関係人口の提唱者・高橋博之社長が描く、都市と地方の未来|雨風太陽社インタビュー

きこ

投資インフルエンサー

関係人口の提唱者・高橋博之社長が描く、都市と地方の未来|雨風太陽社インタビュー

このままいくと、子どもに『父ちゃん、食い逃げした』と言われると思っているんです
そう話すのは、株式会社雨風太陽(5616)の高橋博之社長です。

日本の豊かな食を支えてきた農家や漁師、地域の暮らしを次世代には残せないかもしれない。
そんな危機感から、雨風太陽社は「都市と地方をかきまぜる」というミッションを掲げ、事業を行ってきました。

2023年12月には、日本初のインパクトIPOとして東証グロース市場に上場。
産直アプリ「ポケットマルシェ」や「ポケマルおやこ地方留学」などのサービスを通じて、都市と地方、生産者と消費者をつなげています。

さらに、2025年6月13日には、同社が長年提唱してきた「関係人口」を可視化する「ふるさと住民登録制度」の創設が閣議決定されました。
2026年度中の本格運用に向けて、いよいよ動き出し、同社の事業にとっても追い風となりそうです。

そこで今回は、雨風太陽社の高橋博之代表取締役社長、権藤裕樹代表取締役副社長に、投資インフルエンサーのきこさんが取材を行いました。
三者の対話をもとに、同社の現在地と、その先に見ている世界を紐解いていきます。

目次

雨風太陽社の「都市と地方をかきまぜる」原点

雨風太陽社の原点は、東日本大震災にあります。

岩手県花巻市生まれの高橋社長は、2006年に岩手県議会議員に当時最年少で当選。
農家の所得や人口減少といった課題に向き合ってきましたが、当初は「岩手にあるリソースだけで何とかしようとしていた」と振り返ります。
そうしたなか、2011年3月11日に東日本大震災が発生します。

生産者のプロセスを知ると、食の価値は変わる

きこ「東日本大震災でのご経験が、今の事業にまでつながっているんですよね」

高橋氏「はい。震災があって、都会の人が一気に流れ込んできて、その時に視界が広がったんですよ
ボランティアで来てくれた人やビジネスパーソンなど、生まれて初めて漁師に会ったみたいな人が多かったです」

都会の寿司屋や居酒屋で魚を食べていた人が、漁師と出会い、話を聞き、一緒に汗を流す。
すると、価値の見え方が変わっていったそうです。

高橋氏「今の消費社会は、スーパーに並んでいる最後の商品だけで価値が判断されているわけですが、漁業のプロセスを見た消費者のなかでは、最終プロダクトである魚介類の価値が上がっていきました

食べ物の裏側の生産者を見えるようにして、双方向でつながれたら、付加価値になるんだなと知ったんです」

この気づきが、全国の農家・漁師と直接やり取りしながら旬の食材を購入できる産直アプリ「ポケットマルシェ」の原点となりました。

https://poke-m.com/より引用

都市と地方、両方の強みで両方の弱みを解決

さらに高橋社長にとって印象深かったのが、都会から被災地に来て、元気を取り戻して帰っていく姿でした。

高橋氏「東京では、自分らしく生きられないなと感じている人もいて、そうした人たちが求めているものが、まさにここ(東北)にはあった。
だから、元気になって帰っていったんです。

それを見て、そうか都市と地方ってコインの表裏だから、両方の強みで両方の弱みを解決できるんだと思ったんですよ。

当初は、『どっちの課題を解決したいんだ、欲張りだ』とも言われたのですが、欲張りではなくて、論理的帰結なんです。
都市と地方ってもともと一緒だったものが分かれたものなので、合わせたらそれぞれの問題を解決できると思い至ったわけです」

都市生まれの人にも「帰るふるさと」をつくる

そのうえで現状について、人口が都市に偏り続けた結果、「帰るふるさとがない人が非常に増えている」と、高橋社長は話します。
地方に住んだ経験も、親族や友人が住んでいるわけでもなければ、「地方に税金を使い続けても無駄ではないか」と考えかねません

