AI特需やメモリ価格の回復を背景に、世界半導体市場は歴史的な拡大局面を迎えようとしています。
本記事では、2026年の市場予測データをもとに、成長率の根拠やシリコンサイクルの現在地、そして2030年に向けた100兆円市場へのロードマップを詳細に解説します。
投資判断に不可欠な最新の将来性・見通しを押さえておきましょう。
2026年世界半導体市場の規模予測|強気シナリオと成長率

AI需要の爆発的な拡大を背景に2026年の半導体市場はどこまで伸びるのか、最新の数値予測と成長シナリオを解説します。
市場規模は最大8,200億ドルへ拡大予想
2026年の世界半導体市場は、AIブームによるデータセンター投資の拡大や、HBMを中心としたメモリ市況の上昇、自動車向け半導体需要の増加を背景に、強気シナリオでは7,800億ドルから8,200億ドル程度まで拡大すると見込まれます。
これは、2025年の市場規模(7,000億ドルから7,300億ドル程度)と比較して、約9〜12%の成長に相当します。
さらに、AI向けGPUや専用アクセラレータ需要が加速し、メモリ価格の上昇と出荷増が重なった場合には、市場規模が8,200億ドルから8,500億ドルまで上振れる可能性もあります。
この場合、前年比では約12〜15%の成長となり、過去の半導体業界の年成長率としてはかなり高い水準となります。
今後の成長を支える3つの構造的ドライバー
WSTSの基本線(約8〜10%成長)よりも高い伸びを見込む理由としては、まずジェネレーティブAIの導入拡大による先端ロジックの需要増があります。
次に、データセンター向けの設備投資サイクルが再加速していることも要因です。
さらに、HBMを含む高付加価値メモリ価格の上昇や、車載半導体の構造的増加によるEV化・自動運転化の進展も、市場を押し上げる重要なドライバーとなります。
これらはいずれも一過性ではなく構造的な要因であり、2026年の成長を後押しする要素です。
外部要因リスクはあるものの8,000億ドル到達は十分射程圏
ただし、この強気シナリオは、市況悪化や在庫調整の再燃、地政学的リスクなどの外部要因によって変動する可能性もあります。
それでも現時点では、AIを中心とした需要の質的変化が市場を押し上げており、2026年に8,000億ドル台に到達することは十分に射程内と考えられます。
まとめますと、2026年の世界半導体市場(強気シナリオ)は7,800億ドルから8,200億ドル、上振れシナリオでは8,200億ドルから8,500億ドルと予測されます。
前年比は強気ベースで9〜12%、上振れケースでは12〜15%の成長が見込まれます。
主な上振れ要因は、AI需要の加速、データセンター投資の拡大、HBMを中心としたメモリ価格の回復、そして車載半導体需要の増加です。
シリコンサイクルは「スーパーサイクル」へ突入?

メモリ価格の高騰や在庫の枯渇など、市場には10年に一度の好況期「スーパーサイクル」の兆候が表れています。
過去のシリコンサイクルとの違いや持続性を分析します。
DRAM価格上昇と在庫不足が示すサイン
2025年から2026年にかけて、メモリー市場ではDRAMやNANDフラッシュを中心に価格が上昇しています。
特にDRAMの契約価格は年内に最高値を更新するなど、顕著なアップサイクルの兆しが見られます。
世界のDRAM供給者の在庫水準は歴史的に低く、平均で約3.3週間分にとどまっており、価格上昇と供給逼迫が同時に起きている典型的なスーパーサイクルの条件が整っています。
こうした状況は、AIやデータセンター向けの需要急増による構造的な需要増加も影響しており、従来のPCやスマートフォン用途以上のメモリ容量が必要とされています。
過去のシリコンサイクルと今回のサイクルの違い
過去のシリコンサイクルと比べると、今回のサイクルにはいくつかの違いがあります。
従来はPCやスマートフォン向けメモリの需要が中心でしたが、現在はAI向け高帯域幅メモリ(HBM)や大容量・高速メモリ、サーバー用途、車載用途など、用途が多様化しており、需要の裾野が大きく広がっています。
また、供給側の寡占構造や技術標準の存在により、生産調整がしやすい点は過去のサイクルと共通していますが、需要の質や成長構造が異なる点が特徴です。
シリコンサイクルは2027年にかけてピークへ?
こうした状況から、現時点では10年ぶりのスーパーサイクルに突入した可能性は高いと考えられます。
特にAI向け需要の本格化、供給逼迫と在庫の枯渇、高付加価値メモリの普及といった条件がそろっており、2025年から2027年にかけてピークに達する可能性があります。
過去のスーパーサイクルのように、価格上昇が設備投資の増加や過剰供給を誘発するリスクは残りますが、現在は需要構造の変化が強く、単純なバブルとは異なる点が特徴です。
総じて、現状の需給構造や用途の拡大、在庫水準を踏まえると、メモリー市場は10年ぶりのスーパーサイクルに入った可能性が高いといえます。
スーパーサイクルの死角|供給過剰で二極化も

