ヨシムラ・フードHD社インタビュー |消えゆく”おいしい”を守り続ける唯一無二の上場企業

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

ヨシムラ・フードHD社インタビュー |消えゆく"おいしい"を守り続ける唯一無二の上場企業

幼い頃から、ずっとそこにあったあの味。
また食べようと楽しみにしていたあの味が、突然の閉店・廃業によって、2度と味わえなくなってしまった…。
日本各地で、そんなことが起きています。

日本には、長年愛されてきた商品や高い技術を持ちながら、後継者不足などを理由に存続の岐路に立たされている中小食品企業が数多く存在します。

そうした現実に「いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ」というミッションを掲げて向き合っている会社があります。
株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)です。

2008年の創業以降、37社の食品関連企業をグループに迎え入れて、日本の食を守りながら、成長を続けてきました
今回は、同社の吉村元久代表取締役CEOにインタビュー取材を行い、独自のビジネスモデルと、その成長を支える経営哲学に迫りました。

目次

中小食品企業の個性を活かし、中長期的な成長を支えるビジネスモデル

ヨシムラ・フードHD社は、後継者不足や経営課題に悩む中小食品企業をM&Aによってグループ化しています。
各社の販路拡大、設備投資、商品開発などをサポートしながら、ともに成長していく独自のビジネスモデルを築いてきました

ファンドでは拾いきれない中小食品企業の受け皿に

中小企業のM&Aといえば、投資ファンドが思い浮かびます。
しかし、ファンドの場合には、一定期間内に投資回収を行う必要があるため、短期間で大きく成長する企業が主な投資対象となりやすい傾向があります。

「ファンドは、2、3年で倍ぐらいにならないと買えないんですけど、食品の中小企業にそんな会社はないですから。
だけど、ファンドが買えない会社にも、良い会社はたくさんあります」と吉村CEOは話します。

ヨシムラ・フードHD社は、安定的に利益を生み出している中小食品企業に対し、各社の個性や強みを活かしながら、中長期的な企業価値向上を支援することを基本方針としています。
グループに入った会社は、販路拡大、商品開発、製造・品質管理、経営管理、海外展開など、同社グループのサポートを受けながら、事業の継続とさらなる成長を目指していきます。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P11
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/2791417/00.pdf

創業17年の経験・ネットワークが強みに

ヨシムラ・フードHD社が、中小食品企業から選ばれる理由について、吉村CEOは「経験が長くなったこと」が大きいと話します。

会社の数が今37社ありまして、シナジーも出しやすいですし、特に海外もやっていますので、国内で美味しいものを作って、海外に行きましょうということもできるようになってきました
グループ会社が37社まで増えると、取引先、仕入れ先、競合他社といったネットワークも広がります。


株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P6
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/2791417/00.pdf
※IR資料は2月末時点のため連結子会社数は38社(3月1日付でオーブン、細川食品を合併)

最近では、このネットワークを通じてM&A候補先から直接話が来るケースが増えているといいます。
取引先から直接話が来るケースもかなり増えました
相手も私たちのことを分かっています。
僕らも会社の内容が分かっているので、取り組みやすいですね」
新規の案件を一から精査するのと比べて、すでに付き合いのある会社のM&Aは、互いの理解が深い分、PMI(経営統合プロセス)もスムーズに進みやすいといいます。

ヨシムラ・フードHD社のM&A戦略

黒字企業を買収してグループ化していけば、たしかにその分、収益規模は大きくなります。
しかし、投資家としては、PMIの失敗によるシナジー不発やのれんの減損損失計上といったリスクも気になるところです。
そこで、M&A候補先の選定基準や、同社のグループ戦略についてうかがいました。

証券会社でコーポレートファイナンスなどの業務に携わってきた吉村CEOにとって、財務面の確認はM&Aの入り口にすぎません。
候補先については、過去3期から5期程度の業績を確認したうえで、「穴を埋められるか」や「相性」も大事にしているといいます。

「穴を埋められるか」が、M&A成功の鍵

「買収する前の段階で、全部完璧な会社ってないんです。何かどこか穴がある。
だけど、良いところがあるから中小企業として生き残っていて、倒れていないわけです」と吉村CEOは説明します。