都市生まれの人にも、ふるさとを持ってもらう。
そのために雨風太陽社は、親子で1週間といったまとまった期間を、地方で自然や生産現場について学びながら過ごす「ポケマルおやこ地方留学」などの事業も展開しています。

「ポケットマルシェ」「ポケマルおやこ地方留学」などのサービスを通じて、都市と地方をかきまぜて、両方の課題を解決していく。
これが、同社の事業を貫く軸となっています。

https://oyako.travel/summer/より引用

提唱者の高橋社長が語る「関係人口」とは?

「都市と地方をかきまぜる」というミッションと並んで、雨風太陽社の挑戦を象徴するのが「関係人口」です。
関係人口とは、地域や、その地域の人々とさまざまな形で継続的に関わる地域外の人々を指します。

関係人口は地方の友達、都市住民にもメリットがある

高橋社長は、関係人口についてわかりやすく説明してくれました。

高橋氏「できる社長って、友達が多いじゃないですか。

それって結局、資産が多いんですよ。
課題にぶつかったときに『こういうやり方があるよ』と教えてくれる人がいたり、お金を出してくれる人がいたり、それができる人を紹介してくれる人がいたり。

地域も一緒で、一切外と関わらないと、引きこもりの状態じゃないですか。
限られた資源や人だけでは解決できないから、地域課題が残ってしまう。
なので、色々な人と関わって、課題を解決できる知恵を持っている外の人と組んだ方が良いと思っています」

きこ「都市住民にとっての、関係人口になるメリットについてはどう考えられていますか?」

高橋氏「関係人口は都市住民にとっても非常に良いです。
巨大地震が発生した場合に、1か所しか拠点がないとたちまち被災者になってしまいます。
もう1つ拠点があったら、そっちにパソコンを1台持っていけば、日常生活や仕事ができます」

加えて高橋社長が強調したのは、「生きるリアリティ」の回復でした。
合理性を追求し続けた結果、基本的に飢えることはなく、多くの人が天寿を全うできるようになった現代社会。
便利な一方で、予定調和的で、生きる手応えや感動がないと指摘します。

その点、田舎には、人間が生きていくために必要な食べ物を、体を動かして、自然に働きかけて生産している古来から変わらない営みがあります。
そうした営みに触れて、汗をかいて、美味しいものを食べた時に、生きる手応えが回復していくといいます。

交流人口(旅行・ビジネスで訪問する人)との違い「関係人口は生活」

きこ「旅行でもリフレッシュできるとは思うのですが、それとは違いますか?」

高橋氏「旅行も良いですよ。
ただね、関係人口は生活なんですよ。生活の一部が都市からはみ出ていく感じです。
いつ、誰と、どこでご飯を食べるんだっけ、子供を育てるんだっけ、余暇の時間を過ごすんだっけ。
そういう自分の生活を、一人一人がオーダーメイドでデザインできる時代になっていくと思います。

その時に、都市にしか拠点がないと人は縛られてしまいます。
拠点が2つあれば、ライフステージや季節、あるいは子供の年齢に応じて、行ったり来たりできる
その方がみんな豊かに生きられるんじゃないかなと思っています」

きこ「私の周りでも、結婚された方が、奥さんは地方の実家で子育てをしていて、週末に夫が通うようなスタイルを取り始めています。
自分も子供が生まれたら、地方と都市で生活したいなと思っています」

高橋氏「やっぱり東京で子育ては大変です。
電車で子供が騒いだら『静かにしなさい』ってなるじゃないですか。
それは人が多いから仕方ない。
でも、地方なら全然それをとがめない。子供らしくいられますよね」

高橋社長は、「地方の過疎の解消が、一番やりたいことなのですが、東京一極集中の流れはなかなか変えられない」とも話しました。
「コロナ後も都市への人口流入は再加速しているし、砂漠に砂をまくような感覚」としつつも、今できる関係人口を増やす取り組みを着実に進めています。

