2026年2月19日に厚生労働省の専門部会が、iPS細胞を活用した再生医療製品2品について、製造販売の承認を認める判断を下しました。
これまで研究開発の域を出なかったiPS細胞が、ついに実際の治療現場へ普及し、企業が収益を上げる実用化フェーズへ突入したのです。
投資家目線では、業績への貢献度を精査しながら、より腰を据えてiPS細胞・再生医療関連銘柄に資金を投じられるようになりつつあります。
そこで本記事では、iPS・再生医療関連に投資を行う際のポイントを解説し、注目される本命株・出遅れ株を紹介します。
今回承認を受けたのはどんな製品?

2026年2月19日に承認されたのは、クオリプス(4894)の重症心不全治療用心筋シート「リハート」と、住友ファーマ(4506)のパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」です。
クオリプスの心筋シートは、心臓移植や補助人工心臓以外に治療法がなかった重症心不全患者にとって、新しい選択肢となります。
他人のiPS細胞から作った心筋細胞をシート状にし、心臓に直接貼り付けることで機能の回復を図るものです。
一方、住友ファーマの製品は、パーキンソン病で減少するドパミン神経細胞を脳内に移植する治療法です。
2018年から京都大学などで治験が進められてきましたが、今回の承認によって、多くの患者がこの先端医療を受けられる道が開かれました。
iPS細胞・再生医療とは?改めて知りたい基礎知識

そもそも、iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、皮膚や血液の細胞へ特定の遺伝子を導入し、心臓や神経、肝臓などあらゆる組織の細胞へ分化する能力を持たせた細胞です。
2012年に山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで知られています。
最大のメリットは、受精卵を壊して作るES細胞(胚性幹細胞)と異なり、自身の体細胞から作製できる点です。
これにより、倫理的制約を回避しつつ、拒絶反応のリスクを抑えた移植医療が可能になりました。
失われた機能を復元する「再生医療」
再生医療の役割は、従来の化学合成薬や抗体医薬品では修復が不可能だった、重度の損傷や疾患で失われた組織・臓器の機能を復元させることにあります。
今回承認された心筋シートのように、細胞そのものを「生きた薬」として患者に移植し、体内で組織を再生させるアプローチは、医療の概念を根本から変える力を持っています。
がん免疫療法や脊髄損傷、さらにはアルツハイマー病といった難病を対象とした臨床試験が世界中で進んでいます。
効率的な開発を支える「創薬支援」
再生医療と並んで巨大なビジネス領域へ成長したのが、iPS細胞を活用した「創薬支援」です。
これは、特定の病気を持つ患者から作製したiPS細胞を病変細胞へ分化させ、試験管内で病状を再現する技術です。
人体へ投与する前に、膨大な数の新薬候補物質の有効性や毒性を高精度に検証できるため、新薬開発の成功率向上とコスト削減に直結します。
例えば、難病であるFOP(進行性骨化性線維異形成症)の治療薬候補は、この手法によって発見されました。
製薬企業にとってiPS細胞は、製品そのものとしてだけでなく、開発のスピードを加速させる不可欠なインフラとなっています。
iPS細胞では日本が世界をリード
2006年に山中伸弥教授がマウスのiPS細胞を発表してから20年が経過しました。
日本はこの間、国策として再生医療分野を支え続けてきました。
今回の製品の上市(市場投入)は、まさにその集大成と言えます。
2014年には再生医療等安全性確保法が施行され、世界に先駆けて早期承認制度が導入されました。
この制度によって、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件付きで早期に実用化できる環境が整いました。
今回のクオリプスや住友ファーマの承認は、こうした長年の制度設計と研究支援が実を結んだ結果です。
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iPS細胞・再生医療関連銘柄の今後

