の上昇率が、前年比で2%を超えた2022年5月頃からです。

日銀が掲げてきた「2%の物価目標」の達成が近づいたため、徐々に思惑が広がりました。

 

 

さらに2022年12月には、黒田前日銀総裁がイールドカーブ・コントロール政策の修正を行っています。

これを機に、日銀は金融政策を正常化する方向に歩みを進めるとの見方が広がり、銀行株は上昇トレンドに向かいました。

 

業種別株価指数で銀行業の動きを確認すると、2022年12月のイールドカーブ・コントロール政策の修正直前から、マイナス金利解除前日である2024年3月18日までの上昇率は77%に達しています。

 

業種別株価指数:銀行業 週足チャート(2022年11月7日~2024年3月19日)

 

事前に大幅高となった分、実際に日銀がマイナス金利を解除すると、銀行株は売りに押される場面が見られました。

マイナス金利の解除当日の日足チャートは十字線をつけており、銀行株がこの日に乱高下したことがうかがえます。

 

業種別株価指数:銀行業 日足チャート(2023年12月4日~2024年4月11日)

 

翌日から買い戻されて2日続伸しましたが、高値は取れずに上値の重い値動きに転じています。

やはりマイナス金利解除が済み、好材料出尽くし感が意識されているようです。

 

そこでここからは、銀行株が再度上値を追う動きとなるかどうかを考えたいと思います。

 

2006年の利上げ後にも上値が重くなっていた

 

まず過去の例を参考に、今後の値動きを考えていきましょう。

 

前回日銀が利上げを行ったのは2006年7月です。

この頃の銀行業指数の動きを見ると、実際に利上げが行われる約4ヵ月前にあたる4月に高値をつけています。

 

業種別株価指数:銀行業 日足チャート(2005年8月4日~2006年8月10日)

 

2005年には、当時の小泉政権が郵政民営化などを進めており、構造改革によって日本経済は復活するとの期待から銀行株を含む日本株が強い値動きに転じました。

2005年8月の安値から2006年4月の高値までの銀行業指数の上昇率は、80%に達しています。

 

消費者物価指数の前年比の伸び率は2006年5月にやっとプラスになるのですが、それに先んじてデフレ脱却への期待感が高まったのです。

 

業種別株価指数:銀行業 週足チャート(2003年6月2日~2010年2月15日)

 

しかし、先に期待されていた分、実際に利上げが行われると、好材料出尽くし感から銀行株は上値が重くなってしまいました。

 

2007年2月にも日銀は利上げを行いましたが、銀行業指数は2006年4月の高値を上抜けないまま、2007年2月の利上げを機に下落ペースを加速させてしまっています。

加えて2008年には、リーマンショックにつながる世界的な景気の減速の煽りを受け、利上げ前の上昇を無しにする水準まで大きく下落してしまいました。

 

高インフレと好景気が持続するかどうかが鍵!

 

銀行株は今回も2006年と同じように、このまま大幅な調整局面を迎えてしまうのでしょうか。

その鍵を握るのはインフレと高金利が定着するかどうかだと考えています。

 

2006年の利上げ後に株価が下落したのは、好材料出尽くし感が台頭したせいだけではなく、インフレが定着しなかったせいもあると見られます。

実際に当時の消費者物価指数を見ると、2006年の8月をピークに失速しています。

 

 

2007年後半から再度物価が上がり始める場面も見られましたが、この頃にはすでにサブプライム問題が表面化していたため、銀行株の買い材料にはなりませんでした。

景気が悪いなかでは、お金を借りたいという需要自体が減少してしまいますし、いずれ景気の弱さから金利は下がるだろうという思惑が高まりやすかったからです。

 

現在に話を戻すと、消費者物価指数は高止まりを続けています。

5月に電気・ガス代の補助が終了する上に、円安の進行で輸入物価が上昇しているため、今後インフレが収まる可能性も低いとみられます。

 

そのため、年内に少なくとももう一度、日銀は利上げに動くとみられています。

 

「4月25、26日の金融政策決定会合で日銀が2024年度のインフレ見通しの上方修正を議論する公算が大きい」と報じられていますので、この会合で地ならしをして、夏から秋にかけて日銀は利上げに動くと考えられます。

 

そうした見通しを足元の銀行株はすでに一定程度織り込んでいるとみられますが、利上げ回数が2回3回と増え、来年まで利上げ局面が続くのであれば、まだ上がる余地があるのではないかと思います。

 

このように、高いインフレ率と景気の底堅さが続き、利上げをさらに進められるかどうかが

今後の銀行株の動向を左右すると考えています。

 

逆に言えば、日本経済がデフレに逆戻りしてしまうと、銀行株の下げ幅もかなり大きくなると考えられますので、この点には注意する必要があります。

 

銀行株を長期保有するならデフレの再来に注意!

 

ここまで本記事では、銀行株の見通しについてお伝えしてきました。

 

日本経済は本格的なデフレ脱却局面を迎えており、しばらくは銀行株の底堅さも続く期待が高いです。

 

来年再来年まで日銀による利上げが続くのであれば、さらに上値を追う余地もあるでしょう。

 

しかし、長期保有を念頭に置くのであれば、景気や金融政策の方針に大きく左右されやすい銀行株の特徴は理解しておきたいです。

 

どのような環境で上がりやすいのか、企業やセクターへの理解を深めておくと銘柄選定や買い時、売り時の判断に役立つはずです。

 

株式情報 投資戦略 日本株 2024.04.12

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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