【急落した半導体株】 東京エレクトロンを急襲!他社にも波及か!?
株式情報 投資戦略 相場展望 2024.08.02
「半導体」と言えば投資家の皆さんならご存じのビッグテーマです。
国内の半導体関連銘柄として有名な企業は、東京エレクトロンやディスコ、レーザーテックなどが挙げられます。
昨年から相場をけん引してきた「半導体関連銘柄」ですが、直近で値を崩しており、
戻りも鈍くなっています。
特に、東京エレクトロンに関しては「ある出来事」がきっかけで、事業に大きな打撃を受ける可能性が浮上し、株価が急変しています。
半導体を取り巻く環境の変化は流動的であり、様々な要因で株価に影響を与えます。
今回は、東京エレクトロンに起きた出来事を踏まえながら、半導体を取り巻く現状と、今後の展望をお伝えします。
目次
・東京エレクトロンに大きな悪影響をもたらした原因
先日7月17日に、アメリカが対中半導体規制を厳格化するとの報道が出て、世界の半導体市場を震撼させました。
バイデン政権は、中国に対する先端半導体技術のアクセスを日本とオランダに提供する場合、厳格な貿易制限を用意しており、このニュースが市場の不安を煽りました。
この規制強化は、国内半導体製造装置大手の東京エレクトロンが対象であると見られており、実際に適用されれば同社の中国事業に大きな悪影響を与えると考えられます。
なぜならば、東京エレクトロンの2025年3月期の中国向け売上高は7000億円規模と想定されているからです。
これは、同社の連結売上高の市場予想の35%を占め、業績全体を下支えする大きな部分となります。
今回発表された規制強化が適用されれば、売上高の35%を占める中国市場でのビジネスが縮小する可能性が浮上したため、株価は7月17日に大きく下落しました。
しかしながら、7月31日には新たな対中輸出規制では日本とオランダ、韓国などの同盟国からの輸出については、適用が除外される見通しであると報道され、同日の株価は大きく上昇しています。
このような急激な株価の変動は東京エレクトロンに限ったことではなく、ほかの半導体銘柄にも波及しています。
・半導体業界の現状
現在の半導体業界は非常に不安定な状態にあります。
米国と中国の貿易摩擦や、台湾有事などの地政学的リスクが大きく影響を及ぼしている状況であり、先端技術へのアクセス制限が両国間の対立を深め、日本やオランダなど第三国の企業も巻き込まれる形となっています。
また、半導体の需要は依然として高いものの、供給側の制約が強まっているため、市場の不確実性も高まっています。
このことからも、半導体業界は各国の規制が生む摩擦の影響や需給バランスが大きく変動しやすく、不安定な状態であると言わざるを得ません。
実際、7月17日に米国が対中半導体規制を厳格化するとの報道を受け、日本市場では国内半導体大手である東京エレクトロンは前日比7.5%の下落、オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLホールディングスも前日比10.9%下落するという事態となっています。
・市場全体と主要半導体企業の動向
世界的に半導体関連株は不安定な動きとなっており、半導体市場の今後の見通しは引き続き注目されています。
世界半導体市場統計が2024年6月4日に発表した2024年春季半導体市場予測によると、
2024年の世界半導体市場規模は2023年に比べ16.0%増の6112億3100万ドルとなり、
再拡大すると予測されています。
多くの製品がマイナス成長となる中で、メモリや一部のロジック製品など人工知能関連の需要が急拡大することが見込まれてます。
また、2025年については、前年比12.5%増の6873億8000万ドルと予測され、AI関連の需要に加え、環境対応や自動化といった領域で、半導体需要の継続的な拡大が見込まれます。
このように、半導体市場は高い成長性が見込まれており、関連企業は設備投資の増加を行っている状況です。
・今後の展望
2024年、2025年に向けて、半導体業界は引き続き大きな変動と成長の両方が予想されます。
2年連続で2桁の成長性が見込まれる一方、貿易制限や需給バランスの変化による影響は
市場にとって悪影響を及ぼす場合があります。
特に、今年の7月に報じられたバイデン政権の日本とオランダに対する厳格な貿易制限が、市場にどのような影響を及ぼすかは非常に注目されています。
この報道の後、半導体主要企業の株価が急落したことからも分かるように、短期的な相場は極めて不安定です。
しかし、長期的な視点から見ると、半導体業界全体の技術革新と市場需要は引き続き高まることが予想されます。
特に、AIや5G、自動運転車などの新興技術が半導体の需要を急激に押し上げていくことが想定されます。
半導体関連銘柄への投資を行う上で重要なポイントは、米中関係や台湾有事など、
外的要因が市場に与える影響を慎重に判断し、投資先の企業が持つ技術的優位性や
市場シェアなどから、成長ポテンシャルの高い銘柄を選定することです。
例えば、2024年はメモリや一部のロジック製品など人工知能関連の需要が急拡大することが見込まれているため、そういった分野に強みのある企業を押さえておくことが重要です。
国内株式市場では、これから企業決算が相次いで発表されます。
今回取り上げた東京エレクトロンも8月8日に決算発表を予定しており、その際に規制強化に対するコメントがあるかに注目です。
半導体市場を取り巻く環境は短期的には不安定ですが、長期的な視点では高い成長性が期待されています。そのため、今回の決算発表でしっかりと成長性が確認される「半導体関連銘柄」が、年後半でも高いパフォーマンスを出すと見ています。
株式情報 投資戦略 相場展望 2024.08.02
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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