2026年半導体関連銘柄の本命は?日本の製造装置株が強い理由を徹底分析

2026年半導体関連銘柄の本命は?日本の製造装置株が強い理由を徹底分析

半導体市場の拡大に伴い、「どのセクター、どの銘柄に投資すべきか」迷っている方も多いのではないでしょうか?

特に日本株においては、世界シェアを持つ「半導体製造装置」や「素材」メーカーに大きなチャンスがあります。

本記事では、2026年の勝ち組セクター予測と、東京エレクトロンやRapidus(ラピダス)など注目企業の動向、そして投資家が警戒すべきリスク要因について解説します。

目次

【分野別】明暗が分かれる2026年の半導体トレンド予測

2026年半導体関連銘柄の本命は?日本の製造装置株が強い理由を徹底分析

絶好調な製造装置分野に対し、調整が続くEV市場など、2026年に向けてセクターごとに鮮明になりつつある「明暗」を整理し、注目銘柄のヒントを探ります。

半導体製造装置(SPE)|微細化による前工程への投資加速

2026年に向けて、半導体市場では前工程と後工程の双方で投資が活発化していくと予想しています。前工程では、AIや高性能コンピューティング向けのロジックチップで、5nm以下の先端プロセスへの微細化投資が加速しています。

これに伴い、EUV露光装置や成膜装置、エッチング装置、検査装置などの需要が増加し、装置メーカーにとって受注拡大の大きな機会となります。特に東京エレクトロンは前工程向けの幅広い装置ラインナップを持っており、微細化プロセスへの投資増加が直接的な売上増につながります。

半導体製造装置(SPE)|HBMを支える後工程パッケージ技術

一方、後工程では3DパッケージングやFan-Out、Chiplet構造などの高付加価値パッケージ技術の採用が拡大しています。

特にHBMやAI向けアクセラレータでは、従来の2Dパッケージでは対応できない高帯域・大容量の実装が必要となるため、ウェーハ積層やシリコン貫通ビア(TSV)、高密度配線技術を伴う装置や検査装置への投資が急増しています。

東京エレクトロンは後工程向けの計測・検査装置で、アドバンテストはパッケージ後の最終テスト装置でそれぞれ高いシェアを持つため、後工程の設備投資拡大からも直接的な恩恵を受けます。

自動車(EV)・産業機器|調整局面からの脱却なるか

一方、欧米を中心としたEV市場では2025年以降、一部で販売成長の鈍化が見られます。燃費規制や補助金政策の変化、消費者の価格感度の影響などにより、ガソリン車からの完全な電動化の流れが一部で停滞し、ハイブリッド車への回帰が進む傾向があります。

この結果、EV向け車載半導体の需要は、従来の成長ペースからやや抑制される可能性があります。特に、電池管理や駆動制御などEV特化の半導体需要は減速する一方で、ハイブリッド車向けの車載半導体は引き続き安定した需要が見込まれます。

パワー半導体に見る「SiC」の一人勝ちと汎用品の苦戦

パワー半導体の分野では、SiC(炭化ケイ素)を用いた高効率・高耐圧の製品は引き続き堅調な需要が続く見通しです。SiCはEVのモーター制御や急速充電器など、高性能が求められる領域で不可欠であり、価格が高くても長期的な成長が期待されます。

一方で、従来型の汎用パワー半導体は、市場全体の供給過剰や在庫調整の影響を受けやすく、短期的には出荷・価格ともに調整が続く可能性があります。結果として、パワー半導体市場は高付加価値SiC製品と従来型汎用品の二極化が進行し、メーカーの収益構造にも明確な差が生まれる状況となっています。

2026年の半導体市場におけるリスク 

2026年の半導体市場におけるリスク 

ここまでセクターごとの明暗を見てきましたが、どの銘柄に投資するにせよ、企業の努力だけでは回避できない外部リスクも考慮する必要があります。
2026年の半導体市場においては、需要拡大や投資増加が期待される一方で、国際情勢という大きな不確定要素が存在します。

地政学リスクによるサプライチェーンへの脅威 

まず、地政学リスクは市場全体の不確実性を高める重要な要素です。 米中対立や台湾情勢の緊張、ロシア・ウクライナ情勢などが半導体のサプライチェーンに影響する可能性があります。

特に半導体の主要生産拠点が限られていることから、政治的・軍事的リスクが供給不足や価格変動を引き起こす可能性があり、世界的な半導体市場の安定成長に対する潜在的な脅威となります。

米国政策と「トランプリスク」 

また、米国の政策や政権の変動も市場リスクの一因です。

いわゆる「トランプリスク」と呼ばれるように、米国政府による輸出規制や投資規制、補助金政策の変更は、半導体メーカーの国際的な取引や投資計画に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

