KDDI、ローソンへのTOBで株価はどうなる?買い時や見通しを徹底解説!

株式情報 投資戦略 日本株 2024.02.22

石塚 由奈 石塚 由奈

2024年2月6日に、KDDIがローソンに対してTOB(株式公開買い付け)を行うと発表しました。

 

これを受けてローソンの株価は、TOB価格である1万360円に向けて急伸しています。

 

一方、KDDIの株価は、報道が伝わった直後に急落してしまいました。

 

どうやらローソンへのTOBが、KDDIの株主に嫌がられているようです。

 

いったいどのような点が嫌がられているのでしょうか?

 

本記事では、KDDIの株価がなぜ下落したのか、KDDIによるTOBでローソンはどうなりそうかを解説しています。

 

ローソンはKDDIと三菱商事の共同経営企業に

まず、今回のTOBでローソンの経営体制がどう変わるかを確認しておきましょう。

 

ローソンと三菱商事、KDDIには、もともと資本関係がありました。

 

ローソンは、2017年に三菱商事の子会社となり、2019年にはKDDIと資本・業務提携を結んでいます。

 

今後はKDDIが追加でローソンの株を買い付けて、ローソンの経営により深く関わる見通しです。

 

ローソンは、KDDIと三菱商事が50%ずつの議決権を保有する共同経営企業に変わるのです。

 

ローソンへのTOBでKDDIの株価が下落した理由とは?

 

KDDIとローソンの資本業務提携報道を受けて、市場ではKDDIの株価が下落してしまいました。

 

実は、TOBの発表を受けて、買収する側の企業の株価が下落することは珍しくなく、主に財務負担が増えるとの警戒感が下落要因となります。

 

とはいえ、KDDIには約5,000億円とされる今回の買収額をポンと支払える程の潤沢なキャッシュがあります。

 

それでも株が売られたのは、買付金額に見合うだけのメリットがKDDIにあるのか、株主が疑問に思ったからだとみられます。

 

KDDIによるTOB価格には割高感が否めず

【2651】ローソン 月足チャート (2001年12月~2024年2月)

 

三菱商事がローソンを子会社にした時の買付価格は1株8,560円です。

 

そしてKDDIは、今回この価格を約20%上回る1万360円でローソンの株を買い付ける見通しです。

 

KDDIは、以前に三菱商事が安く買っていたローソンの株を高値で買うことになるのです。

 

ちなみにこの資本業務提携によって、三菱商事には会計上の利益が出る見込みです。

 

これは、ローソンが「三菱商事の子会社」から「三菱商事とKDDIの共同支配企業」に変わることで、ローソンの企業価値の再計算が可能となり、その分を利益として計上できるからです。

 

具体的な金額として、三菱商事は来期に1,233億円の再評価益を認識する見通しとしています。

 

TOB価格に割高感が否めないため、KDDIの株主としては、ローソンから買付金額に見合うだけの利益を享受できない限りは、「なぜそんなに高い買い物をしたのか」と咎めざるを得ません。

 

KDDIはローソンに短期的な利益を求めない方針

 

では今後、ローソンがKDDIに大きな利益をもたらしそうかと言いますと、現時点では先行き不透明感が強いです。

 

まずローソンは、KDDIと三菱商事による共同経営体制となりますから、KDDIがローソンを完全に好きなように経営することはできません。

 

さらに、KDDIの髙橋誠社長は、「KDDにIは小売分野の知見はあまりないため、あくまでローソンをテックや通信のノウハウを使ってサポートする立場に立つ」としています。

 

ローソンの社長も、これまで通り三菱商事から出す形で良いと明言しているのです。

 

KDDIとしては、ローソンから短期的な利益を上げようとは考えておらず、テックや通信の力を支えに、長期的に成長してくれれば良いというスタンスです。

 

そのため、当面はローソンへのTOBによる収益寄与は限定されるとみられ、KDDIの株主に嫌がられたと考えられます。

 

KDDIと三菱商事の共同経営でローソンはどう変わる?

