インデックス投資の敵は暴落ではなく退屈|オルカン&SP500の投資戦略

インデックス投資の敵は 暴落ではなく退屈 オルカン&SP500の投資戦略

 新NISAが始まり、意気揚々と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」の積立設定をしたあの日。

未来への希望に満ちていたはずのあなたは、数ヶ月、あるいは1年が経った今、ある意外な感情に襲われているのではないでしょうか。

「……暇だ。」

チャートを見る必要もなく、企業分析もいらない。 ただ毎月、銀行口座からお金が消えていくだけ。
実は、インデックス投資において最も恐ろしい敵は、数年に一度の「大暴落」ではありません。

毎日じわじわとあなたの心を蝕む「退屈」です。
この退屈さに耐えきれず、余計な行動を起こして自滅する投資家は後を絶ちません。

本記事では、なぜ「最強の投資法」はこれほどまでに退屈なのか、そしてその魔の期間をどう乗り越えればよいのか。
長期投資を継続する技術について深掘りします。

目次

インデックス投資はつまらない

投資を始めた最初の3ヶ月は、誰にとってもハネムーン期間です。
アプリを開くたびに数十円、数百円と動く資産額を見て、「自分は投資家になったんだ!」と高揚感に包まれます。

しかし、半年もすればその興奮は冷めるもの。インデックス投資の平均リターンは年利5〜7%。
1ヶ月単位で見れば「ほとんど動かない」か、時には「少し減っている」のが日常です。

派手な値動きはなく、まるでペンキが乾くのを眺めているような時間が、これから10年・20年と続きます。
人間はこの「変化のない状態(凪)」に極めて弱い生き物。
刺激を求める脳は、無意識のうちにこう囁き始めます。

「もっと効率の良い方法があるんじゃないか?」「このまま指をくわえて見ているだけで、本当に資産が増えるのか?」——これが、失敗への第一歩です。

インデックス投資で暴落より怖いバイアス

行動経済学にはアクション・バイアス(行動バイアス)」という概念があります。
状況を打開したいとき、あるいは退屈なとき、「何もしない」よりも「何か行動を起こす」方が好ましいと感じてしまう心理傾向のことです。

ゴールキーパーはPK戦で動いてしまう…。

サッカーのPK戦におけるゴールキーパーのデータ分析が有名です。
統計的には「中央に突っ立っている(何もしない)」方がボールを止められる確率は高いとされています。

しかし実際のキーパーの多くは左右どちらかに飛ぶ。
棒立ちでゴールを決められるよりも、飛んで止められなかった方が努力したと納得感を得られるからです。

投資の世界でもまったく同じことが起きます。
相場が動かないとき、資金効率が悪いと勝手に判断し、頻繁に売り買いして手数料と税金でリターンを削ってしまう。
SNSで話題の銘柄を見つければ、高値掴み覚悟でイナゴ投資に走ってしまう。

インデックス投資家にとって、「何もしない(Stay the course)」ことこそが最も合理的で、かつ最も難しいスキルなのです。
皮肉なことに、最も運用成績が良いのは、口座のパスワードを忘れた人や亡くなった人であるという笑えない逸話さえ存在します。

インデックス投資を失敗に導く3つの罠

退屈が極まると、投資家は刺激を求めて余計なものに手を出したくなります。
代表的な3つの罠を確認しておきましょう。

SNSの投稿に踊らされる

S&P500が年間+10%のリターンを出していても、SNSを開けば「〇〇株が3日で2倍!」という投稿が溢れています。
自分のインデックスファンドがひどく鈍臭く見え、「少しだけなら」と資金を移動させたくなるもの。
しかし素人が飛び乗った頃には、大抵そこが天井です。

高配当株の方が魅力的?

