AIは今や「使うもの」から「稼ぐもの」へと変わりつつあります。2026年夏の決算ではAI半導体やクラウドの成長が続く一方、日本の関連企業には増益と減益の差も出ています。フィジカルAIとAIエージェントへの期待を、実際の売上や利益につながる企業選びへ進めたい時期です。
本記事では、2026年9月7日までに確認した決算・企業発表を基に、注目の日本株・米国株を解説します。掲載チャートは9月4日までの確定した週足に統一しています。
2026年のAI投資テーマ|相場を動かす3つの潮流

AIの投資先は、半導体・データセンターから企業の業務や工場へと広がっています。インフラ、AIエージェント、フィジカルAIの3分野で、誰が代金を払い、どの企業の売上になるのかを押さえましょう。
フィジカルAI|ロボット・工場自動化が次のフロンティア
フィジカルAI(Physical AI)とは、カメラやセンサーから得た情報をAIが処理し、ロボットや自動運転車を現実の空間で動かす技術です。決められた動きを繰り返す自動化から、対象物や周囲の変化に対応する自動化へと用途が広がります。日本企業のロボット制御技術や工場への導入実績を生かせる分野です。
2026年7月には安川電機とソフトバンクが、NVIDIAの協力の下で柔軟な物体を扱うシステムの実証を公表しました。ただし、実証の成功と大量導入は別です。導入費用、安全性、作業精度を満たし、顧客の設備投資につながるかが収益化を左右します。
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AIエージェント|業務自動化で企業のAI活用が本格化
AIエージェントとは、人間から与えられた目標に沿って、情報収集・資料作成・外部ツールの操作などを複数の段階に分けて実行するAIです。アンソロピックは2026年1月30日にCoworkのプラグイン対応を発表し、職種や業務に合わせて機能を組み合わせる使い方を広げました。
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投資で注目したいのは、有料契約の増加とクラウド利用料への波及です。マイクロソフトは7月の決算でMicrosoft 365 Copilotの有料席数が3,000万超に達したと説明しました。一方、AIが従来のソフトの作業を代替する場合もあり、SaaS企業への影響は製品ごとに異なります。
AI半導体・インフラ|設備投資ブームは継続中
AI半導体とデータセンターの需要は、2026年夏の決算でも拡大が確認できます。エヌビディアの27年1月期第2四半期は、データセンター売上高が前年同期比117%増の890億ドルでした。学習用だけでなく、AIに回答や作業を実行させる推論向けの計算需要も重要になっています。
ただし、AIの普及と設備投資の採算は分けて考える必要があります。半導体を購入する企業には、電力費や減価償却費も発生します。設備の稼働率やサービスの売上が伸びなければ、投資を続けても利益や手元に残る現金は増えません。
AI関連の注目日本株

