【実用化で莫大なマネーが流れ込む】 次世代エネルギーの「核融合発電」
世界情勢 マーケットニュース 国内情勢 2023.08.07
2023年6月以降、大手電力会社7社が電気料金の値上げを決定しました。
今回の電気料金の値上げの理由は、日本では火力発電が多く、燃料である石炭や液化天然ガスの輸入価格が高騰しているため、燃料費調整額を値上げせざるを得ない状況にあるためです。
2022年の国内における化石燃料による火力発電の年間の発電電力量の割合は72.4%となっているため、燃料価格の変動が電気料金に影響を及ぼしています。
また、火力発電は化石燃料を燃焼する際に温室効果ガスを排出しており、地球温暖化に影響を及ぼしています。
このような観点から日本だけではなく、世界各国で安定的かつ地球温暖化の影響が少ないエネルギー発電の開発が進められています。
そこで今回は、次世代のエネルギー発電として期待されている「核融合発電」についてお話していきたいと思います。
目次
従来の原子力発電との違いは?
国内では高騰する電気料金や地球温暖化への影響から原子力発電の安全性が再び議論となりつつあります。
その中で、同じ「核」でも安全な核融合発電が注目されています。
核融合発電とはどんなものなのか、従来の原子力発電との違いを簡単に説明します。
【現在の原子力発電】
ウランやプルトニウムなどの「重い」原子を核分裂させてエネルギーに変換
【核融合発電】
水素やヘリウムなどの「軽い」原子を核融合させて発生するエネルギーを利用
原子力発電は、核分裂時に発生するエネルギーを利用して発電しますが、核融合発電は核融合時に発生するエネルギーを利用して発電する新たな原子力発電です。
核融合発電のメリット・デメリット
核融合発電が注目されている理由の一つとして、現在の原子力発電よりも多くのメリットを享受できることが挙げられます。
ここではわかりやすく核融合発電のメリットを原子力発電と比較します。
【メリット】
1.燃料枯渇の心配が少ない
原子力発電の燃料として使用されているウランは、石油や石炭などと同じ「枯渇性資源」に含まれ、いずれ枯渇する資源とされています。一方、核融合発電に使用する水素は、地球上に半永久的に存在する水から採取することができます。このため、半永久的に燃料の採取が可能となります。
2.暴走などによる事故のリスクが低い
過去に大きな事故があったように、原子力発電はもし暴走が発生した際、それを阻止できないと、重大な事故につながる可能性があります。
一方、核融合は反応を維持するのが大変なため、核融合炉が破損した場合には勝手に反応が止まります。そのため、原理的に暴走が起こらず、外部に燃料が漏れ出す心配もありません。
3.使用済みの核燃料管理年数が短い
現在、日本では原子力発電に使用した核燃料は、10万年間地下に隔離することが定められています。しかし、核融合発電の使用済み核燃料の放射能レベルは比較的低く、100年程度の管理で安全なレベルに下がるとされています。
【デメリット】
1.核融合反応を起こすのが難しい
太陽や星の光も、すべて「核融合反応」によるものとなります。
太陽や星が輝き続けるエネルギーを生み出すわけですから、核融合反応を起こすのは簡単ではありません。現在では技術的な難易度が高く、実用化に時間がかかる見通しとなっています。
2.巨額の費用が必要
また、核融合反応には特殊な環境が必要なため、実験段階から莫大な予算がかかります。
従来から核融合発電の技術開発を行ってきたフランスのITER(国際熱核融合実験炉)では実験炉を建設中ですが、その費用は約2兆3000億円と言われています。
実用化の可能性と時期
現在世界中で核融合発電の実用化に向けた取り組みが進められています。
その中でも、国際的な最大のプロジェクトが「ITER(イーター)」です。
ITERとは、核融合実験炉を実現することを目標に掲げ、日本、アメリカ、ロシア、中国、EU諸国、インド、韓国といった7つの国と地域が参加する、国の枠を超えた超大型の国際プロジェクトです。
現在、フランスでは国際熱核実験炉の建設が進んでおり、早ければ2025年には運転開始する予定となっています。
また、2035年頃に実際に発電を行う原型炉を建設し、そこで実用化に向けた最終的な判断を下す予定としています。
このことから、実用化の可能性は高まっているものの、実際に核融合発電が実用化されるまでは、あと数十年はかかると考えられます。
経済産業省が発行している2020年エネルギー白書では、
「核融合エネルギーは、エネルギー問題と環境問題の根本的な解決をもたらす将来のエネルギー源として大いに期待されている」
としており、実際、ITER計画や関連する国内の核融合研究を推進するために、毎年約200億円を超える予算が充てられています。
核融合発電は燃料1グラムで石油8トン分という凄まじい発電量となっています。
おおよそタンクローリー1台分の石油を燃やしたときと同じエネルギーがたった1グラムの燃料から得られるのですから、将来の電力供給の切り札として注目を浴びるのは当然です。
現在において、実用化にはまだまだ時間が掛かるといわれていますが、仮に実用化に成功すれば莫大なマネーが流れ込むことは容易に想像がつきます。
日本は核融合実験炉の国際プロジェクトに参加しているため、関連する企業もあります。もし、実用化に目途が立つとしたら核融合に関連する銘柄の株価は大きな上昇が期待されまることが推察できますね。
世界情勢 マーケットニュース 国内情勢 2023.08.07
この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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