楽天グループの今後の株価を予想!黒字化の余地や将来性はある!?

株式情報 投資戦略 日本株 2024.09.27

石塚 由奈 石塚 由奈

日本を代表するインターネットサービス企業である「楽天グループ」ですが、その株価は近年低迷していました。

モバイル事業への進出に伴って、巨額の赤字の計上が続いたからです。

 

しかし、2024年に入り、同社の株価は持ち直しを見せています。

9月上旬には、2022年4月以来の1,000円台回復を果たす場面も見られました。

 

そこで今回は、楽天グループの株価はなぜ上がったのかを分析し、今後の見通し、理論株価はどのくらいになりそうかを考えていきます。

 

楽天グループの株価はなぜ上がった?


 

まずは、ここに来て楽天グループの株価が持ち直した理由を、業績面から考えていきます。

 

楽天グループの事業は、

1:通販やトラベル、広告事業などを手がけるインターネットサービスセグメント、

2:銀行や証券、カードなどを手がけるフィンテックセグメント、

3:モバイルセグメント

の3つのセグメントに分かれています。

 

セグメントごとに、足元の業績動向を見ていきましょう。

 

SPU改悪、日本株手数料無料化による最悪期を脱した!

 

インターネットサービスセグメントでは、国内の通販事業である「楽天市場」の、

収益が伸び悩んでいます。

 

これは、2023年12月に、楽天の各サービスの利用状況に応じて付与するポイントの倍率が変わるSPU(スーパーポイントアップ)プログラムの改定が行われた影響が大きいとみられます。

 

サービス利用時に付与されるポイントの上限が引き下げられるなどしたため、SNSなどでは「改悪」だと話題になり、楽天市場の利用が減少しました。

 

ただし、直近四半期には少し持ち直しており、これから緩やかながらも復調に向かう期待はできます。

 

また、インターネットサービスセグメントでは、国内の失速を海外での事業展開強化でカバーしています。

世界190カ国で3,800万人以上が利用する電子書籍サービスの「楽天Kobo」や、スペインの企業を子会社化して欧州で展開している「楽天TV」のユーザー数が伸びています。

 

SPU(スーパーポイントアップ)プログラムの改悪を受けて、一時は楽天経済圏は終わりか、などと言う人もいましたが、そこまで業績は落ち込んでいないのです。

 

次にフィンテックセグメントを見ていきましょう。

 

楽天グループは、銀行や証券、決済サービスなどのフィンテック分野に進出し、収益を拡大させてきました。

 

そうしたなかで、懸念されていたのは、日本株の手数料無料化による証券事業の落ち込みです。

実際に、証券事業の営業利益が23年12月期の第4四半期に大きく落ち込みました。

しかし、その後は新NISAの追い風もあって、利益の回復が鮮明となっています。

 

(楽天グループ 2024年8月期決算説明会資料より)

 

今後はフィンテック事業の再編を行い、各サービスがより連携して相乗効果を発揮できるような取り組みを進める見通しで、株式市場でも期待されています。

 

赤字垂れ流しのモバイルセグメントにも希望の兆し…。

 

続いて、問題のモバイルセグメントについて見ていきましょう。

 

楽天グループは2020年から楽天モバイルを本格的に開始。

以降、巨額の営業赤字の計上を続け、自己資本比率は8.0%から3.6%に低下するなど財務体質の悪化も顕著となってきました。

 

 

かなり厳しい状況が続いてきましたが、ようやく24年12月期第2四半期(4-6月)に、マーケティング前キャッシュフロー、つまり顧客獲得のためのマーケティングコストを除いたキャッシュフローであるPMCF(プレマーケティングキャッシュフロー)が黒字に転換したと発表しています。

 

 

つまり、マーケティングを行うのをやめて、既存の契約者のみを対象にサービスを行った場合、キャッシュフローが黒字になるようになったということです。

加えて、投資を続けた結果、通信品質が改善したこともあって、解約率も減少傾向にあります。

 

また、財務面でも最近は良いニュースがありました。

楽天グループは、多額の資金調達を行ってきたため、2025年にかけて約5,000億円の社債の償還を控えています。

 