例えば、静岡県浜松市にある株式会社まるかわ食品。
まるかわ食品との出会いは、創業オーナーが病気を患い、廃業を決意していた時期だったといいます。
「もうできないから廃業します」と、従業員の前で告げた会社でした。
借金をしてまで再投資する気力は、もう残されていませんでした。

しかし、商品は地域で愛され続け、設備投資さえできれば、まだまだ成長できる可能性を秘めていたのです。
その「穴」を埋められると判断したからこそ、ヨシムラ・フードHD社はまるかわ食品を迎え入れました。

「まるかわ食品の場合、キャパシティはいっぱいで、売れ過ぎてしまっている。
そこに設備投資をして、効率性を上げて、たくさん作れるようにして、売上を伸ばしました。
それでも足りないので、新しい工場を作ります」と吉村CEOは話します。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P19
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一方、ピーナッツバターの株式会社ダイショウでは、販売エリアが関東近郊に限られていたことが課題でした。
グループの販売網を活用し、東北や関西へ広げることで売上・利益を伸ばしたといいます。

設備投資や販売などの穴が見えていて、それを埋められるかどうかが、すごく大事かなと思います」と吉村CEOは話します。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P14
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中小企業は「狭く深く」戦うから強い

インタビューの中で印象的だったのが、中小食品企業の生き残り方に対する吉村CEOの考え方です。

「まるかわ食品の何がすごいかというと、餃子は1種類しか作っていないんですよ。
8時から17時まで、週5日作る。
商品を絞っているから、効率よく作れるわけです
複数種類の商品を作ると、ラインの切り替え、清掃、原材料の入れ替え、包材の変更など、多くの手間とコストが発生します。
1種類に絞れば、すべての工程が最適化され、圧倒的なコスト競争力を発揮できます。

大企業は、商品数を増やし、販売地域を広げ、全国展開することで安定性を高めます。
しかし中小企業が同じ戦い方をすると、大手食品企業と正面からぶつかってしまいます。

「例えば餃子を全国展開しようとすると、大手食品メーカーの商品と同じ市場で競争することになります。
その場合、ブランド力や広告宣伝力、物流網などの面で、大手企業が優位に立ちやすいのが実情です。
一方で、中小食品企業には、大手と同じ土俵で戦うのではなく、地域に根差した販路や、こだわりの製法、品質の高さといった独自の強みを活かす道があります。

まるかわ食品は、まさにそうした強みを活かしてきた会社です。
商品を絞り込み、地域のお客様に丁寧に届けることで、物流コストを抑えながら、無理のない形で事業を継続してきました。
大規模化だけを目指すのではなく、自社の強みが最も発揮できる市場で着実に支持を得ていくことが、中小食品企業にとって重要な成長のあり方の一つだと考えています

無理に拡大路線を取るのではなく、品質や取引先との信頼関係を大切にしながら、コツコツと事業を積み上げてきた企業は、ヨシムラ・フードHD社の考え方とも親和性が高いといいます。

「私たちは、グループ入りした会社と中長期的な視点で向き合い、それぞれの会社が大切にしてきた商品や製法、取引先との関係を尊重しながら支援していくことを大事にしています。
支援といっても、お互いの考え方や価値観を理解していなければ、本当の意味ではうまく進みません。
私たち自身も、短期的な成果だけを追うのではなく、真面目にコツコツと事業を育てていくタイプです。
同じように、地域やお客様に誠実に向き合い、着実に事業を続けてきた会社とは、考え方が合いやすいと感じています」

1本足経営のリスクを「グループ化」で吸収する

一方で、商品や地域を絞って強みを発揮する企業は、特定の商品・地域・取引先の影響を受けやすい面もあります。

そこで重要になるのが、グループ化によってポートフォリオをつくる考え方です。
極端に大きなイベントが起こった時にヘッジをする上で何が良いかというと、グループ化するのが良いと思うんです
単独では何かトラブルがあった時に、耐えきれずに事業継続が難しくなるかもしれない企業も、グループとしてやっていけば、厳しい時期を耐え抜けます。