 

しかし長期的には、ローソンが成長し、KDDIによる今回のTOBが改めて評価される期待もできます。

 

そこで、ここからは、今後のローソンがどのように変化しそうかを見ていきます。

 

通信とテックで実現する”未来のコンビニ”

 

今回の資本業務提携に関する会見では、「KDDIの持つテック、通信の力を使って従来のコンビニにとどまらないサービスを展開し、ローソンの成長を加速させる」という展望が繰り返されました。

 

具体例としては、金融、薬、スマホなど専門性のある担当者がコンビニの店舗でリモート接客するサービスや、最短15分で商品を届けるクイックコマースサービスなどが挙げられています。

 

リモート接客サービスは、過疎地に住んでいる人や高齢のため遠出ができない人に重宝されそうです。

 

また、クイックコマースサービスでは、セブンイレブンが店頭の商品を最短30分で宅配するサービスをすでに拡大させており、客単価は店舗の3~4倍を記録し、専用アプリのダウンロード数も想定を上回る伸びとなっています。

 

出遅れているローソンは、KDDIの有するテクノロジーを使って、セブンイレブンに追い付きたいという目論見がありそうです。

 

小売業で相次ぐTOB。今後も業界再編が進むか。

 

具体的な話は、ここまでしか出てきていませんが、会見を見て感じたのは、ローソン、KDDIともに、従来のビジネスに行き詰まりを感じているということです。

 

実際、小売業では近年TOBが相次いでいます。

 

昨年9月にはホームセンター大手のDCMホールディングスが、同業のケーヨーに対して完全子会社化を目指してTOBを行うと発表。

 

10月には、イオンが、首都圏地盤の食品スーパー大手いなげやにTOBを行い子会社化すると発表しました。

 

ローソンと同じコンビニ業界でも、2020年に、ファミリーマートが伊藤忠商事に買収され、完全子会社となっています。

 

規模の大きな会社でもM&Aを行い、さらに規模を拡大させることで、よりコストを下げて利益を出しやすくするくらいしか、成長のための選択肢がなくなっているようです。

 

三菱商事の中西勝也社長も、「三菱商事だけでは、ローソンの企業価値を上げるには限界があった」と発言しています。

 

一方のKDDIも、スマホが普及しきったため、台数販売の伸びは見込めず、携帯料金も下落するなかで、成長を望むのであれば今までとは異なる分野に進出する必要がありました。

 

ローソンは1万4,600拠点の顧客との接点となるリアル店舗を有していますから、これが魅力的だったに違いありません。

 

今後は両社の強みを生かして、新しい時代の小売店舗のあり方を模索するとみられます。

 

目先の利益よりも、長期的な価値向上に重点を置いた施策が進められるとみられますが、株式市場は、すぐに収益という結果を求めたがりますから、短期的にはローソンへのTOBは失敗だったと言われ、KDDI株の上値の重さは続いてしまうかもしれません。

 

しかし、変化の激しい今の時代、立ち止まるのは、後退することと同じですので、長い目で見れば、KDDIの今回の決断は正解だったと言われる日が来るのではないかと考えています。

 

KDDI株の買い時はいつ?“24ヵ月移動平均線”に注目!

【9433】KDDI 月足チャート (2001年12月~2024年2月)

 

最後に、取引の際の参考になるように、KDDIの値動きを確認しておきましょう。

 

KDDIの株価チャートを月足で見ると、24ヵ月移動平均線が頻繁にサポートラインとして機能しています。

 

勿論、米中貿易摩擦やコロナショック、携帯料金の引き上げなどがあった時は、24ヵ月線を割り込む場面もありましたけれども、こうした場面はいずれも買いチャンスとなっています。

 

個別株に投資を行っていると、どうしても目先の値動きが気になってしまいがちですが、腰を据えて長期投資を行うのであれば、このように少し長い期間の値動きを見て売買を判断するのが良いと思います。

 

ローソンが今後どのように成長していくのか、KDDIの株価推移とともに少し長い目で見守りたいですね。

株式情報 投資戦略 日本株 2024.02.22

石塚 由奈 石塚 由奈

石塚 由奈

この記事を書いた人

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 アナリスト
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任
証券アナリスト(CMA)
テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

石塚アナリストに投資の相談をしたい方は≪こちらをクリック≫

アクセスランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間