2026年1月、東京証券取引所は「上場維持基準の適合に向けた計画」および「改善期間入り銘柄」の最新状況(1月21日時点)を公開しました。ここに名を連ねる企業は、経過措置の終了や改善期間のリミットが迫る中、非常に厳しい経営判断を迫られています。
投資家として気になるのは、「これらの企業は、今後どのような運命を辿るのか」という点です。現状維持のまま上場廃止へ向かうのか、それとも生き残りをかけた抜本的な再編へ動くのか。
この分岐点を見極めることこそが、2026年の相場でリスクを回避し、あるいは大きなボラティリティを利益に変えるための鍵となります。
本稿では、公開されたばかりのリストを読み解き、崖っぷち企業に起こりうるシナリオと、投資家が知っておくべき市場への影響を解説します。
「現状維持」は許されず、強制的な変化が起きる

今回公開されたリストは、単なる成績表ではありません。これは東証から企業への「最後通告」に近いメッセージであり、投資家にとっては企業の生存本能が試されるフェーズに入ったことを示唆しています。
リスト(特に改善期間入り銘柄)に掲載されている以上、企業は今のままの経営を続けることはできません。期限までに数値を改善するか、あるいは市場から去るか。二つに一つの決断を、今年中に下さなければならない状況です。
「計画」から「結果」が求められるフェーズへ
企業は東証に対し「いつまでに基準をクリアするか」という計画書を提出していますが、2026年現在、多くの企業でその期限が目前に迫っています。
これまでは「計画」で許されていましたが、今後は「数値の達成」しか評価されません。そのため、経営陣は株価や流動性を上げるための具体的なアクション(IR強化、株主還元、M&Aなど)を、なりふり構わず実行せざるを得ない局面に入っています。
2026年は市場再編の「答え合わせ」の年
2022年の市場再編から数年が経過し、東証は基準未達企業に対して厳格な姿勢を強めています。市場の新陳代謝を促すこの流れは、投資家にとっては「変化の触媒」となります。
企業側のアクションは以前よりもスピーディーかつ大胆にならざるを得ず、それが株価への大きなインパクト(ボラティリティ)を生む土壌となっています。
「時価総額不足」と「比率不足」では、処方箋が真逆になる

一口に「上場維持基準未達」と言っても、その中身によって今後予想される株価の動きは天と地ほど異なります。投資家はまず、その企業が「何に苦しんでいるか」を識別する必要があります。
数ある基準の中で、特に注目すべきは「流通株式時価総額」と「流通株式比率」です。このどちらが不足しているかによって、企業が取るべき対策、そして株価への影響は正反対になります。
「時価総額不足」は株価上昇策への期待が高まる
流通株式時価総額を増やすための最もシンプルな方法は、「株価を上げること」です。
そのため、この項目で未達となっている企業は、増配や自社株買い、株主優待の拡充といった「株価を引き上げるための施策」を打つ可能性が極めて高いと言えます。
投資家にとっては、ポジティブなサプライズが期待できるグループです。
「比率不足」は売り出しによる需給悪化のリスク
一方で、「流通株式比率」が足りない企業は、親会社や創業家が保有する固定株を市場に放出しなければなりません。
これは市場での供給量が増えることを意味し、強烈な売り圧力(需給悪化)に直結します。改善策が発表されるたびに株価が下がるリスクを含んでいるため、安易な「逆張り」は禁物なグループとなります。
企業の「本気度」と「残り時間」でシナリオが分岐する

このリストにある企業が辿る未来は、大きく分けて3つのパターンに集約されます。それぞれのシナリオが発生する予兆と、株価への影響を整理します。
投資家は、企業が発表する適時開示や大株主の動向を監視し、以下のどのルートに入ったかを見極める必要があります。
シナリオA:TOBやMBOによる「抜本的解決」(急騰)
上場維持コストに見合わないと判断した場合、あるいは単独での維持が困難な場合、経営陣による買収(MBO)や、親会社・他社による完全子会社化(TOB)が選択されます。
特にPBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく割れている企業は「解散価値以下」であるためターゲットになりやすく、発表されればプレミアム価格での買取となるため、株価は数十パーセント単位で跳ね上がることになります。
シナリオB:市場区分の「自主的な降格」(調整)
プライム市場の維持を諦め、基準の緩いスタンダード市場への移行を選択するパターンです。これは一見ネガティブですが、身の丈に合った市場に移ることで維持コストが減り、無理な株価対策をする必要がなくなります。
発表直後は「プライム落ち」の失望売りが出ますが、その後は配当余力が生まれるなどして経営が安定し、株価が底打ちして反転(アク抜け)するケースも多く見られます。
シナリオC:監理銘柄指定からの「上場廃止」(下落・暴落)
改善策が見込めず、計画期間が終了してしまう最悪のケースです。この段階になると、機関投資家は社内規定で保有できなくなるため、機械的かつ強制的な売りが発生します。
リストの中で「計画の進捗が著しく遅れている企業」や「業績が赤字続きで回復の兆しがない企業」は、このルートを辿るリスクが高いため、基本的には投資対象から外す(あるいは空売りの監視対象とする)のが賢明です。
「キャッシュの量」と「アクティビストの有無」が決定的要因

リスト入り企業の中から、どの企業が「シナリオA(起死回生)」を選びやすいのか。その確度を高めるために見るべきは、感情ではなく冷徹な数字です。
企業が大胆な手を打てるかどうかは、結局のところ「お金があるか」と「外部からの圧力があるか」に依存します。
ネットキャッシュリッチな企業は選択肢が多い
時価総額が基準に届いていないにも関わらず、現預金を大量に持っている(実質無借金経営などの)企業は、大規模な自社株買いを行う余力があります。
また、豊富な資金はMBOを行う際の原資にもなり得ます。財務諸表を確認し、時価総額に対して現金の比率が高い銘柄は、ポジティブな変化が起きる可能性が高い「伏兵」です。
大株主名簿の変化を見逃さない
「物言う株主(アクティビスト)」が株主名簿に入っている銘柄は、変化の圧力が最大化しています。彼らは上場廃止による資産価値の毀損を避けるため、経営陣に対して増配やMBOを強硬に迫ります。
リスト公開後、大量保有報告書などでアクティビストの買い増しが確認できた銘柄は、水面下で何らかの再編シナリオが進行しているサインと捉えることができます。
2026年1月21日時点で公開された「上場維持基準未達企業」リスト
東証公式サイトで「上場維持基準不適合による改善期間入り銘柄」等の最新状況が更新されました。投資家の皆様は、必ず以下の一次ソースから最新のリストを確認してください。
【公式ソース】
※上記リンク先の「改善期間該当銘柄」のExcelをご確認ください。
まとめ
東証が1月21日時点で公開した「上場維持基準未達会社一覧(改善期間入り銘柄)」は、単なるネガティブリストではなく、2026年の市場で発生するドラマのキャスト一覧でもあります。
重要なのは、「未達だからダメだ」と切り捨てるのではなく、「未達だからこそ、何が起きるか」をシナリオとして想定することです。
- 時価総額不足の好財務企業 → 株価対策(急騰)の可能性
- 比率不足の企業 → 売り出し(下落)の警戒
- PBR1倍割れの企業 → TOB/MBO(再編)の期待
[関連]PBR1倍割れ最後通牒!2026年決算で試される資本効率と銘柄選別の極意
これらの視点を持って、上記公式リンクのリストを定点観測することで、市場の歪みが生むチャンスと、回避すべきリスクが浮き彫りになってくるはずです。
企業の「その後」を冷静に予測し、事実に基づいて動く準備を整えましょう。
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日本投資機構株式会社
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