株式投資やFXのチャートで、必ず目にする「ローソク足」。
ローソク足は、たった1本の棒線で「始値・高値・安値・終値」という、4つの値段を効率的に記録・表示できます。
多くの情報を含んでいるため、その時々の市場参加者の心理を知る助けになります。
そこで本記事では、ローソク足の基本的な見方から、具体的なチャートパターン、そして売買判断への活用方法までを、投資初心者にも分かりやすく解説していきます。
ローソク足が何を示しているかを理解して、是非今後の投資に役立ててください。
■ローソク足の「4本値」(始値・高値・安値・終値)とは?

始値・高値・安値・終値という4つの価格は「4本値」と呼ばれ、多くの投資家に重視されています。
「始値」とは、その期間において最初につけた価格です。
「終値」とは、その期間において最後につけた価格を指し、最終的に売買が落ち着いた価格と言えます。
「高値」「安値」はその言葉通り、その期間内につけた最も高い価格と最も安い価格です。
▼ローソク足は「実体」と呼ばれる四角く囲まれた部分と、「ヒゲ」と呼ばれる傍線の部分の組み合わせによって、この4本値を効率良く表現しています。

ヒゲのうち、実体の上側にある部分を「上ヒゲ(うわひげ)」、下側にある部分を「下ヒゲ(したひげ)」と呼びます。
ローソク足のヒゲと呼ばれる傍線の一番下の部分が安値、一番上の部分が高値を示しています。
実体は、始値から終値までの範囲を示していて、始値より終値の方が高かった場合と始値より終値の方が安かった場合では色が異なります。
始値より終値の方が高かった場合のローソク足を陽線、始値より終値の方が安かった場合のローソク足を陰線と呼びます。
●ローソク足の色は日本と海外では逆に描かれることが多い!
ローソクの色は、一般的に陽線は赤色、陰線は青色や緑色で描かれます。ローソク足は1920年代に成立し、60年代以降に一般的に使われ始めたとされています。
当時は白黒で描かれるケースが多く、陽が昇る「陽」のイメージから陽線は白色、陽が沈む「陰」のイメージから陰線は黒色で表現されてきました。
このイメージを引き継いで、陽線は太陽のイメージがある赤色で、陰線は陰のイメージがあるやや暗い色で描かれるのが一般的なのです。
しかし海外では、青信号・安全に進めるといったイメージから陽線が青色、赤信号・危険といったイメージから陰線が赤色で描かれる場合があります。
●実体とヒゲの長さが相場の強弱を示唆
ローソク足では、実体とヒゲにより4本値が表現され、その期間中に値段がどのように動いたかが1本の棒線を見るだけで分かります。
たとえば、ヒゲが短く実体が長い場合には、始値から終値までほぼ一方向に株価が動き続けたと考えられます。
つまり、陽線なら買いの勢いが、陰線なら売りの勢いが強かったと判断できます。
一方、ヒゲは一度はその価格まで動いたものの、反対の力によって押し戻された痕跡です。
上ヒゲが長ければ上値の重さ、下ヒゲが長ければ下値の堅さを表します。
ここからはさらに詳しく、1つ1つのローソク足の形が何を示しているのかを見ていきましょう。
ローソク足における陽線のパターン
陽線は価格の上昇を示しますが、その形は様々で、実体やヒゲの長さによって解釈は大きく変わります。
代表的な陽線のパターンとその意味について、具体的に見ていきましょう。
●大陽線(丸坊主・大引坊主・寄付坊主)
▼大陽線は、実体部分が非常に長く、上下のヒゲがほとんどない、もしくは全くない陽線です。

取引が始まった瞬間から終わりまで、一貫して買いの勢いが売りを圧倒していたことを示します。投資家心理が非常に強気に傾いている状態と言えるでしょう。
特に相場の安値圏で出現した場合、強い上昇トレンドへの転換点となるケースが多く、力強い買いのサインとして広く認識されています。
●小陽線(コマ)
▼小陽線は、実体が短く、上下に同じくらいの長さのヒゲを持つ陽線です。

