【IPO勝率分析】初値買いは下がる?IPO55社分のデータから導く2026年の狙い目銘柄の共通点

【IPO勝率分析】初値買いは下がる?IPO55社分のデータから導く2026年の狙い目銘柄の共通点

今回は「2025年のIPO」を、数字で一気に総まとめします。 IPOと聞くと、初値でドーンと上がるイメージを持たれる方も多いと思います。

では2025年のIPOはどうだったのか?
結論から言うとちょっと面白い年でした。 なぜかというと「初値は強くても、上場後は伸び悩む銘柄が多い。」からです!

つまり、「IPOは儲かりやすい」というイメージと、実際の値動きがズレやすかった年でした。 だからこそ、2025年のIPOをちゃんと整理すると、次に役立つ勝ちパターンと避けたいパターンが見えてきます。

今回は

  • 初値プラス率 
  • 吸収金額別の傾向
  •  上場後パフォーマンスと値動きメカニズム
  •  公募割れの共通点

この4つのポイントに注目して、IPOを「運で利益を狙う」のではなく、「確率を高めて利益を狙う」取引にしていければと思っています。

目次

【初値プラス率の実態】8割超がプラスも「売り抜け時」が勝敗を分けた

まず最初に確認したいのは、「2025年のIPOは、初値の時点で勝ちやすい年だったのか」という点です。 IPOは上場初日に、公募価格を基準にして初値が決まりますが、この初値が公開価格を上回ったかどうかは、IPO市場全体の温度感を測るうえで最も分かりやすい指標の一つです。

2025年のIPOは、2025年12月16日時点の集計で55社となっています。 このうち、初値が公開価格を上回った銘柄は46社です。したがって、初値プラス率は約84%になります。 この数字をどう評価するかですが、初値の強さという意味では「しっかり強い部類」に入ります。

初値プラス率84%が示す市場の熱量

初値でプラスになった銘柄が8割を超えるということは、少なくとも初値を取りにいく戦略が機能しやすい地合いだった、という見方ができます。 2025年の平均的な水準感として、公開価格から初値への上昇率が平均+35%程度となっています。 

これは、公開価格を「1」としたときに、初値が「1.35倍」前後になっている、というイメージです。 もちろん、全銘柄が均等に上がったわけではなく、実際には「大きく上がった銘柄」と「伸び悩んだ銘柄」が混在していますが、平均値としては、初値の上昇が目立つ年であったことは間違いありません。

「初値は強いがその後は失速」という2025年のクセ

しかし、ここで注意が必要なのが「初値は強くても、上場後は伸び悩む銘柄が多い」という2025年特有の傾向です。 初値が公開価格を大きく上回ってスタートしたものの、そこが「最高値」となってしまい、数日後には初値を大きく割り込む銘柄が続出しました。

 つまり、2025年は「初値で売れば利益が出るが、持ち続けるとリスクが高い」という、極めて短期決戦が求められる面白い年だったと言えます。 このギャップこそが、投資家が「勝っているはずなのに手元に利益が残らない」と感じる正体でした。

2025年の地合いを支えた個人投資家の動向

これほどまでに初値が跳ね上がった背景には、新興市場に対する個人投資家の期待感が根強く残っていたことが挙げられます。 特にAIやDXといったキャッチーなテーマを持つ銘柄には、公開価格の段階から資金が集中し、需給が極端に買いへ傾きました。

 一方で、機関投資家は上場後のバリュエーション(企業価値評価)を冷静に見ていたため、初値形成後の「買い支え」が弱く、結果として初値天井を招きやすい構造が出来上がっていたのです。

 このように、初値の強さだけに目を奪われず、その後の需給の「息切れ」を予測することが2025年を勝ち抜く鍵となりました。

【吸収金額別の傾向】サイズ感で決まる初値の「軽さ」と「重さ」

次に確認したいのは、「IPOはどのサイズ感が勝ちやすいのか」という点です。 

ここでいうサイズ感とは一般に「吸収金額」と呼ばれる
上場時に市場が受け止める必要のある株式の量を指します。

 IPOは人気だけで決まるものではなく、最終的には需給、つまり「買いたい人の量」「売られる株数」のバランスで初値が形成されるため、この吸収金額は初値の出やすさを左右する極めて重要な項目になります。

