【大手ハイテク企業】の決算から見る米国株の行方!!成長性に陰りも…?

世界情勢 マーケットニュース 2023.10.30

石塚 由奈 石塚 由奈

株式市場は現在、世界的に低調な値動きを継続しています。

 

一部では、10月中旬から本格化する米大手ハイテク企業の決算発表が、株式市場全体を押し上げるとの見方もあったのですが、不発に終わりつつある印象です。

 

結果として、GAFAM(グーグル、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、アップル、マイクロソフト)にテスラとエヌビディアを加えた「マグニフィセントセブン」と呼ばれる米大手企業の株価は、軒並み低調な値動きとなっています。

 

これらの銘柄は今年の米国株高をけん引してきました。

 

その分、ここから調整局面に向かうのであれば、株式市場全体への影響も大きくなると考えられます。

 

日本株の方向感にも関わると考えられますので、少し詳しく決算内容を見ていければと思います。

AI競争の激化で勝敗分かれる

 

今回の決算シーズンで、特に決算発表翌日の下げ幅の大きさが話題となったのが、グーグルの親会社であるアルファベットです。

 

決算翌日の下げ幅は9.5%に達し、2020年3月以来の大きさとなりました。

 

同社の7-9月期の純利益は1株当たり1.55ドルと、市場予想の1.45ドルを上回ったのにも関わらずです。

 

決算全体は広告収入の回復で堅調であったものの、成長部門とされるクラウドの収益が市場予想を大きく下振れたことが嫌気されました。

 

グーグルは、クラウドに生成AIを連携させてサービスをより便利にするよう取り組んできましたが、市場の期待よりも収益が伸び悩んでしまったのです。

 

一方、同じく生成AIを簡単に使えるようにしたクラウドサービスを手掛けており、グーグルとシェアを競い合うマイクロソフトは、決算発表が好感される場面も見られました。

 

生成AIに対する期待感は高まりすぎたか

 

しかし、マイクロソフトの株価も上値を追うには至らずに、失速しています。

 

地合いの悪さもあるでしょうが、AIに関する期待感がすでに高まりすぎていた可能性も否めません。

 

また、S&P500指数と前述のマグニフィセントセブンの推移を比べてみると、今年の米国株の上昇は、マグニフィセントセブンがけん引したものであることが良く分かります。

 

マグニフィセントセブン(青線)とS&P500指数(オレンジ線)の推移の比較

(2022年12月13日~2023年10月25日)

 

今年はそもそも年始から、景気の先行きに関してネガティブな見方が多く聞かれました。

 

結果として景気は想定よりも底堅く推移しましたが、先行きに強気になれる状況ではありません。

 

そうしたなかでも、AIによる生産性の向上で、大手企業は勝ち続けるとの期待感からマグニフィセントセブンが資金を集めました。

 

しかし、高すぎる長期金利、米議会の混乱、景気の先行き不透明感が、いよいよ大手ハイテク企業の上値も抑え始めたとの見方ができます。

 

「コストカット」による好決算は評価されず

 

旧フェイスブックであるメタ・プラットフォームズの決算発表も、数字上は強い内容となりました。

 

同社が発表した7-9月の1株利益は4.39ドルと、前年同期の1.64ドルから大幅に増加。

 

ただし、主因は従業員の削減と幅広いプロジェクトの整理によるコストカットです。

 

広告事業の売上高も回復していますが、同社のスーザン・リーCFOは2024年の収入見通しについて不透明と述べました。

 

コストカットによって収益を押し上げたとしても、トップラインの成長が望めなければ株価はいずれ頭打ちになってしまいます。

 

こうした視点は、本格化しつつある国内企業の決算発表を見る上でも重要になってくるでしょう。

 

世界の分断が米国企業の成長を阻害?

 

グローバル企業にとって、世界情勢の混迷も他人事ではありません。

 

今年の9月には、中国が政府機関でのiPhoneの使用を禁止しています。

 

さらに中国は政府支援の機関、国営企業にも使用禁止を拡大する計画だと伝わり、アップルの株価が下落する場面が見られました。

 

中国はアップルにとって最大の海外市場であるだけに、今後の業績への影響が警戒されます。

 

また、現在発生している中東での戦争について、どのようなスタンスを取るかも、グローバル企業にとってデリケートな問題です。

 

イスラエル側に肩入れしすぎて、イスラム世界の反感を買った場合、成長性のある市場を失うことにもなりかねません。

 

かといって曖昧な態度を取り続けるわけにもいかないというのが、難しいところでしょう。

 

かつては、米国の大手企業が世界中の未開拓地を取り込んで成長し続けるとの見方もありましたが、そうした見方は幻想に代わりつつあります。

 

未来は過去の延長には非ず

 

「これだけパフォーマンスが良かったから、これからも良いだろう」と考えて投資計画を立てる人がいます。

 

たしかに、それで上手くいくことも多いのは事実です。

 

しかし近年は、感染症の拡大、戦争の勃発、数十年ぶりのインフレなど、予想だにしなかったことが次々に起きています。

 

過去のパフォーマンスを過信せずに、資金の分散やリスク管理を行う必要が高まっている局面だと思います。

 

世界情勢 マーケットニュース 2023.10.30

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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