その見た目が独楽(コマ)に似ているため、この名で呼ばれます。値動きの幅が小さく、買いと売りの力がほぼ拮抗している状態を示唆します。
上昇はしたものの勢いは限定的で、市場参加者が次の方向性を決めかねていると言えるでしょう。大きなトレンドの途中で出現すると、一時的な休息局面を示します。
●下ヒゲ陽線(カラカサ)
▼下ヒゲ陽線は、実体は小さいものの、その下に長いヒゲを持つ陽線です。

その形が和傘に似ているため、カラカサとも呼ばれます。
一度は大きく価格が下落したものの、強い買い圧力によって押し戻され、結果的に始値よりも高い価格で取引を終えると、このローソク足の形状になるのです。
特に株価が下落している局面(安値圏)で下ヒゲ陽線が出現すると、売り圧力を買いが吸収した証拠とされます。
そのため、安値圏での出現は、相場が底を打って上昇に転じる可能性を示す強力な買いサインと見なされます。
●上ヒゲ陽線(トンカチ・流れ星)
▼上ヒゲ陽線は、実体から上に長いヒゲが伸びている陽線です。

その形から「トンカチ」とも呼ばれます。
一度は大きく上昇して高値を付けたものの、その後強い売りに押されて、上昇分の大半を失った場合にできるローソク足が、この上ヒゲ陽線です。
買いの勢いが売りの抵抗にあって衰えたと考えられ、特に株価が上昇している局面(高値圏)で出現すると、上昇トレンドの終わりや下落転換を示唆していると考えられます。
ローソク足における陰線のパターン
陰線は価格の下落を示し、市場の弱気な心理を反映します。
陽線と同様に、陰線も実体とヒゲの長さのバランスによって、その下落の勢いや背景にある投資家心理が異なります。
●大陰線(丸坊主・大引坊主・寄付坊主)
▼大陰線は、実体が非常に長くヒゲがほとんどない陰線です。

取引開始から終了まで一貫して売り圧力が非常に強く、買い方が全く抵抗できなかったことを示しています。
市場が極めて弱気な状態であり、投資家の不安や投げ売りが加速したと言えるでしょう。
特に高値圏で出現した場合、上昇トレンドの終焉と、本格的な下落トレンドの始まりを告げる強力な売りサインとされます。
●小陰線(コマ)
▼小陰線は、実体が短く値動きが乏しい陰線を指し、相場の迷いを示します。

価格は下落したもののその幅は小さく、売りと買いの勢いが拮抗している状態です。
市場参加者が積極的な売買を手控え、次の展開をうかがっている様子見ムードの強さを表します。
トレンドが明確でない保ち合い相場でよく見られ、この足自体に強い方向性はありません。
ただし、高値圏に出現すると買い圧力の弱まりを示唆していると考えられるため、注意が必要です。
●下ヒゲ陰線(カラカサ)
▼下ヒゲ陰線は、下に長いヒゲを持ちながらも、最終的には始値より安い価格で引けた陰線です。

取引時間中に売られて安値を付けた後、強い買い戻しで一度は大きく値を戻したものの、結局は売りに押し返されて陰線で終わったという、買いと売りの攻防を示しています。
安値圏でこの足が出ると、下値では買いが入っている証拠となり、相場が底を打つ可能性が意識されます。
●上ヒゲ陰線(トンカチ・流れ星)
▼上ヒゲ陰線は、上に長いヒゲを持つ陰線で、高値圏で出現すると特に注意が必要な足形です。

一度上昇を試みたものの、高値圏では強い売り圧力に完全に叩き潰されてしまい、始値よりも安い価格まで下落したことを意味します。
上昇しようとするエネルギーが完全に否定された形であり、投資家の心理が強気から弱気へと一気に傾いたと考えられるのです。
上昇トレンドの天井を示す、強力な下落転換サインとされています。
その他のパターン(寄引同時線)
始値と終値が同じ価格になるローソク足は「寄引同時線」と呼ばれ、その形から様々な名前が付けられています。
実体が存在しないため、買いの力と売りの力の完全な拮抗を示します。
ヒゲの長さや位置によってその解釈は異なりますので、それぞれのパターンを詳しく見ていきましょう。
●トンボ
▼トンボは、始値と終値が同じ価格で、かつその日の高値に位置し、そこから下に長いヒゲが伸びている形です。