▼以下に2025年収集金額別の初値プラス比率を図表にしました。

中小型の需給が軽い銘柄に資金が集中した

2025年のIPOは、「中小型の需給が軽い銘柄に資金が集まりやすく、初値がつきやすかった」という点が明確な特徴です。 特に吸収金額が10億円を下回るような小型案件では、初値が公開価格の2倍以上に跳ね上がるケースも珍しくありませんでした。

 これは、市場に供給される株数が圧倒的に少ないため、少数の「どうしても買いたい」という注文が入るだけで価格が吊り上がるためです。 投資家にとって、「身軽な銘柄=初値が伸びやすい」という法則が、2025年ほど鮮明に出た年はありません。

大型案件が抱える「株数の重さ」という壁

一方で、100億円超の大型案件は、需要が強かったとしてもこなさなければならない株数が多く、初値が伸びにくいだけでなく初値が公開価格を下回る「公募割れ」が発生しやすい環境でした。 

ただし、「大型IPOだから人気がない」という意味ではありません。 むしろ知名度や事業の安定感から注目度が高いケースも多いです。 しかし、今回の注目点である初値という短期の需給イベントに限れば、株数の重さが価格形成を抑え込みやすいという性質が強く働きました。

2025年のサイズ別戦略の結論

実際の初値プラス比率を吸収金額別に見ると、10億円未満の勝率が際立っており、100億円を超えると一気にリスクが高まるという整理になります。 

したがって、2025年において、IPOの初値狙いを重視する場合は、サイズ感が小〜中型の銘柄を中心に考えた方が合理的だった、ということです。「銘柄の有名さ」よりも「需給の軽さ」を優先することが、2025年のIPO投資で安定した利益を出すための鉄則でした。 

このサイズ感のチェックを怠り、大型株の知名度だけで当選を喜んでしまった投資家が、公募割れの憂き目に遭いやすい年だったと言えるでしょう。

【上場後パフォーマンス】初値天井が多発した値動きのメカニズム

続いて、上場後のパフォーマンスについて詳しく見ていきましょう。 IPO投資は「初値で利益が出たかどうか」に目が向きがちですが、実際の投資行動としては、初値で売らずに保有を続ける投資家や、初値形成後にセカンダリー(市場)で買う投資家も多く存在します。 

その意味で、初値の後に何が起きやすいのかを整理しておくことは、IPOを戦略として扱ううえで非常に重要です。

まず全体像として、2025年のIPOは(12月16日時点の集計)初値よりも現在株価が上にある銘柄が16社、下にある銘柄が36社という状況です。

つまり、少なくともこの時点では、初値を超えて推移できていない銘柄が多数派であり、「初値天井」になりやすい局面が目立った年だったということになります。

短期的な需給の反動が起きる「上場1週間」の動き

上場初日は、初値がついた時点で一度イベントが終わる側面もあります。 公開価格で当選した投資家の利益確定売りや、初値買いに入った短期資金の利確、需給の落ち着きによって、初値の勢いがそのまま持続しないケースが起こりやすくなります。

 特に、初値が公募価格を大きく上回った銘柄ほど、その反動で短期的な押しが入りやすいという構図には注意が必要です。

 2025年は、初値で大きく跳ねた銘柄ほど、翌日から数日間は大幅なマイナスを記録するパターンが目立ち、セカンダリー投資家にとっては非常に難易度の高い地合いでした。

中長期のトレンドを決定づける「上場1か月」の壁

1か月の時間軸になると、需給だけではなく企業側の材料と追加の売り圧力が値動きに効いてきます。 具体的には、業績の進捗や見通しに対する市場の納得感、テーマ・成長ストーリーの持続性、そしてロックアップ条件やベンチャーキャピタルの保有比率が焦点となります。 

2025年のケースでは、上場直後に出来高が急減し、いわゆる「放置株」となってしまう銘柄も散見されました。 出来高が十分にあり、売りを吸収できるだけの魅力がある銘柄は、再び初値を上回る展開に繋がりやすいですが、材料が乏しい銘柄は調整が長引く傾向にあります。