日本株では、半導体製造装置、クラウド、ITサービス、ロボットなどに投資先が分かれます。AIとの関わり方に加え、最新決算の増減益や受注の違いを比較すると、テーマへの期待と業績の裏付けを分けやすくなります。
東京エレクトロン(8035)|AI向け半導体製造装置と上期予想の上方修正
東京エレクトロンは、AI半導体の製造に必要な半導体製造装置の大手です。27年3月期第1四半期は売上高7,323億円(前年同期比33.3%増)、営業利益2,114億円(同46.1%増)となり、AI向けの半導体設備投資拡大が増収増益につながりました。
7月30日には上期予想も上方修正しましたが、通期予想は第2四半期決算で開示する予定です。株価は6〜7月の高値圏から調整しており、9月4日終値は53,320円でした。10月1日付で1株を5株に分割する予定のため、下のチャートは分割前の価格で表示しています。
レーザーテック(6920)|EUVマスク検査に強み、受注回復を確認
レーザーテックは、最先端半導体向けのEUVマスク検査装置に強みを持つ企業です。26年6月期は売上高2,304.9億円(前期比8.3%減)、営業利益1,052.6億円(同14.3%減)となりました。AI需要が強くても、過去の受注や売上計上の時期によって決算は減益になり得ます。
一方、通期受注高は前期の1,052億円から2,375億円へ回復しました。受注の回復が今後の売上に移るかに注目です。9月4日終値は33,180円で、6月の高値から下落しています。受注額の増加だけで買い急がず、検収の進み具合と次期の利益計画を併せて確かめたい銘柄です。
ソフトバンクグループ(9984)|Arm・OpenAI投資とフィジカルAIへの展開
ソフトバンクグループは、Armなどの半導体関連企業とOpenAIへの投資を通じてAI市場に関与しています。8月6日の決算資料では、OpenAIへの追加出資を4月と7月に各100億ドル実行し、10月にさらに100億ドルを予定すると説明しました。事業利益に加え、保有する投資先の価値が業績を大きく動かします。
ABBのロボティクス事業については、2025年10月に買収契約を締結しました。買収完了予定は2026年後半であり、契約発表を買収完了と混同できません。AI投資の広がりとともに、追加出資の資金調達、借入負担、保有資産の値下がりにも注意が必要です。
富士通(6702)|AIエージェント実装で企業DXを牽引
富士通は、企業向けITサービスを通じてAI活用や業務システムの刷新を支援する企業です。27年3月期第1四半期は売上収益7,793.8億円(前年同期比3.9%増)、営業利益525.3億円(同56.9%増)でした。サービスソリューションの売上拡大と採算改善が、本業の利益を押し上げています。
一方、親会社の所有者に帰属する四半期利益は401.3億円で、前年同期比76.6%減でした。前年の事業売却などによる利益の反動を含むため、純利益だけでは本業の改善を読み違えます。AI関連の発表数より、有償案件の売上とサービス事業の利益率を追いたい銘柄です。
さくらインターネット(3778)|国産AIクラウドの本命
さくらインターネットは、国産クラウドやGPU計算基盤を提供する企業です。27年3月期第1四半期は売上高111.3億円(前年同期比48.6%増)、営業利益12.3億円と、前年同期の営業赤字から黒字に転じました。7月28日の決算説明資料では、GPU稼働率の向上による収益性改善を示しています。
通期予想も売上高455億円、営業利益25億円へ上方修正しました。先行投資への期待だけでなく、GPU設備が実際に利益を生むかを検証できる段階に進んでいます。ただし、利益には電力費の下振れや費用発生時期の後ずれも影響しており、四半期利益の単純な4倍は通期予想になりません。
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ファナック(6954)|ロボット需要の回復とフィジカルAI
ファナックは、産業用ロボットとFA機器の大手です。27年3月期第1四半期の売上高は2,310億円、営業利益は535億円で、ともに前年同期を上回りました。中国・インドのFA需要や米州・中国のロボット需要が伸びており、既存事業の回復とフィジカルAIへの取り組みを併せて追える銘柄です。
8月にはNVIDIA・Googleとの取り組みやフィジカルAIの活用事例を紹介するページを拡充しました。ただし、今回の増益をすべてAIの成果とは言えません。ロボットの受注、地域別の設備投資、AI対応製品の顧客への導入がどこまで広がるかを確認したいところです。
安川電機(6506)|フィジカルAI実証とロボット事業の採算
安川電機は、産業用ロボットや動きを制御するサーボ機器を手がける企業です。27年2月期第1四半期は売上収益1,389.8億円(前年同期比10.6%増)、営業利益84.9億円(同19.2%減)でした。売上は伸びても、新しい基幹システムの影響や費用増で営業減益となっています。
7月にはソフトバンクと、フィジカルAIを使って柔軟な物体を扱うシステムの実証を公表しました。将来の用途拡大は期待できますが、ロボット事業の足元の利益とは分けて確認が必要です。生産への影響が解消するか、受注の増加が売上と利益へつながるかを追いたい銘柄です。
AI関連の注目米国株