取引時間中に大きく下落したものの、引けにかけて買いが殺到し、始値まで価格を戻したことを示します。
下落のエネルギーを強い買いがすべて吸収した形で、特に下落トレンドの底値圏で出現した場合、相場が底を打つ可能性を示すサインと見なされます。
●トウバ
▼トウバは、墓石(塔婆)に形が似ている点から名付けられ、トンボとは逆に始値と終値がその日の安値に位置し、上に長いヒゲが伸びている形です。

これは、一度は大きく上昇したものの、引けにかけて強い売り圧力に押し返され、始値まで下落したことを物語っています。
上昇が否定された形であり、特に上昇トレンドの高値圏で出現した場合、相場が天井を打ち、下落に転じる可能性を示すサインとなります。
●十字線
▼十字線は、始値と終値がほぼ同じ価格で、上下にヒゲが伸びている、文字通り十字の形をしたローソク足です。

買いの力と売りの力が完全に均衡し、市場が方向性を見失っている「迷い」の心理を象徴的に表しています。
トレンドの途中で出現した場合は一時的な小休止を示します。
ただし、高値圏や安値圏で出現した場合には、それまでのトレンドが終わり、新たなトレンドが始まる「転換点」になる可能性に注意が必要です。
●四値同時
▼四値同時は、始値・高値・安値・終値という4つの価格がすべて同じだった場合に現れる、一本の横線のようなローソク足です。

これは非常に珍しいケースで、市場での取引が極端に少ない場合か、重要な経済指標の発表などを前にして、投資家が完全に様子見となり、全く値動きがなかった状態を示しています。
市場のエネルギーが完全に枯渇している、あるいは嵐の前の静けさのような状況を表していると言えます。
2本以上のローソク足の組み合わせ
1本の足だけでなく、2本、3本と連続した足の組み合わせを見ると、ローソク足分析の精度は飛躍的に高まります。
2本足以上のローソク足の組み合わせにも、いくつかのパターンがありますので、併せて押さえておくと良いでしょう。
●2本の足のパターン(はらみ足・包み足・かぶせ足)
2本のローソク足を組み合わせると、より明確なトレンド転換のシグナルを読み取れます。
例えば、大きな陰線の後にそれを包み込むような大きな陽線が出現する「包み足」は、下落から上昇への強い転換を示唆します。
逆に、大きな陽線の内側に小さな陰線が収まる「はらみ足」は、上昇の勢いの衰えを示します。
こうした2本の足の組み合わせパターンは数多く存在するため、併せて参考にしてみてください。
●3本以上で判断する転換サイン(酒田五法)
主に3本以上のローソク足の組み合わせから相場の転換点や天井、底を判断する手法として「酒田五法」と呼ばれる手法があります。
昭和初期までに様々な人に考案された棒足などの解釈を整理したものが、酒田五法の原型だとみられていますが、その考え方は現代のチャート分析にも通じています。
酒田五法の記事で詳しく解説していますので、是非こちらも参考にしてくださいね。

ローソク足による売買シグナルの使い方

ローソク足の知識を、実際のトレードに活かすにはどうすれば良いでしょうか。
ここでは実践編として、数ある足の形の中でも、私が普段から注目しているサインをご紹介します。
●決算発表後に大陽線をつけた銘柄は監視リストへ!
私は決算発表直後に大陽線をつけた銘柄に注目し、買い候補として監視リストに入れています。
決算発表後の大陽線の出現は、多くの市場参加者が決算内容を高く評価し、積極的に買いを入れた証拠と考えられるからです。
株価は一時的な話題性で動く場合もありますが、最終的には企業業績に裏付けられます。
そのため、好決算で買われた銘柄は、上昇が続きやすい傾向があります。
ただし、買いに入る際には注意点もあります。株価が急上昇した直後には、利益を確定したい投資家の売りが強まり、一時的に価格が下がる場合も多いです。
大陽線が出てもすぐに飛びつくのではなく、値動きを数日間よく観察し、価格が落ち着いたタイミングでの買いを狙うと、より堅実な投資につながるでしょう。
▼実際に【3660】アイスタイルについて、2025年5月13日の決算発表を受けて翌14日に大陽線が出現した後、押し戻されたところを狙って買いを推奨しました。

