テクセンドフォトマスクは2025年10月16日に東証プライム市場に上場する、今年屈指の大型IPO案件です。
最先端半導体の生産性と品質を決めるキーパーツ「フォトマスク」事業を手掛ける同社は、世界的な半導体株高を背景に市場の大きな関心を集めています。
本記事では、このテクセンドフォトマスクのIPOについて、セカンダリー投資を検討している読者向けに、事業内容や業績、そして上場後に利益を狙うための具体的な戦略を徹底的に解説します。
テクセンドフォトマスクとは?会社概要と事業の強み

テクセンドフォトマスクは、もともとTOPPANホールディングスのフォトマスク事業が独立してできた企業です。
「フォトマスク」とは、半導体の回路をウェハ(基板)に焼き付けるための原版のことです。
これは、高性能な半導体チップを大量生産するうえで、その品質や歩留まり(出来栄え)を左右する、重要な部材です。
同社のフォトマスクは、AIチップなどの高度な半導体(ロジック)から、データを保存する半導体(メモリ)の一部まで、幅広く使われています。
想定時価総額は約3,000億円で海外投資家も注目
上場時の吸収金額は1,366億円、想定時価総額は2,978億円と、2025年3月に上場したJX金属に次ぐ規模となっています。
規模の大きさに加えて、半導体関連株への人気が世界的に高まっていることから、国内外の機関投資家から注目されています。
実際、すでにカタール投資庁が上場前に株を買い取る「親引け」を予定しており、海外からの高い期待が明らかになっています。
外販フォトマスクでは世界トップクラスのシェア

テクセンドフォトマスクは、半導体用フォトマスクの開発・製造・販売を一気通貫で行っています。
世界8拠点に生産網を有しており、外部の半導体メーカーに売る市場(外販市場)では、2024年時点で約38.9%のシェアを持つリーディングカンパニーです。
また、AIサーバーなどに使われる高性能な先端半導体の製造に欠かせない、EUV(極端紫外線:短波長で微細パターンを描く露光技術)と呼ばれる高度な技術にも対応しています。
この最先端領域まで手掛けている点が、同社の高い技術力を示しています。
外販フォトマスクのシェアトップ級かつ最先端領域まで対応というわかりやすいナンバーワンストーリーが描ける企業となっています。
テクセンドフォトマスクの売上高規模は?決算を確認

26年3月期の業績は、売上高が前期比6.2%増の1,252億円、税引前利益が同15.8%減の259億円と増収減益となる見通しです。
フォトマスク市場の回復・成長基調の継続と同社のシェア堅持を想定し増収を見込んでいます。
一方で、これまでの成長ドライバーであった中国における現地フォトマスクサプライヤーの拡大と成長に伴い価格競争が激化することを想定し、収益率の悪化を見込んでいます。
なお、想定為替レートは1ドル140円が前提とされており、現在の為替水準であれば一定の業績上振れも考えられます。
また、26年3月期の配当は未定ですが、配当性向30%程度という基本方針を掲げているため、今後の配当発表への期待も持てます。
外部環境がテクセンドフォトマスクの追い風に

テクセンドフォトマスクがこれから大きく成長すると期待される最大の理由は、世界的なAI(人工知能)ブームが強力な追い風になっているからです。
大手ハイテク企業は、AIの発展に伴い、データセンターの設備を増やしたり、高性能なAIチップ(GPUなど)を次々と開発・投入したりしています。
その結果、企業の長期的な業績見通し(ガイダンス)が引き上げられるなど、市場全体の期待が高まり、ハイテク株の株価をけん引する原動力となっているのです。
成長を「加速させる」好循環
AIやデータセンターへの投資が強まる局面では、半導体の「設計図の原版」を作るテクセンドフォトマスクにとって、以下の通り「量」と「質」の二つの面でプラスに働きます。
【量の増加】
AIチップの新設計が増加し、それに伴って使用されるフォトマスクの発注枚数が大幅に増えます。
さらに、設計の修正などによる追加発注も発生し、全体の注文数が増大します。
【質の向上】
AIには最先端のチップが使われるため、製造難度の高い先端品の比率が上昇します。
製造が難しい先端品は高価になるため、売上全体に占める単価の高い製品の割合(単価ミックス)が押し上げられ、利益率の改善につながります。
結果として、「発注枚数(量)」と「単価(質)」の両方が引き上がる、極めてポジティブな循環が生まれます。
この量×質の構造が、外販フォトマスク専業トップのテクセンドフォトマスクの追い風となっています。
上場後に株価上昇のチャンスはあるか?

