【革新の兆し】ペロブスカイト太陽電池の新たな展開
マーケットニュース 国内情勢 2024.03.21
クリーンエネルギーの代表格ともいえる太陽電池ですが、ひとくちに太陽電池といっても、低コストなものから高性能なもの、フレキシブルなものやカラフルなものなど、性能も形態も様々なのはご存じですか?
現在既に広く用いられているものから開発中のものまで、いろんな材料や構造を用いたものがあります。
太陽電池は、その中に用いられている材料で分類できます。細かく分けていくと数十種類になりますが、おおまかにはシリコン系・化合物系・有機系の3つに分類できます。
そんな中、今回は、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いた、日本発の新型太陽電池について触れていきます。
ペロブスカイト太陽電池とは、太陽の光エネルギーを直接電気に変換するための太陽電池です。
低温で製造できることから製造コストの低減が期待され、薄型で柔軟・カラフルなものも作製可能で、かつ研究レベルでは多結晶シリコン並みの変換効率も確認されており、将来の低コスト太陽電池として有望視されています。
ペロブスカイト太陽電池の特徴は、ペロブスカイトという結晶構造の材料を使用していることです。
太陽光を電気に変換する仕組みは、ペロブスカイト材料が太陽光を吸収し、そのエネルギーを電気に変換することで行われます。
目次
・ペロブスカイト太陽電池の特徴
ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリットには、低価格・軽量でフレキシブルな製造が挙げられます。ペロブスカイト太陽電池は従来の太陽電池よりも材料コストが低く、量産性が高いため、低価格での製造が可能です。また、薄くて軽量なため、設置場所に制約が少なく、柔軟に形状を変えることもできます。
さらに、エネルギー変換効率の向上も特徴の一つです。ペロブスカイト太陽電池はシリコン太陽電池よりも高い変換効率を持ち、光エネルギーをより効率的に電気に変換することができます。これにより、同じ面積の太陽電池でより多くの電力を生み出すことが可能となります。
また、ペロブスカイト太陽電池は多様な応用展開の可能性も秘めています。
従来の太陽電池と比べて柔軟性や薄さが特徴的であるため、建築材料や車両の外装など、さまざまな分野での活用が期待されています。
新しい発想での応用展開が進められており、将来的にはさらなる成長が期待されています。
・実用化への取り組みと成長性
ペロブスカイト太陽電池の実用化への道のりは、世界中の研究機関や企業が取り組んでいます。2025年頃の実用化が見込まれており、その実現に向けて様々な課題が存在します。
劣化や湿度管理などの技術的課題は、ペロブスカイト太陽電池が商業化される上で重要なポイントです。特に長期間の安定性や耐久性を向上させることが求められています。さらに、製造プロセスや素材の改善により、変換効率を維持しながらコストを下げる取り組みも進められています。
ペロブスカイト太陽電池の今後の展望では、生産コストの抑制とエネルギー消費量の削減が重要なポイントとなります。ペロブスカイト型太陽電池の量産化により、製造コストを低減し、一般家庭や企業向けにも普及が見込まれています。
また、発電効率と耐久性の向上も課題となっています。研究開発により効率向上や長期間の安定した発電を目指し、ペロブスカイト太陽電池の信頼性を高める取り組みが進められています。
さらに、新たな応用分野への展開も期待されています。ペロブスカイト太陽電池は既存の太陽電池よりも薄く軽く、柔軟性があるため、建築材料やウェアラブルデバイスなど幅広い分野での活用が可能となっています。
・政府の注力で注目度は高まる
日本政府は、ペロブスカイト太陽電池を2030年までに普及させる方針を打ち出す方針としています。
国内企業の量産を支援し、公共施設や駅、学校などで導入することを想定しており壁にも貼れ、コストも低減できるため太陽光発電の設置箇所が増える見込みです。また、従来の太陽光パネルはほぼ中国製のため次世代型の国産化で中国依存を減らすことも目的となっています。
2024年3月7日のニュースでは、経済産業省はペロブスカイト太陽電池を2025年のFIT(再生可能エネルギーで発電した電気を、小売電気事業者が一定期間固定価格で買い取ることを国が約束する制度)において通常の太陽光発電よりも優遇された買取価格にする見通しであると報道されています。
このように、国も ペロブスカイト太陽電池 の普及に向けて大きくバックアップしていく方針であることが見えています。
国内では積水化学工業(4204)やアイシン(7259)、パナソニックホールディングス(6752)、カネカ(4118)などがメーカーとして開発を行っており、今後の実用化に向けて注目が高まる可能性は十分にあるでしょう。
マーケットニュース 国内情勢 2024.03.21
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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