地道に商品の質を磨き、地域に根ざしてコツコツ事業を続けてきた会社をグループに迎え入れて「穴を埋める」。
そして、事業ごとのリスクをグループ全体で分散しながら、安定的な成長につなげていく。
それが、同社のM&Aモデルの核となっています。

ホタテ事業を取り巻く環境変化と、中長期的な成長可能性

ヨシムラ・フードHD社は、2023年3月にオホーツク海沿岸を主として水揚げされるホタテ、サケ・マス、カニなどの水産加工および販売を行う株式会社マルキチをグループ化。
同年10月には、北海道の噴火湾で水揚げされるホタテ、サケなどの海産物の加工・販売を行う株式会社ワイエスフーズをグループに迎え入れています。
両社ともに、ホタテを中心とした水産加工・販売を手がけており、調達から加工、販売までの機能を担っています

この両社の収益寄与は大きく、ヨシムラ・フードHD社の営業利益は23年2月期の6億7,800万円から、24年2月期には23億6,600万円、25年2月期には41億6,100万円に大きく増加しました。
一方、26年2月期の営業利益は、ホタテ関連事業における前期からの反動減、漁獲量減少による原価上昇、ボイルホタテの棚卸資産評価減などの影響により、前期比62.3%減の15億6,800万円となりました。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P21
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足元ではホタテ市況や中国による日本産水産物の輸入停止措置など、外部環境の変化による一時的な影響を受けました。
一方で、ホタテに対する世界的な需要は底堅く、当社グループでは加工地の分散や販売・在庫管理の強化を進めています。
吉村CEOはホタテ事業について「基本的には非常に安定的な右肩上がりのマーケット」だと話します。

北海道産ホタテは、なぜ強いのか

吉村CEOはホタテについて、サンマや鮭のように漁獲量が大きく変動しやすい天然魚とは異なる特徴があると説明します。

「ホタテは、稚貝を海に放流し、数年かけて育ててから収穫します。
そのため、どの程度の量を放流したかや、育成状況を確認することで、将来の収穫量についてもある程度の見通しを立てることができます。
もちろん自然環境の影響を受けることはありますが、天然魚と比べると、収穫量の変動は比較的見通しやすいと考えています」

そして、ホタテの商業的養殖は参入障壁の高い事業です。
「過去に、北海道のホタテがすごく儲かるということで、中国とかカナダで、日本のホタテを持っていって養殖しようとしたこともあります。
でも、一回も成功していない。かつ、一回も成功しない理由が分かっていないんです」
理由が分からず、対処もできないため、簡単には真似ができません。

さらに、「北海道のホタテは、世界で一番品質が高いと言われています」と吉村CEOは指摘します。
天然ではなく養殖であるため、大きく肉厚で美味しいホタテを安定的に生産でき、世界中から需要があるといいます。

「ホタテはカニと一緒で単価が高いので、お金持ちでないと食べられないんですよ。
だから、今のメインの市場はアメリカです。
次に日本、ヨーロッパ。最近、中国が食べるようになって、東南アジアも食べるようになりました。
世界的な需要はずっと上がってきています」

需要が拡大する一方で、参入障壁が高く供給は一定であるため、ホタテ加工品のマーケットは長期的に安定して右肩上がりだと吉村CEOは話します。

中国の輸入停止で「加工する場所」が消えた

それでは、なぜホタテ事業の収益は一時的に大きな影響を受けたのでしょうか。
これについて吉村CEOは、「本来は中長期的に成長が見込まれる市場である一方、外部環境の変化によって、一時的に収益が押し下げられた局面があった」と説明します。
▼その背景には、中国による日本産水産物の輸入停止措置があります。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P31
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北海道では、ホタテの水揚げ量に対して国内の加工キャパシティが限られており、これまで北海道で水揚げされたホタテの一部は、中国で加工されたうえで、アメリカや日本などの最終消費地へ届けられてきました。
2023年8月以降、中国による日本産水産物の輸入停止措置を受け、従来の加工・流通ルートには大きな変化が生じました。

その結果、短期的には需給バランスや価格形成に影響が出たものの、同時に加工地の分散や新たな販路構築の重要性が一段と高まっています。
吉村CEOは、「北海道で水揚げされたホタテを短期間で国内加工へ切り替えることは容易ではなく、加工ルートの変化が一時的に価格へ影響した」と説明します。