今回の承認で終わりではなく、今後は市場規模の拡大と国の支援を受けてのさらなる研究開発の進展が見込まれます。
どの程度の市場規模、支援拡大が見込まれるのかをここからは確認していきましょう。
市場規模は年平均で16.83%の成長が見込まれる
2024年の世界再生医療市場規模は354億7,000万米ドルと推計され、2030年までに900億1,000万米ドルに達すると予測されています。
2025年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は16.83%と推計されています。
成長の原動力は、心不全やパーキンソン病など根本的な治療法がなかった難病への適用です。
1治療あたり数千万円と高額ですが、患者数が多い疾患へiPS細胞技術を投入すれば、市場総額は一気に膨らみます。
iPS細胞・再生医療は日本の輸出産業に
日本政府は2025年度から、次世代医療基盤整備の一環として再生医療の産業化へ向けた予算投入を一段と強化する方針を固めました。
2025年11月に経済産業省が発表した令和7年度(2025年度)補正予算案では、再生医療や遺伝子治療の製造基盤強化に対する158億円の重点投資が盛り込まれています。
これまでは基礎研究への支援が中心でしたが、2026年現在は製品の安定供給体制の構築や、日本の再生医療の海外展開を後押しするフェーズへと移行しています。
具体的には、海外の規制当局との調整を円滑にするための支援や、国際的な品質基準に適合した大規模な製造プラットフォームの整備が進められています。
再生医療製品は輸送時の温度管理や鮮度維持が極めて難しいため、高度な物流網も含めた輸出を目指しています。
iPS細胞・再生医療関連銘柄一覧

では、具体的にどのような企業がiPS細胞・再生医療関連銘柄として、市場拡大と国の支援の恩恵を受けるのでしょうか?
ここからは分野別に、本命・出遅れ株をまとめます。
① iPS細胞・再生医療関連の本命・主力株
まずは、今回承認を得たクオリプスや住友ファーマに加えて、それに追随する可能性のある本命銘柄を紹介します。
特に第2相、第3相試験の段階にあるパイプラインを持つ企業には、先行2社の「薬価算定」の結果次第で強い追い風が吹くでしょう。
クオリプス(4894)iPS心筋シート承認
2026年2月19日に承認された心筋シート「リハート」の開発元であり、iPS細胞を用いた再生医療の商用化において世界をリードする存在です。
今後は国内での保険適用と薬価算定が焦点となります。
加えて、すでに米国での臨床試験(治験)準備も進めており、巨大な北米市場への進出が次なる株価の起爆剤となる見通しです。
大阪大学発のベンチャーとして、第一三共などの大手製薬企業と強固な提携関係を築いている点も、安定した事業運営の強みとなっています。
住友ファーマ(4506)背水の陣で挑むiPS細胞の実用化
住友ファーマは、日本の大手製薬企業の中で最も早くからiPS細胞事業に巨額の投資を行ってきた企業です。
2026年2月19日、同社が京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と共同開発してきたパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」が承認了承され、努力がようやく実を結ぼうとしています。
同社の最大の強みは、大阪府に世界初となるiPS細胞を用いた再生医療等製品の商用生産拠点「SMaRT」を自社で保有している点にあります。
住友ファーマは、細胞の培養から加工、凍結保存に至るまでを自社で完結させる「垂直統合型」のビジネスモデルを構築しました。
これにより、外部へ製造を委託するコストを抑え、高品質な製品を安定的に供給できる体制を整えています。
現在、同社は米国での主力薬の特許切れ(パテントクリフ)に伴う厳しい収益環境に直面しています。
この苦境を打破するための最重要戦略が、今回の再生医療製品の上市だったのです。
Heartseed(219A)独自の「心筋球」技術を有する
慶應義塾大学発のHeartseedは、クオリプスとは異なるアプローチで心臓再生のトップランナーを競っています。
クオリプスの「シート状」に対し、Heartseedの最大の特徴は「心筋球」という技術にあります。
iPS細胞から作った心筋細胞を約1,000個の微小な球状(スフェロイド)に加工し、特殊な針で心筋内に直接注入します。
この手法は、シートを表面に貼るよりも心筋の深い層にまで細胞を届けられるため、心臓との電気的な結合や生着率が高いとされています。
国内での第1/2相治験(LAPiS試験)が進んでおり、治験データに基づく早期の承認申請への期待が高まっています。
ヘリオス(4593)iPS細胞を活用した次世代の再生医療
日本の技術を基盤とした「世界一の細胞医療メーカー」への飛躍を目指しています。
世界初となる三次元培養技術を用いた細胞供給体制の構築を推進。
この革新的な製造プロセスにより、高い再現性と圧倒的なスケール性を両立した細胞治療薬の提供が可能となります。
長期的なビジョンとして、iPS細胞を活用した次世代の再生医療に取り組んでいます。
網膜色素上皮(RPE)細胞を用いた細胞置換療法については、株式会社RACTHERAと共同で2028年度の上市を目指した開発が進められています。
②技術力を有する出遅れバイオベンチャー株