セカンダリーで生き残るための重要指標

2025年のデータから学べる教訓は、初値形成後の値動きを予測する際に「時価総額」と「成長率」のバランスをシビアに見る必要がある、という点です。 

初値が高騰しすぎて、将来の成長を数年分も先取りしたバリュエーションになってしまった銘柄は、その後数か月間にわたって株価が低迷し続けました。

 一方で、初値が控えめだった銘柄や、上場後に強力な修正発表を出した銘柄は、右肩上がりのトレンドを形成しています。 このように、初値の勢いだけで判断せず、「企業の適正価値に対して初値がどうだったか」を冷静に比較することが、2025年の投資判断における正解でした。

【公募割れの共通点】リスクを回避する4つの判定基準

最後に、公募割れの共通点について整理します。 IPOで最も避けたい事象の一つが「初値が公開価格を下回る」ことですが、公募割れは偶然だけで起きるわけではなく、ある程度起きやすい条件が重なることで発生しやすくなります。

 2025年のデータと、IPOの需給構造を踏まえて、特に重要な4つの共通点を詳しく解説します。

吸収金額と需給バランスのミスマッチ

2025年のIPOデータから、100億円超の大型案件では初値プラス率が低下しており、需給の重さが公募割れリスクを高めやすい構図が見えます。

 買い需要があったとしても、初値形成の場面では「必要な買いの絶対量」が大きくなるため、需給が噛み合わないと初値が伸びにくくなります。

 特に世界的な金融引き締めの影響などで機関投資家の買いが慎重な時期には、大型案件は真っ先に公募割れ候補となりやすいのが現実です。

期待の先行とストーリーの持続性

事業の将来性が注目されること自体は当然ですが、公開価格の段階で期待が強く織り込まれている場合、初値でさらに上を買う理由が相対的に弱くなり、売りが出やすくなります。

 またIPOは「新規性」が注目されやすい一方で、上場の瞬間を過ぎると、市場は次に「その成長はどの数字で裏付けられるのか」「いつ収益が出るのか」という現実的な考え方に移ります。 

これに対して、材料が乏しい、あるいはテーマ性が一過性のもの(短命)である場合、初値形成に必要な買い需要が続きにくくなり、結果として公募割れを引き起こします。

上場後の追加売り圧力(ロックアップの罠)

ベンチャーキャピタル(VC)の保有比率やロックアップ条件も、初値形成に多大な影響を与えます。 代表的な例は、VCの保有株に対し、「ロックアップが公募価格1.5倍」となっているケースです。

 このような場合、公募価格の1.5倍付近に到達するとVCの売却が警戒され、買い手が二の足を踏むことになります。 2025年においても、この「売り圧の壁」が意識されることで、初値が公開価格近辺で力尽きる、あるいは下回るというメカニズムが働くケースが確認されました。

2025年の教訓から導き出す回避策

ここまでを踏まえると、2025年のIPOから得られる教訓は、初値狙いにおいて「大型案件は需給面で慎重に扱う」「公開価格の強気さと売り圧構造を事前に確認する」という2点を徹底することに尽きます。

 「良い会社だから初値が上がる」のではなく、「売りたい人より買いたい人が物理的に多いから上がる」という需給の原則を忘れないことが重要です。

 これらの共通点に一つでも該当する銘柄は、当選しても辞退を検討する、あるいはセカンダリーで入るのを控えるといった判断を下すことで、不要な公募割れリスクを一定程度下げられるようになります。

まとめ

以上が、2025年IPOの全体像です。

初値プラス率は高く、初値だけを見ると強い年でしたが、サイズ感によって勝ちやすさが大きく変わり、上場後は初値を超えて推移できない銘柄も目立ちました。

 そのため、IPOを戦略として扱う場合は、初値の勢いだけで判断せず、吸収金額と上場後の売り圧構造を含めて、「勝ちやすい条件」を選別することが極めて重要となります。

今回お伝えした、初値プラス率の裏側、吸収金額による需給の差、上場後の値動きのクセ、そして公募割れの共通点という4つのポイント。 

これらをしっかり意識して活かしていくことで、2026年のIPO投資では、今よりもさらに確実で大きな利益を狙っていけるはずです。 データに基づいた冷静な判断で、次のチャンスを確実に掴み取りましょう。

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執筆者情報

nari

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 投資戦略部 室長

大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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