中国はホタテの主要な最終消費地というよりも、加工拠点として大きな役割を担ってきました。
そのため、中国による日本産水産物の輸入停止後も、アメリカやヨーロッパなどにおけるホタテ需要は底堅く推移していました。

一方で、従来の加工・流通ルートが一時的に制約を受けたことで、短期的には需給バランスや市場価格に影響が生じました。
その後、ベトナム、タイ、インドネシアなどが新たな加工拠点として立ち上がり、加工体制の分散が進んだことで、市場価格も回復に向かっています。

この点からも、ホタテ事業における影響は需要の減少によるものではなく、加工地の切り替えに伴う一時的な流通上の制約によるものだったといえます。

在庫評価の一時的な影響と、収益安定化に向けた管理体制の強化

この価格の下落と回復は、在庫評価を通じて、ヨシムラ・フードHD社の業績にも一時的に大きな影響を与えました。

24年2月期には、中国の輸入停止でホタテ市場価格が下落したため、同社はマルキチとワイエスフーズが保有していた在庫の帳簿価額を、市場価格まで引き下げる処理を行いました。
簡単に言うと、100円で仕入れた在庫を、市場価格が60円に下がったので、60円分の価値しかないものとして帳簿に記録したということです。

その後、25年2月期に、ベトナム、タイ、インドネシアでの加工が立ち上がり、市場価格は回復。
前期に評価額を引き下げていた在庫を、回復した市場価格で販売したことなどにより、同社の利益は押し上げられました
これが25年2月期のヨシムラ・フードHD社の営業利益を41億6,100万円にまで大きく押し上げた背景です。

しかし、安い在庫がなくなったことに、ボイルホタテでの4億8,000万円の評価減発生も重なり、26年2月期の営業利益は15億6,800万円まで減少しました。

なお、26年2月期に評価減が発生した「ボイルホタテ」は、主に国内市場向けの商品です。
海外市場ではホタテを貝柱として食べる需要が中心である一方、日本国内では、貝柱だけでなく、ベビーホタテのようにホタテ全体を味わう食文化が根付いています。
このように、ボイルホタテは国内市場ならではの食文化に支えられた商品といえます。

一方で、これまで価格上昇が続いていたことから、短期的には国内市場における需給バランスを反映し、価格が調整されました。
吉村CEOは、「国内市場向けの商品であるボイルホタテについては、価格上昇が続いた後、需給バランスを反映して価格が調整された」と説明します。

株式会社 マルキチ 商品紹介
https://www.marukichi-inc.co.jp/foods/

今後は価格管理を本社主導に変更

外部環境の変化が収益に与える影響を踏まえ、同社ではホタテ事業における管理体制の強化を進めています。
これまでは、販売価格や販売数量、販売先の判断について、現地の市場感覚や取引先との関係性を重視し、各グループ会社の裁量を尊重してきました。

一方で、今後はグループ全体での収益安定化を図るため、本社がより主体的に価格、販売数量、販売先、在庫状況を把握・管理し、事業運営の精度を高めていく方針です。
吉村CEOは、「現場の知見を活かしながらも、グループ全体として販売・在庫・価格管理を強化し、より安定的な収益管理につなげていく」と説明します。

これまで現場の判断に委ねていた価格・販売量の管理を、本社が主導する体制に切り替えていくとのことです。
吉村CEOは、こうした取り組みによって、収益変動の抑制につなげていきたいと話します。
27年2月期の営業利益は、20億円への回復を見込んでいます。

ホタテを起点に、日本の“おいしい”を海外へ

ヨシムラ・フードHD社がホタテ関連事業を重視しているのは、短期的な収益性だけが理由ではありません。
世界的に需要の高い北海道産ホタテは、同社が海外展開を進めるうえで、販路開拓の入口となる戦略商品の1つです。
吉村CEOは、「ホタテは海外でも需要が高く、取引のきっかけをつくりやすい商品です。ホタテを通じて販路を広げることで、当社グループの他の商品を提案する機会にもつながります」と話します。