過去には、特定の中国企業に対する輸出制限や技術規制がサプライチェーンの混乱を招いた例があり、2026年においても同様のリスクが残る状況です。

これらの地政学リスクや政策リスクは、単独ではなく複合的に作用する場合があり、半導体市場の価格変動や供給不安、投資抑制の要因となり得ます。

特に高付加価値メモリや先端プロセス製品の供給集中度が高い分野では、こうしたリスクの影響が顕著に表れる可能性があります。

したがって、2026年の半導体市場は成長が期待される一方で、供給チェーンの地政学的安定性や政策環境に左右される不確実性を伴う状況であるといえます。

日本の半導体関連株は強みを発揮できるか?注目銘柄の動向

このように世界情勢は不安定ですが、だからこそ「替えの効かない技術」を持つ企業の価値は高まります
世界的なスーパーサイクルの中で、高いシェアを持つ日本の製造装置・素材メーカーがどのような恩恵を受けるのか、具体的な企業名を交えて解説します。

世界シェアを持つ製造装置・素材メーカーの優位性

2026年の半導体市場では、メモリやAI向けアクセラレータの需要拡大を背景に、スーパーサイクルの到来が期待されています。このような成長局面において、世界シェアが高い日本メーカーは、特に恩恵を受けやすい構造にあります。

日本企業は、半導体製造装置、検査・テスト装置、材料、パッケージ基板など、サプライチェーンの重要分野で高い技術力とシェアを持っており、需要拡大の波が直接的に売上や利益増加につながるからです。

東京エレクトロン・レーザーテック等の恩恵と株価材料

まず、EUV(極端紫外線)露光関連分野では、先端プロセス(5nm以下やAI向けロジックチップ)に不可欠な装置や周辺技術が重要です。

東京エレクトロンは成膜・洗浄・検査装置で世界的なシェアを持ち、レーザーテックは露光用マスク検査装置やウェーハ検査装置で高い競争力を有しています。

さらに、日本マイクロニクスは半導体プロセス用計測装置や検査装置で、TOWAは洗浄装置や半導体後工程向け部材で強みを発揮しており、微細化投資の加速に伴う需要増から直接的な恩恵を受けやすい状況です。

パッケージ基板・実装技術とHBM需要

次に、パッケージ基板や高密度実装関連分野も注目ポイントです。
3DパッケージングやFan-Out、Chiplet構造の採用拡大により、高性能・高帯域のパッケージ基板や実装材料が不可欠となっています。

日本メーカーは、パッケージ基板やプリント配線板、実装技術で高い競争力を持っており、後工程での投資拡大が直接的な売上増加につながります。
HBMやAI向けアクセラレータの増産に伴い、高付加価値のパッケージ基板需要が急拡大することが予想されます。

TSMC熊本の稼働とRapidus(ラピダス)の将来性

2026年の時点で、TSMCの日本子会社であるJASM(熊本拠点)は、成熟プロセスの生産を安定的に行っています。
一方、第2工場の建設・量産開始については、当初計画よりも本格的なマスプロ開始がやや遅れる可能性が指摘されています。

Rapidusの北海道千歳拠点では、2nm世代のパイロットラインが稼働を開始しており、試作ウェーハの動作確認に成功しています。Rapidusは前工程だけでなく、後工程・パッケージング・テストまでを含めた一貫体制を構築することで、AIチップや高性能SoCの開発・生産に対応できる体制を整えつつあります。

市場規模8,000億ドル超えの「スーパーサイクル」が追い風

日本の製造装置メーカーが強い背景には、市場全体が2030年に向けて100兆円規模へ拡大する「スーパーサイクル」があります。
単なる一時的なブームではなく、6Gや量子コンピュータも見据えた構造的な成長軌道が、日本株のファンダメンタルズを支えています。

AIバブル論を否定する「HBM」と「Windows特需」

「今から買って高値掴みにならないか?」という懸念に対しては、HBMの物理的な供給不足と、Windows 10サポート終了によるPC特需の存在が安心材料となります。
株価の過熱には注意が必要なものの、需要は2026年も底堅く推移するでしょう。

まとめ|日本株の「製造装置」が2026年の本命セクターに

2026年の半導体市場で「勝ち馬」となるのは、AIやHBMに不可欠な微細化・3Dパッケージ技術を持つ製造装置メーカーと言えそうです。

日本株には東京エレクトロンやレーザーテックなど、この分野で高い世界シェアを持つ企業が多く、投資妙味があります。

一方で、地政学リスクなどの懸念材料も存在します。
市場の成長を享受しつつも、これらのリスク要因を常にウォッチする姿勢が重要になるでしょう。

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執筆者情報

nari

桜田 順司

Marina Bay Capital Advisors Pte Ltd (シンガポール) CEO / 記事監修

大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券など大手証券会社の投資調査部にてシニアアナリストとして日本株を担当。日経アナリストランキング首位。日本経済新聞、テレビ東京等のメディアにも多数出演。その後、世界有数の株式ヘッジファンドにて日本株ロング・ショートファンドの運用に従事。日本株運用のマネージング・ディレクター、日本株運用責任者などを歴任。ロング・ショート運用を通じて、国内外の様々な業界や企業に精通。

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