【株の塩漬け】は悪くない?個人投資家が塩漬けをして復活&損失拡大した実例を紹介
株式情報 投資戦略 日本株 2024.05.07
株式に投資をしていると、保有株が想定外に大幅な値下がりを見せ、売却すべきか悩む場面があるかと思います。
そこで本記事では、具体的な事例を交えながら株を損切りせずに塩漬けにしても良いのかを考えていきます。
保有銘柄を売却した方が良いか迷った際には、是非参考にしてくださいね。
目次
赤字企業の塩漬けはNG!損切ラインを徹底したい
2023年には、多くの個人投資家さまから「アンジェスを塩漬けているが、損切をした方が良いか?」というご質問をいただきました。
アンジェスは、新型コロナウイルスのワクチン開発への期待から、2020年の3月から6月にかけて人気化し、株価が急騰する場面が見られました。
しかし、結局ワクチン開発を中止し、資金調達のために増資を行ったため、60円台まで下落し高値から約40分の1になっています。
初押しの価格帯に当たる1,350円近辺から2021年にもみ合った水準である900円台、節目の500円台など、様々な価格帯でお買付けされた方から損を切った方が良いかと、ご相談をいただきました。
【4563】アンジェス 週足チャート (2019年12月2日~2024年4月8日)
なかには難平買いに失敗し、株数が多くなっているケースも見られました。
アンジェスが特に厳しい推移となったのは、以下の理由によってでしょう。
①ワクチン開発という材料で業績への寄与が不透明な上がりすぎたこと
②赤字が長期間続き、増資によって資金調達をせざる得なかったこと
業績への寄与が不透明な材料で上昇したところで買い付けた銘柄や、赤字が続いている銘柄は、際限無く下落が続く可能性が高いため、塩漬けにすると酷い結果を生みやすいと考えられます。
ちなみに赤字が出ている企業であっても、「特別損失の計上」のような一過性の要因による赤字であれば、株価が回復する余地もありますので、赤字の理由に関してもチェックしておくと良いでしょう。
株主を軽視する企業の塩漬けも失敗しやすいパターン
2023年に、アンジェスと同じくらい塩漬けに悩んでいる個人投資家さまが多かった銘柄が、Abalanceです。
同社は、太陽光事業を主力としており、ベトナムの太陽光パネル会社の子会社により業績を急拡大させました。
これを受けて株価も急伸しましたが、2023年8月の決算発表延期をきっかけに急落しています。
あまりの急落に売るに売れずに、塩漬けにするしかなかった方が非常に多かった銘柄なのです。
ただ、結局大きな損が出たとしても、この時に投げ売っておいた方が良かったようです。
結果論にはなってしまいますが、大した反発もないまま、同銘柄は2024年4月現在も年初来安値圏での推移となっているからです。
【3856】Abalance 日足チャート (2023年1月4日~9月4日)
2023年から2024年にかけて、日本株市場全体は上昇基調を継続しましたから、他の銘柄に資金を回した方が良い結果となっていたでしょう。
この銘柄がなかなか戻らなかった理由としては、以下の2点が挙げられそうです。
①2023年5月までの1年で株価が18倍超になっており、反動が大きくなったこと
②決算発表の延期により失われた投資家の信頼が回復しづらかったこと
短期目線であれば、割高感のある銘柄が、勢いに乗ってどんどん上がっていくという現象は頻繁に発生します。
しかし長期目線では、割高水準まで上昇した銘柄は、適正な株価水準まで下落するものです。
さらに、決算発表の延期や不適切な会計など、投資家にとって不誠実な態度を対応を取った企業の信頼は、簡単には回復しません。
投資家から再度支持されて株価が上がるまでには、時間がかかるケースが多いため、無理にそうした銘柄に固執しない方が良いかと思います。
高配当銘柄でも調子の良い時に買った場合には注意が必要!
