株式の信用取引を行う際、投資家が最も恐れる言葉の一つが「追証(おいしょう)」、すなわち追加保証金の差し入れ要求です。
これは、株価が予想に反して大きく動き、担保として差し入れた資金(保証金)の価値が一定水準を下回ったときに、証券会社から要求される追加の資金のことです。
追証を期限内に解消できない場合、保有するポジションが強制的に決済されてしまいます。本稿では、この追証の基本的な仕組みから、発生する条件、そして初心者でもリスクを管理し、強制決済を避けるための具体的な方法を徹底的に解説します。
追証とは信用取引で担保が不足した時に求められる追加資金である

追証(追加保証金)とは、信用取引において、投資家が差し入れた担保(保証金)の評価額が、取引を続ける上で必要な最低限の水準を下回った場合に、証券会社から追加で差し入れを求められる資金のことです。
信用取引は、自己資金以上の取引を可能にするレバレッジ効果がありますが、その代わりに株価の変動によって損失が膨らんだ場合、この追証が発生するリスクを負います。
追証発生の根本理由は「レバレッジ」
信用取引は、投資家が自己資金(保証金)の約3.3倍までの取引を可能にするレバレッジ(てこの原理)が最大の特徴です。このレバレッジを効かせるためには、常に「約定代金に対する一定の担保」を差し入れておくことが義務付けられています。
この担保の維持率が、株価の変動によって一定水準を下回ってしまうと、証券会社はリスクを回避するために担保の追加(追証)を投資家に求めるのです。
追証は、証券会社が投資家の損失を肩代わりするリスクを防ぐための安全装置と言えます。
追証の基準となる「最低保証金維持率」
追証が発生する基準は、主に「保証金維持率」という指標が関係します。保証金維持率は、「委託保証金(担保)の評価額」を「建玉(たてぎょく、未決済のポジション)の金額」で割って計算されます。
証券会社によって異なりますが、日本ではこの維持率が20%または30%を下回った場合に追証が発生することが一般的です。この維持率は、株価が下がる(買い建玉の場合)と同時に下がるため、損失が膨らむほど追証発生のリスクが高まります。
追証が発生する条件と金額の計算方法

追証は、単に損失が出たから発生するわけではなく、保証金維持率が最低水準を下回った時に発生します。実際に追証が発生した場合、投資家は「いくら」追加で差し入れなければならないのかを知っておくことが、冷静な対処に繋がります。
追証が発生する具体的な条件
追証が発生するのは、前述の通り「最低保証金維持率」を下回った時点です。例えば、最低維持率が30%の証券会社の場合、保有する建玉に対して、保証金の評価額が30%を下回ると追証が発生します。
また、保証金維持率とは別に、新規に建玉を立てる際に必要な「委託保証金率(約30%)」という基準があります。追証が発生した場合、この新規建玉に必要な保証金率(30%)の水準まで保証金を回復させる必要があります。
追証金額の計算と「最低回復水準」
追証で求められる金額は、「保証金維持率を最低水準まで回復させるために必要な金額」です。
例えば、建玉が100万円で、最低維持率が30%の証券会社で追証が発生した場合、保証金の評価額を最低でも30万円(100万円 × 30%)まで回復させる必要があります。
しかし、多くの証券会社では、追証が発生したら「その後の新規建てに必要な保証金率(約30%)」まで引き上げることが求められます。計算が複雑なため、重要なのは「口座画面で示された追証金額を、期限内に差し入れる」ことだと覚えておきましょう。
追証を期限内に解消できなければ強制決済となる

追証が求められた場合、投資家には「追証発生日を含め、2~3営業日以内」という短い期限が設けられます。この期限内に追証を解消できないと、証券会社は投資家の意思に関わらず、保有するすべての建玉(ポジション)を強制的に決済します。
これが、信用取引における最も厳しいリスク管理措置の一つである「ロスカット(強制決済)」です。
追証の解消方法は「入金」と「決済」の二択
追証を解消する方法は、基本的に二つしかありません。一つは、現金を追加で証券口座に入金することです。これが最も確実な方法です。
二つ目は、保有している建玉の一部または全てを売却・買い戻し(決済)することです。建玉を決済し、取引規模を縮小することで、必要とされる保証金の水準自体が下がり、保証金維持率が回復するため、追証を解消できます。
強制決済(ロスカット)のリスク
期限までに追証を解消できないと、証券会社は残りの建玉を市場価格で強制的に決済します。この決済は、投資家にとって不利な状況で行われることが多く、大きな損失を確定させられるリスクがあります。
特に相場が急落している最中などに強制決済が行われると、自己判断で損切りするよりもさらに大きな損失を被る可能性があります。強制決済を避けるためには、追証が発生した時点で即座に対処することが鉄則です。
追証を避けるための保証金維持率の管理方法

追証の発生を防ぐための最善の策は、保証金維持率を常に安全な水準に保つことです。保証金維持率の管理を徹底することは、信用取引のリスクをコントロールする上で最も重要なスキルの一つと言えます。初心者は、レバレッジを抑え、余裕を持った資金管理を行うべきです。
レバレッジを抑え、余裕資金で取引を始める
信用取引で最大のレバレッジ(約3.3倍)をかけると、株価がわずかに動いただけで保証金維持率が危険水準に達しやすくなります。これを避けるために、まずはレバレッジを低く抑えることが重要です。
例えば、自己資金の2倍程度の取引に留めることで、株価の急な変動に対する耐性がつき、追証のリスクを大幅に減らすことができます。十分な余裕資金を保証金として口座に差し入れておくことが、安全な運用につながります。
常に「評価損益率」と「保証金維持率」を監視する
多くの証券会社の取引ツールでは、リアルタイムで「評価損益率」と「保証金維持率」が表示されています。
追証は、この維持率が最低水準(例:30%)を下回った時点で発生するため、常に維持率をチェックする習慣をつけましょう。
特に、維持率が40%~50%を割り込むような状況になったら、新規の取引を控え、ポジションの縮小や追加の入金を検討するなど、早期に対応することが鉄則です。
逆指値注文を活用し、損失を自動で限定する
追証を避ける最も効果的な技術の一つが逆指値注文の活用です。これは、特定の価格まで株価が動いたら自動的に決済(ロスカット)を行う注文方法です。
例えば、買値から10%下落したら自動的に売却するように設定しておけば、仕事中など相場を見ていない間に株価が急落しても、強制決済(ロスカット)を受ける前に、自己管理下で損失を限定できます。強制決済を避けるための有効な防御策となります。
まとめ
追証(追加保証金)とは、信用取引において、株価の変動によって保証金維持率が最低水準を下回った際に証券会社から求められる追加の資金です。
追証を期限内に解消できない場合、保有する建玉が強制的に決済(ロスカット)され、大きな損失を確定させられるリスクがあるため、信用取引における最大のハイリスクと言えます。
追証を避けるためには、保証金維持率を常に安全な水準で管理することが不可欠です。具体的には、レバレッジを抑える、維持率を常に監視する、そして逆指値注文を徹底して利用することが重要です。
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編集部
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