「ふるさと住民登録制度」がいよいよ本格運用へ

高橋社長は関係人口について、「最初は全然社外に伝わらなかった。だけどね、寝言も言い続ければ現実になる」と話しました。
現在では関係人口が国の政策にもなり、自治体や行政の関係者によく知られる言葉として定着しています。

この関係人口をさらに浸透させるために、高橋社長は、可視化・制度化を目指してきました。
そして、それが1つの実を結びます。
2025年6月13日に、政府は「ふるさと住民登録制度」の創設を閣議決定。
住所地以外の地域に継続的に関わる人を「ふるさと住民」として登録し、関係人口を可視化する仕組みです。

制度実現の経緯や今後期待される動きについて、お話をうかがいました。

ダメ元の行動が「ふるさと住民登録制度」を実現させた

「ふるさと住民登録制度」が創設に至った背景には、高橋社長の働きかけがありました。
高橋社長は、能登の被災地に視察に訪れた石破前総理をアテンドした際に、手紙を渡しました。

高橋氏「新しい地方創生を考える民間の会議が立ち上がる時に、僕は直談判して、『委員にしてくれ』って、総理に手紙を渡したんですよ。
もしそれを渡していなかったら選ばれていない。ダメ元ですよ、こんなの」

高橋社長は、石破前総理の指名を受けて地方創生に関する有識者会議の委員に選ばれました。
そして会議にて、関係人口を可視化するふるさと住民登録制度の重要性を訴えかけ、制度実現にまでつながりました。

高橋氏「僕は、思ったことは考えずに全てやる。そうやって生きてきました。
条件や環境が整ってからやるって言っていると、気づいたら歳をとっていたということになりかねません。
それは非常に怖いことだと思っています」

きこ「実は私も夢だったことを、やりたいってダメ元でずっと発信していたら、最近お話がきて、実現しそうなんですよね」

高橋氏「すごい。ダメ元、大事なんですよ。
誰が見ているかわからないし、思いついたら発信しないと届かないです」

きこ「おっしゃる通りだと思います」

ふるさと住民登録制度は、アプリで関心のある地方自治体を登録し、登録した地域に関する情報を受け取れる仕組みです。
さらに、年3回以上、地方自治体が指定する担い手活動に参加すれば、プレミアム登録者として、交通費や宿泊費の補助など、担い手活動のためのサポートが受けられます

10年で延べ2000万人のふるさと住民登録に関与する

政府は、このふるさと住民登録者数について、実人数で1,000万人を目標に設定。
複数の自治体に登録してもらい、延べ1億人に到達させるとしています。
雨風太陽社はそのうち20%にあたる「年間200万人、10年で延べ2,000万人」のふるさと住民登録への関与を中期の目標として打ち出しました。

株式会社雨風太陽 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2026.3.27) P8
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05841/4fdad48d/30df/4388/bfdc/cf533a958a72/140120260325588922.pdf

具体的に、どう関与していくのでしょうか。

権藤氏「僕らは今、自治体事業をやっています。
アイデアがないとか、実行するときの手数が足りないとか、そういうところをサポートしているわけです。

制度が本格運用となれば、これから1,700以上ある自治体で、それぞれ何をどうやろうかという課題が出てくると思っています。
それを僕らが事業として、お金をいただきながらサポートしていきます」

すでに福島県磐梯町では、3,000人規模の小さな町で「ふるさと住民票」アプリを先行的に立ち上げ、ファンイベントの東京開催などを同社が伴走支援した実績があります。

権藤氏来年頭ぐらいから制度がスタートするんですけど、本格的にどうやろうかと、みなさんすごく悩んでいます
話を聞いていると、これから僕らの市場が伸びていくんだろうなと手応えを感じます」

高橋氏「みんな興味はあるんですよ。
どこの自治体も籠城戦をやっていて、もう落城寸前。
それでは忍びないので、城の価値を理解してくれる外の人も招き入れて、戦いを続けようと、みんなが思っています。
あとはどうやってやればいいかわからないところが多いので、一緒に考えてやっていこうとしています」

