新規公開株式(IPO)は、短期間で大きな利益が期待できる人気の投資方法です。
特に「初値(上場初日の株価)」が公開価格を大きく上回るケースが多いため、投資初心者にとっても魅力的なチャンスとなります。
しかし、IPOは「抽選方式」で配分されるため、当選しなければ購入できません。また、証券会社によって抽選ルールが異なり、戦略を知らないと当選確率は大きく下がってしまいます。
この記事では、IPOの仕組みから実際の購入手順、当選率を上げる方法、売却タイミングまでを初心者向けに徹底解説します。
IPO株は“初値利益”が狙いやすい投資対象

IPO投資が注目される最大の理由は「初値利益の出やすさ」です。
過去のデータでは、公開価格よりも高い初値がつく割合は7割以上となっており、中には数十万円規模の利益を生む銘柄もあります。
IPOは資産形成を目指す初心者にとって大きな魅力となっています。
ただし、すべての銘柄が必ず上昇するわけではなく、初値割れするケースも存在します。
そのため、IPOの特徴を正しく理解したうえで参加することが大切です。
IPO(プライマリー)の購入には「抽選参加」が必須

IPO株を買うためには、まず証券会社を通じて「ブックビルディング(需要申告)」に申し込みます。その後、抽選で当選した投資家だけが購入できます。
このように、上場前の段階でIPO株を取得する方法は「プライマリー投資」と呼ばれ、抽選に参加すること自体がIPO投資の第一歩です。
一方で、上場後に市場で取引されるIPO株を購入することは「セカンダリー投資」と呼ばれます。セカンダリーは抽選の必要はありませんが、すでに株価が上昇している場合もあるため、購入のタイミングが重要になります。
「ブックビルディング(需要申告)」は、早い者勝ちではなく、抽選権を得るためのエントリーです。各証券会社のアプリやWEBから申し込みを行う方法や証券会社に直接連絡をして申し込みを行うこともできます。
「ブックビルディング(需要申告)」を行う上で押さえておくべきポイント

先述のとおりIPO株を購入するには、事前に「ブックビルディング(需要申告)」という手続きが必要です。このときに大切なポイントを3つ紹介します。
申告する株数(申告数量)について
「何株欲しいか」を証券会社に伝える必要があります。通常、IPO株は100株単位(1単元)で申し込みます。
自分の資金に余裕があるからといって、たくさん申し込めば当選確率が上がるわけではありません。証券会社によって抽選方法が異なるため、無理のない範囲で申し込むのが基本です。
申告する価格(申告価格)について
IPO株には「仮条件」という価格の目安があり、その中で自分が買いたい価格を選んで申し込む必要があります。
初心者には難しく感じるかもしれませんが、特別な理由がなければ仮条件の上限価格で申し込むのが一般的です。
下限で申し込むと、人気が高く上限で決まった場合に申し込み自体が無効(抽選対象外)になることがあるので注意しましょう。
申し込み期限(申込忘れ防止)について
「ブックビルディング」には、申し込みの締め切り日時が決まっています。
たとえば「○月○日(火)午後11時」など、営業日・時刻まで明確に決められているため、余裕を持って行動することが大切です。
締め切り直前は、アプリやWEBが混み合ってうまく申し込めないケースもあります。前日までに申し込みを済ませるように心がけましょう。
証券会社選びで当選確率は大きく変わる