ここからは、上場後にテクセンドフォトマスクの株価が大きく上昇する可能性について、アナリスト目線で分かりやすく解説していきます。
テクセンドフォトマスクの市場での評価を考える上で、注目すべきポイントは2つあります。
ポイント①:世界的トレンドに乗る大型株
テクセンドフォトマスクはAIブームによって半導体需要が高まるという、世界的な成長トレンドを捉えているため、世界中の投資家から需要があるとみられます。
また、会社の規模を示す時価総額は約3,000億円と非常に大規模な案件です。
会社規模が大きいということは、それだけ流動性が高くなります。
規模が大きいことで、年金基金や保険会社といった国内外の機関投資家が安心して大量に株を買いやすく、上場直後からの参入が期待されます。
すでにカタール投資庁も投資を予定しており、プロからの信頼が厚いこともわかります。
プロの投資家が参入すれば、当然ながら株価の上昇につながる期待は高まります。
ポイント②:業績を押し上げる強力な追い風
現在は大型ハイテク企業を中心にAIサーバへの投資が加速しており、国内上場企業でも、アドバンテストや東京エレクトロンといった半導体関連株の上昇が目立っています。
AI・データセンターへの投資が加速すれば、AIチップに使われる高性能な先端半導体の新設計や世代交代も加速します。
その結果、その製造に使うフォトマスクの「発注枚数(量)」と、難易度の高い最先端品の「単価(質)」が同時に増加することになります。
テクセンドフォトマスクは、半導体向け外販市場で約39%のトップクラスシェアを持っているため、この「量と質」の同時増加という強力な追い風が、業績を大きく伸ばす要因となるのです。
この成長性が投資家に高く評価されれば、上場後も株価は大きく伸びる可能性があります。
テクセンドフォトマスク株の投資戦略と注意点

テクセンドフォトマスク株に投資する際には、IPOの基本情報だけではなく、需給構造を見極めて、セカンダリー投資におけるタイミングとスタンスをどう取るかが重要となります。
ここでは、IPOの基本情報とリスク、そして実際に投資する場合の戦略について整理します。
テクセンドフォトマスク株IPOの初値&基本情報
テクセンドフォトマスク株に投資する上で、まずは基本的な情報を押さえておきましょう。
公開価格:3,000円
時価総額:2,978億円(公開価格ベース)
主幹事:野村証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
上場後の株価はどうなる?セカンダリー投資のポイント
上場後の株価の動きを予想する上で、「誰が株を持っているか」「今後株を売る可能性があるか」という需給バランスの見極めが重要です。
大株主にはベンチャーキャピタルが多く、売出株式比率は82.3%となっています。
公募株式数の8割以上が投資ファンドの売出しとなるため、初値高騰の可能性は低いと考えられます
一方で、既存株主へのロックアップは180日となっており、上場日から半年間は大口の売りはないと推察されます。
上値追いへの不安感が薄れる可能性があることから、上昇トレンドが出た場合はそのトレンドをフォローする形での売買も考えておきましょう。
セカンダリーを狙うならまずは、初値がついてから上値追いとなるかを見極めましょう。
また、初値が公開価格3,000円を超えるかには注目です。
今回の場合、投資家の注目度が高いこと、外部環境が好調なことから初値が公開価格を下回るいわゆる「公募割れ」になる可能性は低いとみています。
まとめ|初値がついた後の値動きを慎重に見極めよう!

テクセンドフォトマスクは、AIや半導体ブームの恩恵を受ける企業です。
半導体の「設計図の原版」であるフォトマスクの外販で世界トップクラスのシェアを持ち、最先端技術にも対応しています。
AI投資の加速により、「発注枚数(量)」と「単価(質)」が同時に伸びるという強力な成長サイクルが働くため、上場後も国内外の機関投資家から注目され、株価が上昇する余地があるでしょう。
とはいえ、IPO直後は値動きが荒くなりやすいため、まずは初値がついた後の値動きを慎重に見極めることが重要です。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 投資戦略部 室長
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。