「日銀が利上げすれば円高になる」──為替の教科書を信じていた人ほど、2026年を目前にした現在の円相場の動きに強い違和感を抱いているのではないでしょうか。
日銀は断続的な追加利上げに踏み切っていますが、為替市場では円を買い戻す動きは限定的で、むしろ円安が定着する兆しさえ見せています。
これは一時的な需給の乱れではなく、日本の通貨「円」がすでに“止まりにくい構造的な円安”に陥っていることを示唆しています。なぜ、金利が上がっても通貨価値が回復しないのか。
この記事では、2026年に向けて円安トレンドが継続しやすい背景を、日米の金利差、実質金利、そして市場の期待形成という3つの視点から、初心者の方にも分かりやすく整理していきます。
日銀が利上げしても円安が進んだという事実

2026年の為替相場を読み解く第一歩は、過去の「利上げ=通貨高」という常識が通用しなくなっている現実を正しく認識することにあります。金利という要素が市場でどのように評価されているのか、その変化を詳しく見ていきましょう。
利上げの「有無」より「ペース」が問われる時代
2025年12月、日銀は0.25%の追加利上げを決定しました。通常であれば円高要因となるはずですが、市場の反応は「円売り」でした。
この背景には、利上げそのものが事前に織り込まれていたことに加え、日銀から示された今後の展望が極めて慎重だったことが挙げられます。
投資家が求めているのは「利上げをするか否か」ではなく、「どの程度の速さで、どこまで金利を上げるのか」という確実な道筋です。
日銀の慎重な姿勢は、結果として「金利差は当面縮まらない」というメッセージとして受け取られ、円を積極的に買い持つ動機を奪ってしまったのです。
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期待の修正がドル円を157円台へと押し上げた
利上げ直後、ドル円が一時157円台まで進行した事実は、市場の期待がいかに「円安継続」に傾いているかを象徴しています。
中立金利(景気を冷やしも温めもしない金利水準)への到達時期が不明確なままでは、海外のヘッジファンドなどにとって円は依然として「売りやすい通貨」であり続けます。
日銀が一歩進んでも、市場の期待が二歩先を歩いている状況が、利上げ局面での円安という逆説的な現象を生んでいるのです。
金利差だけでは説明できない円安局面に入っている

現在の円相場を複雑にしているのは、目に見える名目金利の差だけでなく、投資家たちの心の中に形成されている「将来の期待」そのものが円安方向に大きくシフトしてしまっている点にあります。
金利差が縮小しても円安が進む「トレンドの解離」
本来、日米の金利差が縮小に向かえば、投資資金はドルから円へと還流し、円高圧力がかかるのが為替の基本原理です。
しかし、2025年の市場では、金利差が縮まる局面であっても円安が進行する場面が目立ちました。
これは、為替レートの決定要因が金利差だけではなく、日本経済の長期的な潜在成長力や通貨の信認といった、より深い構造的問題へと移行していることを示唆しています。
市場に定着した「期待為替レート」の円安シフト
国際通貨研究所などの分析によれば、ドル円相場は金利差に基づいた適正水準から大きく「円安方向」へ乖離した状態が続いています。これは、市場参加者の多くが「将来も円安が続くだろう」という前提で動いていることを意味します。
一度形成された期待は容易には覆りません。金利が多少上がった程度では、「将来の円安による損失」をカバーできないと判断されるため、資金移動が起きにくい構造が出来上がっているのです。
慎重すぎる金融政策が円安期待を後押し

日本のインフレ状況と、それに対する日銀の対応スピードのズレが、結果として「円安の燃料」となってしまっている皮肉な構図が存在します。
ヘッドラインインフレと政策判断のギャップ
2026年を迎えた現在、日本の消費者物価上昇率は3%前後で推移しており、日銀の物価目標である2%を継続的に上回っています。
それにもかかわらず、日銀が「基調的なインフレ率の見極め」を強調して緩やかな利上げに留めていることは、海外勢から見れば「後手に回っている(Behind the curve)」と映ります。
インフレに対して金利の引き上げが追いついていない状況は、通貨価値を実質的に目減りさせるため、円を保有するリスクを強調する結果となっています。
「利上げに消極的」という国際的なブランディング
日銀の慎重なコミュニケーションは、国際金融市場において「日本はインフレ下でも低金利を維持し続ける国」という強い印象を定着させました。
この認識が定着すると、円は低コストで資金を借りて他国へ投資する「キャリートレード」の調達通貨として使い続けられることになります。
結果として、日本の物価が上がれば上がるほど、利上げが追いつかないことへの不信感から円が売られるという、負の循環が続いています。
財政懸念が円安を後押しする構図

