2026年1月下旬に「レートチェック」のニュースが流れ、急速に円高が進行。
日本株市場もこの余波を受けて、輸出関連銘柄に売りが波及する場面が見られました。
しかし、レートチェックによる円高進行は一服し、足元では為替が円安方向に戻しつつあります。
再度1ドル=160円が見えてくれば、今度は為替介入があるのではないかとの思惑が市場に広がるでしょう。
そこで、今後為替介入が行われるとしたら、いつどのくらいの水準で行われる可能性が高いか、過去の介入時の状況を手掛かりに予想してみたいと思います。
2026年1月にレートチェックでドル円相場が乱高下
まず、2026年1月23日(金)に行われたレートチェック時の状況を振り返っておきましょう。
日銀会合後の円売りが加速したタイミングで介入
事の発端は、23日午後の日銀金融政策決定会合でした。
植田総裁が記者会見で利上げに慎重な姿勢を示した(ハト派的と受け止められた)ため、1ドル=159円台前半まで一気に円売りが加速しました。
しかし、会合終了直後の午後4時40分過ぎに、空気は一変します。
日銀が市場参加者に為替水準を尋ねる「レートチェック」を実施したとの観測が流れると、わずか10分足らずで157円台前半まで約2円も円高が進行しました。
米当局も同日にレートチェック
さらにこの日の夜、ニューヨーク市場においても急激な円高が再加速し、一時は155円台を割り込む場面もありました。
市場を驚かせたのは、日本単独ではなく米当局も同時にレートチェックを実施したという観測です。
これは「日米の当局が、現在の行き過ぎたドル高・円安を是正するために足並みを揃えた」という極めて強いメッセージとなりました。
アメリカ側を巻き込んでけん制を行うことは異例であり、市場に強烈なインパクトを与えました。
2022年以降に4回行われた為替介入時の状況を分析

2022年以降には、4回のドル売り・円買い介入が行われています。
各介入時の状況について、詳しく見ていきましょう。
2022年9月22日|145円台後半で介入
2022年9月22日、日本の通貨当局は約24年ぶりに円買い・ドル売りの実弾介入に踏み切りました。
当時、アメリカのFRB(連邦準備理事会)がインフレ抑制のために大幅な利上げを継続していたのに対し、日銀は大規模な金融緩和を維持。
日米の金利差を背景に、為替相場では一方的な円安が加速していました。
特にこの日は、日銀の金融政策決定会合において大規模緩和の維持が発表された直後、黒田総裁(当時)が会見で「当面利上げはしない」という姿勢を強調。
これを受けたドル円相場は一気に145円台後半まで円安方向に動きました。
政府・日銀が動いたのは、その直後の17時過ぎです。
取引参加者が入れ替わる欧州市場の開始時間を狙った介入でした。
これを受けて、ドル円は一時140円台まで5円近く押し戻されています。
2022年10月21日・24日|151円台後半で介入
2022年10月21日(金)、アメリカの長期金利上昇を背景に、ドル円は151円90銭付近まで円安方向に戻していました。
市場が「どこまで円安が進むのか」と浮足立っていた深夜23時過ぎ、突如として巨額の円買い注文が入り、相場は一瞬にして144円台まで円高が進行。
およそ7円もの暴騰を記録しました。
この介入は、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「FRBが利上げペース減速を検討し始める」と報じ、ドル買いの勢いが一服したタイミングで行われました。
さらに週明け月曜日の午前8時過ぎの、取引参加者が極めて少ない時間帯を狙って再び追撃の介入を実施。
週末を跨いで安心していた投機筋に打撃を与え、円安基調をへし折ることに成功しました。
2024年4月29日・5月1日|160円台前半で介入
2024年4月29日(月)午前、ドル円相場は1990年以来34年ぶりとなる1ドル=160円の大台を突破しました。
節目の突破に市場が沸くなか、お昼時に突如として数兆円規模の巨額介入が実施されています。
この日は日本が祝日(昭和の日)で東京市場が休場しており、市場の流動性が極端に低下していました。
ドル円相場は、160円台から一気に154円台まで、わずか数時間で5円以上の円高方向へ動きました。
さらに2日後の5月1日(水)深夜に、米FOMCの結果発表を受け、パウエル議長の会見によってドル売りが優勢になった瞬間を狙って、2度目の追撃介入を実施。
重要イベントを終えて市場が安堵した瞬間に実弾を投じることで、ドルを買い持ちしていた投資家の強制ロスカットを誘発し、介入効果の増幅に成功したとみられます。
2024年7月11日・12日|161円台後半で介入
2024年7月、ドル円相場は1ドル=161円台後半まで円安方向に動いており、市場では介入への警戒感が高まっていました。
そうしたなか、7月11日夜に、米国のインフレ鈍化を示すCPIの結果を受け、米利下げ期待からドル売り・円買いの動きが発生しました。
当局はこの円高方向への動きが起きたタイミングで、巨額の円買い実弾を投入。
自律的な円高の動きに介入を重ねて、相場の勢い(モメンタム)を一気に円高方向へと決定づけました。
さらに翌12日にも、市場が落ち着きを取り戻そうとする深夜の時間帯に再び介入を実施。
2日間で計約6兆円という空前の規模を投じ、ドル円相場を161円台から一気に157円台まで4円近く押し戻しました。
過去の為替介入から見えてくる傾向

