65歳男性の配当金生活のリアル
株主優待 暮らし 2022.11.08
今から40年前の春の話です。一人の若者がある日本を代表する企業に入社しました。そして、入社すると新入社員研修が行われ、そこで一つのガイダンスがありました。そのガイダンスとは「従業員持株会」の話でした。その頃の日本はまだ、「株に投資することは良い儲け話」と捉えられやすい時代でした。
目次
かつての日本経済は…
当時の日本経済はグングン右肩上がりに成長しており、比例して企業の株価もドンドン上がる、まさに日本株の絶頂期でした。そんな中、彼ら20代の新入社員達は、「株を持っておくと何となく良さそう」ということで、同期数名で、その持株会に入り株を取得していくことにしました。その時の株式の取得方法は、とてもシンプルです。毎月支払われる月給から自動的に株式を買う分のお金が天引きされ、勝手に持ち株が増えていく仕組みでした。だから、彼らは全く何も気にすることなく、給料から天引きされる形で、毎月数千円の積立をして自分の持ち株数を増やしていきました。
月数千円の積立が10年後に…
その結果10年後…日本のバブル景気も相まって、彼らが持株会に入った当初の株価から、その会社の株価は数倍にもなり、気がつけば、知らぬ間に資産を築くことができていました。しかも、毎月数千円、給料から天引されるだけです。そこで、その中の同期の一人は、家を買う際の資金の一部にしようと、株を売りに出し現金化しました。その金額は家の価格の1/4程度にもなったそうです。
そして、ここで驚くべきことは、彼が従業員持株会に入ってから、わずか10年程度しかたっていなかったということです。仮に、毎月5000円を株式に回したとしても…
◯年間:5000円×12ヶ月=6万円
◯10年:6万円×10年=60万円
仮の数字ではありますが、なんと60万円が家の価格の1/4ほどの資金に増えたのです。
そこから一転バブル崩壊…
しかし、人生とは全て右肩上がりにはいかないもの…ここから悲劇がありました。同期の一人が家を建てたあとの1990年、日本はバブルが崩壊し、株価は急降下しました。同期のように株を現金化していなかったため、株価の上昇に伴い、それまで増やしてきた資金は、バブル崩壊により一気に目減りました。
そのようなこともあり、かつて一緒に持株会をはじめた同期達は塩漬け状態になった株価に我慢ができなくなり、少し株価が戻した時に、全て売却してしまいました。10年間積み立てた資金が一気に減ってしまい…まさに、悲劇の状況でした。
とはいえ、元本よりかは増えています。だから、先ほどの彼は、同期の仲間が全員、株を売却する中、1人だけ保有を継続していました。「ま〜、給料はあがっているし、生活に支障があるわけではないからいいだろう〜」という軽い感じで、1人だけそのままにしていました。
もちろん、入社時の持株会の積立もそのまま継続していました。それから、25年後…今度はこんなことが起きました。
悲劇から一転「配当収入」
なんと、これまで全く配当金を出してこなかった企業が、突如「配当金」を出すことを決定したんです。この背景には、バブル崩壊以降、企業の株主構成が大きく変化していったことにあります。それまで多くの日本企業は系列企業や金融機関との株の相互持合いを盛んに行っていました。相互持合いにより経営を安定させることができたため、株主還元を積極的に行う必要性もなく、配当をあまり出さない企業が多かったんです。しかし、バブルが崩壊した後から資金繰りに行き詰まった企業や金融機関が、関係会社の株を手放し始めたことで、企業の株主構成が大きく変化していきます。とくに、海外投資家など株主還元を強く求める株主の構成比率が増加していったことで、株主重視の姿勢に企業が変化していき、配当金を積極的に出す会社が増えていきました。
当然、彼にも配当金は支払われました。そこからは、保有株数もそれなりにあったため、銀行の利息よりは遥かに大きい額の配当金を、永続的に受け取れるようになり、彼にとっては大きな収入源となったのです。
そんな彼は現在、定年退職をして悠々自適な生活を送っています。一所懸命働いて得たお金だけでなく、自然に蓄積されていった株の資産。一時はバブル崩壊によって目減りした株の資産ですが、その資産が時を経て「配当収入」を運んできてくれたんです。まさに彼は株によって、「老後不安を解消する不老収入」を得ることに成功しました。さらに、彼は「全く働かないのもつまらないから」と言って、週3日だけの勤務を会社に交渉しお小遣いも稼ぎながら、お金の心配をすることもなく、好きな時間を過ごしています。
この話は一部、ご本人のプライバシーがあるので隠していますが、実際に実在する人物の話です。かつての日本は、急速に右肩上がりで成長を続けていたので、月にたった数千円分、毎月株を買っていくだけで、数十万円が数百万円に増えるということも普通でした。ですが、今の日本経済は成熟期を迎え、以前のような右肩上がりの成長は期待できません。しかし、彼は運良く株を持ち続けたために、「配当金」を得ることができました。株式というと「株価が下がったら損をする!」と考えてしまいがちですが、「配当収入」のことも考えると、案外そうでもないんです。
もし、「右肩上がりの成長」と「配当金」が同時にあれば…
さらに、もし長期的に右肩上がりに株価が成長していき、且つ配当金も受け取れる株を保有することができれば、それは最強の資産運用ができていると、言っても過言ではないかもしれません。仮に、一方だけであっても、その株はあなたに少なからず利益をもたらすので良いものだと言えます。
ただ、ここで忘れてはいけないのは「配当金も見落とせない利益の源泉」だということです。近年、米国株が注目されてきたことで、米国株の配当の良さを強調する情報をよく見かけます。
こういった情報を目にすると、米国株に比べて日本株では高金利の配当金を受取り続けるのは難しいと、思ってしまういそうですが、実は前述した彼のような生活を送ることもできるんです。時間はかかってしまうかもしれませんが、毎月少しずつ買い増していくことで、気がついたら配当収入が思ったよりも大きくなっている、なんてことも十分にあり得る話なんです。
まさに、これが「配当の持つ力」です。株式を短期的に売買して利益を狙うのも一つの方法ですが、配当金を狙い長期保有するのも一つの戦略です。ぜひ、このような視点も取り込んで、あなたのポートフォリオに組み込んでみてはいかがでしょうか。
株主優待 暮らし 2022.11.08
この記事を書いた人
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。
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