トヨタ自動車の下値目途の目安とは?長期の株価推移から買い時を徹底分析
株式情報 投資戦略 日本株 2025.05.20

2025年4月に、トランプ米大統領が発表した相互関税は、あっという間に市場をパニックに陥れ、世界的な株価急落を招きました。
その後、株式市場全体は急速に回復したものの、関税の影響を受けやすい自動車株はいまだに足かせを引きずったまま、上値の重い展開が続いています。
なかでも注目すべきは、日本を代表する自動車メーカーである【7203】トヨタ自動車です。
果たして、この株は「買い」なのか、それとも「見送り」なのか?
今回は、トランプ関税の影響がどこまで織り込まれているのかを踏まえつつ、トヨタの今後の株価見通しを丁寧に解説していきます。
目次
トランプ関税の発動がトヨタの業績に与える影響とは?
早速、トランプ関税がトヨタ自動車の業績に与える影響について考えていきます。
トランプ大統領は、4月3日にすべての国からアメリカへ輸入する自動車に対する、25%の追加関税を発動しました。
元々アメリカは、乗用車に2.5%、トラックに最大25%の関税を課していましたので、ここに25%が上乗せされ、最大で27.5%と50%の関税負担となる見通しです。
トヨタはこの関税を、販売価格に転嫁しない方針を示しています。
これは価格上昇による販売の減少を最小限に抑えるためですが、その分関税コストが利益を圧迫することになります。
利益が2割減少する可能性もあるとも言われており、業績へのインパクトは無視できません。
さらに、トランプ氏は過去に「トヨタがアメリカ車の販売を妨げている」と名指しで批判しており、今後も政治的な圧力が継続する懸念もあります。
現在は日米の貿易交渉が続いていますが、自動車は両国ともに譲れない一大産業分野であり、事前に想定されたよりも協議が難航しているとの見方も出ています。
拭い切れない不透明感が、トヨタ自動車の上値の重さにつながっているのです。
トヨタ自動車の長期の株価推移を分析
では、こうした関税引き上げによる悪影響はトヨタの株価にどのくらい織り込まれているのでしょうか?
株価の動きを確認していきましょう。
関税引き上げの影響を警戒して、トヨタの株価は3月末から大きく下落。
PBR(株価純資産倍率)が1倍となる水準である2,742円を割り込む場面も見られました。
PBRが1倍を下回るというのは、企業の時価総額が帳簿上の純資産を下回っている状態であり、「割安」と判断されやすいです。
しかし、実際には業種や企業ごとの特性により、この水準が機能しないこともあります。
トヨタに関しても、2010年から現在までの約30%の期間でPBR1倍を割り込んでいました。
つまり、必ずしもPRB1倍割れだから割安と判断されて、株価が下げ止まっていたわけではないということです。
以下の図の青線は、2010年から3月末までのトヨタの株価推移と、PBR1倍のラインです。
黄色のラインはPBR1倍ラインで、赤くなっている期間は1倍を割り込んでいる期間です。
こちらを見ると、それなりに長い期間、株価がPBR1倍を割り込んでいたことがよく分かります。
では、PBR何倍まで下落すれば割安と判断されて買われてきたのでしょうか?
トヨタの株価とPBR推移を比較してみると、0.85倍前後が過去の下値目安として意識されていることが分かります。
以下のグラフの水色の線が0.85倍のラインになります。
実際に、2020年のコロナショックや、近年の半導体不足時においてもPBRはおおよそこの水準まで下落し、下げ止まっています。
PBR0.85倍割れは、トヨタ自動車の買い時として機能!
今回も同様に、2025年4月7日にトヨタ株は、2,266.5円、PBRは0.82倍まで下落しました。
PBRからは、コロナショックと同程度の不確実性を株価が織り込んでいたと判断できます。
【7203】トヨタ自動車 日足チャート 2024年12月11日~2025年5月14日
※TradingView(https://jp.tradingview.com/)のチャートを使用しています。
そして、この価格帯を節目として株価は切り返しました。
トヨタの純資産が急減し、下値目安として意識される株価が大きく引き下がる可能性は低いとの見方から、この水準では押し目買いが入りやすかったと考えられます。
たとえば、トヨタのPBR1倍となる株価が、現在のPBR0.85倍の水準にまで低下するには、理論上は約6.5兆円の資産減少が必要となります。
赤字を計上すれば企業の資産は減ってしまいますが、トヨタの場合、コロナ禍においても2兆円以上の営業利益を確保してきました。
関税の引き上げの影響があっても大幅な赤字に転落するとは考えづらく、長期的にはPBR面の値ごろ感を好感した買いが波及することで、現在の価格帯を上回る期待は高いとみています。
今後についても、PBR0.85倍割れの水準は、トヨタ自動車の下値目途として機能する可能性が高いです。
ただし、収益の伸び悩みが続いてしまうと、下げ止まっても大きく上昇を狙うのは難しいと考えられます。
そこで今後も株価の低迷が続いてしまうのか、上値の余地はあるのかについては、5月に発表された2026年3月期の本決算の内容を踏まえて、分析を進めたいと思います。
分析した内容を改めて記事にしてお届けしますので、楽しみにお待ちくださいね。
株式情報 投資戦略 日本株 2025.05.20

この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。
アクセスランキング
- デイリー
- 週間
- 月間