インド株の見通しは?今後も上昇に期待ができる理由を徹底解説!

世界情勢 マーケットニュース 国内情勢 日本株 2023.08.10

石塚 由奈 石塚 由奈

2023年9月9日、10日にインドの首都ニューデリーで、G20サミットが開かれます。

 

インドがG20の議長国となるのは史上初ですので、国際社会でにわかに存在感を強め、注目を浴びています。

 

また、7月のIMFの世界経済見通しによれば、インド経済は2023年に6.6%、2024年に5.8%成長する見通しです。

 

この成長率は、中東・中央アジア(2023年は2.5%、2024年は3.2%)やサブサハラアフリカ(2023年は3.5%、2024年は4.1%)を上回り、主要な新興国のなかでも群を抜いています。

さらにS&Pグローバルは、インド経済は2031年3月まで年平均6.7%の成長が続くと予測しています。

 

そこで当記事では、インド経済の成長性について解説し、同国で事業を展開する日本企業に迫りたいと思います。

 

なぜ今?インド経済の成長期待が高まっている理由

 

ところで、なぜ今このタイミングで、インド経済の成長期待が高まっているのでしょうか?

 

大きな理由としては、①人口構造的に経済が成長しやすい段階に入っていることと、②政権の安定や政策が挙げられます。

 

インドの人口ボーナスと中産階級の拡大

 

国連の推計によれば、インドの人口は今年の中頃に中国の人口を上回り、世界一となりました。

しかし、人口が多かったり、人口の増加率が高いだけでは、安定的な高成長の実現には不十分です。

 

もちろん、日本のように高齢者の割合が高いのは、経済にとって良くはありません。

労働人口は減少に向かい、現役世代の負担が大きくなってしまうからです。

 

2019年の日本の人口ピラミッド(右:女性、左:男性)

(出典:https://graphtochart.com/population/japan-pyramid.php#graphpastpyramid)

 

しかし、若い世代が多ければ良いというわけでもありません。

 

現在のナイジェリアや1950年のインドのように、まだ働けない年齢の子供が多い場合も、現役世代の負担は大きくなります。

こうした環境下では、余裕がない故に子供たちの教育が満足にできず、なかなか社会全体の生産性が上がりません。

 

2019年のナイジェリアの人口ピラミッド(右:女性、左:男性)

(出典:https://graphtochart.com/population/nigeria-pyramid.php)

 

1950年のインドの人口ピラミッド(右:女性、左:男性)

(出典:https://graphtochart.com/population/india-pyramid.php#chartpyramid)

 

そうした前提を持って、現在のインドの人口ピラミッドを見ると、10歳未満の人口の比率が減少し、働ける世代の人口がもっとも多くなっています。

 

2019年のインドの人口ピラミッド(右:女性、左:男性)

(出典:https://graphtochart.com/population/india-pyramid.php#chartpyramid)

 

ちょうど高度経済成長期を迎えていた頃の日本の人口ピラミッドに近い形になっているのです。

 

1969年の日本の人口ピラミッド(右:女性、左:男性)

(出典:https://graphtochart.com/population/japan-pyramid.php#graphpastpyramid)

 

働ける世代がもっとも多い人口構成になると、教育が普及し、消費が拡大するだけの余裕が社会に生まれます。

 

教育の普及は生産性を上げ、消費の拡大は新たなビジネスを生みます。

 

こうなると所得が上がり、中間層が拡大する好循環が起きて、高度経済成長期の日本のような成長が実現しやすいです。

 

こうした人口構成の時期を、「人口ボーナス期」と言いますが、インドはまさに今その真っ只中にいると考えられます。

 

外貨導入を促進するインドの経済政策

 

人口構成の他に、経済成長を左右する重要な要素として、政権の安定性や政策が挙げられます。

 

政権が交代してばかりでは、安定した経済成長を支える政策は打てません。また、閉鎖的な政策ではイノベーションが起こりにくく、成長は限られてしまうでしょう。

 

そうした視点でインドを見てみると、現モディ政権は2014年〜2019年の第1期で圧倒的な支持を得て、2019年の総選挙で圧勝。現在2期目を迎えています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で支持率は一時低下したものの、現在は経済の回復とともに盛り返している最中です。

 

2024年の総選挙に向けた地ならしとして、インフラ投資を増やすほか、所得減税の拡大も行っています。

 

総選挙に勝利した場合には、さらに政権の安定が続くとして好感されやすいでしょう。

 

 

また、中国が習近平政権3期目に入り西側諸国と対立を深める一方、インドのモディ政権は友好的な対外政策を進めています。

 

今年の6月にはモディ首相が米国を訪問し、バイデン米大統領と軍事面での協力で合意。テスラのイーロン・マスクCEOとも会談し、その後マスク氏は「(テスラの)インド進出を確信している」と発言しています。

 

他にも、米半導体大手マイクロン・テクノロジーの拠点建設やアマゾン・ドット・コム、アルファベット傘下のグーグルによるインドへの投資の拡大が伝わっています。

 

企業が中国の代わりにインドに進出したり、工場を作る動きは今後も続いていく可能性が高いです。

 

インド経済の躍進は投資家にとって新たなチャンスに!