ポケマルとおやこ地方留学は「パスポート」になる

加えて、産直アプリ「ポケットマルシェ」や「ポケマルおやこ地方留学」は、地方への入口を提供する「パスポート」になると高橋社長は話します。

株式会社雨風太陽 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2026.3.27) P21
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05841/4fdad48d/30df/4388/bfdc/cf533a958a72/140120260325588922.pdf

高橋氏「観光に行っても、地域への関わりまではなかなかできません。

ポケットマルシェでは美味しいものを探して、旬の食材を見つけていく過程で、『静岡県のなんとかさんが作っているいちご』というような形で、その人の顔が見えます。
そして生産者とコミュニケーションができます
そうすると、その人を通じて地域も好きになったら、そこに住民登録をする気持ちになるじゃないですか。

ポケマルおやこ地方留学の場合には、生産現場に子供と実際に足を運び、共感が生まれて、この地域にもっとコミットして関わりたいなと思う人も出てきます。

僕らは楽しいこと、美味しいことを通じて、まずパスポートを渡すから、そこから皆さんがふるさと住民登録をする地域を選んでいけば良いと思っています。
自治体事業で伴走を支援しながら、パスポートを持った人たちが地域に着地していくと良いなと」

きこ「自治体側と消費者側、両方からアプローチしていくんですね」

高橋氏「そういうことです。
災害があると関係人口は勝手に増えるんですよ。
だけど、災害がないと、地域に関わって困りごとにコミットするということは、なかなか起きません。
だから、平時にどうやって地域が関係人口を増やしていくのか。
ここが最大の課題だと思っています」

制度の後押しもあって、「年に数回は地方に滞在し、地域活動の担い手に。普段はポケットマルシェを通じた食材購入・コミュニケーションで生産者とつながる」ライフスタイルを送る人が増加すれば、雨風太陽社の事業にとっても、大きな追い風となるはずです。

株式会社雨風太陽 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2026.3.27) P7
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05841/4fdad48d/30df/4388/bfdc/cf533a958a72/140120260325588922.pdf

アグリツーリズムとAI時代|雨風太陽社が描く今後の展望

▼雨風太陽社は25年12月期に上場以来初めての経常黒字化を達成し、26年12月期も2,800万円の経常利益を計上する見通しです。

トップラインの本格的な再成長に向けて、同社が成長領域に位置づけているのが、自治体事業と旅行事業の2つです。

生産者ネットワークを生かしたアグリツーリズム

きこ「今後はどのような成長戦略を立てられていますか?」

権藤氏「自治体事業と旅行事業が成長領域だと思っています。

自治体事業は、ふるさと住民登録制度もできて、今は市場が開けた瞬間だと思っています。
この波に一番最初に乗っていると思っています。

もう1つ、生産者のもとに訪れる旅行ビジネスをやっています。
これは、僕らの強みである生産者のネットワークを活かした事業です。

僕らを信頼して、ポケットマルシェに商品を出してくれていて、さらに『人が来て良い』『ぜひ来て欲しいから、こういう体験をしてくださいよ』と言ってくれる生産者がたくさんいます。

その人たちの魅力を伝えて、生産者のところを訪れてもらう事業を、今ビジネスとしてスタートしています」

高橋氏「今は、ヨーロッパのアグリツーリズムが一大市場になっています。
都会の人たちがバカンス、長期休暇を農村で過ごしているんですよね。
新しいビルは世界中の都市にあるので、そうではない築150年といった古い建築物に泊まるのが人気です。
農村での滞在に、1泊4~5万円払っているのがヨーロッパです」

日本は小さな土地なのに、47都道府県に特産品があって、農家と漁師が美しい農村・漁村の景観を保っています。
世界に見てもなかなかない豊かな農村が、日本ではまだヨーロッパのようには評価されていません
ここに、雨風太陽社はチャンスがあると考えています。

