自動車セクターに新旋風!低価格帯EV向けの新技術「一発成形」とは

株式情報 マーケットニュース 国内情勢 日本株 2023.09.04

峯岸恭一 峯岸恭一

トヨタの「ギガキャスト」に続き自動車業界に続々と新しい技術が生まれています。

 

精密小型モーター大手の【6594】ニデックがEV生産のため新しい技術を開発していることが発表されました。

 

今回はこの「一発成形」がどんな技術なのか、将来的にどう市場に影響を与えるかを解説していきたいと思います。

 

EVボディ生産に向けた新技術「一発成形」とは?

 

車のボディは部品ごとに成形して、それを溶接等で組み上げて作成しています。

 

しかし今回ニデックが発表したのは大型プレス機による「一発成形」。

 

プレス機による加工自体は、現在でも幅広く使われている技術です。

しかし、ボディのような部品を一発で製造するというのは、初ではないでしょうか。

 

何故かというと、金属の平板から成形を行う際にかなり制限があるためです。

成形する際に、大きく変形させてしまうと割れやヒビなどが発生してしまいます。

成形を何回かに分けることによって、割れ等を防止することはできるが、それでも他の加工方法と比較すると自由度は低くなってしまいます。

 

しかし、プレス加工は他の加工方法と比較して生産性がかなり高いです。

通常のプレス機では1分間に40~50回程度の加工が可能です。

 

プレス加工のみでボディが出来るとなれば、他の方法と比べて大きく生産性が上がるため、EVの生産体制は大きく変わる可能性が高いでしょう。

 

一発成形は低価格帯EV向け

 

以前とりあげた、「ギガキャスト」という新しい鋳造技術と今回の「一発成形」を比較してみます。

 

まず、ギガキャストで使用する材料はアルミですが、一発成形は鋼板です。

 

現在、自動車のボディ素材として最もポピュラーなのは鋼板です。

他素材と比べて安いことや、修理がしやすいこと等がメリットとしてあげられます。

 

アルミは鋼板と比べると軽いため、燃費が良い等のメリットがあります。

しかし、アルミの生産には大量の電気が必要なため、鋼板より値段は高くなってしまいます。

そのため、アルミは高級車に多く使われています。

 

また、ギガキャストと比較して一発成形は生産性が高い可能性が高いです。

 

ギガキャストは成形する際に「アルミを型に注入」⇒「冷やして固める」⇒「型から取り出す」という作業を行うため、1つの部品を作るのに60秒~120秒かかると言われています。

 

一発成形については、まだ開発中ということで情報はありませんが、上述の通り通常のプレス機であれば1分間に40~50回の加工が可能です。

プレス機が大きくなると、1回あたりの加工時間は伸びる傾向にありますが、それでもギガキャストより生産性が高いことが想定されます。

 

まだ、一発成形は開発段階のため、ボディのどこを作るかは不明です。

ですが、ギガキャストと同じ箇所を製作可能となれば、一発成形はコスト面で大きく有利をとれると見ています。

 

しかし、一発成形の対象は60~100万円の低速EVと発表しているため、トヨタの次世代EVで仕様を検討されているギガキャストとの需要の奪い合いは起こらない可能性が高いでしょう。

 

低価格帯EV生産技術として発展していく可能性が高い

 

一発成形は上述した通り、低速EVを対象とすると発表しています。


新興国などの車の潜在需要の高い国に低価格のEVを投入予定とのことです。

 

各国の自動車メーカーがしのぎを削っているEV市場を主戦場とするのではなく、別の戦場で売上を狙っていく形です。

 

次世代EV向けのギガキャスト、低価格帯EV向けの一発成形として今後発展していく期待は大きいと見ています。

 

低価格帯EV市場は日本ではまだまだ開拓が進んでいない市場ですが、ニデックの進出により大きく進展がある可能性もあります。

 

日本での販売は法規制が進んでいないため、すぐには厳しい状況ではありますが、軽自動車より手軽に買える自動車の需要は高いでしょう。

 

高性能なEVにばかり注目がいきますが、今後はローエンドEVにも徐々に注目が集まっていくと見ています。

 

「自動車」という日本株式市場でも大きな割合を占めるビッグマーケットの、更なる発展のきっかけにもなりそうですので、ニデックの低速EV市場での活躍にも注目していきましょう。

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この記事を書いた人

峯岸恭一

日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)

総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。

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