ホタテを起点に海外での接点を広げ、グループ各社の商品展開につなげていく。
この構想は、「いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ」という同社のミッションを実現するうえでも重要な取り組みです。
国内市場が人口減少によって長期的に縮小していくなか、魅力ある中小食品企業の商品を守り、育て、世界へ広げていくことは、同社にとって重要な成長戦略となっています。

食品会社がなぜ厨房機器?海外展開を支える「販路インフラ」

同社が海外での成長を見据えて着実に育てているのが、シンガポール・マレーシアで展開する厨房機器事業です。
シンガポールやマレーシアで業務用厨房機器の販売・メンテナンスを手がけるNKR CONTINENTALやEXAMAS・EQUIPMAXをグループに迎えています。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期第1四半期決算説明資料 P15
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/2656002/00.pdf

食品企業が厨房機器事業に進出しているのは少し意外に思われるかもしれませんが、ここには販路を押さえる狙いがあります。
飲食店やホテルにとって、厨房機器は日々の営業を支える重要な設備です。
販売後に、故障した際にすぐに修理ができる保守網を構築することで、多くの取引先との継続的な関係ができます。

僕らは厨房機器、特にチェーン店関係で9割ぐらいシェアを持っていて、マレーシア全国にメンテナンス網も持っています
厨房機器は日本も作っていますけど、アメリカとかヨーロッパ、ドイツ、イタリアとかも結構多いです。
でも、彼らがマレーシアで売ろうと思ったら、僕らのグループを通さないと、少なくとも大量には売れないんです」

海外の厨房機器メーカーがマレーシア市場に参入しようとしても、ゼロから販売・メンテナンス体制を作るのは現実的ではありません。
結果として、大量に販売しようとする場合、ヨシムラ・フードHD社の販売・メンテナンス網を活用する意義が大きくなります。

日本の中小厨房機器メーカーをグループ化する構想

この強固な海外販売網を活かして、同社は日本の中小厨房機器メーカーのグループ化も狙っています。
「日本でも厨房機器の製造販売の会社がいっぱいあるんですよ。
そこをグループ化していきます」

日本国内で、独自に海外販路を持てる厨房機器メーカーは、ホシザキなどごく一部の大手に限られます。
「日本のメーカーでいうと、小さい会社は一層困難なわけですよ。
英語もしゃべれないし、人を置くと固定費がかかるし、販売してもらう人も、メンテナンスしてくれる人も必要です」

その一方で、海外からの日本の厨房機器需要は強いといいます。
和食系は圧倒的に日本の厨房機器が強いですね。
例えば、あんを練ったりする機器は海外にはない。
台湾や中国では作ったりしますが、日本製の方が性能・品質・耐久性が高くて、価格が高くても買いたいという需要があるんです。

マレーシアの会社から『日本で良いものを作っているんだけど、メールしても電話しても出てくれない』と言われる
だから、僕らが代わりにやってきたんです」

日本食ブームが世界的に拡大するなか、日本ならではの食品や厨房機器の需要も広がっています。
その商流を自社グループで押さえ、他の商品の販売にもつなげる方針です。

シンガポールを起点に、マレーシア、タイ、インドネシアへ

海外展開の起点としてヨシムラ・フードHD社が選んだのは、シンガポールでした。
「最終的には人口が多い中国に売りたいんです。
ただ、政治的な状況は昔から悪かったので」
法治国家として安定しているシンガポールをハブにして、まずは周辺の東南アジアへ展開を進めています。

「東南アジアは、とてもポテンシャルがあるなと思いますね。
インドネシアは人口が多いですし、マレーシアはやっぱりハラル、イスラム教なので、あそこを押さえられると中東にも行けるんですよね」

海外展開で重要になるのは、各国ごとのパートナー探しです。
シンガポールやマレーシアで事業を進める中で、自社だけで各国を開拓する難しさも感じているといいます。
「国によって事業環境が違いますので、各地のパートナーをうまく見つけるのが良いのかなと思います。
僕らだけでやるのは結構ハードです」

事業環境に難しさのある海外でも、パートナーを見つけながらの地道な開拓を続けている同社。
現在は、ホタテという人気の高い商品を持ち、厨房機器事業で販路を押さえつつあります
日本の“おいしい”を支える中小企業を支援し、世界に広げていく「中小食品企業のグローバルプロデューサー」を目指して、着実に必要なピースを揃えている印象を受けました。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P46
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株価は割安感の強い水準。収益安定化が今後の鍵に