インバウンドが「足元の価値」を再評価するきっかけに

雨風太陽社は、2025年4月に旅行予約サイト「STAY JAPAN」を譲り受けました。
譲受後のPMI(経営統合プロセス)には課題も残るものの、農泊・地域滞在を広げる基盤として期待されます。
インバウンド観光客を地方の農泊・アグリツーリズムへと送客する流れの構築を進めています。

https://stayjapan.com/より引用

高橋社長は、インバウンド観光客に日本の農泊が人気となれば、日本人が「自分たちの足元の価値」を見つめ直すきっかけにもなるといいます。

高橋氏「外国で車が売れると日本でも売れるという話があります。
ヨーロッパやマレーシア、シンガポールの人が、日本の田舎の農村旅行に行っていると知ったら、日本の都会の人たちも、改めて自分たちの足元の価値を見つめ直して、農村旅行に行き出すと思うんです」

AI時代に価値が高まる「田舎にしかないもの」

AIの普及で世の中の流れがさらに加速するなかで、時間をかけて手作業で食べるものをつくり、生きている実感を得る価値がより際立っていくのではないかとも感じます。
AI時代の到来を高橋社長はどう捉えているのでしょうか。

高橋氏「インターネットの業界に起きてきた30年の変化が、この3年でAIで起きていくと言われています。

そうすると、AIで生成できないものに価値が生まれるじゃないですか。

1つは時間なんですよね。
樹齢1,000年の大木だとか、この集落の歴史は室町時代からあるだとか。
時間はAIで生成できないので。
そして、田舎ほど歴史を重ねています。

もう1つは、プロセスです。AIはすぐに答えを出してしまいますので。
農家も漁師もプロセスを持っていて、このプロセスが価値だと思っています。

そういうAIが生成できないものを並べていくと、田舎にあるものがたくさんある。

AIの世界は本当に際限のない拡張的な合理性を追求しているので、これからも一気に広がって止まらない。
だからこそ、振り子のように、合理性の方へ振れれば振れるほど、そうでないものを求めたくなる人が増えると思います」

雨風太陽社のアグリツーリズム事業は、こうした人たちの受け皿となり得ます。

二人代表制と社会的財務諸表|インパクトIPOとしての評価模索

経済性と社会性の二兎を追って、日本初のインパクトIPOとして上場した雨風太陽社。
IPOによって、影響力・信頼性が高まったほか、経済性と社会性の両立を追う若い起業家への道しるべも示せたと高橋社長は話します。

一方で、現実は厳しいとも認めています。

高橋氏「良いことをやっていると公表したところで、別に株価は上がらない。
経済性と社会性の両立の難しさを、日々、株価という形で突きつけられながらやっています

日本には前例のないインパクトIPO企業として、どう投資家や株式市場に向き合っているのか、現状の取り組みについてうかがいました。

社会性と経済性をそれぞれが担う体制へ

雨風太陽社は、2025年1月から、社会性を担う高橋社長と、経済性を担う権藤副社長が、それぞれの責任を持ち寄りながら経営にあたる二人代表制を打ち出しました。

権藤副社長は、東京大学法学部を卒業して総務省に入省し、鳥取県への出向時に「鳥取食べる通信」の創刊に関わった経歴を持ちます。

権藤副社長が高橋社長と初めて出会ったのは、東京大学2年生のとき。
高橋社長の講演をたまたま聞いたのが、関心を持つきっかけとなりました。

きこ「権藤副社長は、高橋社長の講演のどこに魅力を感じたのでしょうか」

権藤氏「世の中を変える人って、何かを発明するか、それをビジネスとして広げていくパターンが多いかと思います。
高橋は、そのどちらでもなく、生き様で思いを伝えていくタイプの人間だなって思っています。

たとえば、県知事選に出たときに、震災後の被災地の沿岸を300キロ歩く選挙戦をやっていました。
非効率で、選挙戦としてはおかしいです。
でも、メッセージ性が強く、生き様として伝わると思ったんです。