ここからは、出遅れ感があるものの、iPS・再生医療分野で高い技術力を有する銘柄を紹介します。
ケイファーマ(4896)iPS創薬のトップランナー
慶應義塾大学発のケイファーマは、脊髄損傷やALS(筋萎縮性側索硬化症)といった難病に挑むバイオベンチャーです。
2026年2月17日、同社取締役の岡野栄之教授(慶大)は、iPS細胞を用いた創薬により有効性を見出したALS治療薬について、年内に最終段階の第3相治験を始める方針を明らかにしました。
セルシード(7776)日本独自の「細胞シート」を牽引
セルシードは、日本が世界をリードする「細胞シート工学」の基盤技術を保有しています。
バラバラの細胞ではなく、シート状に加工して患部へ貼り付けるこの技術は、高い定着率と効果が特徴です。
2026年現在は、変形性膝関節症を対象とした「同種軟骨細胞シート」の承認申請に向けた準備を加速させています。
今回のクオリプスによる心筋シートの承認は、同じ「シート形状」の製品が公的に認められたことを意味し、セルシードの製品群の審査においても強力な追い風となります。
コージンバイオ(177A)再生医療の「食」を支える
再生医療製品の製造に不可欠な「培地(細胞の養分となる培養液)」で高いシェアを誇るのがコージンバイオです。
細胞を育てる過程で動物由来成分を排除した「無血清培地」は、製品の安全性と品質の均一性を保つために商用化フェーズで欠かせません。
2026年に入り、再生医療製品の相次ぐ承認によって、これら高品質な培地の需要は今後幾何級数的に増加する見通しです。
③iPS細胞・再生医療関連の周辺株

iPS細胞・再生医療の市場が拡大するにあたっては、治療薬そのものだけでなく、それらを支える周辺産業のシェアが拡大する見通しです。
その過程で、恩恵を受ける銘柄も確認しておきましょう。
ZACROS(7917)細胞培養バッグで注目
細胞を培養する際に不可欠なシングルユース(使い捨て型)の培養バッグや、高度な機能性フィルムを提供しています。
再生医療製品の製造工程では、汚染リスクを避けるために使い捨ての消耗品が多用されます。
商用化が進み、製造量が増えれば増えるほど、同社の消耗品供給による確実な収益が見込めます。
2026年3月期の業績予想においても、ライフサイエンス関連の売り上げは市場拡大に伴い堅調な推移を見せています。
ニッピ(7932)iPS細胞の培養効率を高める
iPS細胞を目的の細胞へ分化させたり、接着させたりする際に不可欠なタンパク質「ラミニン511E8断片」で世界最高峰の技術を誇ります。
このマトリックス(足場材)は、iPS細胞の培養効率を劇的に高めるため、国内外の多くの研究機関や製薬企業で標準的に採用されています。
再生医療が「研究」から「商用製造」へ移行する現在、世界シェアを持つ同社の素材は、グローバルな需要を取り込む重要な武器となっています。
セントラル硝子(4044)細胞シート関連基材を提供
化学メーカーの枠を超え、再生医療分野へ積極的に進出しています。
セントラル硝子は細胞シートの剥離を容易にする特殊な基材の提供や、実用化に向けた支援事業を展開しています。
2026年2月のクオリプス(心筋シート)の承認により、シート状の製品需要が高まることは、関連技術を持つ同社にとっても市場浸透を加速させる追い風となります。
iPS細胞・再生医療関連銘柄を選ぶ際のポイント