過去の事例から、以下のような共通点が見えてきます。
1|介入を行うのは薄商いの時間
為替介入は、市場の流動性が低下する薄商いの時間帯を狙って頻繁に行われています。
具体的には、月曜日の早朝(オセアニア市場のみが動いている時間)、日本の祝日、あるいは東京市場が閉まり欧米市場が本格始動する前の日本時間夕方頃などが該当します。
薄商いの時間を狙えば、注文が少ない分、同じ金額を投じても大きなインパクトを与えられます。
また、薄商いの時間帯に急激な価格変動が起きると、円売りポジションを持っていた投資家の逆指値注文が連鎖的に発動しやすくなります。
このように、市場の隙を突くことで、限られた外貨準備高(介入資金)を最大限に活用するのが当局の狙いです。
2|イベント前後も狙い目になっている
また、日銀の金融政策決定会合や米国のFOMC、さらには米雇用統計や消費者物価指数(CPI)の発表といった重要イベントのタイミングも、介入の「Xデー」になりやすいです。
相場を動かす大きな材料が出る前は、投資家たちの期待感で売買が積み上がることが多々あります。
そのためイベント直後の投資家が新たなポジションを作り直そうとするタイミングで介入を行うと、平時よりも大きなインパクトを与えられると考えられます。
3|前回の介入ラインが突破されてから介入を行う
市場参加者は、過去に介入が行われた水準を為替の防衛ラインとして強く意識します。
そのため、そのラインに近づくと「そろそろ為替介入に打って出るはずだ」と考えた投資家による円買いポジションが積み上がりやすいです。
このポジションが大量に溜まった状態で介入を行った場合、円高が進行した場面では、投資家たちが一斉に利益確定(円売り・ドル買い)に動くと考えられます。
そうなれば、介入の効果を打ち消す「円安方向への戻り圧力」が強く働いてしまいます。
この戻り圧力が働かないようにして、介入を十分に機能させるためには、前回のライン突破を容認し、逆張りの円買い勢力を振り落とすプロセスが必要です。
これが、為替介入を行う度に、その水準がより円安方向に動いている理由だと思われます。
そうであれば、次の介入は1ドル=160円近辺ではなく、当局は1ドル=165円程度までの円安進行を容認するのが合理的であると考えられます。
1月23日(金)にレートチェックを行ったのは実は超合理的