米国株では、GPUを販売する企業と、そのGPUを購入してクラウドやAIサービスを提供する企業を併せて確認します。売上の成長率と、投資負担を引き受ける立場の違いを見ておくと、同じAI関連でもリスクを比較しやすくなります。
エヌビディア(NVDA)|AI半導体の成長とRubinの本格生産
エヌビディアは、AI向けGPUとソフトウェア基盤を提供する中心的な企業です。8月26日発表の27年1月期第2四半期は、売上高962億ドル(前年同期比106%増)、データセンター売上高890億ドルでした。Vera Rubinも本格生産に入ったと説明しており、次世代製品が計画から供給拡大へ進んでいます。
第3四半期の売上高見通しは1,080億ドルの上下2%で、中国向けデータセンター計算用製品の売上は織り込んでいません。好業績が続く一方、株価には高い成長期待が反映されやすく、売上の伸びだけでなく粗利益率や顧客の投資継続も確かめる必要があります。
マイクロソフト(MSFT)|OpenAI連携でAIエージェントを主導
マイクロソフトは、AzureとMicrosoft 365を通じて企業のAI導入を支える大手です。26年6月期第4四半期は売上高900億ドル(前年同期比18%増)、営業利益406億ドル(同18%増)でした。Azureなどのクラウドサービス売上は43%増となり、AIを含む計算需要の拡大が続いています。
7月の決算では、Azureの年間売上が1,000億ドルを超え、Copilotの有料席数も3,000万超に達したと説明しました。ただし、利用拡大にはデータセンター投資が必要です。設備投資額の大きさだけで評価せず、クラウド収益の伸びと利益率、投資後の現金収支を併せて確認します。
アルファベット(GOOGL)|AI検索・Gemini・クラウドの成長
アルファベットは、AI検索、Gemini、Google Cloudを展開するグーグルの親会社です。26年12月期第2四半期は売上高1,198億ドル(前年同期比24%増)、営業利益408億ドル(同30%増)でした。Google Cloud売上は82%増の248億ドルとなり、AI基盤と企業向けサービスの需要が伸びています。
自社開発のTPUも強みで、Ironwood系のTPU7xは2026年3月31日に一般提供へ移行しました。一方、当四半期の最終利益には保有株式の評価益が大きく含まれます。純利益の急増をそのままAI事業の稼ぐ力とみなさず、広告・クラウドそれぞれの営業利益を確認します。
AI関連株投資で押さえるべきリスク

AI市場が拡大していても、関連株が一斉に上昇するとは限りません。投資回収、半導体の競争、輸出規制は、企業の売上や利益に影響します。テーマの将来性と、現在の株価で投資する魅力は切り分けて確認しましょう。
設備投資ROIへの懐疑論|ビッグテックのCAPEX疲れに注意
AI投資で注意したいのは、設備投資が増えても、その分だけ利益や現金が増えるとは限らない点です。GPUやデータセンターの稼働後には、減価償却費、電力費、保守費用が発生します。利用料収入の伸びが費用増を上回るかが、投資する企業の収益性を左右します。
アルファベットの26年12月期第2四半期は、設備投資が約449億ドル、営業キャッシュフローが約391億ドルでした。差し引き約59億ドルの流出となり、売上の成長と現金収支に差が出ています。大きな投資額だけで成長を評価せず、資金回収までの負担も確認したいところです。
カスタムチップの台頭|エヌビディア一強は揺らぐか
グーグルのTPUなど、クラウド企業が自社設計のAI半導体を活用する動きが広がっています。処理内容に合わせた専用チップで、消費電力や計算費用を抑える狙いがあります。AI計算の需要拡大が、すべてエヌビディアのGPU需要になるわけではありません。
一方、エヌビディアにはCUDAを中心とした開発基盤があり、既存ソフトの移行や運用ノウハウまで含めて採用が決まります。「競合より何カ月先行している」と一律に測れるものではありません。GPUと専用チップの使い分けが進む中で、販売数量だけでなく価格や粗利益率の変化が競争の影響を示します。
対中規制の動向|輸出規制が業績に与える影響
AI半導体や半導体製造装置は、輸出規制の変更で販売先や供給条件が変わり得ます。エヌビディアは8月26日の決算発表でも、次四半期予想に中国向けデータセンター計算用製品の売上を含めていません。販売再開への期待だけを根拠に、会社予想へ上乗せして考えるのは早計です。
規制の対象は製品性能、販売先、用途などによって異なり、許可の取得と実際の出荷も同じではありません。日本の装置メーカーにも中国向け事業がありますが、企業ごとに製品構成は異なります。米中関係のニュースと併せて、各社が決算で示す地域別売上や受注への影響を確認します。
まとめ|AIの成長期待と、各社の収益化の進み具合を確認する
2026年のAI投資テーマは、インフラ整備に加えて、企業の業務自動化や工場への活用へと広がっています。設備投資と収益化は同時に進んでおり、すべての関連企業が同じペースで成長するわけではありません。
半導体では受注と利益率、クラウドでは稼働率と投資負担、ロボットでは実証から顧客への導入までの進み具合が重要です。
テーマ名だけで銘柄を選ばず、最新決算で増えた利益の理由と、次の決算でも続く成長を確認しましょう。高値から下がっただけでは割安とは限りません。

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日本投資機構株式会社
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