ソフトバンクグループ(9984)は、AI事業の成長を長期で待てる投資家には検討余地がありますが、OpenAIの年内上場を狙う短期投資の前提は崩れました。
2026年9月14日終値は5,839円、前営業日比10.7%安です。純利益5兆円は前期の実績で、最新の4〜6月期は減益でした。
本記事では9月15日確認の情報を基に、急落の理由、OpenAI・アームの資産価値、Roze構想と財務負担を整理します。株価と投資指標は9月14日終値に統一しています。
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ソフトバンクグループの株価はなぜ急落?9月14日は10.7%安

ソフトバンクグループの株価は、AIへの成長期待で急騰した後も大きく上下しています。6月の高値からは約36%下落しましたが、下落率だけでは割安と判断できません。まず値動きと投資指標を確認します。
6月高値9,074円から5,839円へ下落
2026年6月2日の取引時間中高値は9,074円、9月14日の終値は5,839円でした。高値からの下落率は35.7%です。計算式は「5,839円÷9,074円−1」。6月の高値を取り戻すには、9月14日終値から約55.4%の上昇が必要です。
以下は株式分割を調整した日足です。下げた値幅と、元の水準に戻るために必要な上昇率は一致しません。

OpenAIの年内上場否定が売り材料に
9月14日は前営業日の6,540円から701円下落しました。背景には、OpenAIのアルトマンCEOが2026年内の上場を否定したとの報道があります。上場による保有株の評価上昇を期待していた投資家にとって、短期の買い材料が後退しました。
ただし、1日の下落すべてをこの発言だけで説明はできません。米国のAI関連株や半導体株への警戒も重なったと報じられています。OpenAIが成長する可能性と、上場を待つ間の株価変動は分けて考える必要があります。
予想PERは算出できず、予想配当利回りは約0.19%
会社は通期業績予想を開示していないため、会社予想に基づくPERは算出できません。過去の評価益を含む利益から求めた低いPERを、そのまま割安の根拠にはできません。
| 指標 | 9月14日終値基準 |
|---|---|
| 株価/100株の購入代金 | 5,839円/58万3,900円 |
| 予想年間配当/利回り | 11円/約0.19% |
| 実績BPS/PBR | 3,232.37円/約1.81倍 |
配当は27年3月期会社予想、BPSはYahoo!ファイナンス掲載値です。利回りは11÷5,839、PBRは5,839÷3,232.37で計算しています。
最新決算は純利益3,473億円|通期5兆円と分けて読む

8月6日発表の27年3月期第1四半期決算は、売上高が増えた一方で純利益は減少しました。投資先の評価益が増えても、最終利益が同じように増えるとは限りません。前期通期の最高益と、直近四半期の変化を切り分けます。
4〜6月期は増収でも純利益17.7%減
27年3月期第1四半期の売上高は2兆196億円、親会社の所有者に帰属する純利益は3,473億円でした。前年同期比では売上高が10.9%増、純利益が17.7%減です。投資利益は1兆8,594億円に増えましたが、株式報酬費用や財務費用などが利益を圧迫しました。

純利益5兆円の「約9割」は純利益ではなく投資利益の割合
26年3月期通期の純利益は5兆23億円でした。同じ期の投資利益は約7兆2,900億円で、OpenAI関連の投資利益は6兆4,655億円です。約9割という割合の分母は「純利益」ではなく「投資利益」です。
投資先の価値上昇で計上する評価益は、株式を売って受け取る現金とは異なります。26年3月期の営業キャッシュフローは4,288億円のマイナスでした。純利益が過去最高でも、その金額をそのまま追加投資や借入返済に使えるわけではありません。
最新四半期の投資利益はIntelとByteDanceが押し上げ
4〜6月期はIntel関連で1兆3,329億円、ByteDance関連で3,584億円の投資利益を計上しました。一方、OpenAIの評価額は3月末から据え置かれています。直近決算まで「OpenAIの評価益だけで増益」と読むのは誤りです。
アーム、アンペア、グラフコアを含むAIコンピューティング事業では、技術開発と人材確保にも資金が必要です。株式報酬費用を含め、保有株の値上がりと事業を育てる費用を別々に追うと、利益の増減理由を理解しやすくなります。
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OpenAIへの投資はどうなる?上場時期と追加出資を確認