ここまで、アンジェスやAbalanceを例に取り上げてきました。
どちらも過去に急騰した小型株ではありますので、日本を代表する大型株や高配当株であれば、塩漬けても大丈夫なのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、たとえ高配当銘柄であったとしても、調子の良い時に買い付けている場合には注意が必要です。
日銀のマイナス金利導入とコロナショックで半値に…。
2023年は、日本郵政について、売却した方が良いかというご相談が急増しました。
ご相談が急増した理由は、「多くの人が保有している価格帯に戻ってきたから」だと考えられます。
どういうことなのか、少し詳しく日本郵政の株価の推移を見ていきましょう。
日本郵政は、2015年に公募価格1,400円で新規上場しました。
大規模なIPOでしたので多くの人がこの公募価格で買い付けたと考えられます。
上場時は1,631円の初値をつけ、公募で買った人はちゃんと利益が出たのですが、2016年に日銀がマイナス金利を導入すると景色が変わります。
銀行株は金利収入減少によって低迷し、日本郵政もその煽りを受けました。
2020年には公募価格から見ても半値近い714円になっています。
しかし、公募で買った人のなかには、値が下がり始めても「大企業だし、最初は含み益になったし、配当利回りも良いから」と持ち続けた方が多かったようです。
【6178】日本郵政 月足チャート (2015年11月2日~2024年4月8日)
昨年は、やっと買値に近づいてきたから売った方が良いかという相談が急増しましたが
そうした方々は一時期は半値近くなった損失に耐え、5年間含み損を抱え続けていたのです。
このように、大企業であっても、調子が良いときに買い付けて、そこから景気動向や金融政策などの外部環境が悪化した場合には半値まで下落し、数年間含み損が続くことも珍しくありません。
景気敏感株には上がったり下がったり循環的に動く
2024年から新NISAが始まり、高配当株や大企業の銘柄を新たに保有する個人投資家さまが増加しました。
今年は3月まで株高が続きましたから、やはり株は儲かるんだと実感している方も多いかと思います。
しかし、株価は本来景気と連動する形で上がったり下がったり循環的に動きながら、経済の成長とともに下値を切り上げていくものです。
参考になるよう、特に景気に敏感な海運株の値動きを見てみましょう。
平成バブルの崩壊やリーマンショックのタイミングで前年までの上げを失くすような急落を見せています。
また、SBI証券が開示している新NISA成長投資枠での週間保有残高ランキング(2024/4/19現在)でも上位となっているトヨタ自動車や日本製鉄も、歴史的には景気に左右されながら動いてきました。
【5401】日本製鉄 月足チャート (2002年2月1日~2024年4月8日)
いずれの企業も経営体質の改善に取り組み、より強固に進化を続けていますが、やはり景気の大きな波には逆らいきれない部分があります。
また、直近好調に推移していた銘柄ほど、調子が悪くなった場面での株価の調整幅も大きくなりやすいとも考えられます。
調整局面が訪れたときに冷静に対処できるように、どのくらいの調整であれば耐えられるのかを、予め考えておくと良いでしょう。
効率的な資産増加を目指すのであれば、株高局面では利益確定を進め、安いところで買い付けるための資金を残すような柔軟さを持ちたいものです。
長期保有なら強みのある企業の調子の悪い時を狙おう
優良企業を安いところで買い付けるのが、株式投資で手堅く勝つための鉄則です。
ですので、赤字だったり株主を軽視していたりする企業の株や、業績や株価の調子が非常に良いときに買い付けた銘柄は、塩漬けにすると値下がり幅が大きくなるリスクが高いと考えられます。
勿論、業績や株価の調子が良い銘柄を買い付けた方が短期間でさらに値が上がる可能性は高いので、こうした取引が悪いわけではありません。
ただし、調子の良さが続くとみて銘柄を買い付けたのであれば、そうではなくなった時に、しっかり見切りを付ける必要があります。
長期保有をするのであれば、ブランド力などの強みのある企業が、景気などの影響で少し調子が悪い時期を狙うのが良いでしょう。
買い付け当初の目論見とその後の売買判断が大きく矛盾しないようにしたいものです。
株式情報 投資戦略 日本株 2024.05.07
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
アクセスランキング
- デイリー
- 週間
- 月間