IPO(新規公開株)に当選するかどうかは、どの証券会社を使うかによって大きく変わります。
なぜなら、証券会社ごとに抽選のしくみやルールが異なるからです。
中でも「主幹事証券」はそのIPOを中心となって取り扱う証券会社で、割り当てられる株数が多いため当選しやすい傾向があります。一方で、他の「平幹事(ひらかんじ)」の証券会社からでも、当選のチャンスは十分にあります。
抽選方式には、以下のような代表的なタイプがあります。
完全抽選方式(楽天証券、岡三オンラインなど)
お金の多さや取引の実績に関係なく、すべての人が平等に抽選される方式です。
そのため、初心者や少額投資の人でも十分に当選の可能性があります。
抽選+優遇枠方式(SBI証券のチャレンジポイント制度)
抽選に外れた場合でもポイントがもらえます。
このポイントを貯めて使うと、当選しやすくなる仕組みになっています。
コツコツ続けることで、将来的に有利になるチャンスがあるのが特徴です。
取引実績による優遇方式(野村證券、大和証券など)
これまでの取引回数や預けている資産の多さに応じて、当選しやすくなる方式です。
そのため、ある程度の資金を持っている人に有利と言えるでしょう。
このように、証券会社によって抽選方法や当選しやすさが違います。
自分の投資スタイルや資金に合った証券会社を選ぶことが、IPOに当選する近道になります。
複数の証券会社を併用するのも、当選確率を上げるうえで効果的です。
IPOの当選率を上げる3つのテクニック

テクニック①:複数の証券会社で同時申込みする
IPOは「証券会社ごとに抽選」が行われます。 つまり、口座を多く持っているほど応募回数が増え、当選確率も高まる仕組みです。
例:ある銘柄の当選確率が1%だった場合
1社だけに申込:1%の当選確率
10社で申込:理論上 約10%に上昇
特に重要なのは主幹事証券です。主幹事は配分数が多いので、必ず申込しましょう。 そのうえで、割当数の少ない平幹事証券にも可能な限り申込むのが鉄則です。
テクニック②:SBI証券のチャレンジポイントを活用する
SBI証券には「落選するとポイントが貯まる」独自制度があります。
IPOに申込→落選→1ポイント獲得、という流れでチャレンジポイントがたまっていく仕組みです。
ポイントを貯めて、好きな銘柄にまとめて使うことができ、ポイントを大量投入すると当選確率上昇につながります。
ポイントの使い方のコツとしては、「大人気の銘柄」にポイントを一気に使うのが王道と言えるでしょう。ポイントを貯める期間は長いですが、一度の当選で数十万円の利益を狙えることもあります。
テクニック③:証券会社毎の資金ルールを効率的に活用する
証券会社によって「いつ資金が必要か」のルールが異なります。
これを理解すると、同じ資金を回しながら複数社で申込可能になります。
●資金ルールの代表例
・前受金あり(ブックビルディング時点で入金必須
例:楽天証券、松井証券など
資金拘束が厳しくなりますが、完全抽選なので公平性が高い
・抽選日までにあればOK
例:マネックス証券、野村證券(ネット抽選分)など
ブックビルディング申込時は入金不要で、抽選日前に入金すれば有効となります。
・当選後の入金でOK
例:岡三オンライン証券、SMBC日興証券(一部口座)など
資金効率が最も良く、当選したら短期間で入金すればOK。
このほかにも、IPOの当選率を上げる方法がありますので、いろいろ活用してIPO当選のチャンスを広げましょう。
IPOの売却時期と保有期間の考え方

IPOの基本的な売り方は「初値売り」
IPO投資で最も多いのは、上場初日の「初値」で売却して利益を確定する方法です。
IPOは「公開価格(募集価格)」と「初値(上場初日の最初に成立する価格)」の間に差が出やすく、短期で確実に利益を取る戦略となります。
初心者にはもっとも安全でシンプルな売却の方法となります。
ホールド(長期保有)という選択肢
一方で、IPO株を初値で売らずに保有する選択肢もあります。
この場合メリットとしては、成長性の高い企業では、初値後にさらに株価が上昇する可能性があります。過去には、メルカリ、マネーフォワードなど中長期で「2倍〜数倍」になる事例もあります。
また、東証グロースから東証プライム昇格など、将来の株価上昇シナリオが期待できる銘柄を保有し続けることで、さらに大きな利益を狙うこともできます。
デメリットとしては、初値が高すぎると、その後は下落するリスクが高くなってしまう点です。IPO後は「セカンダリー市場(2次売買)」で投資家が売却しやすく、初値天井になりやすいケースも多いため、長期保有は企業の成長性を見極められる中上級者向け戦略となります。
IPO投資のメリットとリスクを正しく理解する