金融政策の限界は、日本の抱える莫大な政府債務という「財政の壁」とも深く結びついています。これが2026年の円安トレンドを裏支えする見えない重しとなっています。
「財政従属」への警戒感が招く通貨売り
積極的な財政出動が続く中で、日銀が大幅な利上げを行えば、政府の国債利払い費は急膨張します。市場には「政府の財政を守るために、日銀は大幅な利上げができないのではないか」という疑念、いわゆる財政従属への懸念が根強くあります。
金融政策が財政の意向に縛られていると見なされることは、中央銀行の独立性への疑義となり、通貨としての「円」の信認を長期的に低下させる要因となります。
実質金利の低下とインフレ期待の負のループ
財政懸念が強まると、インフレ期待が高まる一方で、名目金利の上昇が抑えられます。その結果、名目金利からインフレ率を引いた「実質金利」は低下(マイナス幅が拡大)します。
実質金利が低い通貨は投資対象として魅力がないため、さらなる円安を招き、輸入物価の上昇を通じて再びインフレ期待を高めるという、止まりにくいスパイラルを生み出すのです。
投機筋の動きが円安を“想定以上”に進めた

為替相場は経済の実需だけで決まるわけではありません。莫大な資金を動かす投機筋(ヘッジファンド等)の「期待の修正」が、2026年に向けた円安の振れ幅を大きくしています。
円高期待の「裏切り」が招いた急速な円売り
2025年前半、市場には「日銀利上げ・米利下げ」による円高回帰の期待が充満し、投機筋は巨額の円買いポジションを積み上げていました。
一時は140円近辺まで円高が進みましたが、米国経済の驚異的な底堅さが判明すると、その期待は一転して崩れ去りました。この「円高シナリオの失敗」に伴う投げ売りが、円安を加速させる強力なエネルギーとなったのです。
新たな材料よりも「諦め」の円売り
現在の円安は、何か新しい円安材料が出たから進んでいるというよりは、積み上がっていた「円高への期待」が剥落し、投資家たちが円を買い戻すことを諦めた結果として起きています。
投機筋が円安方向へポジションを再び傾け始めたことは、2026年にかけての相場の底堅い(円安方向への)推移を予感させる重要なファクターです。
金利差よりも“米金利”が効く相場構造

日本の金利がどれだけ上がるかよりも、米国の金利がどこまで維持されるか。この不均衡な影響力が、円安を止まらなくさせている数学的な現実です。
日米金利の「影響力4倍の差」という現実
国内シンクタンクの試算によると、ドル円相場は日本の金利が動くよりも、米国の金利が動くことに対して約4倍も強く反応することがわかっています。
つまり、日本が0.25%の利上げを頑張って実施したとしても、米国でインフレ懸念が再燃して米金利がわずか0.1%上昇するだけで、利上げによる円高効果は容易にかき消されてしまいます。
2026年にかけて米国経済が底堅さを維持し、米金利が高止まりする限り、日本側の努力だけで円安を反転させるのは極めて困難です。
実質金利がマイナスである限り円は買われない
名目上の金利が少しずつ上がっていても、物価上昇率を加味した「実質金利」で見ると、日本は依然として大幅なマイナス圏にあります。
お金を円で持っているだけで実質的な価値が目減りしていく状態では、世界中の投資家が「円を買おう」と動くはずがありません。この実質金利の差が埋まらない限り、円は構造的に売られ続ける立場にあるのです。
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「円安は止まるか」ではなく「どの水準に慣れるか」

私たちは今、「円安がいつ終わるか」という問いから、「どの程度の円安水準を前提に生きていくか」という適応のフェーズに入っています。
「上限意識」が「反転」を意味しない市場心理
かつては1ドル110円が常識で、130円は大ニュースでした。しかし今や150円台は「見慣れた景色」となりつつあります。
市場において160円という水準は、当局の介入などを警戒する「一旦のブレーキ」としては機能しますが、そこが円高への反転ポイントになるとは限りません。
むしろ、150円台後半が新しい「心地よいレンジ」として定着してしまっているのが、2026年に向けた現実的な見方です。
2026年の着地点としての150円台後半
急激な変動には政府の介入が入るため、無制限に円安が進むリスクは抑えられます。しかし、構造的な要因が解消されない以上、150円を割り込んで120円や110円に戻るシナリオもまた、現実味を欠いています。
2026年に向けては、150円台後半を基準点とした「高止まり」の状態が、日本経済の新しい前提条件になっていくでしょう。
まとめ
2026年の円安は、単なる一時的な不運ではなく、日米の経済力の差、インフレへの対応スピード、そして財政構造の問題が重なり合った「構造的な帰結」です。
日銀が利上げをしても円高にならない状況は、直感には反しますが、データの裏側にある仕組みを紐解けば、極めて整合的な動きであることがわかります。
私たち投資家に求められるのは、為替を「いつか戻るもの」と予想することではなく、この円安環境を「変えられない前提条件」として受け入れ、その中で資産を守り、育てるためのポートフォリオを整えることです。
2026年という時代を生き抜くために、為替の「構造」を理解し、冷静な判断の軸を持つことが、今何よりも重要です。
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執筆者情報
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。
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