【著名投資家が利益相反!?】 投資の神様ウォーレン・バフェットは何に違反してしまった?
世界情勢 マーケットニュース 2023.11.15
11月9日、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が、同氏が会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイの倫理規定に違反していた可能性があると報じました。
「投資の神様」や「オマハの賢人」とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏の名を耳にしたことがある方は多いと思います。
運用資産2000億ドル(20兆円)を超えるバークシャー・ハサウェイの会長兼CEOである同氏は株式市場に大きな影響を与えており、その影響力は日本株にも及びます。
2020年には日本の5大商社の株式をそれぞれ5%取得したと公表しています。
当時バークシャー・ハサウェイが投資したのは、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事であり、どれも2020年の公表時から大きく上昇しています。
このように、影響力の大きい著名投資家である同氏が倫理規定に違反していた可能性と報じられたため、金融業界も驚いています。
目次
報道の信憑性は?
ウォーレン・バフェット氏が倫理規定に違反していた可能性があると報じたのは、「プロパブリカ」という米国のニューヨーク・マンハッタンに拠点を置く非営利の報道組織です。
「プロパブリカ」は当局の発表や権力サイドの情報に依存せず、長期間にわたる独自取材によって行政や企業の不正・腐敗を明らかにする「調査報道」を専門としています。
2011年4月には金融危機につながったウォール街の慣行をめぐる報道で国内報道部門を獲得しており、同社の「調査報道」には一定の信憑性があると考えられます。
今回、「プロパブリカ」は独自入手した内国歳入庁(日本の国税庁に相当する)の内部資料をもとに報道を行っているとしています。
この内部資料については真偽確認が進んでいますが、同社の報道精神や少なくとも資料を証拠としている点からすると、今回の報道には一定の信憑性があると思われます。
ウォーレン・バフェット氏が指摘された法令順守違反とは
今回、利益相反の恐れや法令順守違反の可能性が指摘されたのはウォーレン・バフェット氏が、自らが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの保有銘柄を個人口座で売買していた点です。
同氏はバークシャー・ハサウェイ株以外の株式を個人で保有していると公言していますが、2016年の同社株主総会では、バークシャー・ハサウェイと利益が対立する可能性があるような銘柄には手を出さないようにしていると述べていました。
また、バークシャー・ハサウェイの倫理規定では、社員が個人的に株を取引する前に、バークシャーの実際の証券取引と予想される証券取引のすべてを公表しなければならないとされています。
しかしながら、今回の報道では過去20年間で、バークシャー・ハサウェイが売買した同じ企業の株を、同じ四半期またはその前の四半期に、同氏が個人のポートフォリオで売買を行っていたことが判明したとしています。
報道では、2009年4月下旬に米銀大手ウェルズ・ファーゴ株2000万ドル相当をバフェット氏は個人口座で売却していたとされ、その数日前に同氏は米経済誌のインタビューでウェルズ・ファーゴの経営を称賛し、株価が上昇していたとされています。
なお、バークシャー・ハサウェイは遅くとも2000年からウェルズ・ファーゴ株を保有しており、22年1〜3月期にすべて手放したことが米証券取引委員会への提出資料からわかっています。
そのほか、ジョンソン・エンド・ジョンソン株やウォルマート株についても、バークシャー・ハサウェイが保有していた時期に同氏が私的に取引していたとも伝えられています。
投資会社に従事する人間であれば、自己と自社の利益相反を疑われるような行為を避けるのが一般的ですが、今回の報道は利益相反の疑いを高めるものとなっています。
ウォーレン・バフェット氏はどうなる?
今回報道された内容が事実であれば、同氏が利益相反の恐れや法令順守違反の責任を追及される可能性が高いと思われます。
しかしながら、バークシャー・ハサウェイと同氏はコメントの要請に応じていません。また、「プロパブリカ」は独自入手した内部資料の真偽が不明であるため、報道内容が確実なものではないという点には注意が必要です。
知名度の高い著名投資家が利益相反を疑われるような行為を行っていた可能性があるとのことで、報道を受けて少なからずショックを受けた方も多いのではないでしょうか。
「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、今回の報道について何を語るのか、説明が待たれる状況にあります。
世界情勢 マーケットニュース 2023.11.15
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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