どんな銘柄に投資するにしても、その銘柄の値動きの傾向やリスクを把握し、自身の投資スタンスに合っているかを考えてから買いに入るべきです。
そこで銘柄を選び、買いに入る前に理解しておきたいポイントをまとめます。
大手との提携実績を「技術力の証明」として確認する
バイオベンチャーが語る将来像が、どれだけ実現性を持つかを測る指標として、大手製薬企業との提携実績が挙げられます。
潤沢な資金と厳しい目を持つ大手企業が、一時金やマイルストーン(進捗に応じた報酬)を支払ってまで提携するのは、その技術に相応の価値があると認めた証拠です。
強力なパートナーシップを持つ銘柄は、自社単独で開発を進める企業よりも資金面・販売面でのリスクが抑えられます。
狙いたい利益と許容できるリスクを明確にする
再生医療セクターは、銘柄によってリスクとリターンの振れ幅が極端に異なります。
特に、時価総額の小さいベンチャー企業は、治験の成功や承認取得によって株価が数倍に跳ね上がる可能性(大化け)がある一方、失敗時の下落幅も非常に大きくなります。
逆に他にも製品を有し、業績が黒字で安定している大手企業であれば、特定の製品の成否に左右されにくく、市場全体の成長に伴って安定的な収益貢献が期待できます。
自身の資産状況や運用スタイルに合わせて、投資額や銘柄の組み合わせを調整することが重要です。
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「増資リスク」を財務諸表から読み解く
バイオベンチャー投資で最も警戒すべきは、株価の希薄化を招く「増資」です。
再生医療の開発には膨大な研究費と期間がかかるため、多くの企業が恒常的なキャッシュ不足に陥っています。
投資前には必ず財務諸表を確認し、「現金及び預金」が現在の「研究開発費(営業キャッシュフローの赤字額)」に対して何年分残っているかをチェックしましょう。
手元資金が半年から1年分を切っている場合、近い将来に新株発行などによる資金調達が行われ、株価が急落するリスクが高まります。
安定性を重視するのであれば周辺インフラ株
19世紀のゴールドラッシュで最も利益を上げたのは、金掘りではなく「スコップ(ショベル)を売った商人」だったという歴史があります。
それと同じで、バイオベンチャーは、 成功時のリターンは大きいですが、臨床試験の成否や再検証の結果による暴落リスクを伴います。
一方、どの企業の製品が承認されても、細胞の培養には材料や装置が必要です。
この点で、インフラを担う周辺株の方が、派手ではないですが、安定した成長に期待ができると考えられます。
iPS・再生医療関連銘柄に投資する上での注意点

クオリプスや住友ファーマの今後の焦点は、承認された製品にいくらの公定価格(薬価)がつくかという点に移ります。
再生医療は1回の治療費が数千万円に達することも珍しくありません。
高額療養費制度がある日本では患者の自己負担は抑えられますが、国の医療財政との兼ね合いで価格が決まります。
2026年1月、中医協(中央社会保険医療協議会)は「条件及び期限付き承認」を受けた製品の新たな算定ルールを即日適用しました。
2026年春以降に発表される正式な薬価次第で、各社の収益モデルがより鮮明に見えてくるはずです。
投資家としては、目先の株価の乱高下に惑わされることなく、どの企業が「継続的に細胞を製造し、安定して供給できる体制」を整えているかを見極めることが重要です。
今回実現したのは 「条件・期限付き承認」
今回のiPS細胞を用いた医療用医薬品の承認は、一定期間(原則7年以内)の期限付きです。
市販後に実際の患者データを用いて有効性を再証明する必要があります。
投資家は、「承認=ゴール」ではなく「検証プロセスの継続」であることを忘れてはなりません。
万が一、再検証で有効性が示せなかった場合、承認が取り消されるリスクがあることは考慮しておくべきです。
材料に飛びつくと急落に巻き込まれるリスクも
承認ニュース直後の急騰時における飛びつき買いは非常に危険です。
過去には期待先行で株価が膨らみ、その後に急落した事例も少なくありません。
過熱感が意識される局面では、無理に追わず、収益の見通しが立つ「薬価決定」に向けて株価が落ち着いたところを拾っていくのも手でしょう。
まとめ|iPS細胞株投資で成功するために

「国策に売りなし」と言われる通り、政府は再生医療等安全性確保法の改正や予算投入など、制度面でも強力にバックアップを続けています。
2026年2月19日の歴史的承認は、日本が培ってきたiPS細胞技術が、ついに「国家の成長戦略」として収益化フェーズに入ったことを象徴しています。
今後は、短期的な値動きに一喜一憂せず、事実に基づいた冷静な分析が不可欠です。
「どの疾患が次に承認されるか」「どのインフラ企業がデファクトスタンダード(業界標準)を握るか」を注視することが、この再生医療元年に勝利する鍵となります。
従来の化学合成薬では治せなかった難病が、日本の技術で克服される瞬間に立ち会える貴重な投資機会です。
技術的な優位性と、それを支える安定した供給基盤を見極めることで、次世代の医療を支えるとともに、確実なリターンを狙っていきましょう。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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