【高値更新銘柄は危ないの?】テクニカルアナリストがまじめに解説!
株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2023.07.12
高値更新をするような上昇銘柄はどんな相場にでも現れます。
急上昇中の銘柄に飛び乗るというのは、一般的に危険と言われていますが、「本当に危険なのか?」という部分をまじめに解説してみます。
目次
高値を更新する銘柄がなぜ上昇するのか?
株価が上昇するというのは、簡単に言えば人気投票と一緒で、この企業は「買い」と思っている人が「売り」と思っている人よりも多いことを示しています。つまり、何らかの要因で人気化し、買いが集まっているということです。
ではでは!
「上昇中の銘柄に投資をすれば勝てるのか!?」
「人気の銘柄だけを選べばいいのか!?」
と、いうと、そういうわけではないんです。
そもそも、上昇していく銘柄にも様々なパターンがあります。その中でも今回解説するのは、あくまで【高値を更新する銘柄について】ということを念頭に置いてくださいね。
まず【高値更新】というのは、株価が一定の期間で到達したことがない価格まで上昇した状態を指します。
では、一般的になぜ高値更新をする銘柄は上昇するのか?それは価格帯別の出来高を見ることで説明することが出来ます。
価格帯別の出来高とは…?
価格帯別の出来高というのは、その価格帯で売買が成立した株数を表示したものです。グラフが高いところは、過去にそこで売買をした投資家が多かったことを指します。
つまり、価格帯別の出来高が多いところは、上昇局面では売り圧力が強まりやすく、下落局面では、買い圧力が強まりやすくなります。
これらを踏まえて、以下のチャートをご覧ください。
こちらの銘柄は【2780】コメ兵ホールディングスの1年間の日足チャートです。
一般的に上昇トレンド、高値更新(高値追い)の状態です。そして、左の薄ピンクの棒グラフが価格帯別出来高を表しています。
まず、直近の株価を見ると、ローソク足を積み上げながら上昇していることが分かると思います。
毎日のように高値を更新しており、正に無双状態です。
さらに、価格帯別の出来高を見てみると、株価がもみ合っている2,500円~3,000円の間が最も棒グラフが高くなっていることが分かります。これはここで売買が成立した株数を示しているので、簡単に言ってしまうと、ここで株を保有している人が多いということになります。
総合的に見れば、この銘柄を買った投資家は利益が出ている方の方が多いと見ることができます。そして、棒グラフは株価の上昇に合わせて、低くなっています。
高値更新をする銘柄が強いと言われる理由
では、なぜ高値更新をする銘柄は強いのか?
その答えは単純明快で、【その株を保有している人が少ないからです。】
これは自分がその株を保有していることを想像すれば保有している人の心理状態がよく分かると思います。
例えば、1,000円で購入した株が500円まで下がったとします。損益でみれば、マイナス50%なので精神的に参っている状態だと思います。
しかし、株価は息を吹き返して、600円…700円…800円…と上昇してきた時の保有者の心理はどういったものでしょう?
「今なら逃げれれば数万円の損失で済む!」
「ここからまた下がるかも…売り時だ!」
「あともう少しで買値まで戻るかも!」
と、大きな含み損を抱えた投資家はこのように思うのが、一般的かと思います。
この精神状態が売却を決める基準になっているので、「稼ぎたい!」という心理よりも「含み損を解消したい!」という心理が多くの人に強く働き、それが売り圧力となるんです。
ではこういったパターンはどうでしょう?
こちらの銘柄は【3990】UUUMの1年間の日足チャートです。価格帯別の出来高で見ると、800円付近が最も出来高が多く、630円付近が次に多い棒グラフとなっています。
例えば、この出来高を二つに分類すると、このようになります。
①天井形成(800円)
②底値形成(630円)
①の天井形成は、800円付近で持っていた人が多く、一時600円付近まで下落。
25%近く下落していたわけですので、①の価格帯で保有していた人達は売りを意識するわけです。テクニカル的にも200日移動平均線(オレンジの線)が台頭していることから、節目としても意識されやすく、上がったとしても、ここが一旦の節目として意識されやすいということです。
②の底値形成は、600円付近で出来高が増えており、この価格帯が一旦の底打ちだと判断したからこそ、出来高は2番目に厚いが株価としては横ばいの推移をしています。
売られ過ぎた株価に対して、押し目水準を狙った売買が底打ちの起点となり、800円付近まで上昇。心理的に600円付近で拾えていれば、+33%近い上昇をしており、価格帯別の出来高を見ていれば、この価格帯が一旦の売り時とも判断出来るわけです。
こういった株価水準を上抜けるような強い上昇が起きれば、次の出来高が厚い層までは軽く上昇する可能性が高まります。
つまり、【3990】UUUMに関しては、800円を超えるような強い上昇があれば、900円付近までは上昇する余地があると考えることが出来ます。
高値追いと底打ちの判断基準は?
ここで今回、私がお伝えしたかったのは、高値追いと底打ちのメカニズムについてです。
先にお話した【2780】コメ兵ホールディングスは見ての通り、高値追い状態のチャートです。
そして、【3990】UUUMは底打ちからの反発チャートですので、上に壁が複数意識されるため、上値が重くなりやすいということです。
短期的に上昇し続ける銘柄をただの高値と思ってしまうのは、折角の投資機会を逸しているのと同義になります。
「いくらなんでも上がり過ぎた」
「こんな高いところでは買いたくない」
という理由で、高値更新中の銘柄を買うのを嫌う人もいますが、株価上昇を妨げる壁がないというのは、一種の無敵状態とも言えます。
まとめ
もちろん株式投資に絶対はありませんが、このようなメカニズムを知っているのと知らないのとでは、事実として損益に大きな差が生まれます。
ここより下がないだろうで下がった銘柄ばかりを拾うのは、中長期的な投資手法でみれば、王道ではありますが、そればかりでは芽吹くまでに時間が掛かってしまったり、運が悪ければ更に下落する可能性もありますよね。
これだけ日経平均株価が上昇したのに、その恩恵が自身のポートフォリオに反映されていないのであれば、それはシンプルに「飛び乗る」という思考回路を自ら排除してしまっているのだと思います。
株価が上昇しているというのはそのすべてに理由があり、それをベースに上がっているのであれば、素直に流れに乗ることも重要な投資テクニックです。
ただ、高値更新の銘柄はいつ下がるかわからないというデメリットがあるため、逆指値などを行い、リスク管理をする必要はありますが、高値更新をする銘柄にはしっかりと投資をするだけの利点があるということを理解していれば、投資における選択肢が増えていくはずです。
株式情報 投資戦略 相場展望 日本株 2023.07.12
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)日本投資機構株式会社 アナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。
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