OpenAIはソフトバンクグループの将来価値を左右する重要な投資先です。ただし、上場の時期、資金調達時の企業価値、実際に投じた金額は別の情報です。期待だけを積み上げず、それぞれの確定状況を確認しましょう。
2026年内の上場期待は後退、2027年の上場も確約ではない
9月12日公開のFortuneのインタビューで、アルトマンCEOは2026年内の上場を否定しました。早期のIPOで投資成果が見えるという期待は後退しました。2027年の上場日が決まったという意味でもありません。
上場すれば価格の透明性は高まりますが、ソフトバンクグループが保有株を直ちに売却できるとは限りません。売却制限や投資方針も関わります。IPOの観測報道だけで、将来の評価益と現金回収を同時に見込む投資判断には無理があります。
7月に100億ドルを追加出資、次回は10月1日予定
会社は7月1日に、OpenAIへの追加出資の第2回分100億ドルを実行しました。累計出資額は546億ドルとなり、10月1日には残る100億ドルを出資する予定です。全額実行後は累計646億ドル、持分比率は約13%となる見込みです。
「出資済み546億ドル」と「計画646億ドル」は区別が必要です。上場時期の後退だけを理由に、10月の出資予定まで取り消されたとは判断できません。
競争力は新モデルの評判より収益化と資金需要で見る
OpenAIには、GoogleのGeminiやアンソロピックのClaudeなどの競合があります。ただ、特定のモデルを使った感想だけで、企業価値の優劣は判断できません。法人向け売上、継続利用、計算資源の費用、追加の資金需要を合わせて確認したいところです。
利用が増えても、サービス提供に必要な設備費や計算費用がそれ以上に膨らめば、資金調達は続きます。ソフトバンクグループ株の投資家にとっては、AIの性能向上が投資先の収益や回収可能性につながるかが重要です。
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アームとNAVで見るソフトバンクグループ株の割安度

ソフトバンクグループは、保有資産の価値から純負債を差し引いたNAVを重視しています。アームの株価とドル円相場の変化が、NAVを大きく動かします。過去の高いNAVだけを使うと、現在の割安度を過大評価しかねません。
6月末NAV72.3兆円と8月5日試算58.3兆円は別の数字
会社公表のNAVは6月末に72.3兆円でしたが、8月5日の株価・為替を使う試算では58.3兆円でした。約1カ月で約19%減った計算です。これは実績純利益の減少率ではなく、会社独自の保有資産評価の変化です。

NAVディスカウントは株価と評価日をそろえて計算する
6月末の1株当たりNAVは12,686円、同日の株価は5,963円でした。「1−5,963÷12,686」で計算すると、NAVに対する割引率は約53.0%です。9月14日の株価だけを6月末NAVと比べて、現在も同じ割安度だとは言えません。
アーム株の上げ下げ、為替、借入残高、追加出資によって分母も動きます。NAVとの差は理論上の目標株価や、必ず埋まる値幅でもありません。
アームへの集中度と独自CPU事業の採算を確認
6月末の保有株式価値は83.11兆円で、資産を裏付けとする資金調達を調整したアームの価値は49.91兆円でした。保有株式価値の約60%をアームが占める計算です。複数企業に出資していても、資産価値の変動要因は分散しきっていません。
アームはライセンスやロイヤルティーに加え、独自CPU事業も進めています。市場が広がる可能性がある一方、開発費や顧客との競合も確認が必要です。AI需要の拡大が、そのまま株主の利益拡大になるとは限りません。
PayPayは上場後の成長段階へ|9984と9434の違いも確認

