【70年ぶりの東証改革!】 取引時間延長で株式市場はどう変化するか?

株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.11.01

遠藤 悠市 遠藤 悠市

日本では自民党新総裁が石破氏に決定し、衆議院は解散。10月27日投開票の衆議院選挙に向けて事実上の選挙戦に入っています。

 

また、米国では11月5日に米国の大統領選挙が行われる見通しであり、大きなイベントを控えて株式市場も神経質な環境が続いています。

 

そんな中、東京証券取引所が70年ぶりの改革を行います。

 

ご存知の方も多いかと思いますが、11月5日から現物株の取引終了時間を午後3時から午後3時半に変更されるのです。

新たに導入される取引時間により、東京証券取引所での立会時間は、平日の午前9時~11時半、午後0時半~15時半の計5時間30分となります。

 

取引時間が30分延長されることで、投資家にどんな影響があるのか?

 

今回は、取引時間延長の背景と、株式市場そして投資家への影響について詳しく解説していきます。

 

取引時間延長の背景

 

東京証券取引所が終了時間を延長するのは1954年以来、70年ぶりのことです。

 

この背景の1つには、2020年10月1日に発生した大規模なシステム障害があります。

同日は、東京証券取引所がシステム障害により全銘柄の売買を終日停止し、大きな混乱が起こりました。

そのため取引時間を延ばすことで、システム障害が発生しても当日中に復旧させる可能性を高め、短時間でも取引ができるようにする議論が浮上し、今回の取引時間延長決定に繋がっています。

 

また、日本取引所グループのCEOは記者会見で「取引量が増える効果がある」と述べており、国内外の投資家の取引機会を増やし、国際競争力の向上や市場活性化への期待も、その背景となります。

 

取引時間延長による投資家へのメリット

 

では、取引時間の延長は投資家にどんなメリットをもたらすのか?

まず一番に挙げられるのは、取引機会の増加です。特に、株式市場の動きが激しい日には、

今回追加された30分が利益確定や損失回避のための貴重な時間となることでしょう。

 

取引機会増加の具体例として、直近で大きなイベントであった9月27日の自民党総裁選を元に考えてみます。

 

石破氏が新総裁として決定されたのは15時以降であり、株式の現物取引終了後でした。

同日の株式市場では、新総裁候補として高市氏が有力視されており、市場もそれを織り込む形で大引けの15時にかけて大きく上昇していました。

しかしながら、15時20分ごろに新総裁が石破氏で決定されると為替は大きく円高に振れ、時間外取引が可能な日経平均指数は大きく下落しました。

 

市場期待に反した結果となったため資金の逆回転が起こり、新総裁決定の翌営業日である9月30日の日経平均株価は-1910円という歴史的な下落を記録しています。

 

このように、市場に大きな影響を与えるイベントが15時以降になった場合、現在の取引時間では現物株式市場では手も足も出ないのです。

 

もちろん、総裁選はそう何度も簡単に起こるイベントではありませんが、今回の取引時間延長により15時半までの大きなイベントには即座に対応できることになるのが、大きなメリットであると言えるでしょう。

 

市場活性化への期待が高まる

 

取引時間の延長は、取引機会の増加以外にも、東京証券取引所の市場活性化にも期待が寄せられています。

日本より取引時間帯が遅いアジアの各国・地域の市場、早朝の時間帯に当たる欧州市場をはじめ、海外発の取引材料を当日中に反映できる可能性が高まります。取引時間の拡大で海外投資家などの参加が増えれば、売買が増加し、市場活性化につながると考えられます。

 

また、取引時間の延長とともに新しいクロージング・オークションの導入が予定されています。

 

クロージング・オークションは、公平な終値を決定することを目的に行われるセッションのことを指します。

 

今回の新しく導入されるクロージング・オークションでは、後場立会終了の5分前である15時25分から、即時に約定させず注文を呼び込む「注文受付時間(プレ・クロージング)」を設けた後、15時30分に板寄せを行う「クロージング・オークション」をもって、同日の売買が完結することになります。

 

大引け間際を狙って売買する投資家にとっては、取引タイミングだけでなく、どのように売買注文を出すかも変わってくるため、大引けにかけて取引が集中する傾向が変化する可能性があります。

 

企業の決算発表時刻にも影響?

 

現在、多くの上場企業が取引時間終了後の15時以降に決算を発表しています。

しかしながら、11月5日以降は15時30分まで取引時間が延長されるため、15時~15時30分に発表していた企業が従来通りに発表すると、取引時間中に当たることになります。

 

つまり、場中決算が急激に増え、決算が集中する時期には15時以降に値動きが激しくなる銘柄が増える可能性があるということです。

これは、投資家にとってメリットでもありデメリットでもあると考えられます。

 

メリットは決算内容が即座に株価に反映される可能性が高まるため、そこで発生しうる値動きを狙った取引ができるという点です。

デメリットは決算発表が集中する時期には、多くの銘柄が決算発表時の15時以降、一斉に動き出すため、決算内容に対してとるべきアクションが増えてしまう可能性がある点です。

端的に言えば、15時以降はとてつもなく忙しくなる可能性があるということですね。

 

ただ、日本経済新聞系列の金融関連の情報を提供するQUICKが上場企業を対象に調査している6月の「QUICK短期経済観測調査」では、東証の取引時間延長に伴い決算発表時刻をどうするか調査を行ったところ、「取引終了後だった発表を取引時間中に移す」つまり、15時発表のまま変更しないケースは5%にとどまっています。

 

一方で、「現在15時の取引終了直後に発表しており、延長後は15時30分以降に発表を遅らせる」とした企業は22%、「現在15時30分以降に発表しており、それを継続する」との回答は30%に達しています。

 

つまり、取引時間終了後に決算発表する意向を持つ企業が過半を占めていることになるため、全体でみると決算発表時刻が遅くなることが想定されます。

 

まとめ

 

今回の取引時間延長で投資家が得られるメリットは、取引機会の増加が大きなポイントであるとみています。

これまで現物株式市場が対応できなかった時間が短くなるということは、より柔軟な投資戦略を組み立てることが可能ということです。

注意すべき点は、新しく導入されるクロージング・オークションですが、主に大引けに関係するものになるため、15時25分にザラバが終了することをしっかりと覚えておきましょう。

 

株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2024.11.01

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この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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