2026年1月23日(金)に実施されたレートチェックは、実は極めて合理的な戦略に基づいた一手であったと思います。
実際、私は1月17日(土)に行われた資産運用EXPOでのセミナーで、衆議院解散と日銀会合が重なる23日(金)に、急激な円安が進んだ場合には介入の可能性があると指摘していました。
実は23日(金)は円安抑制の最後のチャンスだった
高市政権の立場からすれば、衆議院総選挙という極めて重要な時期に、株価下落を招いて与党支持率を下げる事態は避けたいはずです。
そのため、日銀総裁が過度にタカ派な発言をして市場を冷え込ませるわけにはいきません。
一方で、解散と会合の相乗効果で円安が暴走し、円安による輸入インフレを招いているとの批判を浴びることも避けなければならないという難しい局面でした。
さらに、選挙直前に実弾介入を行い、その影響で株価が急落して投資家が損失を被れば、選挙結果に直結しかねません。
つまり、1月23日は選挙戦が本格化する前に円安を抑え込んでおく最後のチャンスだったのです。
円安進行が限定されたためレートチェックに留めた
このタイミングで1ドル=165円程度まで円安が進んでいたら実弾介入もあったと私は思っています。
しかし、1ドル=160円の前回防衛ラインを突破しない水準での実弾介入は前述のように効果が限定されやすく、限られた資金を使うには勿体ない面があります。
そのため、レートチェックを行うことで円安を封じ込める手に出たのでしょう。
日本単独のレートチェックでは効果が限定されてしまう可能性を危惧し、アメリカと協調したレートチェックという一段上のけん制を用いたと考えられます。
このように政治的背景と市場心理を繋ぎ合わせて考えていくと、当局の動きが見えてきます。
今後介入が行われるXデー候補は?

では、今後為替介入が行われるのであれば、どの程度の為替の水準で、いつ行われるでしょうか。
1ドル=165円程度までは許容範囲か
高市首相は1月31日に「円安は輸出産業にとってチャンスであり、外為特会の運用益も潤っている」といった趣旨の発言をしており、円安を必ずしも悪材料とは捉えていない節があります。
このことから、やはり1ドル=165円程度までは許容範囲としている可能性が高いでしょう。
とはいえ、世論の批判を考慮すれば、165円を超えた場面では一転して介入に踏み切る公算が大きくなります。
2月、3月の特に注意したい日程
過去の傾向から、特に以下の日程には為替介入の可能性に注意したいです。
- 薄商いとなる祝日
2月であれば11日(水)の建国記念の日、23日(月)の天皇誕生日などが挙げられます。 - 重要指標の発表後
目先は、 2月11日(水)の米雇用統計、13日(金)の米消費者物価指数(CPI)などが挙げられます。
米政府閉鎖の影響によって、雇用統計が水曜日に発表されるなど変則的な日程になっている点に注意したいです。 - 米FOMCや日銀金融政策決定会合の終了後
3月は17日(火)から18日(水)に米FOMC、18日(水)から19日(木)に日銀金融政策決定会合が行われます。
特に会合翌日の3月20日(金)は祝日(春分の日)と重なるため、絶好の介入候補日となります。
ただし、3月末は日本企業の期末にあたります。
この時期に強引な介入を行えば、企業の決算数値や資産評価に多大な混乱を招きかねません。
当局が市場への悪影響を考慮し、円安が進行しても4月以降まで介入を先送りにするシナリオも十分に想定されるため、判断が難しいところです。
当面は為替の水準とスケジュール感を意識しておこう

今後の相場に臨むにあたっては、1ドル=165円程度の水準を意識しつつ、薄商いとなる時間や祝日に注意して市場動向を観察する必要があります。
また、雇用統計や消費者物価指数の発表、日米の金融政策決定会合などの重要イベントが終わった後も油断は禁物です。
こうしたスケジュールを頭に入れておくことで、感情に流されない、合理的で堅実なリスク管理ができると思います。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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