インデックスファンドは配当金が再投資されるため、手元に現金が入る喜びがありません。
その退屈さを埋めるために、トータルリターンでは劣る可能性があっても、今すぐお小遣いがもらえる高配当株に浮気したくなります。

相場のタイミングを読もうとする

「今は高値圏だから、暴落したら追加投資しよう」——これも退屈が生んだ「相場を読みたくなる病」の一種です。
プロでも相場の底を当てるのは極めて難しいため、待っている間に株価はさらに上がり、結局買い時を逃すパターンに陥りがちです。

良い投資とは退屈なものと心得る

伝説的な投資家ジョージ・ソロスはかつてこう述べています。
「もし投資が面白くて、あなたが楽しんでいるとしたら、おそらくお金を稼げていないだろう。良い投資とは、退屈なものだ」と。

投資とは本来、工場を建てたり農作物を育てたりするのと同じ「事業」です。
種を蒔いた翌日に作物が育っていないからといって、土を掘り返す農家はいません。
ただじっと待つことこそが、最大の仕事なのです。

逆に言えば、投資をしていて「ハラハラする」「毎日興奮する」という状態なら、それは投資ではなくギャンブル(投機)をしている可能性が高いでしょう。
カジノと投資は違います。退屈であることこそが、順調である証拠です。

インデックス投資で失敗しない方法

とはいえ、精神論だけで長期間は耐えられません。
退屈な時間を飼いならすための具体的なアクションプランを提案します。

対策①|コア・サテライト戦略でガス抜き

投資資金の80〜90%(コア)はインデックス投資でガチガチに固め、絶対に触らない。
残りの10〜20%(サテライト)を「遊び枠」と定義します。

この枠内であれば、成長が期待できる個別株を買おうが暗号資産で遊ぼうが自由。
「投資したい欲」をサンドボックス(砂場)の中で発散させることで、本体の資産崩壊を防ぐ戦略です。

ここで大切なのは、サテライト枠をただのギャンブルにしないこと。
しっかりとファンダメンタルズを分析した上で有望な個別銘柄を選べば、インデックスを上回るリターンを狙うことも十分に可能です。
退屈しのぎの衝動買いではなく、戦略的な個別株投資をサテライト枠に据えることが、資産全体の底上げにつながります。

対策②「入金力」を上げるゲームに切り替える

相場(リターン)はコントロールできませんが、自分の「入金力」はコントロール可能です。
投資のことは忘れ、本業でスキルアップしたり副業を始めたりして、来月の積立額を1,000円でも増やすことに集中しましょう。

「利回りを1%上げる」より「入金を1万円増やす」方が、確実で簡単。何より退屈しません。

対策③ 投資を「趣味」から「歯磨き」に格下げする

投資を趣味にしてはいけません。趣味は「楽しむもの」だからです。
投資は「歯磨き」と同じ、生活習慣の一部に格下げしてください。

歯磨きにワクワクする人はいません。でもやらないと気持ち悪いから毎日やる。
それくらいの距離感が、20年続けるための秘訣です。

まとめ|インデックス長期投資は「退屈に耐えた者」が勝つ

インデックス投資の最大の敵は、暴落時の恐怖ではなく、平時の「退屈」です。
暴落は数年に1度しか来ませんが、退屈は毎日やってきます。

これから先、SNSで派手な成功談を目にして、自分の地味な歩みが馬鹿らしく見える日が必ず来るでしょう。
魔が差して、積立設定を解除したくなる日も来るかもしれません。

しかし、歴史が証明している事実は1つ。
才能あるトレーダーでもIQの高い天才でもなく、ただ退屈に耐え、市場に居座り続けた者」だけが、最後に莫大な富を手にするのです。

ただし、ひとつだけ補足させてください。
コアのインデックス投資を守り抜くことは大前提として、サテライト枠で「何を選ぶか」によって、10年後の資産額には大きな差が生まれます 
退屈に耐える力と、有望銘柄を見抜く力——この2つを両立できた投資家が、大きなリターンを手にするのです。

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執筆者情報

nari

日本投資機構 編集部

日本投資機構株式会社

INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。

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