≪かえるさんの基礎マーケット知識シリーズ≫日銀介入はトレンド転換になり得るか?

株式情報 投資戦略 マーケットニュース 経済指標 2023.08.31

かえるさん かえるさん

僕が本気投資する時に一番大切にすること

 

為替の動きが気になって仕方がないんです!

 

以前少し書きましたが僕の投資スタイルは、
マーケットの大局を見極める事一番の優先順位です。

 

大局って何?

 

大きな政策転換やイベントが起きることで相場の方向性が変化することを僕の中では意味しています。

 

世の中がざわざわし始めた時…

 

例えば中国の景気が悪いだとか米国が利下げするかもだとか日銀がYCC解除だとかのニュースが報道されることが、ここで言う「ざわざわ」です。

 

それが始まってからのテクニカルを全く見ないわけではないです。ざわざわがどの程度マーケットに織り込まれているのかを簡単に計るのにテクニカルは単純明快です。

 

例えばMACD好きな僕としては週足や月足でのMACD位置と世の中のニュースフローを見ながら、大きなイベントが来たときのサプライズがどの程度出るのかも考えたりしてます。

 

基本的に経験則で個人や投信などが強気に傾いたり、海外投資家のフローが売りに大きく傾いたりするとマーケットの転換点になることがよくあるので主体別投資家動向は気にしてみています。

 

また裁定残なども参考にするのは以前お話しした通りです。

 

あまり複雑なことは自己資金運用、それも楽しみでやっているのであまりしません。単純でないと個人の場合継続できません。

 

そんな僕にとって大局が変化するかもしれない局面というのは一番気になりますし一番のチャンスでありリスクであると考えます。

 

大局が変化しない局面、つまりマーケットが順張りで動いているときならその中での細かい投資家のお金の流れ、例えばバリューだとかグロースだとかってのもそれにあたるかもしれませんし、インバウンドなんてのもテーマとして資金流入が期待できたはずです。

 

先月くらいから続いていたインバウンドのざわざわ感が中国の海外団体旅行解禁が近い→決定の流れの中で個人投資家が必ず上値買いを入れてくるだろうと予想し

 

三越伊勢丹
パンパシフィックホールディングス
コメ兵
サンリオ
プレミアアンチエイジング

 

を購入しましたが一部仕手っぽく175様のおかげで爆騰した銘柄を除いて、あまりにも早く勢いがなくなってしまったことで速攻利食い、地合いの悪化度合いを感じました。

 

これを見て大局の変化にベットしている人が一定数以上存在することを身をもって感じポジションをほぼなくしています。(現在日本株一銘柄と米株一銘柄のみ)

 

現状は例えばMACDだと日足と週足がネガティブ転換、月足はまだポジティブ。主体別は今まだ投資家のフロー自体ミックスしたざわざわ感を各投資家がそれぞれの戦略や時間軸で織り込みに行っている状況です。

 

株価は半年先を織り込んでいるとはよく言ったものでまさに現状はその途中。今から半年先もしかすると日銀がYCC解除しているかもしれないし、米国が緩和的政策に転換しているかもしれません。

 

しかし大局を大きく変化させるようなイベントが起きる時、そのサプライズ度合いによっては、テクニカルがどうだとか、ファンダメンタルズがどうだとかそんな細かいこと何一つ効きません。

 

押し目買い神話なんて相場が強いときの順張り的考え。

 

相場経験の長い方ならわかると思います。

 

ですからテクニカルやファンダメンタルズ分析はマーケットの大局感ほどの重要性は僕にはないのです。

 

そんな!

 

『やべっ』

 

とか

 

『すげっ』

 

って局面を如何にとらえるかが重要だと考えているし、そうなる可能性を分析します。

 

一般的にそんな大局を決めるイベントってなんなのかを考えると2つにわかれます。

 

予期せぬイベント
予期しうるイベント

 

例えばリーマンショックなんてのは予期しうるイベントだったと僕は考えます。リーマン1年前にパリバショックがあり、ベアスターンズが飛び十分最悪のシナリオまで描くことが出来たはずです。なんでそんなに悲惨なことになったのか不思議です。

 

一方東日本大震災などは予期せぬイベント、これはどうしようもありません。初動ではマーケットの動きに抗うことなく投資行動をするしか手の打ちようがありません。

 

その点今回書こうと思う為替介入は予期しうるイベント

 

一時1ドル146円を超える勢いを見せた円ですが、今後どういう動きになるのか?が僕の中で今一番気になっています。

 

為替介入とは?

最近、鈴木財務大臣が、

 

『行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取りたい』

 

『過度な変動は望ましくない。市場の動向を高い緊張感をもって注視している』

 

と、マーケットを継続的にけん制しています。

 

これは所謂口先介入的なものです。

 

マーケットでは介入か?

 

との思惑を呼び若干円売りが止まり現在145円中盤から後半の取引となっています。

今後の展開としてはメディアが日銀と政府が緊急会合なんてニュースフローが出てくると何か起きるかもしれないという雰囲気をさらに作り出すかもしれません。

 

昨年来1ドル130‐140円台まで円安が進んでいる今の為替水準は実に1998年振りです。

この1998年はマクロイベントがいくつかあって、さらに世界の金融市場で無視できないいくつかの危機が起きたこともあり為替が大きく動きました。

 

■1995年4月:1ドル=79.75円まで円高ドル安が進行
■1997年7月:アジア通貨危機が発生
■1997年11月:北海道拓殖銀行と山一證券の破綻
■1998年8月:1ドル=147.66円まで円安ドル高が進行
■1998年8月:ロシア危機が発生。
■1998年9月:LTCMショック。その影響で1998年10月には1ドル=115円前後まで円高ドル安が進行

 

そういえば、以下ちょっとしたイベントになり得る話が直近ありましたね!

