長期投資に向いた銘柄を探せ!今こそ見たい「利益率の改善度合い」
株式情報 投資戦略 日本株 2023.08.14
日本でも物価上昇が続き、2024年からは新NISA制度が開始となる見通し。
10年、20年先を見据えて「資産運用を何とかしたい」と考える方も増えているのではないでしょうか。
そこで今回は、10年、20年先を見据えたときに、勝ち組となる期待の高い銘柄の選定方法を考えたいと思います。
ずばり鍵を握るのは、「利益率」だとみているのですが、いったい何故なのか、銘柄の具体例も出して詳しくお伝えします。
目次
利益率をみれば「インフレ時代」の競争力を見極められる
今回、利益率に着目するのは、足元で昨年急速に進んだコストの上昇に一服感が見られているからです。
2022年に入り、円安や原油高が進んだことで、多くの企業の利益率が悪化しました。
多くの企業が、コスト高の影響に苦しんだのです。
(日本 企業物価指数(前年比))
ただ、企業物価指数を見ますと、2023年に入ると上昇率がピークを打って下落し始めています。
このため、値上げを行うなどして物価高に対処してきた企業であれば、物価上昇ペースの落ち着きとともに、利益率が改善しているはずです。
値上げができるのは、多少値段が上がっても買う人が多い魅力的な商品を持っているからだと考えられます。
原材料など仕入れ価格の上昇基調が続く時代には、こうした商品力が物を言うのです。
今の時点で、このような価格転嫁ができずに苦労している企業は、今後についても不安だと言わざるを得ません。
23年4-6月決算、利益率が改善していた業種は?
では、実際にどんな業種・企業の利益率が改善しているのでしょうか?
7月1日から8月2日までに決算発表があった銘柄について、前年同四半期比で利益率の改善度合いが大きい100銘柄を抽出してみました。
小さい会社ですと、一過性の要因での振れが大きくなるため、時価総額1,000億円以上の企業に限定して抽出しています。
抽出した100銘柄について、どの業種に属しているかをまとめると、このような結果となりました。
以下のセクターでは、業種全体にまたがる改善要因があったとみられます。
・電気・ガスセクター・・・燃料高の価格転嫁が進展
・陸運セクター・・・固定費が高い分、人流の回復が利益率を押し上げ
・機械セクター・・・中国のゼロコロナ政策解除などが追い風
・輸送用機器セクター・・・半導体不足の解消で自動車生産が大きく回復
企業独自の要因での利益率の改善度合いが大きい銘柄は?
業種別の動向を認識しておくのも重要ですが、今回知りたいのは、企業独自の要因で利益率が改善している銘柄です。
そこでここからは、業種全体としては利益率が悪化しているのにも関わらず、個別では利益率の改善度合いが大きくなっている銘柄を取り上げたいと思います。
そのためにまず、利益率の悪化度合いが大きくなっている銘柄を100銘柄抽出して、どんな業種の銘柄が多いかを調べてみました。
特に利益率の悪化した銘柄が多いのは、以下の業種でした。
次に、この業種に属しながらも、利益率の改善度合いで上位に入っていた銘柄を抽出していくと、以下のような結果となりました。
ここから、足元の業績動向が特徴的な銘柄を紹介していきます。
・電気機器:【6501】日立製作所
【6501】日立製作所 日足チャート(2023年2月16日~8月4日)
※TradingView(https://jp.tradingview.com/)のチャートを使用しています。
同社は以前から、今後需要が拡大するであろうデジタルや脱炭素分野に事業を集中させる戦略を掲げてきました。
戦略が奏功し、2020年に買収した電力システム会社である日立エナジーが、再生可能エネルギーへのシフトに伴うインフラ整備の需要を取り込んで、好調となっています。
直近の決算短信では、部材価格高騰の影響が継続しているものの、大半を売り値への転嫁で吸収したとも発表しています。
・化学:【4091】日本酸素ホールディングス
【4091】日本酸素ホールディングス 日足チャート(2023年2月6日~8月4日)
この会社は、産業用ガスで国内首位で、半導体などのエレクトロニクス製品を製造する際に
使用する電子材料ガスの需要が底堅く推移しています。
ガスという絶対に必要な製品の性質上、コスト高の価格転嫁もしやすかったと考えられます。
・サービス業:【9708】帝国ホテル、【4661】オリエンタルランド
サービス業では、帝国ホテルや東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの利益率改善が顕著です。
経済活動正常化の効果もあるかと思いますが、これらの企業は高いブランド力を有してます。
そのため、値上げがあっても行きたいというファンを獲得していることは言うまでもありません。
・情報・通信業:【9697】カプコン
【9697】カプコン 日足チャート(2023年1月5日~8月4日)
情報・通信セクターは成長企業が多いため、そもそも事業投資を要因とした赤字が続いている【3994】マネーフォワードなど、利益率の面では評価しにくい銘柄も入っています。
ただ、企業努力による部分というのも勿論見受けられます。
たとえば、【9697】カプコンは、ストリートファイターやバイオハザードなどの人気作が収益に寄与。
24年3月期第1四半期の売上営業利益率は54.8%という驚異的な数字を叩き出しました。
ゲーム関連の企業は、ヒット作の有無によって利益率が大きく振れやすい傾向がある点には注意が必要ですが、一部の消費者から熱烈に支持されるブランド力が収益拡大に寄与したのは間違いないと思います。
・小売業:【2651】ローソン
【2651】ローソン 日足チャート(2023年2月1日~8月4日)
小売業には、経済活動正常化の影響が大きいとみられる銘柄が多く入ってきています。
【2651】ローソンもその一角ではありますが、店内調理サービスの拡充が功を奏している点は大いに評価できます。
お弁当などのファストフード分野の粗利益率が、前年同期の40.2%から41.0%に上昇しているんです。
高い競争力を持つ銘柄を資産形成の味方につけよう!
ここまで見てきた銘柄は、どれも堅調な株価推移となっています。
市場でも、利益率の改善を評価した買いが進んでいることが分かりますね。
24年3月期第1四半期(4-6月)の決算発表は、銘柄によって評価が大きく分かれた印象がありますが、利益率が投資家にとって1つの基準となったことは明らかです。
今後もインフレが続けば、利益率の重要度はさらに増すことでしょう。
是非、ご自身のお持ちの銘柄や気になる銘柄についても、利益率が改善しているか、値上げができているかといった観点で見てみてくださいね。
株式情報 投資戦略 日本株 2023.08.14
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
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