この支払いに充てる資金がないとの警戒感がありましたが、8月8日に、楽天モバイルが保有する通信設備などの一部を売却した後に、その設備のリース契約を結ぶ「セール・アンド・リースバック」という契約を行い、目先の資金繰りへの警戒感は後退しています。

 

この契約によって楽天モバイルは、保有する通信設備などの売却代金として先に現金を受け取ることができます。

そしてこの売却した通信設備などを使い続けるために、リース料を分割して払っていくことになります。

 

リース期間は10年で、調達額は、1,500億円から3,000億円を予定しています。

 

直近四半期の最終赤字額が335億円であったことを考えると、この調達によって1~2年の資金は賄え、その間に収益性を改善させる余裕が生まれたと言えます。

 

楽天グループの理論株価はいくら?PERを用いて試算!

 

このように、楽天グループの業績は、様々な角度から見て、最悪期を脱しつつあると考えられ、株価の上昇に期待ができるタイミングです。

 

しかし問題は、どのくらいの株価が妥当となるかです。

そこで今回は、直近四半期の業績を参考に、もしこれ以上の投資をやめてモバイル事業が黒字化したら、1株当たりの通期の利益はいくらになるかを考えてみました。

 

直近の25年12月期第2四半期単体、つまり今年の4月から6月にかけての楽天グループの最終赤字は335億円で、1株当たりの損失は15.7円となっていました。

 

 

このうち、モバイルセグメントにおける営業赤字は606億円でしたので、これが無かったとすれば、楽天グループの最終利益は271億円となった計算です。

これを1株当たりの利益に直すと12.7円となります。

 

つまり、この第2四半期においては、モバイルセグメントの赤字がなければ、四半期の1株利益は12.7円になったということです。

これに4をかけて、通期の1株利益を試算すると、51円程度になります。

 

季節性などを考慮しない試算ではありますが、この51円というのを、簡易的な楽天グループの1株当たり利益として考えてみます。

 

日本株の平均的なPERは15倍とされ、成長余地がある企業であれば20倍程度までは普通に株価が上昇するものです。

1株利益が51円であれば、PER15倍で株価は765円、PER20倍で株価は1,020円となります。

 

9月18日の終値時点の株価は945円と、試算したPERで15倍から20倍の間の価格帯で動いており、割安とも割高とも言えない妥当感のある水準で推移していることが分かります。

 

そのため、大きく下落するリスクは低い一方で1,000円を本格的に上回りさらに買われるには、成長を続ける必要があると結論できます。

 

モバイル事業の赤字が消えるだけでなく、モバイル事業の黒字がしっかりと積み上がるようになって負債の返済が進み、利払い費などの負担が解消していけば、1,000円を上回って大きく買われる余地が生まれるでしょう。

 

楽天グループ株を売買する際の注意点とは?

 

最後に株価の動きを見ながら、楽天グループ株を売買する際の注意点について考えていきたいと思います。

 

株価チャートを少し長い期間の月足で見ると、長い低迷期を経て、60ヵ月移動平均線を回復していることが分かります。

 

【4755】楽天グループ 月足チャート(2013年1月~2024年9月)

 

しかし、現価格帯より上の水準では、2022年に60ヵ月線を割り込んで一気に下げ幅を拡大する前の戻り待ちの売りも出やすいと考えられます。

1,000円を上回ってどんどん上値を追うというよりは、上昇一服感からもみ合いやすい局面でしょう。

 

これからの買い付けを狙っている場合には、先ほど試算したPERで15倍となる765円近辺を下値目処と考えて、下落した場面を狙って買い付けるのが良いでしょう。

すでに保有している場合には、目先の値上がりに期待するというよりも、今後時間をかけて財務体質が改善し、評価が高まることに期待して、長い目線で見ていくのが良いかと思います。

 

こうした見通しを参考に、ご自身の資金量や投資スタイルに合わせて売買判断を行っていただければと思います。

株式情報 投資戦略 日本株 2024.09.27

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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