中国恒大集団、NYで連邦破産法15条の適用申請-米国内資産保全

 

(余談)
分かる人は分かりますが今回の中国恒大集団は連邦破産法15条(チャプター15)です。

 

米国で一番よく知られているのは連邦破産法11条(チャプター11)です。これは再建案に乗っ取り再建を目指します。

 

次は連邦破産法第7条(チャプター7)でこれは完全に清算です。

 

その点、チャプター15は海外企業の米国内資産の保全が認められます、米国外の資産に関しては債務再編を継続する。

 

またこういう時期に必ず出てくる農林中央金庫(農中) (笑)

 

今回は中国恒大集団の債券?か何かを買っているなんてXのポストを見ました。真偽は分かりませんが、彼ら本当にヘッジファンドのような運用するし、怪しい商品の引き取り手のような印象は確かにあります。

 

証券会社の超良いお客様

 

日本のバブルの時も中心だったし、リーマンの時のCDO(債務担保証券)保有での大損など急落の局面では必ずと言ってよいほど名前が挙がる日本の伝統的金融機関。

 

ニュースフローには要注意です。

 

話を戻すと…

過度な為替の動きに対して財務省が日銀に実行させるのが『外国為替平衡操作』


つまり介入です。

 

日銀が介入しますが実行させるのは財務省です。

下記は主な日銀介入実績および為替チャートです。

 

 

 

驚くことに円買い介入は円売り介入と比較すると非常に少ないことが分かります。

昨年以前に円買い介入を行ったのが1998年、つまりドル円が144円以上に円安に振れたときだったということ、昨年は150円を超えたところで単独介入に踏み切ったこともありここにきて日銀の介入がまことしやかに噂されているのでしょう。

 

なぜ円買い介入は少ないのか?

 

介入には大きく2つのパターンがあります。

 

一つが単独介入、もう一つが協調介入です。

 

より大きな効果が得られるのは協調介入ですが、介入金額だけを見ると単独介入のほうが圧倒的に大きい。それはなぜでしょうか?

協調介入の場合国際的に現在の為替の過度な動きの水準訂正を狙ったものであり、介入を行う前に日米欧による合意が必要です。

 

それ故協調介入というだけでアナウンスメント効果が得られます。金額の割に効果が出ることから効率よいし、ここぞというときに使う伝家の宝刀のようなものといえます。

問題は日米欧にそれぞれメリットがないとなかなか協調できない点

それ故協調介入は歴史的に見て回数が少ないのです。

御覧の通り日銀単独介入のほうが回数も金額も多いが効果は正直微妙です。

 

『じゃあ!協調介入やればいいじゃん』

 

残念ながら物事はそんなに簡単ではありません。

そもそもアメリカは強いことが美徳の国であることは皆さん良く知っていることでしょう。

理由はどうであれ現在のドル高状態をあえて弱くする(ドルを売る)にはそれなりの根拠が必要となります。

 

アメリカの金利上昇トレンドが落ち着き、10年債金利が下がりマーケットで円が買われることには何の問題もないでしょうが、協調介入という『為替操作』に近い形でのトレンド是正には抵抗感があると思われます。

 

事実1998年の協調介入時も当時財務長官だったルービンは協調介入には否定的だったとの話は有名です。

当時は中国の人民元切り下げリスクや地政学的リスクを相当考えたうえで仕方なく協調介入に踏み切ったと言われています。

それくらい大義名分がないとそれには踏み切れません。

 

因みにルービン氏は財務長官を退官した後1999年10月にシティグループ経営委員会委員長に就任したので一度だけロンドンオフィスで会ったことがあります。相当な堅物、オーラが半端なかったことを覚えています。

話を戻すとそんなアメリカとドル売り円買い協調介入するには日本も相当な準備が必要となります。

日本は未だに緩和的な政策をとっている数少ない国の一つ。

一方欧米はインフレ対応で金融引き締め政策をなんだかんだ言いながらまだ継続していて、その金利差が現在の円安トレンドの要因であるとすればその円安を止めるための協調なんて絶対考えられません。

言い換えればもし今の為替水準を何かしら強制的に訂正しようと財務省や日銀が考えるならばとり得る行動は単独介入しかなさそうです、昨年のように。

単独介入は先ほども述べましたが歴史的に見て効果は限定的であると先ほど書きました。

 

そのような限定的効果しか得られない可能性のある単独介入に財務省は踏み切るのでしょうか?

 

株式情報 投資戦略 マーケットニュース 経済指標 2023.08.31

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この記事を書いた人

かえるさん

元クレディ・スイス証券株式本部長マネジングディレクター
日系証券個人営業から証券人生をスタート。その後ロンドンと東京を拠点に20年以上に渡って外資系証券会社の主にトレーディングデスク及び各マネジメント職を歴任。2019年退職。得意分野はフローの裏側分析及び市場構造分析。現在はXやnoteなどで個人投資家向け株式投資の知識提供中心に悠々自適生活を送る。趣味は食とクルマ。

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