そうしたことをずっとやってきていて、講演でもビジョンにかける思いの強さをひしひしと感じました」

きこ「それで雨風太陽社に入られて、二人代表制にまで至っているわけですね」

権藤氏「僕はビジネスとしてちゃんと広げていくのが得意なタイプです。
高橋にはこのまま生き様で体現してもらって、僕はそれを形にして、世の中にサービスとして伝えていきます。

明確に役割を分けることで、対外的にも、社会的なインパクトと経済的な事業活動の両方を、責任を持ってやるというメッセージになっています」

高橋氏「会社として社会性と経済性は、一見相反するように見えるんですけれど、そこをどう統合していくのかは挑戦なんですよね。まだ道半ばですけれども」

株式会社雨風太陽 2025年12月期通期 決算説明資料(2026.2.13) P35
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05841/860ad6ae/1f0d/41fb/8dbf/d07ff000eb82/140120260212558860.pdf

社会的財務諸表という新しい挑戦

二人代表制と並んで、雨風太陽社が新たに開発したのが「社会的財務諸表」です。
通常の貸借対照表・損益計算書の上に、ソーシャルインパクトの蓄積と創出を可視化するレイヤーを乗せる独自フレームワーク。
中核となるのが「ソーシャルキャピタル」と「ソーシャルアセット」の2つの指標です。

株式会社雨風太陽 2025年12月期通期 決算説明資料(2026.2.13) P35
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05841/860ad6ae/1f0d/41fb/8dbf/d07ff000eb82/140120260212558860.pdf

ソーシャルキャピタルは、高橋社長がビジョンを伝えてきた量そのものを指し、1人に対して1時間ビジョンを伝えることを1単位とする「時間人」で計測されます。
ソーシャルアセットは、共感して実際に行動した「共感者」の数です。

ただし、この新しい枠組みは、まだ十分理解されているとは言えません。

高橋氏「出したばかりなので、まずは可視化なんですよね。
社会的に良いことをやっていますよと言ったって、具体的にどういうインパクトを生み出しているのか、見えるようにしなきゃいけない
なおかつ、事業の活動にもプラスになっているという関係性も示さなきゃいけない。

社会性と経済性って両立しているんだな、良いことをやっているこの会社は、ちゃんと将来に利益を上げていくんだなということを株主に説明して、株を買ってもらう。
そこはまだうまくできていないので、もっとうまく説明できるだろうな、どうやってこの子を育てようかと考えながら、必死に育てている感じです」

足元の市場の評価|「台風銘柄」という揶揄の先で

雨風太陽社が挑戦を続ける一方で、足元の同社の株価は2024年以来の安値に沈んでいます。
現在、株式市場はまさにAIブームで、それ以外の価値を評価する方向には市場参加者の目が向かなくなってしまっている状況です。

【5616】雨風太陽 週足チャート 2023年12月18日~2026年6月12日
※TradingViewより引用

台風6号接近で株価はストップ高に

そうしたなか、台風6号の接近を受けて、雨風太陽社の株価がストップ高となる場面もありました。

急騰の背景には、台風で農作物に被害が出て野菜や果物などがスーパーで品薄になった場合や流通が乱れた場合に、産直アプリ「ポケットマルシェ」が代替調達経路として機能するという読みや、支援のための購入が増えるとの思惑があります。
実際、2024年のコメ不足局面では、ポケットマルシェの「お米」販売額が前年比5倍に拡大しました。

https://ame-kaze-taiyo.jp/news/2024082309003635/より引用

今回の急騰について、株式掲示板やSNSでは「台風が来ると上がる」「台風銘柄」と揶揄する声も見られました。
皮肉にも、こうして揶揄する投資家ほど、本当は生産者と消費者が直接つながる価値を理解しているのかもしれません。
台風接近のニュースに反応して買いを入れるのは、「平時のスーパーで成り立っている流通の脆さ」と「ポケットマルシェの代替価値」を認めているからにほかならないからです。

