政府系ファンドと進む半導体材料の業界再編 その狙いと意味
株式情報 投資戦略 相場展望 2024.07.08

目次
業界再編の必要性
半導体材料の業界再編が進行する背景には、急速に変わりつつある国際市場の状況が関与しています。技術革新が進む中、各メーカーは次世代半導体の開発や生産能力の強化を求められており、そのためには業界全体での再編が不可欠です。
特に感光剤「フォトレジスト」などの重要な半導体材料において、世界トップクラスのシェアを持つ企業が協力し合うことで、競争力の向上が期待されます。
最近の事例として、JSRが次世代半導体の基板に使われる成膜材料の需要拡大に注力していることが挙げられます。
また、国際競争力強化の視点からも半導体材料業界の再編において重要なテーマです。グローバル市場での競争がますます激化する中、企業単独での成長は限界があります。
それゆえ、産業革新投資機構(JIC)などの政府系ファンドの支援を受けながら、買収や資本提携を進めることが戦略的に重要です。
例えば、政府系ファンドであるJICキャピタルがJSRを完全子会社化したことは、同社の研究開発と生産能力を大幅に強化し、国際市場での競争力を高めるための一手となりました。さらに、フォトレジスト分野におけるシェア拡大や新技術の導入も、国際競争において魅力的なポイントとなります。
政府系ファンドの役割
産業革新投資機構(JIC)は、日本政府が設立した政府系ファンドであり、国内外の競争力を強化するために重要な役割を果たしています。
JICキャピタルは、特に半導体材料分野の業界再編に注力しています。2024年6月25日には、池内省五社長がこの分野に取り組む意向を表明し、JSRの完全子会社化を進めています。JSRはフォトレジストなどで世界トップクラスのシェアを持ち、この買収により日本の半導体材料分野での競争力が一層強化される見込みです。
さらに、JICキャピタルは次世代半導体材料の需要拡大を見据え、関連企業との買収や資本提携も積極的に行っています。
さらなる買収や資本提携の可能性も
半導体材料業界の再編は、今後さらなる買収や資本提携を通じて進展すると見込まれています。特にJICキャピタルは、買収や資本提携を視野に入れた戦略を強調しており、2024年6月には池内省五社長が半導体材料分野の業界再編に注力する意向を示しました。
これにより、業界全体として国際競争力の強化と技術革新の推進が期待されています。
具体的な動きとして、JSRはヤマナカヒューテックを買収し、次世代半導体の基板に使われる成膜材料の需要拡大に注力しています。また、JICキャピタルは光技術を使う次世代半導体の関連技術を持つ富士通子会社の新光電気工業にも支援を開始する予定です。こうした買収や資本提携の動きは、業界全体における技術と市場シェアの強化につながるでしょう。
JICキャピタルの池内省五社長は、「フォトレジストを塗布する前や後の材料の買収を検討していく」と述べ、取り扱う素材を広げる考えを示しており、今後、国内の半導体関連企業への買収も増えていくものと考えられます。
株式情報 投資戦略 相場展望 2024.07.08

この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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