IPO(新規公開株)には、他の株式投資にはない大きな魅力があります。
IPO投資のメリット
①初値上昇の可能性が高い
IPO銘柄は「公開価格」より「初値」が高くつくケースが多く、当選すれば短期間で数万円~数十万円の利益を得られることもあります。
②抽選で平等にチャンスがある
IPO株は証券会社の抽選で配分されるため、資金量が少なくても当たれば利益を狙えます。個人投資家でも機関投資家と同じ条件で当選のチャンスがあるのです。
③短期で結果が出る
通常の株式投資は、利益確定まで数週間から数か月、長ければ数年かかることもあります。しかし、IPO投資の場合は「当選 → 上場 → 初値売り」の方法であれば数日で売買が完結し、時間効率が良い投資といえます。
IPO投資のリスク
①公開価格割れ(損失)
IPO銘柄はすべてが上昇するわけではなく、初値が公開価格を下回る「公募割れ」が起こると、当選しても損失になる場合があります。これは「業績が赤字」「成長性が不透明」「公開株数が多い」銘柄や上場時の相場環境悪化で起きやすい傾向にあります。
②抽選に当たらない
IPO株は人気が高く、当選確率は数%以下の銘柄も少なくありません。申し込んでも落選が続き、実際に投資機会を得られないことは覚えておきましょう。
③初値後の下落リスク(セカンダリー投資)
初値で買った投資家が短期で利益確定売りを出すため、初値がピーク(天井)になることもあります。初値後に参入する「セカンダリー投資」は、値動きが激しく初心者には難しくなるケースもあります。
④長期保有で想定外の値動きとなることも
IPO後の企業は業績予想が不安定で、四半期決算の内容で急落することがあります。
せっかく初値利益を得られても、欲張って持ち続けると利益が消えるケースもありますので、長期保有をする際には銘柄を詳しく調べることが重要です。
IPO投資はリスクゼロではないと理解したうえで、 初心者はまず 「初値売り」を基本戦略にし、銘柄選別で公募割れリスクを避けるのが賢いやり方です。
初心者向けIPO投資戦略

IPO投資は「抽選で当たれば利益が狙える」という魅力的な投資方法ですが、当選しなければ始まりません。
まずは口座を複数開設して「応募機会」を最大化することが重要です。
売却の基本戦略として、まずは、上場日の寄付で売る「初値売り」を中心として、慣れてきたところで「長期保有」に移行していくのが良いかと思われます。
売却判断の目安例
・初値が公募価格の1.5倍以上ついた場合→初値売り
・初値が公募価格とほぼ同じもしくは公募割れの場合 →一旦ホールド検討
・将来性のある企業(成長産業・独自技術などがある場合)→長期保有も検討
まとめ
IPO(新規公開株)は、上場前の企業株を公募価格で買える特別なチャンスです。
株の知識が浅くても「公募価格で買って初値で売る」というシンプルな戦略で取り組めるのが強みですが、「当たらなければ始まらない」ため、最も重要な点は当選確率を上げることとなります。
IPO投資は「銘柄分析」よりもまずは抽選を勝ち取ることが最優先事項です。
そのために、証券口座を複数開設し、できる限り多くの抽選に参加したり、配分が大きいため当たりやすい主幹事証券を中心に申し込んだりと、当選確率を高める工夫を行う必要があります。
初心者にとって最も安全で再現性が高いのは初値売りです。初値で売ると「公募割れのリスクを最小化」でき、短期で利益を確定することができます。
慣れるまでは「当たったら即売り」のシンプル戦略で利益を確実に積み上げていきましょう。
慣れてきたら次のステップへ!
一部売却でリスクを抑えつつ残りを保有することで、元本回収と企業成長による更なる値上がりを狙うことができます。
また、高成長企業やテーマ性の高い株は長期保有で大化けを狙うこともでき、経験を積むことでリスク管理と利益最大化のバランスが取れるようになります。
抽選の工夫でチャンスを増やし、まずは「初値売り」で堅実に利益を取り、慣れてきたら戦略的な売却方法を取り入れていく。
これを守れば、初心者でも「リスクを抑えつつ勝ちやすい投資」が実現できるでしょう。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 投資戦略部 室長
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。