インドSENSEX 週足チャート 2020年1月6日~2023年8月9日)

※TradingView(https://jp.tradingview.com/)のチャートを使用しています。

 

すでに世界中の投資家がインドに熱視線を注いでおり、同国を代表する株価指数SENSEXは市場最高値圏で推移しています。

 

企業もこの成長性を自社の利益につなげようと、こぞってインド進出を進めています。

 

思えば、中国経済の成長が著しかった頃、多くの日本企業が同国で事業を開始し、収益を拡大させました。日本株市場でも、中国関連として上値を伸ばす銘柄が多かったと記憶しています。

 

その中国に代わって、今インドが成長の兆しを見せているのです。

 

いち早くインド市場での事業を成功させた企業の収益拡大には、期待が高いとみて良いでしょう。

 

収益拡大は勿論、株価の上昇にもつながると考えられます。

 

ビジネスチャンスを掴めるか!?インド関連の日本の上場銘柄

 

では、どのような企業がインド市場での事業展開を進めているのでしょうか?

ここからは各企業の取り組みについて、取り上げたいと思います。

 

①【6326】クボタ:世界最大のトラクター市場を何としても掴む!

 

早くからインド市場に進出し、試行錯誤を続けてきたのが農機で国内最大手のクボタです。

インドのトラクター市場は世界一の規模で、農機大手のクボタにとっては何としてでも進出したい魅力的なマーケットでした。

 

しかし、2008年に満を持してインドに本格進出したものの、クボタのトラクターは一向に売れませんでした。現地製品に比べて価格も高かった上に、言葉や文化も違い営業に苦戦。

 

ブランド力もなく、トラクターを使用する環境も違ったため、全く歯が立たなかったのです。

 

10年以上の苦節の末、2021年にクボタは勝負に出ます。

 

約1,400億円という巨額を投じて、インドの農機大手であるエスコーツを子会社化すると決断したのです。

 

子会社化の発表当時、クボタの北尾裕一社長は「(当時2%程度にとどまっていた)インドでのシェアを2030年までに25%に引き上げたい」と語っています。

 

2023年現在、クボタのインドでのトラクターのシェアは約13%。ここから、2030年に向けてシェア拡大が続くか、期待して見守りたいと思います。

 

②【8113】ユニ・チャーム:インド市場で介護用オムツが好調!?

 

紙オムツの「ムーニー」や「マミーポコ」、生理用品の「ソフィ」で有名なユニ・チャーム。

アジアやアフリカなど、新興国市場への進出にも積極的な企業です。

 

同社は紙オムツや生理用品、介護用オムツなど、年齢に応じて必要となる商品を幅広く販売しています。

 

そのため、紙オムツを買えるような経済力をつけた新興国を開拓すれば、その国の人口構成が老いたとしても、長い期間収益を上げられるのです。

 

そうした強みを持って開拓を進めたインド市場には、1つ問題がありました。

 

というのも、インドには宗教上の理由から生理を「不浄」だとする考えがあり、生理用品の普及がなかなか進まなかったのです。

 

同社は生理用品の市場を拡大するために、ひいては女性が生理の時期も快適に過ごせるようにと、今もインドで教育活動を続けています。

 

ところで、直近8月4日に開示したユニ・チャームの23年12月期第2四半期の決算短信には、「インドでも大人用排泄ケア用品の需要が高まっていることから、商品ラインアップの拡充を図った」と記載されています。

 

生理用品では苦戦していますが、介護用オムツがすでに売れ始めているようです。

 

さまざまな商品を提供できる強みがあるからこそ、インドの社会問題と腰を据えて向き合えているとも考えられます。

 

③【2002】日清製粉グループ本社:中間層の拡大で「パン」が伸びる!

 

前述したように、現在のインドの人口構成は高度経済成長期の日本と酷似しており、当面は中間層の拡大が続くとみられます。

 

新たに生まれた中間層の人々は、余裕がある分、従来よりも少し美味しいものを食べるといったお金の使い方をするのではないでしょうか。

 

消費者の変化を察し、いち早く投資を始めたのが日清製粉グループのオリエンタル酵母工業です。

同社は2017年に約160億円を投じ、インドにパン用イースト(酵母)の生産工場建設を開始。

 

インドでは需要増に供給が追いつかず、常にイーストが不足している状況にあったため、建設を決断したそうです。

 

この工場は2022年8月に完成し、現在はインドのイースト市場でシェア3割を目指して稼働を進めています。

 

23年3月期通期の決算説明会では、「すでにインド市場のシェアを1割程度獲得した」と発表し、23年度中に約2割までシェアを拡大する計画を明らかにしています。

 

インドでは甘めのパンが好まれているようで、嗜好に合わせて商品ラインナップを拡充し、市場に受け入れられているようです。

 

パン業界では「日本品質」への信頼性が高いようですので、今後も順調な拡大が見込まれそうです。

 

インド市場で活躍する日本企業に今後も期待!

 

今回は大企業を中心に取り上げましたが、今後こうした企業の成功例を頼りに、より多くの企業がインド市場に挑戦していく可能性も想定されます。

 

インドはまだまだ未熟な新興国で、経済環境は良くも悪くも不安定です。

ガバナンス(企業統治)の面でも不完全ですので、不正などのリスクは先進国より高いと考えられます。

 

しかし、国内では少子高齢化が見込まれ、中国経済の減速が明らかななか、成長性のあるインド市場で収益拡大を狙う企業の姿勢は大いに評価したいです。

 

投資を行う上でも、ポートフォリオの分散という観点で同国の資産や関連銘柄を組み入れる妙味は十分にあるでしょう。

インド市場で収益拡大を狙う企業の今後に、期待したいと思います。

世界情勢 マーケットニュース 国内情勢 日本株 2023.08.10

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石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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