【トランプ大統領再選】 株価はどう動く?注目の業界と銘柄を公開

株式情報 相場展望 2024.11.18

遠藤 悠市 遠藤 悠市

11月5日、米大統領選挙は投開票日を迎え、開票が進むにつれ、共和党のドナルド・トランプ前大統領の有利が鮮明になりました。

トランプ氏は6日午前2時30分頃、本拠地のフロリダ州で演説し勝利宣言を行いました。

 

大統領経験者が返り咲きを果たすのは実に132年ぶりという歴史的な選挙になりました。

トランプ氏は来年2025年1月20日に第47代大統領の就任式を迎えます。

 

ちなみにトランプ氏は内政、外交ともバイデン政権からの政策転換を進める方針であり、

不法越境対策として「国境の壁」の建設を本格的に再開し、不法移民の国外追放も進めるとしてます。また、石油や天然ガスの増産を促し、実業家のイーロン・マスク氏も起用して

「連邦政府の効率化」を推進し、関税の見直しも掲げています。

 

政権交代により政策が変わることで、米国では大きな変化が起こると考えられます。

さらにその影響は経済や金融市場にも波及し、株式市場もまた大きな影響を受けます。

 

そこで今回の記事では、トランプ大統領の再選で株式市場はどのように変化していくのか?

政策から見える注目の業界と銘柄にも焦点を当て、詳しく解説していきます。

 

アメリカ大統領選挙と株価の関係

 

 

過去の例をみると、選挙年は株価が上昇する傾向があり、例えば、2016年にドナルド・トランプ氏が当選した際、S&P 500指数は約5%上昇しました。

さらに、2020年にはジョー・バイデン氏が当選した際は、S&P 500は11%上昇し、特にエネルギー株が28%もの上昇を記録しました。このように、大統領選挙の結果がマーケットに与える影響は非常に大きいと言えます。

 

ちなみに2016年のトランプ大統領当選の際には、その政策が株式市場に特異な影響を与えました。その政策の特徴として、関税の引き上げが挙げられます。

特に中国に対する関税が大幅に引き上げられ、その余波で金融市場にも影響が及びました。

しかしながら、同時に打ち出された金融規制の緩和は、金融セクターの株価にポジティブな影響を与えたことも重要なポイントになります。

 

トランプ氏の政策方針と経済への影響

 

同氏の政策として注目されているのが経済政策の柱である「減税」と通商政策として2016年同様に「関税の引き上げ」が挙げられます。

 

まず、経済政策の面では前政権時に導入した個人所得税などの「トランプ減税」を恒久化し、法人税率を現行の21%からさらに引き下げて15%にするとしています。この政策による米国のGDP成長率への短期的な影響は、+0.5~1%程度と見込まれており、この点については経済や株式市場においてもポジティブであると言えます。

 

一方で、関税引き上げ策は米国のGDP成長率への短期的な影響が-0.4%と見込まれています。

GDP成長率への影響だけで見れば、単純計算の差し引きでプラスとなりますが、これらの政策は全てインフレを刺激するという点に注意が必要になります。

 

減税策は消費需要を刺激するほか、関税は輸入物価の上昇、移民抑制は労働力不足による賃金加速を招く可能性があります。これによりインフレが再燃する場合、FRBの利下げサイクルはより緩やかになり、住宅投資や設備投資の回復が阻害されると考えられます。

現在、インフレの沈静化に動いている米国では、トランプ氏の掲げる政策が米国経済に予想外のマイナス影響を与える可能性も秘めているということを覚えておきましょう。

 

金融市場への影響は?

 

2016年にトランプ氏が勝利した際には減税期待を背景に株価が右肩上がりに推移しました。

トランプ氏が関税策を実行に移したのは2018年以降であり、政権当初は保護貿易政策は

抑制されていたと考えられることから、今回に関しても、株価は減税期待からプラスの影響を見込む向きが多いと思われます。

 

ただし、2016年のトランプラリーと今回の再選には大きな相違点があります。

 

まず、2016年の大統領選の時のようなサプライズ的な勝利とは異なり、今回は金融市場がトランプ氏勝利を一定程度織り込んでいた可能性があるということ。

次に、今回打ち出されているトランプ減税はあくまで既存政策の延長であり、新規の大規模減税は議会構成を踏まえると実現できるかが不透明であること。

最後に、前政権よりも共和党の穏健派による政権への関与が少なく、関税引き上げを含む過激な政策に歯止めがかからないリスクがあるという点です。

 

これらを踏まえると、2016年からのトランプラリーの推移に反して、株価上昇が長続きしない場合も想定しておく必要があります。

 

仮に、再度トランプラリーとして株価上昇が継続する場合は、新規の大規模減税が早々に議会を通過し、関税引き上げの時期が先延ばしになるもしくは、引き上げ率が当初の数字から小さくなる必要があると考えられます。

 

減税を背景とした米国経済の加速は、輸出拡大を通じて日本経済にもプラスの波及効果をもたらすと考えられます。

実際、6日の東京市場ではトランプ氏勝利への織り込みが進み、日経平均が前日比+1,005円と大幅な上昇を示していることからも、日本株式市場にとってプラスの影響があることが確認されました。

 

ただし、トランプ氏が保護的な貿易政策を進める場合、自動車産業を中心とした日本の輸出産業への影響が懸念されます。

輸出企業の中でも特に米国向けの売上高が大きい企業は、今後貿易政策の影響から株価にマイナスの反応が出る可能性には注意が必要です。

現在の日本株式市場は、減税による米国経済加速のプラス影響と、貿易政策の激化によるマイナス影響の間で綱引き状態となっていると言えます。

 

注目業界と政策の恩恵を受ける銘柄

 

トランプ氏の当選により注目される業界は、エネルギーや製造業、金融業となるでしょう。

同氏の政策は国内製造業の支援となる可能性があり、関税引き上げによって、アメリカ国内の製造業は一部の輸入品に対して競争力を持つことができる可能性があります。

また、トランプ氏はエネルギー自給率の向上を目指し、化石燃料産業を再び活性化させる可能性もあるため、先の3つの業界には注目が集まるでしょう。

 

例えば、石油生産会社のエクソンモービル(XOM)や、EV購入に対する連邦税控除の廃止や関税の引き上げを実施すれば、テスラ(TSLA)が恩恵を受ける可能性が高いと思われます。

 

また、トランプ氏は仮想通貨を支持する姿勢を示しており、仮想通貨に対する規制撤廃を公約しています。今回の当選を機に、仮想通貨に対する規制が撤廃されれば、暗号資産関連銘柄にも資金流入が見込まれるでしょう。

 

国内株式市場では、仮想通貨交換所の大手であるコインチェックを傘下に持つ、マネックスグループ(8698)や、暗号資産販売所を運営するセレス(3696)などの動きには注目です。

 

まとめ

 

過去の例からも見られるように、選挙後には投資家の期待感や失望感が交錯し、株価が大きく変動することがあります。トランプ氏の掲げる政策は米国の経済活性化につながる可能性もありますが、関税引き上げ措置は世界中に影響を及ぼしかねない大きなリスクとなります。

 

もちろん、同氏の政策に絡む業界や銘柄には資金の流入が期待されますが、トランプ氏は過去にSNSへの投稿で金融市場に影響を与えることもありました。

 

金融市場は一時的なボラティリティの高まりを経験する可能性が高く、現状綱引き状態の日本株式市場では、大きな株価変動に注意が必要です。

 

株式情報 相場展望 2024.11.18

遠藤 悠市 遠藤 悠市

遠藤 悠市

この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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