ヨシムラ・フードHD社の足元の株価水準を確認すると、4月15日に発表された決算を受けて、大きく下落。
▼足元では予想PER11倍近辺(2026年6月8日時点)と過去の利益水準や今後の回復余地を踏まえると、割安感も意識される水準です。

【2884】ヨシムラ・フード・ホールディングス 週足チャート 2022年3月14日~2026年6月8日
※TradingViewより引用

ここからは、今後見直される余地はあるのか、投資家として押さえておきたいポイントを整理します。

ホタテ事業の管理体制を強化・中期経営計画を再策定

まず注目されるのが、中期経営計画における今後の目標数値です。

ヨシムラ・フードHD社は2026年4月、中期経営計画の目標数値について「再度検討中」と公表しました。
これは、ホタテ事業を取り巻く環境変化や在庫評価の影響を踏まえ、今後の成長戦略と収益管理体制をより精緻に反映した計画へ見直すためのものです。

同社では、ホタテ事業における販売・在庫・価格管理の強化を進めるとともに、グループ全体の収益安定化に向けた取り組みを進めています。
そのうえで、過去の業績推移や足元の事業環境、今後の成長可能性を踏まえ、中期経営計画の目標数値を改めて策定していく方針です。

吉村CEOは、「ホタテ事業の管理体制を強化し、より安定的な収益管理を行うことで、当社グループの実力を適切に反映した中期経営計画にしていきたい」と説明します。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P36
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ヨシムラ・フードHD社が目指してきたのは、地域や特定の市場で強みを持つ中小食品企業をグループ化し、各社の個性を尊重しながら、グループ全体として持続的な成長を実現する経営モデルです。
同社の特徴は、単に企業をグループ化するだけではなく、販路拡大、商品開発、製造・品質管理、経営管理、海外展開など、グループ各社の課題に応じた支援を行い、企業価値の向上につなげている点にあります。
足元では、ホタテ事業において外部環境の変化や在庫評価の影響がありましたが、同社では販売・在庫・価格管理などの体制強化を進め、収益安定化に向けた取り組みを着実に進めています。

これは、上場企業グループとして事業運営の精度を高めるとともに、中長期的な成長基盤をより強固にする取り組みといえます。
今後、中期経営計画を通じて、ホタテ事業の管理体制強化やグループ全体の成長戦略がより具体的に示されることで、同社が目指す「中小食品企業の支援プラットフォーム」としての価値が、より明確に伝わっていくことが期待されます。

株主優待拡充とIR強化で長期目線の株主増加を狙う

決算発表後の株価の反応を受け、吉村CEOは「当社の事業モデルや中長期的な成長方針について、より丁寧に伝えていく必要がある」と感じたといいます。

「これまで、個人投資家の皆さまに向けたIR活動は、まだ十分ではなかったと感じています。
当社は、グループ会社の個性や強みを活かしながら、中長期的な企業価値向上を目指すビジネスモデルです。
その考え方をしっかりご理解いただくことが、今後の成長戦略を伝えるうえで重要だと考えています」

同社は、中長期的な視点で事業を理解し、応援してくれる株主・投資家との接点を増やす取り組みを進めています。
その一環として、2026年4月15日には株主優待制度の拡充を発表しました。
300株~499株を保有する株主に対する自社グループ製品の贈呈額は、従来の1,500円相当から2,500円相当へ引き上げられる予定です。
ただし、当該拡充は2027年2月期に記載または記録された株主から適用されます。

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 2026年2月期決算説明及び中期経営計画 P50
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/2791417/00.pdf

さらに、IR活動も強化する方針です。
IR活動の強化は、人材獲得によるさらなる成長にもつながり得ると吉村CEOは話します。

現在同社では、魅力的なM&A案件はあるものの、「経営を担う人材の不足」がボトルネックになっているといいます。
「新しく案件を見たり、デューデリジェンスをする人はいるんですけど、引き受けた後に経営してくれる人とか、経営をサポートしてくれる人は、実はすごく少ない。
そうしたなか、社会問題の解決に今までの経験を生かしたいと入ってくる人がいるんですよ。
そういうのを良いと思っている人たちは結構いるんじゃないかなと」