スーパーサイクルへの期待が高まる一方で、市場の足かせとなり得るのが「供給過剰」の問題です。
特に中国では、政府の半導体自給政策や産業振興策により、旧世代のレガシー半導体(28nm以上の成熟プロセス品)の生産能力が増強されています。
これにより、特に汎用DRAMやNAND、マイクロコントローラー、低性能ロジックなどの旧世代品市場で供給過剰が発生する可能性があります。
供給過剰は価格下落を招き、既存の成熟品市場における収益性を圧迫するリスクとなります。
価格破壊リスクのグローバル市場への影響
この価格破壊リスクは、グローバルな半導体市場にも影響を与える可能性があります。
従来、成熟品市場では日本や米国、台湾のメーカーが安定的な供給と利益を確保していましたが、中国勢の増産により価格競争が激化すると、既存メーカーのマージンが圧迫される懸念があります。
また、価格低下が短期的にはエンドユーザーにとって恩恵となる一方で、長期的には設備投資の回収や新規開発投資の意欲を削ぐ可能性もあります。
特に、成熟プロセス品を手がける装置メーカーやテスト・検査装置メーカーにとっても、需要が減少する局面では受注減少の影響を受ける可能性があります。
ただし、先端プロセスや高付加価値半導体(AI向けGPU、HBM、SiCパワー半導体など)については、依然として供給逼迫や高付加価値化が進んでおり、価格破壊の影響は限定的です。
総じて、中国のレガシー半導体増産は、成熟品市場における価格下落リスクとして注視すべき要因です。
半導体市場全体の収益性や設備投資判断に影響を与える潜在的なリスクとして認識しておく必要があります。
2027年以降の未来予測|100兆円市場への道

このように一部で短期的な調整リスクはあるものの、視座を長期に向ければ、市場は拡大の一途をたどると考えられます。AIブームの次に来る「6G」や「量子コンピュータ」の実用化を見据え、2030年に向けて半導体市場は新たな成長ステージへ突入するでしょう。
次世代技術「6G・量子」が拓く新市場
2027年以降の半導体市場は、従来のデータセンター向け需要やAI、車載半導体に加え、6G通信や量子コンピューターなど次世代技術が市場を牽引する長期的な成長フェーズに入ると予想されます。
6Gは2030年代の商用化を見据え、高周波帯・ミリ波通信、高速・低遅延通信のために、新型SoCや高周波半導体、SiC/GaNなどのパワー半導体需要を大幅に押し上げることが期待されます。
また、6G端末や基地局向けの高集積半導体は、データセンター向けAIチップと連動して高性能プロセスの需要をさらに拡大させるでしょう。
量子コンピューターについても、2027年以降は実証実験段階から商用化に向けた準備が加速すると見込まれます。
2030年「半導体市場規模100兆円」へのシナリオ
長期的には、これらの技術革新と既存のAI・データセンター・車載需要の積み上げにより、半導体市場は2030年頃までに100兆円規模への拡大が見込まれます。
このロードマップでは、まず2026〜2027年にかけてAI・HBM・データセンター需要やWindows 10リプレース特需などの短期的成長要因で市場を押し上げ、次に前工程・後工程への微細化投資や3Dパッケージング投資がスーパーサイクルを支えます。
その上で、6Gや量子コンピューターなどの次世代技術が新たな成長ドライバーとなる構造が形成されます。
AIバブル論を否定する「HBM」と「Windows特需」

市場規模の拡大を支えるのは、単なる期待感ではありません。
現場ではHBM(広帯域メモリ)が物理的に枯渇しており、さらに2025年10月にはWindows 10サポート終了という強制的な買い替えイベントも発生しています。この需要の強さが、バブル崩壊論への反論材料となっています。
世界シェアを持つ「日本株」が勝ち組になる理由

この成長市場で具体的に利益を上げるのは、AIチップの微細化や3Dパッケージングを支える製造装置メーカーです。
東京エレクトロンやレーザーテックなど、世界シェアを持つ日本企業こそが、地政学リスクを乗り越えてスーパーサイクルの恩恵を最も享受できるポジションにいます。
まとめ|半導体市場は2026年に8,000億ドル到達か
2026年の半導体市場は、AI需要とメモリ価格の回復を両輪として、8,000億ドル規模への拡大が現実味を帯びています。
特に注目すべきは、今回の上昇局面が一過性のブームではなく、AIやデータセンターといった構造的な需要変化に支えられた「スーパーサイクル」である可能性が高い点です。
短期的には2027年頃のピークを意識しつつも、長期的には6Gや量子技術による100兆円市場への成長ストーリーが描けるでしょう。
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執筆者情報

Marina Bay Capital Advisors Pte Ltd (シンガポール) CEO / 記事監修
大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券など大手証券会社の投資調査部にてシニアアナリストとして日本株を担当。日経アナリストランキング首位。日本経済新聞、テレビ東京等のメディアにも多数出演。その後、世界有数の株式ヘッジファンドにて日本株ロング・ショートファンドの運用に従事。日本株運用のマネージング・ディレクター、日本株運用責任者などを歴任。ロング・ショート運用を通じて、国内外の様々な業界や企業に精通。
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