●窓を開けて寄り付いた後の小陰線には注意!?
もう1つ、私は株価が大きく上昇した後の高値圏で、窓を開けてから出現する小陰線にも注目しています。「窓を開ける」とは、前日の終値から当日の始値が大きく離れて始まり、チャート上に空白ができる状態です。
高値圏での売りサインには他にも大陰線などがありますが、「だまし」になる場合も少なくありません。特に個別銘柄では、象徴的な大陰線をつけた翌日に、好材料が出て再び上昇するパターンも頻繁に見られます。
それに対し、窓を開けて上昇した後の小陰線は、買いの勢いの衰えを純粋に示唆している場合が多く、下落転換のサインとして信頼性が比較的高いです。
特に、日経平均株価のように多くの投資家が売買している指数が上げ止まる局面で、このパターンが頻繁に見られています。
▼2024年7月に日経平均株価がピークをつけた場面や、その後のレンジ相場における高値でも、窓を開けて小陰線をつけた後、相場は急反落しています。

ローソク足チャートの時間足の種類
ローソク足チャートは、1本の足が示す時間の長さによって「時間足(じかんあし)」という種類に分かれています。
例えば、1日の値動きを1本で表す「日足(ひあし)」が最もポピュラーですが、その他にも1週間の動きを示す「週足(しゅうあし)」や1ヶ月の「月足(つきあし)」、さらには1分や5分といった短期の「分足(ふんあし)」まで様々です。
デイトレードのような短期売買では分足、中長期の投資では週足や月足というように、自分の投資スタイルに合わせて時間足を使い分けることが、効果的な分析の第一歩となります。
初心者がローソク足で失敗しやすいポイントと回避法

投資を始めたばかりの方は、特定のサインを過信してしまい、思わぬ失敗をしてしまうことがあります。
そこでここからは、初心者が陥りやすい失敗パターンとその回避法をご紹介します。
●1本だけで判断しない!複数足分析の必要性
ローソク足分析で最もやってはいけない失敗の一つが、たった1本の足の形だけを根拠にした売買判断です。
例えば、上昇転換を示す「カラカサ」が出たからといって、すぐに飛びついてしまうのは危険です。
そのサインは、市場が仕掛けた「だまし」である可能性も少なくありません。
サインが出た背景、つまり前後のローソク足の流れや相場全体のトレンドを確認し、複数の足を組み合わせて、俯瞰して考えるようにしましょう。
●「時間足によってサインが逆転する」ケースに注意
大きな失敗を避けるためには、複数の時間足を確認する習慣も不可欠です。
例えば、日足チャートでは綺麗な上昇トレンドに見えても、週足や月足のチャートでは下降トレンドが続いていて、上値が抑えられる場合も少なくありません。
また、短期の時間足ばかりを見ているため、細かい値動きに惑わされて、上手く値幅を取れないという投資初心者の方も多いです。
まずは週足や日足で大きな流れを把握した上で、補足として時間足や分足などの短い足を使うようにすると、売買の精度を高められると思います。
●出来高もセットで確認しよう
株価の動きが、実体を伴った中身のあるものかを考える上で、参考になるのが出来高です。
出来高とは、その期間にどれだけの株数が売買されたかを示すもので、市場のエネルギーの大きさ、市場参加者の注目度を示しています。
例えば、どれほど綺麗な上昇転換を示唆するサインが出ても、出来高が全く伴っていなければ、それは一部の投資家による見せかけの動きかもしれません。
逆に、大きな出来高を伴ってトレンド転換のサインが出た場合、その信頼性は高まります。
ローソク足と出来高は、必ずセットで確認するようにしましょう。
まとめ|ローソク足を理解してトレードに役立てよう!
「損をしたくない」「もっと利益を狙いたい」といった投資家心理を反映しているのが株価チャートであり、ローソク足です。
ローソク足の動きを理解すると、市場参加者の心理が徐々に読めるようになってきます。
まずは、実際のチャートの中から今回学んだ形を探してみてください。
ひとつひとつのローソク足が持つ意味を考えながら相場と向き合うことで、あなたのトレードはきっと次のステージへと進むはずです。
執筆者情報
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任代理/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。