PayPayは上場の思惑だけで語る段階を過ぎました。一方、ソフトバンクグループ(9984)と通信会社のソフトバンク(9434)は別の銘柄です。配当目的で調べている場合は、会社名の似ている2社を取り違えないようにしましょう。
米国上場後はセブン&アイとの提携など事業拡大に注目
PayPayは2026年3月12日に米ナスダックへ上場しました。7月31日にはセブン&アイ・ホールディングスとの資本・業務提携が発表され、8月の決算説明でも紹介されています。今後は上場そのものより、決済から金融サービスへの拡大を追う段階です。
店舗網と決済基盤の連携は利用を増やす余地があります。ただし、出資額や提携規模だけでは利益への寄与は分かりません。顧客の利用増が収益につながるか、追加投資に見合う利益を得られるかを確認します。
高配当の通信株を買うつもりなら銘柄コードを確認
ソフトバンクグループ(9984)はAI関連資産の価値変動が大きく、ソフトバンク(9434)は国内通信事業などを営む子会社です。両社はグループ内の企業でも、利益の成り立ちや株主還元の方針が異なります。
9984の予想配当利回りは9月14日終値で約0.19%です。安定した配当収入を主目的にするなら、AI投資による株価上昇を狙う場合とは選ぶ基準が変わります。PayPayを持つグループへの投資という説明だけで、2つの上場株を同じ性質と考えないようにしましょう。
Roze構想とフィジカルAI|ABB・データセンター・SB Energy

ソフトバンクグループは、AIの開発だけでなく、半導体、電力、データセンター、ロボットへ投資を広げています。買収合意、建設計画、上場申請はそれぞれ進み具合が違います。期待を現在の収益として数えないよう整理します。
ABBロボティクスは買収合意と取得完了を区別
ABBのロボティクス事業は、2025年10月に53.75億ドルでの買収合意を発表しました。狙いは、AIの判断を工場などの物理的な作業につなげるフィジカルAIの展開です。買収合意を、そのまま事業取得の完了と扱うことはできません。
9月4日に公表した社債発行でも、資金使途の一つにABB事業の買収資金を挙げています。取得には関係当局の承認などが条件となります。買収後の収益寄与を考える際は、完了の開示と、その後の統合費用や売上を分けて確認します。
スターゲートは建設の進捗、デジタルブリッジは買収条件を見る
スターゲートの最大5,000億ドルは、複数社が関わるAIインフラ計画全体の規模です。ソフトバンクグループ1社の確定投資額ではありません。8月の説明では、米テキサス州ミラム郡で最初の建屋の建設が進む一方、別拠点では契約交渉が続いていました。
デジタルブリッジ買収の発表は、企業価値ベースで約40億ドルです。運用資産残高がそのまま買い手の保有資産になるわけでもありません。データセンターの用地・電力確保、顧客契約、稼働開始までの支出を追う必要があります。
Rozeの会社実在と、1,000億ドル上場構想は分ける
26年3月期の有価証券報告書には、米国の「Roze AI LLC」が連結子会社として記載されています。一方、AI・ロボティクスを束ね、企業価値1,000億ドルで上場を目指す構想は報道ベースです。会社の存在を確認できても、上場時期や評価額が確定したわけではありません。
Rozeの報道上の企業価値を、現在のNAVにそのまま上乗せするのは不適切です。上場する企業の範囲、組み入れる資産、外部投資家の持分、調達条件の正式開示が、構想の実態を判断する手掛かりになります。
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SB Energyは9月に上場申請を公表、Rozeとは別案件
9月2日の会社発表によると、米SB Energyは現地9月1日に米証券取引委員会へForm S-1を公開提出しました。予定ティッカーは「SBE」です。9月2日の発表時点では、募集株式数と公開価格は未定でした。
9月15日にはロイターが、日本の投資家向けに最大5億ドルの株式販売を計画していると報じました。OpenAIやRozeとは別の上場案件で、公募総額や評価額の確定とは区別します。
ソフトバンクグループは買うべきか?今後の判断条件