しかし、株価の動きは短期の値幅取りで完結しています。
台風の通過とともに株価は元に戻り、中長期で積み上げてきた社会的価値が反映されているとは言いがたい状況です。

有事の連想ではなく、日常の延長線上で同社の価値を意識する投資家が増えていくかが今後の課題です。
ふるさと住民登録制度本格開始後に、自治体事業の伸びが数字で見えるかも焦点となりそうです。

社会的な価値が評価される世の中は必ず来る

こうした市場の評価について、高橋社長にも意見をうかがいました。

高橋氏「企業活動の前提は、安定した社会と環境なんですよね。
ところが、短期的な利益を世界中の人が追い求めた結果、企業活動の前提である安定した社会と環境を壊してきました。
これは永続的じゃないよねと、ESGやSDGsなど経済的・社会的な価値も評価される世の中になり始めているけれど、日本はだいぶ周回遅れになっている」

それでも「諦めずに続けていったら、必ず追いついてくると思っている」と高橋社長。
そのうえで、こうも続けました。

高橋氏「とはいえ、それにあぐらをかいてはいけない。
社会的な活動が巡り巡って、皆さんの生活を変えるし、良くするし、多くの人が望んでいるんだったらマーケットにもなって儲かる、というのを投資家さんに理解してもらえるように説明する技量を、こちらも持たないといけません

その「伝える技量」を磨くため、同社は手探りを続けています。

しかし、残された時間は決して長くはない

ただし、その手探りに、無限の時間が許されているわけではありません。
雨風太陽社が向き合っている社会課題は、市場が追いつくのを悠長に待っていられない速さで深刻化しています。

人口戦略会議の2024年レポートでは、消滅可能性自治体を「2020年から2050年までの30年間で若年女性人口が50%以上減少する自治体」と定義し、該当数を744自治体としました。
これは、全国1,729自治体の43%にあたります。

高橋氏「このままいくと、うちの子供が小学校6年生ですけど、『父ちゃん、食い逃げした』って言われると思っていて。
食べられない魚が増えているんですよ。
温暖化だけじゃなくて、取り過ぎの問題もあるし、農業も漁業もやる人が減っている」

このまま進めば、一次産業は他国に委ねることになる、と高橋社長は危機感をにじませました。

高橋氏「そういう未来を受け渡したくない。引き続き日本の食の豊かさを子供たちに味わわせたい。
日本の食の豊かさを引き続き享受して、孫に受け渡したいと思ってくださるのであれば、僕らの会社を応援してください

この危機感に共感できる投資家にとって、雨風太陽社への投資は、単なる資産運用を超えた意味を持つはずです。

雨風太陽社は時代の半歩先を歩んでいる

取材を終えて、雨風太陽社は時代の半歩先を歩いている会社だと感じました。

震災後の光景から「関係人口」を着想し、信念を持って言い続けた末に、国の制度化にまでこぎつけた高橋社長。
先見性と実行力を、これほど高い次元で両立している経営者は、それほど多くないように思います。

問題は、世の中が同社に追いつくスピードです。
ふるさと住民登録制度の本格運用は、2026年度中に始まります。
AIの普及で「田舎にしかないもの」の価値が再評価され、食料安全保障の議論が深刻化していくなかで、雨風太陽社のミッションが社会の真ん中に置かれる日は、実は近いのかもしれません

取材中、きこさんも「ダメ元で発信し続けるのが大事」という高橋社長の言葉に深く共感していました。
地道に発信を続けてきたからこそ、ふるさと住民登録制度の制度化までたどり着きました。
今後は、この制度の本格運用開始が同社の収益にどの程度寄与するか、そして高橋社長が生き様で伝え続け、人々の意識をどこまで変えられるかが焦点となりそうです。

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執筆者情報

nari

きこ

投資インフルエンサー

野村證券株式会社2017年入社。法人営業を経験し、CEO賞を受賞。現在はJUNGLE TOKYO GINZAに在籍をしながら、投資インフルエンサーとして活動。各種メディアにも出演。

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