こうした思いもあって、個人投資家に向けた発信の機会も増やしていく方針です。

個人投資家が直接できない「中小企業支援」を可能に

ヨシムラ・フードHD社は、中小食品企業をグループ化して、安定成長を目指す独自のビジネスモデルを強みとしています。
しかし、同業他社がいないからこそ、個人投資家としては評価に戸惑う部分もあるかもしれません。

このビジネスモデルを理解する手がかりとして、吉村CEOは、中小企業のREIT(不動産投資信託)のようなもの」と考えるのが、投資家にとってはわかりやすいと話してくれました。
REITは、個人投資家には直接投資できない不動産を小分けにして、誰でも投資できるようにした仕組みです。
ヨシムラ・フードHD社も、個人では直接投資できない中小食品企業をグループ化して、上場株式を通じて誰でも気軽に応援できるようにしています。
中小企業や地方で頑張っている会社を支援したいけれども、支援できないという方も、僕らの株を買えば、間接的に支援ができます

しかも、REITとは違って、同社が保有するのは「生身の会社」です。
建物は時間とともに古くなり、メンテナンスコストもかかりますが、企業は経営改善によって価値を高めていけます。
「グループ化した会社が良くなれば、アセット自体の収益が上がって、キャッシュフローが増えます」
グループ化によって穴が埋まり、シナジー効果が生み出されれば、投資家にも株主還元や値上がり益として還元されます。
社会的意義と投資リターンの両立を狙えるのが、投資家にとってのヨシムラ・フードHD社ならではの魅力です。

自己資本比率の見方は、ビジネスモデルで変わる

M&Aで成長する企業を見る際には、財務健全性も気になるというのが、投資家にとっては正直なところだと思います。
ヨシムラ・フードHD社の自己資本比率は26年2月期末で20.4%と、一般的な食品会社と比べると低く見えるかもしれません。

しかし吉村CEOは、何にお金を使っているかを見るべきだと説明します。
「私たちは、お金を借りて何を買っているかというと、土地を買っているわけではないんです」
不動産開発のように、土地を買い、数年かけて建物を建て、将来収益化するビジネスとは異なり、同社が買収するのは、すでにキャッシュフローを生んでいる事業会社です。
良い会社をグループ化していますので、買った次の日からキャッシュフローがあります

吉村CEOは「銀行はお金を出したいと言っています」と話します。
「銀行は、自己資本比率がどうだからとか、食品の平均の自己資本比率より低いから融資しない、ということはないんですよ。
これも、僕らが経験と実績の中で、きちんとやってきたからです」
17年の実績が、金融機関の信頼につながり、M&Aを継続できる資金調達力につながっているのです。

ヨシムラ・フードHD社への投資で「日本の食を支える」

ヨシムラ・フードHD社は「いつまでも、この”おいしい”を楽しめる社会へ」というミッションを掲げ、「中小食品企業のグローバルプロデューサーになるべく、歩みを進めています。

同社がグループに迎えたまるかわ食品は、オーナーが病気をして、従業員の前で『もうできないから廃業します』と言った会社です。
本来だったら無くなってしまったかもしれない企業をグループに迎え入れ、おいしい商品と雇用を守っています

そして、それを海外にも展開していくことで、さらに持続可能にしていこうとしています。
日本でしか作れない、良い商品を作っている会社がグループに入れば、皆さん買いたいと思ってくれる。
そうすると、販路ができて、そこに向けて別のものも売れるようになる
」と吉村CEOは今後の展開について話します。

投資家にとっては、安定的にキャッシュフローを生む中小食品企業をグループ化して、ポートフォリオとして強固にしていく経営姿勢も魅力的です。

幼い頃から、ずっとそこにあったあの味。その味を未来に残し、世界に届けていく——。
ヨシムラ・フードHD社への長期投資は、「リターン」と「社会的意義」の両方を求める個人投資家にとって、魅力的な選択肢になるのではないでしょうか。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

会社情報

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス

コーポレートサイト https://www.y-food-h.com/

https://finance.yahoo.co.jp/quote/2884.T

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執筆者情報

nari

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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