買い判断では、値下がりした株価だけでなく、追加出資に必要な資金と、保有資産の価値を並べて見る必要があります。成長が続く場合と、資金回収が遅れる場合の両方を考えると、自分に合う投資かを判断しやすくなります。
買いを検討する条件と、見送る条件
中長期で買いを検討するなら、OpenAIの収益化が進み、アームの事業拡大が費用増を上回る見通しを持てるかを確認します。加えて、追加投資を続けても借入条件や資金繰りが悪化しないかが重要です。AIの成長だけでなく、その成長が株主に帰属する価値を増やすかで考えます。
反対に、短期のIPOだけを値上がりの根拠にする場合や、大幅な含み損を許容できない場合は慎重さが必要です。配当収入を優先する人にも向きにくい水準です。購入時期を分けても、損失を防げる保証はありません。
259億ドルの期限前返済は、借金がなくなる意味ではない
会社は9月9日、ブリッジローン残高259億ドルを9月15日付で期限前返済する方針を公表しました。発表した返済予定と、返済完了の確認は区別します。9月15日確認時点の本記事では、9月9日発表に基づく予定として扱います。
資産の資金化や別の借入を組み合わせる場合、短期借入の返済だけでグループ全体の負債が消えるわけではありません。返済資金の出所と、借換後の金利・期限まで確認したいところです。
年4.75%の1兆円社債と、6月末LTV13.0%をどう読むか
9月4日に条件を決めた国内普通社債は1兆円、期間7年、利率年4.75%、払込日は9月17日です。単純計算の年間利息は475億円ですが、借換を含むため全額が純増する利払いとは限りません。
6月末LTVは13.0%、手元流動性は2.3兆円でした。会社は通常時のLTVを25%未満に保つ方針です。ただし資産価格が下がると、負債を増やさなくてもLTVは上がります。9月時点の比率と取り違えないようにしましょう。
【2026年9月24日追記】約110億ドルの外貨建て社債計画と財務負担
9月21日、ロイターはソフトバンクグループが100億米ドルと10億ユーロ、合計約110億ドル相当の無担保シニア社債の募集を開始したと報じました。10月1日予定のOpenAIへの100億ドルの追加出資や一般事業資金に充て、同出資向けにつなぎ融資枠で確保していた資金を社債に置き換える計画です。
報道上の年限はドル建てが3.5年・5.5年・7.5年、ユーロ建てが4年・6年です。条件決定は9月24日、払込は29日の予定とされています。9月24日朝の確認時点では最終利率・発行条件の確定を確認できていないため、募集計画として扱います。
株価の今後を考えるうえでは、投資資金の確保に加えて、毎年の利払いがどれだけ増えるかが焦点です。同じ元本なら、利率が1ポイント高いと年間利息はドル建て全体で1億ドル、ユーロ建て全体で1,000万ユーロ増える計算です。これは金利差による単純試算で、実際の利払い額や為替ヘッジ費用を示すものではありません。
会社の格付情報では、9月11日時点の長期債格付けはS&PとFitchがBB+、JCRがAです。S&PのBB+は投資適格の下限BBB-を1段階下回ります。JCRのAだけを見て、海外の格付けも投資適格だとは判断できません。格付けや市場金利の変化は、今後の資金調達条件にも影響します。
LTVの分子にも注意が必要です。会社公表の6月末の保有株式価値は83.11兆円、調整後純負債は10.81兆円で、「10.81÷83.11」が約13.0%に相当します。連結純有利子負債22.29兆円から独立採算子会社等の純有利子負債やその他項目を調整した数字であり、両者は同じではありません。今回の社債や追加出資を反映した9月末の比率でもありません。
調達した資金が現金として残る間と、OpenAIへの出資に使われた後では、純負債への影響が変わります。次回決算では、出資後の純負債・LTV、手元流動性、利払いの増減を合わせて確認します。社債で投資資金を確保できても、OpenAIからの現金回収が早まるわけではありません。
次は10月のOpenAI出資と中間決算の資金収支を確認
次の具体的な予定は、10月1日のOpenAI追加出資100億ドルです。実行の有無、累計出資額、資金調達方法の開示を確認します。中間決算では、7月以降の出資や借入返済が財務諸表にどう反映されたかを追えます。
27年3月期第1四半期の営業キャッシュフローは4,399億円のマイナスでした。評価益に加え、現金の増減と利払いを継続して確認する必要があります。OpenAIの上場、Rozeの構成資産、SB Energyの募集条件も、確定した開示が出た時点で判断を更新します。
まとめ|ソフトバンクグループ株はAIの成長と資金回収の両面で判断する

ソフトバンクグループの9月14日終値は5,839円。OpenAIの年内上場期待が後退し、株価は6月高値から35.7%下落しました。
買いを検討するなら、AI事業の成長を待てるかに加え、追加投資と借入負担を受け入れられるかが条件です。株価下落だけを割安の根拠にはできません。
最新決算は純利益3,473億円。通期5兆円の過去実績と区別し、今後は10月のOpenAI出資、資金収支、上場案件の正式開示を確認しましょう。
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日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
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